『ボーン・アイデンティティー』("The Bourne Identity")とは、
この記事では、1.と2.の両方について記述する。また、2.の続編の映画、『ボーン・スプレマシー』、『ボーン・アルティメイタム』についてもまとめて記述する。
1.の概要
アメリカのスパイ・スリラー作家、ロバート・ラドラムの1980年の作品。『ジェイソン・ボーン』三部作の一作目。
ラドラムは、デビュー作の『スカーラッチ家の遺産』(1971年)を始めとして、発表した作品が次々とアメリカでベストセラー入りしたことで有名であり、本書『暗殺者』もアメリカの当時の記録を全て塗り替える大ヒット作品となった。
本作は、記憶を失った主人公「ジェイソン・ボーン」が、自らの正体を知るため、世界各地で見えざる敵と闘う様を描いたスパイ・アクション。
後に続編として、1986年に『殺戮のオデッセイ』(原題"The Bourne Supremacy")が、そして1989年に『最後の暗殺者』(原題"The Bourne Ultimatum")が発表され、『ジェイソン・ボーン』シリーズとしてラドラムの代表作となった。
また、2001年のラドラムの没後、映画化(詳しくは後述)に際して、作家エリック・ヴァン・ラストベーダーによってさらなる続編、『ボーン・レガシー』(2004年)、『ボーン・ビトレイヤル』(2007年)、『ボーン・サンクション』(2008年)が書かれた。
『暗殺者』のあらすじ
夜の嵐の中、地中海を航行するトロール船で、一人の男が銃撃され、海に投げ出された。
その男は漁船によって救助され、瀕死の重傷を負った状態で、地中海の島イル・ド・ポルト・ノアールの医者の下に運び込まれた。懸命な手術ののち、数週間後に意識の戻ったその男には、自分の名前を含めた過去の記憶のすべてがなかった。
医者の家に居候し、島で養生することになった男は、次第に自分がなぜか複数の言語に精通し、武器の扱いや格闘術に熟練していることを知ることになる。さらに手術の際、男の身体自体にいくつかの手がかりがあったことが判明する。整形手術された顔、コンタクトレンズの使用痕のある目、染めた形跡のある頭髪。そして皮膚の下から極小のフィルムが発見され、そこにはスイス、チューリヒの銀行口座の番号が記されていた。
男は医者達の助けを借りて、マルセーユ経由でスイスへと向かう。そこで彼を待っていたものとは……
『暗殺者』の登場人物
ジェイソン・ボーン
一切の記憶を失った男。とっさに機転を利かせて、あらゆる困難な状況を切り抜けることに長けている。記憶の断片に悩まされながらも、自分の正体を知るために奔走する。
マリー・サンジャック
カナダ人の女性で、経済学者。チューリヒで開かれる経済学会議に出席するため、ホテル「カリオン・デュ・ラック」に宿泊していた。ドイツ語は話せない。
ジェオフリー・ウォッシュバーン
イル・ド・ポルト・ノアールに住む医者。アルコール中毒だが、医者としての腕は確かで、運び込まれたジェイソン・ボーンの命を救った。医学的な見地から、謎の多いボーンの素性について、彼にいくつかの考察とアドバイスを与えた。
デービッド・アボット
アメリカ合衆国下院暗殺問題小委員会のメンバー。70歳近い高齢だが、いまだに頭脳明晰である。情報局の関係者からは、<修道士>(モンク)というあだ名が付けられている。
アレクサンダー・コンクリン
CIAのベテラン職員。東南アジアで手榴弾により片脚を吹き飛ばされて以来、杖を手放さない。情報関係者としての長年の経験からか、冷徹に物事に判断を下す傾向がある。
アンドレ・フランソワ・ビリエール
第二次世界大戦のフランスの英雄と言われる人物で、現在はフランス議会の下院の有力な議員。根っからの軍人で、法と秩序を重んじているが、なかなかに頭は固い。政治家だった息子を5、6年前に爆破テロで失っている。
カルロス
世界を震撼させている暗殺者。世界各地にネットワークを持っており、国際規模の捜査を巧みに逃れながら、暗殺稼業を続けている。
ちなみに彼は実在の人物がモデルである。詳しくはWikipediaにある記事を参照。
カイン
近年急速に勢力を伸ばしつつある暗殺者。カルロスのライバルと目されており、カルロス以上に正体不明。
テレビドラマ化
この作品は、2002年に映画化される以前、1988年にテレビドラマ化されている。
監督はロジャー・ヤングで、ボーン役はリチャード・チェンバレンが、マリー役はジャクリーン・スミスが演じている。
3時間5分に渡る長編ドラマとして、前後編に分けられて放送された。登場人物の設定など、原作との違いは多少あるものの、ストーリーはおおよそ原作通りに進み、雰囲気を忠実に再現している。
日本でのDVD版のタイトルは、『狙撃者/ボーン・アイデンティティ 』となっている。買うときには、後述のマット・デイモン主演の映画版とお間違えの無いように。
2.の概要
ラドラムの小説を原作とする、アメリカの映画シリーズ。
映画監督のダグ・リーマンが最初に映画化を企画し、一作目『ボーン・アイデンティティー』の監督となった。二作目『ボーン・スプレマシー』と三作目『ボーン・アルティメイタム』はポール・グリーングラスが監督し、リーマンは製作総指揮に回った。また三作品とも、脚本にはトニー・ギルロイが参加している。
マット・デイモンが主人公ジェイソン・ボーンを演じ、アクションシーンもほとんどスタントマン無しでこなしたことでも知られている。また、近年CGIを使ったアクション映画が増えている中、このシリーズではあまりそれを使わない、リアリティにこだわった作風となっており、アクション映画界に新たな流れを生み出しつつある。
以下では、これらの三部作、
- 『ボーン・アイデンティティー』
- 『ボーン・スプレマシー』
- 『ボーン・アルティメイタム』
について、一作品ごとに解説する。
『ボーン・アイデンティティー』
監督 | ダグ・リーマン |
脚本 | トニー・ギルロイ ウィリアム・ブレイク・ヘロン |
製作 | ダグ・リーマン パトリック・クローリー リチャード・N・グラッドスタイン |
製作総指揮 | ロバート・ラドラム フランク・マーシャル |
音楽 | ジョン・パウエル |
撮影 | オリヴァー・ウッド |
編集 | サー・クライン |
配給 | ユニバーサル・ピクチャーズ |
上映時間 | 119分 |
小説シリーズの1作目『暗殺者』("The Bourne Identity")の映画化作品。いくつかの設定や舞台は小説版と共有しているが、ストーリー展開や結末はかなり書き改められている。
監督は、ダグ・リーマン(後に『Mr.&Mrs.スミス』(2005)や『ジャンパー』(2008)の監督となる人)。
原作者のロバート・ラドラムも製作総指揮として参加していたが、映画の公開を見ることなく2001年3月に亡くなった。
ストーリー
"I can't remember anything what happened before two weeks ago."
(「2週間より前の事がまったく思い出せないんだ」) --ジェイソン・ボーン
夜の嵐の中、マルセイユ沖の海上を漂流していた一人の男が、漁船によって救出された。男は背中に2発の銃弾を撃ち込まれており、尻の皮膚の下からはスイスの銀行の口座番号を記したライトが見つかった。しかし、意識を取り戻したその男からは、記憶が失われていた。
船員の助力を得て、男はスイスに着く。しかし、夜に警官達に職務質問され、連行されそうになった男は、反射的に警官達を殴り、一瞬で気絶させていた。自身の持つ得体の知れない技術に怯えた男は、銀行に急ぐ。そこで、彼は自分の名前が『ジェイソン・ボーン』であるということを知るが……
一方、アメリカ合衆国CIA本部に所属するデッド・コンクリンには、ある知らせが届いていた。それは、ある一人の工作員がマルセイユ沖での暗殺任務に失敗し、その後、連絡が取れなくなっているというものだった……
キャスト
ジェイソン・ボーン (演:マット・デイモン)
記憶を失った男。なぜか数カ国語を話すことができ、格闘の技術にも長けている。周囲の状況を冷静に素早く観察し、それらを自分の窮地を切り抜けるのに利用することができる。
マリー・クルーツ (演:フランカ・ポテンテ)
ヨーロッパ各地を放浪して生活している女性。2日前にスイスのアパートを追い出され、アメリカ領事館でビザ申請を行うも認められず、途方に暮れていたところをボーンと出会う。
デッド・コンクリン (演:クリス・クーパー)
CIAのプロジェクト『トレッドストーン(踏み石)作戦』の作戦部長。行方をくらました工作員を捜索する。ベテランだが、ときどき気性の激しさを人にぶつけることもある。
ワード・アボット (演:ブライアン・コックス)
CIAの幹部で、『トレッドストーン』の責任者。現場のことはコンクリンに任せていたが、工作員との連絡途絶という未聞の事態に焦りを覚え始める。
ダニー・ゾーン (演:ガブリエル・マン)
コンクリンの部下。作戦情報の報告やコンピューターを使った調査活動を担当する。
ニッキー・パーソンズ (演:ジュリア・スタイルズ)
パリにいる、『トレッドストーン』のエージェント。本部との情報中継や、現地での調査を担当している。
ニクワンナ・ワムボージー(ウォンボシ) (演:アドウェール・アキノエ・アグバエ)
アフリカ某国の元独裁者。現在は亡命してパリで暮らしている。地中海沖で暗殺されかけ、これをCIAの仕業と断定。激怒した彼は、自分を政権に復帰させなければ、CIAの暴露本を書いてやると脅しをかけている。
カステル (演:ニッキー・ノード)
『トレッドストーン』の工作員。所在地はローマ。
教授 (演:クライヴ・オーウェン)
『トレッドストーン』の工作員。所在地はバルセロナ。家庭教師として潜伏している。狙撃による暗殺を得意とする。
マンハイム (演:ラッセル・レヴィー)
『トレッドストーン』の工作員。所在地はハンブルク。会社員として潜伏している。
イーモン (演:ティム・ダットン)
マリーの元彼。現在は妻と二人の子供がいる。お金持ちらしい。
備考
- 2001年8月に最初の試写が行われ、その反応を見た制作陣は、爆破シーンを一つ追加することを決め、9月始めに撮影をした。しかし、その直後に9.11同時多発テロが発生。爆破シーンを追加するべきか、そもそもこの映画は今後の世相に合うものなのかが制作陣で議論された。結果、爆破シーンはそのまま使われ、またいくつかのシーンを追加で撮影することで調整を図ったという。このうち未公開となったシーンはDVD版などの付録で見ることができる。
- アクションシーンの撮影のため、ジェイソン・ボーンを演じるマット・デイモンはカリ(エスクリマ)やボクシングなどのトレーニングを三ヶ月間受けた。2作目以降はこれにブルース・リーのジークンドーの動きも加えられている。
- エンディング曲は、シリーズ三作品ともMoby(モービー)の"Extreme Ways"。3作目の『ボーン・アルティメイタム』では特別バージョンの"Extreme Ways(Bourne's Ultimatum)"となっている。
- カーチェイスシーンでは、ポール・オークンフォールドの楽曲"Ready Steady Go"が使用されている。
『ボーン・スプレマシー』
監督 | ポール・グリーングラス |
脚本 | トニー・ギルロイ ブライアン・ヘルゲランド |
製作 | フランク・マーシャル パトリック・クローリー ポール・L・サンドバーグ |
製作総指揮 | ダグ・リーマン ジェフリー・M・ワイナー ヘンリー・モリソン |
音楽 | ジョン・パウエル |
撮影 | オリヴァー・ウッド |
編集 | クリストファー・ラウズ リチャード・ピアソン |
配給 | ユニバーサル・ピクチャーズ |
上映時間 | 108分 |
体裁上は小説シリーズの2作目『殺戮のオデッセイ』("The Bourne Supremacy")の映画化ではあるが、ストーリーは別物である。
ポール・グリーングラスを新たに監督に迎え、ジェイソン・ボーンの過去に関わる新たな闘いを描く。
多くの主要映画スタッフは前作から続投している。
一方で、手持ちカメラを用いた撮影、大胆かつ頻繁なカット割りをした編集などにより、前作以上にキレとスピード感、臨場感のある演出に成功している。
タイトルの『スプレマシー』(supremacy)は、「至高」、「至上」、または「覇権」、「主権」などの意味がある。
ストーリー
"I told you people to leave us alone. I fell off the grid. I was halfway around the world."
(「もう俺達に関わるなと言ったはずだ。お前達の目から逃れ、地球の裏側にまで行ったのに」) --ジェイソン・ボーン
前作から2年。過去との訣別をはかったジェイソン・ボーンは、再会したマリーと共に、世界各地で潜伏生活を送り、現在はインド・ゴアに腰を落ち着けていた。記憶はいまだ完全には戻らず 断片的なシーンが頭に浮かび上がるばかりだったが、過去の新聞などから情報を集め続け、また、いつ再び襲ってくるかも分からない刺客に備えるためにトレーニングを欠かさずにいた。
一方、遠く離れたドイツ・ベルリンでは、CIAのパメラ・ランディが、ある事件に関するファイルをロシア人の情報屋から買おうとしていた。しかし、取り引きの場を何者かに襲撃され、調査チームの一員と情報屋ともどもを殺害され、ファイルも奪われてしまう。事件現場のビルには、ある人物の指紋が残されており、捜査を進めるランディはCIAの機密事項に突き当たる。
そして、ボーン達の身にも危険が迫り……
キャスト
(前作のネタバレを避けるため、前作にも登場した人物については紹介を省略する。)
パメラ・ランディ (演:ジョアン・アレン)
CIA特別調査委員会(タスクフォース)のチーフで、防諜部に所属している。冷静に真実を追究し、自らの信念を貫く性格。調査チームのメンバーに的確な命令をてきぱきと下す統率力と、年上の男性幹部と丁々発止と渡り合えるほどの度胸とを併せ持つ。
キリル (演:カール・アーバン)
卓越した射撃技術を持つ謎の男。
ユーリ・グレツコフ (演:カレル・ローデン)
"ペコス・オイル"の最高経営責任者。カスピ海での石油採掘権を獲得し、たった6年でペコス・オイルを一大石油帝国に成長させた。ロシアでもトップクラスの大富豪。
ジャーダ(ヤルダ) (演:マートン・チョーカシュ)
ドイツのミュンヘン郊外にひっそりと暮らす男性。その正体は『トレッドストーン』の"元"工作員。ボーンと面識がある。
トム・クローニン (演:トム・ギャロップ)
CIA防諜部に所属するランディの部下。ランディの良き理解者で、仕事にも有能。
マーティン・マーシャル (演:トーマス・アラナ)
CIAの次官で、ランディの上司。ランディの調査活動を監督する立場にあり、何事にも慎重な性格。
ちなみに前作にも「マーシャル」という名前の人物がちらりと登場したが、おそらく無関係であると思われる。
ウラジーミル・ネスキー (演:エブゲニー・シトーチン)
ロシアの国会議員。政治腐敗への批判や石油私有化の反対を主張するなどの民主派理想家であった。7年前にある事件に関連してCIAとの接触を試みたが、その直前に、ベルリンのホテルで妻によって射殺され、またその妻も自殺したと報じられた。
ジョン・ネビンス (演:ティム・グリフィン)
イタリア国内の米国領事館付きの、CIA調査官。CIAに勤めて4年であるが、早くもベテラン風を吹かしたいようだ。
イレーナ・ネスキー (演:オクサーナ・アキニシナ)
ネスキー氏の娘。心に癒えきらない傷を抱えながらも、現在はモスクワ市内のアパートに一人暮らししている。
備考
- 監督のポール・グリーングラスは、以前はドキュメンタリーの監督や脚本などを多く担当していた。製作のフランク・マーシャルは、グリーングラスの監督作『ブラディ・サンデー』(2002年)を見て彼を今作の監督にすることを決めたという。
『ブラディ・サンデー』は、北アイルランドの「血の日曜日事件」を描いたドキュメンタリーで、2002年にベルリン国際映画祭にて金熊賞を受賞した。(ちなみにその時に同時受賞した作品は『千と千尋の神隠し』) - 今作のキャスティングで、カール・アーバン(『ロード・オブ・ザ・リング』のエオメル役など)にキリル役をオファーする際、役の特性上、登場時間の長さに対して台詞が極端に少ないので、監督は断られることを覚悟したが、カールはむしろ、台詞より行動で語る役に魅力を感じ、オファーを快諾したという。
- 前作と同様、世界の国々でロケが行われた。今作ではインド、ドイツ、そしてロシアなどの実際の場所で撮影され、作品にリアリティを与えている。
- インドでの撮影時、カメラを町中に設置したり、交通規制をしたりすると、すぐに現地の見物人が集まってきて撮影ができないことがあったという。そのため、人目につきにくい、望遠による隠し撮りが多く行われ、それが結果的に映像中の緊張感を増すことになっている。
- ボーンが調査官のネビンスを殴り、昏倒させるシーンがあるが、実際の撮影で誤ってマット・デイモンの左拳がネビンス役の顔面に直撃し、演技ではなく本当に気絶してしまったという。このことでネビンス役のティム・グリフィンは顔の骨を折る怪我をしたが、回復後の一言は「撮れてたか?」だったとか。
- モスクワのクラブのシーンで流れているダンスミュージックとして、mocean workerの楽曲"Intothinair"が使用されている。
- 映画の製作担当であるパトリック・クローリーが、本編中にCIA幹部のジャック・ウェラー役として出演している。台詞は二言三言程度。
『ボーン・アルティメイタム』
監督 | ポール・グリーングラス |
脚本 | トニー・ギルロイ スコット・Z・バーンズ ジョージ・ノルフィ |
製作 | フランク・マーシャル パトリック・クローリー ポール・L・サンドバーグ |
製作総指揮 | ダグ・リーマン ジェフリー・M・ワイナー ヘンリー・モリソン |
音楽 | ジョン・パウエル |
撮影 | オリヴァー・ウッド |
編集 | クリストファー・ラウズ |
配給 | ユニバーサル・ピクチャーズ |
上映時間 | 115分 |
体裁上は小説シリーズの3作目『最後の暗殺者』("The Bourne Ultimatum")の映画化ではあるが、前作と同様、ストーリーは別物。
監督は前作から引き続き、ポール・グリーングラス。
ジェイソン・ボーンの記憶に関する、全ての謎が明らかとなる。
撮影規模はシリーズ中でも最大。
前作までに培ってきた臨場感とスピード感の演出を存分に生かして、より勢いのある展開が凝縮されており、アクションシーンなどの見せ場も多彩を極める。
また、1作目、2作目にあった印象的な場面を連想させるようなシーン展開があったり、1作目、2作目に登場した人物などについても直接的・間接的に言及していたりと、「一つのシリーズの完結編」という側面も強い。
第80回アカデミー賞(2008年)で、編集賞、録音賞、音響編集賞を受賞した。
タイトルの『アルティメイタム』(ultimatum)は、「最後通告」、「最後の言葉」、または「究極の目的」などの意味がある。
ストーリー
"Someone started all of this and I'm gonna find them."
(「誰かが背後でこれを仕組んだ。俺はそいつらを見つける」) --ジェイソン・ボーン
前作のエンディングの直後。手負いの状態で冬のモスクワ市内を逃走するジェイソン・ボーンは、侵入した病院の中で、新たな記憶の断片に目覚める。それは、ある男性がボーンに向かって、「この計画に従事するか?」と問いかけるというものだった。この記憶の意味を突き止め、自らの出自の真実を確かめるために、ボーンは動き出す。
一方、イギリスの新聞社「ガーディアン」の記者サイモン・ロスは、イタリアのトリノにてある人物と接触。CIAの謎めいた計画『ブラック・ブライアー(黒薔薇)作戦』についての情報を得る。
情報のリークの発生を察知したCIA対テロ極秘調査局のノア・ヴォーゼンは、サイモンの監視と、彼の情報源の特定を指示する。ノアは、状況によってはサイモンの暗殺をも厭わない姿勢だった。
そして、ボーンは、ガーディアンの新聞に、ボーン自身についての記事があるのを目にする。その筆者はサイモンだった。記憶の手がかりは彼と、彼の情報源にあると考えたボーンは、彼との接触を試みるが……
キャスト
(前作までのネタバレを避けるため、前作までに登場した人物については紹介を省略する。)
ノア・ヴォーゼン (演:デヴィッド・ストラザーン)
ニューヨークにある、CIAの対テロ極秘調査局の作戦部長。国家の安全を脅かす存在を捜索する役目を持つ。監視・追跡活動に関してはベテランである。冷徹な性格で、危険分子になりうる人間については、殺害命令も躊躇しない。
エズラ・クレイマー (演:スコット・グレン)
CIA長官。ジェイソン・ボーンという男についての一連の報告を受け、彼がCIAや国家の安全を脅かすことを憂慮している。モットーは「最善を望んで、最悪に備えよ」(Hope for the best, plan for the wrost.)
サイモン・ロス (演:パディ・コンシダイン)
イギリスの新聞社「ガーディアン」の記者。諜報機関についての大胆な記事をいくつか書いており、その中にはジェイソン・ボーンについてのものもあった。CIAの機密情報のリークを受けているとされる。
ニール・ダニエルズ (演:コリン・スティントン)
CIAのマドリッド支局長。南ヨーロッパおよび北アフリカ地域での作戦を管理しており、機密情報を所有している。
ウィリス (演:コリー・ジョンソン)
ノアの部下。最新鋭の監視システムについて熟知しており、作戦室でオペレーター達に指示を飛ばす。
パズ (演:エドガー・ラミレス)
『ブラックブライアー』の工作員。ライフル狙撃、車の運転などを始めとして、極めて高い能力を持っている。
デッシュ (演:ジョーイ・アンサ)
『ブラックブライアー』の工作員。近接格闘では、カポエイラの動きを取り入れた独自のスタイルで戦う。
マーティン・クルーツ (演:ダニエル・ブリュール)
マリーの義理の弟。直接の描写は無いが、一応ボーンとマリーの関係については知っている。
アルバート・ハーシュ (演:アルバート・フィニー)
『ジェイソン・ボーン』の誕生に関わる人物。
備考
- 撮影が行われた都市の数はシリーズ最多で、ベルリン(ドイツ)、パリ(フランス)、ロンドン(イギリス)、トリノ(イタリア)、マドリッド(スペイン)、タンジール(モロッコ)、そしてニューヨーク(アメリカ)で撮影された。
- 冒頭にモスクワのシーンがあるが、実際に撮影が行われたのはベルリンである。これは、撮影しようとした1月では、モスクワはあまりの寒さで撮影が困難であることが予想されたためである。前作で10月にモスクワでロケをしたときの経験から来る判断だったとか。
- ロンドンのウォータールー駅のシーンの撮影では、エキストラの他に一般の通勤客もかなり映像に映り込んでいる。そのため、よく見ると、エキストラらしからぬ動きをしている客(カメラの方を見ている、俳優の写真を撮ろうとしているなど)を見つけることができる。
- タンジールの市場で群衆をかき分けて進むシーンでは、エキストラではなく実際の人混みを歩いたという。
また、撮影の時期が偶然にもイスラム教のラマダンの月(日の出ている間は一切飲食をしない)に重なった。撮影スタッフもその文化を尊重し、日中は飲食をできるだけ避けながら撮影活動に臨んだ。 - "元祖ジェイソン・ボーン"ことリチャード・チェンバレン(詳しくは前述したテレビドラマの項目を参照)の写真が、映画のあるシーンに登場している。興味のある人は捜してみよう。答えは→ 「ボーンが金庫を開けた後、ブラックブライアーの書類をめくるシーンで、2枚目に出てくる写真。氏名の欄には、GOLDING ROBERTとある。」
その他
- 2012年2月現在、映画『ジェイソン・ボーン』シリーズのスピンオフ作品、『ボーン・レガシー』(原題)が製作中である。
監督は、三部作にわたって脚本を担当してきたトニー・ギルロイ。ジェイソン・ボーンではない別の男が主人公となるようである。
今までジェイソン・ボーンを演じてきたマット・デイモンは、『・スプレマシー』、『・アルティメイタム』の監督だったポール・グリーングラスが今作で降板することを受けて、出演しないことが決まっている。
新しい主人公「アーロン・クロス」を演じるのは、映画『ハート・ロッカー』(2009)、『ザ・タウン』(2010)、『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(2011)など、近年ヒット作に出演してきた俳優ジェレミー・レナー。
2月現在はティザー・トレーラーが公開されている。 - 映画『ボーン・アイデンティティー』をベースとしたテレビゲーム『The Bourne Conspiracy(ボーン・コンスピラシー)』が製作され、北米でPS3とXbox360で発売された。日本版も発売される予定だったが、諸般の事情で中止となっている。残念。現在、輸入版を買うことができ、またニコニコ動画でもいくつかプレイ動画が上がっている。
関連動画
野生のグリーングラス監督が現れた
関連商品
BD・DVD
サウンドトラック
ゲーム 『The Bourne Conspiracy』
原作小説 (古本屋で探した方がいいかも…)
関連項目
- 1
- 0pt