概要
「FLAMING ETERNITY」(2004年11月25日発売)で登場。
永続罠
※「EXPERT EDITION Volume.3」収録のカード(EE3-JP170)による
フィールド上に表側表示で存在する、攻撃力が一番高いモンスターは魔法の効果を受けない。
「ポールポジション」がフィールド上に存在しなくなった時、
フィールド上に表側表示で存在する攻撃力が一番高いモンスターを破壊する。
最高攻撃力のモンスターに魔法耐性を与えるが、その代償としてこのカードがフィールドから離れた時、そのモンスターを破壊する。
高い攻撃力のモンスターを出すには手間がかかるであろうから、そのモンスターを魔法から守れるのはうれしい。
しかし、このカードを狙われるとモンスターもまとめて破壊されることや、場合によっては相手モンスターを守ってしまうのが難点。また、耐性を得るならば「安全地帯」も存在する。
攻撃力が一番高いモンスターが複数存在する場合は、その全てに対してこのカードの効果が適用される。
自分で発動して自分で破壊すれば最高攻撃力モンスターを除去できる。素直に「ハンマーシュート」を使うべきだが。
これだけならば大して話題にもならないカードであろうが、このカードの最大のポイントは効果による無限ループと、それに起因する調整中の数々である(調整中に関しては、後にいくらか改善された)。
無限ループについて
たとえば、フィールド上に攻撃力2500の「ブラック・マジシャン」と攻撃力3000の「青眼の白龍」が表側表示で存在するとする。このとき「ポールポジション」を発動すると、攻撃力3000の「青眼の白龍」は魔法の効果を受けなくなる。
ここで「ブラック・マジシャン」に「魔術の呪文書」(攻撃力700アップの装備魔法)を装備するとどうなるか。
- 「ブラック・マジシャン」に「魔術の呪文書」を装備。「ブラック・マジシャン」の攻撃力は3200になる。
- 最高攻撃力の「ブラック・マジシャン」に対して「ポールポジション」の効果が適用される。
- 「ブラック・マジシャン」は魔法の効果を受けなくなるため、攻撃力は2500になる。
- 最高攻撃力の「青眼の白龍」に対して「ポールポジション」の効果が適用される。
- 「ブラック・マジシャン」が魔法の効果を受けるようになるため、攻撃力は3200になる。
- 2.に戻る。
このように、自分では止められないループが発生してしまう。
実際のデュエルでこのようなループが発生してしまうと止めようがないため、「ポールポジション」の発動中に無限ループの原因となる行動(上記の例では「魔術の呪文書」の発動)は行えないという裁定がある。そのため、この裁定を利用すれば、ループの原因となるカードを相手に使わせないデッキを組むことができる。
たとえば、自分が攻撃力1500の「ガガガマジシャン」を召喚し、「ワンショット・ワンド」(攻撃力800アップの装備魔法)を装備し、さらに「ポールポジション」を発動したとする。このとき、ほかにモンスターがいなければ「ガガガマジシャン」が「ポールポジション」の効果を受けることになるため、「ガガガマジシャン」の攻撃力は1500となる。
ここで、相手が攻撃力1800の「ビッグ・ジョーズ」を召喚するとどうなるか。
- 「ビッグ・ジョーズ」を召喚。
- 最高攻撃力の「ビッグ・ジョーズ」に対して「ポールポジション」の効果が適用される。
- 「ガガガマジシャン」は魔法の効果を受けるようになるため、攻撃力は2300になる。
- 最高攻撃力の「ガガガマジシャン」に対して「ポールポジション」の効果が適用される。
- 「ガガガマジシャン」は魔法の効果を受けなくなるため、攻撃力は1500になる。
- 2.に戻る。
このように、またしても無限ループとなってしまう。そのため、この状況では、相手は「ビッグ・ジョーズ」の召喚自体が行えなくなる。この例であれば、相手は攻撃力1501~2300のモンスターを出すことができなくなるのである。これを最大限に利用するのが【ポールポジション】デッキの基本戦術となる。
この戦術の欠点は、まず魔法・罠は(ループを引き起こすものでない限り)封じられないこと。「サイクロン」などで「ポールポジション」そのものを破壊してしまえばロックは脱出できる。また、無限ループの原因となっている最高攻撃力のモンスターや魔法カードを除去してもロックは成立しなくなる。
これはカウンター罠などで防御したい。
さらに、ロックをかけられる範囲外のモンスターを出すことに制限はないため、その隙を突かれる恐れもある。高攻撃力の場合はそのまま戦闘破壊に持っていかれるだけではなく、「ポールポジション」の効果でそのモンスターが守られてしまうため除去が困難になってしまう。
また、ロックをかけてもそれだけでは勝利できない。
モンスターの召喚を封じて攻撃して勝つにしても、裏側守備表示でのセットは無限ループを引き起こさないため許されるので、モンスターを封じて直接攻撃というのは通用しない。
狙うならば、「終焉のカウントダウン」などによる特殊勝利がいいだろう。
最大の問題点としては、調整中(ルールが定まっていないこと)が非常に多いため、当日のジャッジの判断などに左右され、まともなデュエルが行えるか自体怪しいこと。フリーデュエルで行えば(仲の良い友人とのネタでもない限り)ほぼ間違いなく嫌われてしまうだろう。どうしても行うならばあらかじめルールについて相談しておく必要がある。
実際に行う者がいるかはともかく、このようなデッキが考えられるほどに複雑な効果を持つカード。実用性以前に、調整中の多さなどで有名になっている。できれば発売前にループの存在に気付いてほしかった……。
調整中事項と特殊裁定
基本的には「無限ループ発生の原因となる行動は行えない」であるが、原因となるか不確定な行動や、原因となることが分かっていても避けようがない行動(強制効果やルール上の処理)もあり、これに関しては調整中(ルールが決まっていない)となるか、特殊裁定(このカードに対しての特例)が出される。
- 相手フィールド上に裏側守備表示のモンスターが存在し、自分フィールドには「ワンショット・ワンド」を装備した「ガガガマジシャン」がいる。「ガガガマジシャン」で裏側守備表示モンスターを攻撃した。このとき、裏側守備表示モンスターが「ゴゴゴゴーレム」(ATK/1800 DEF/1500)であった場合、双方戦闘破壊されず、バトル終了後にループが発生してしまう。
この場合、どのように処理するのか。
(ある裏守備モンスターへの攻撃が無限ループを引き起こすと証明するには、非公開情報である裏守備モンスターの攻守を開示する必要があるがどうするのか)
事務局もさすがにまずいと思ったのか、一応はちゃんと裁定を出すようになり、このカードに関する調整中事項は減っている。その代わり、特殊裁定が多すぎるのだが。
特殊裁定となっているのは以下のような事例(ほんの一例)。かつて調整中だったものも含む。
- 自分フィールド上に「邪神イレイザー」(相手フィールドのカード枚数×1000の攻撃力になる)と「ポールポジション」、さらに攻撃力2200の「軍神ガープ」が存在し、「軍神ガープ」は「デーモンの斧」(攻撃力1000ポイントアップの装備魔法)を装備しているとする。相手フィールド上にはカードが2枚存在し、「邪神イレイザー」の攻撃力は2000であるとする。
このとき、相手がフィールドに何らかのカードを発動、セットなどした場合(攻撃力3201以上のモンスターではないとする)、「邪神イレイザー」の攻撃力は3000となるため、「軍神ガープ」が「デーモンの斧」の効果を受けるようになり、無限ループが発生する。
この場合、どう処理するか。
→このとき、相手はフィールドにカードを置くことはできない。 - 自分フィールド上に「ワンショット・ワンド」を装備した「ガガガマジシャン」が存在し、相手フィールド上の魔法&罠ゾーンにはカードが1枚セットされている。自分が「サイクロン」を発動してそのセットカードを破壊した。そのセットカードが「トイ・マジシャン」であった場合、エンドフェイズに「トイ・マジシャン」はフィールドに特殊召喚されるが、「トイ・マジシャン」の攻撃力は1600であるため、無限ループが発生してしまう。
「トイ・マジシャン」の効果は強制効果であるため、発動しなければならないが、この場合、どのように処理するのか。
→セットカードの破壊は問題なく可能。この場合、例外的に「トイ・マジシャン」の特殊召喚を行わない。 - このカードの効果を受ける前に「突進」などのフィールドに残り続けないカードによって攻撃力が変化したモンスターが、後からこのカードの効果を受けた場合はどうするか。
→「突進」の効果は適用されたままであり、攻撃力はアップしたまま。- これもかつては調整中だった事例の一つ。
- 「デーモンの斧」を装備した「紅蓮魔獣 ダ・イーザ」(攻守は除外された自分のカード×400になる)と「マクロコスモス」(墓地へ送られるカードは除外される)、さらに攻撃力1400の「巨大ネズミ」が存在する。除外されている自分のカードは0枚である(「紅蓮魔獣 ダ・イーザ」の攻撃力は1000)。このとき、自分の手札が8枚あると、エンドフェイズに自分は手札を2枚捨てなければならないが、「マクロコスモス」によってそれは除外される。すると、「紅蓮魔獣 ダ・イーザ」の攻撃力は1800になり、「デーモンの斧」の効果を受けなくなるため、攻撃力は800となる。以後無限ループが発生する。
この場合、どう処理するか。
→このとき、自分はエンドフェイズの手札調整を行わずにターンを終了する。 - 自分フィールドに「デーモンの斧」を装備した「ムカムカ」(自分の手札1枚につき攻撃力300アップ。元々の攻撃力は600)と「ポールポジション」が存在し、さらに攻撃力2700の「冥府の使者ゴーズ」が存在する。自分の手札は3枚なので、「ムカムカ」の攻撃力は2500である。この状態でドローフェイズを迎え、通常のドローをすると「ムカムカ」の攻撃力は2800となり、魔法の効果を受けなくなるので無限ループが発生する。
この場合、どう処理するか。
→このカードがフィールドに存在する場合、「ムカムカ」をフィールドに出すことはできない。逆に「ムカムカ」が存在する場合は、このカードを発動できない。
総じて、無限ループがらみの調整中事項や特殊裁定が多すぎ、まともなデュエルが困難なほどであるため、ほぼ使用不可能なカードと言ってよい。公式データベースは現状役立たずなので、どうしても使うならば遊戯王カードWikiの「ポールポジション」のページを印刷して傍らに置いておく必要があるだろう。
ちなみに、上記ではこのカードが存在する状態でほかのカードがどうなるかを見てきたが、このカードの発動前にこのカード以外のループを引き起こす条件がそろい、このカードの発動によってループを引き起こすような状況では、このカードの発動ができなくなる。
ループコンボに絡めてライフを0にするなどのデュエルの勝利・敗北条件を満たせる場合でも、そのループを行うことはできないという裁定がある。無限ループの裁定に関しては、プレイヤーの意志で止められない状態になっても、いずれデュエルが終了する(デッキ切れなど)とわかっているならば処理を続行するとされることが多く、このような裁定は特殊である。
ループに対する公式な対処のいろいろ
かつて海外版の遊戯王TCGを管理していたUpperDeck社はこのループに関する裁定として次のようなものを出していた。
「意図的に確実にループの原因となる行動(上記『魔術の呪文書』や『ビッグ・ジョーズ』の例)はできないが、不確実なもの(上記の裏側守備表示の事例)や、強制効果やルール上の処理で回避できないループに関しては、『ポールポジション』を破壊してループを強制終了させる。ただし、これによって『ポールポジション』のモンスターを破壊する効果は適用しない」というもの。
調整中や特殊裁定を連発する日本のOCGに比べればわかりやすくはっきりした裁定ではあるが、あくまでこれはUpperDeck社が管理していた範囲での裁定であり、日本ではKONAMI(遊戯王OCG事務局)の裁定に従わねばならない。
かつての日本の裁定でも、自分の意志で止められない強制効果の無限ループに関しては、「ポールポジション」を破壊してループを終了させるというUpperDeck社と同じような裁定を出していたことがあった。
しかし、現在は「終わることができない無限ループが発生するカードは使用できません」が基本となっており、強制効果であっても例外的に発動しない(できない)、召喚すると無限ループを起こしかねない強制効果を持つモンスターはそもそも召喚できないといった具合に裁定が出されている。そのため、現在は一時に比べると調整中事項が少なくなった(それでも結構あるが)。
ただ、この方針に則って裁定を出した結果、ルールが無理に捻じ曲げられているものも多くなっている。
「ループダメ!」という点ではある意味で筋が通っているのかもしれないが、UpperDeck社の裁定に比べると何とも面倒な状態。
近年のゲーム作品では、回避不能な無限ループが発生した場合、数回処理を繰り返した後にその原因となるカードを破壊して処理を強制終了させるという処理がとられることが多く、UpperDeck社の裁定はそれに近いものと言える。
その他雑記
上記のような複雑な効果を持つカードであるため、ゲーム作品ではまず「ポールポジション」は収録されない。そのため、ゲーム作品ではそもそもこのカードを使用すること自体ができない。
WikiのFAQの異常な長さに反して、2023年2月現在、公式データベースにはこのカードに関するQ&Aが1つもない。
イラストに描かれているのは前方が「ガトリングバギー」、後方が「鬼タンクT-34」。実際の攻撃力も「ガトリングバギー」のほうが高い。
関連動画
関連項目
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