マリー=クレール・アランとは、現代を代表するオルガニストである。
概要
人物
父アルベール、兄ジャンは共に作曲家兼オルガニストであり、まさしく音楽一家と呼ぶべき環境の中で育った。加えて、制御の難しさがしばしば『楽器の個性が演奏者の個性を上回る』とまで形容されるオルガンをわずか11歳で演奏するなど、天才と呼ばれた兄ジャンにも劣らない才覚を見せていた。
成長後は世界的な名門校、パリ音楽院にてマルセル・デュプレ、モーリス・デュリュフレら一流の音楽家に師事。若くして技術、学識ともに卓越した存在になると、1950年の卒業後はジュネーブ国際音楽コンクールの部門最高位(1位該当者無しの2位)を皮切りに、さまざまなコンクールにて入賞を果たした。
天分、環境ともに申し分ない中でキャリアを培ってきた人物ではあったものの、それに加えて、音楽に対して常に誠実を尽くす人柄でも知られた。
生涯にバッハのオルガン全曲を3度も録音した逸話は有名だが、これは曲のみならず、バッハの置かれた時代性などについても幅広く研究した成果を盛り込むためだったと言う。また演奏、録音、オルガンの修築に関する助言、後進の指導などについても常に的確、かつ非常に精力的な活動を行ったため、専門家から音楽ファンまで幅広く信用を集める存在となった。
その後も「宗教曲を演奏するため楽器」とのイメージの強いオルガンを、宗教と疎遠であることの多い現代人の耳にも受け入れやすい形で届けてくれていたが、2013年2月26日、享年86にて惜しまれつつ逝去。死因など詳しい状況については不明だが、ついに生涯を通し現役の奏者であり続けた。
演奏
どちらかと言えばオルガンの持つ古風な、或いは質朴な音色を活かしての演奏が多いものの、同時に曖昧な部分を残さない明快さ、明晰さをも併せ持つとされる。非常に幅広いレパートリーを物していることでも知られ、実際に音楽史的な作品から現代曲まで、人並み外れた多数の曲目を演奏している。
当然ながら技術的にも全般に高い水準を維持した人であったが、特にストップ使いの巧みさで知られた。これは音色や響きを調節する、しかしオルガン一台ごとに様々なクセを持つ部位でもあり、アランがいかに優れた楽器理解のもとで演奏を行って来たかを示す例としてしばしば挙げられる。
ただし、そのジャンルにおける「基準的」演奏スタイルを実現した人物であれば常にそうではあるが、特に際立った、または分り易い個性を前面に置いた演奏をしている訳ではない。それでも、聴けばどことなく『この人物ではないか』とどことなく分る演奏をする、そうした奏者であると言える。
「精神性」という言葉はやや安易に使われることが多く、そのため芸術の世界においては軽々に使うべき形容ではなくなっている。しかしアランに関しては、作曲家や曲に対する真摯な態度から、「それを奥に秘めている」と言う意味で演奏が表現される場合も多い。
関連動画
関連商品
関連項目
タグ
- マリー=クレール・アランの 「 タグ検索 」
大百科の項目
- 0
- 0pt