ミステリ・フロンティアとは、東京創元社が発行している推理小説の叢書。
概要
四六判仮フランス装並製(表紙が本文用紙より一回り大きいソフトカバー)。デザインは全て岩郷重力+WONDER WORKZ。が手がける。飛行船のロゴと青い背表紙が目印。
2003年11月、伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』を刊行してスタート。フロンティアの名の通り、有望な若手作家のための叢書で、刊行されるのは基本的にデビューから数年内の新鋭の作品である。
ミステリーでデビューした作家のみならず、他ジャンル出身でも面白いミステリーが書けそうだと編集部が判断した作家にはどんどん声を掛けて書かせるのが特色。そのため推理小説叢書なのに執筆作家の出身ジャンルは、ライトノベル(米澤穂信、桜庭一樹、久住四季、紅玉いづき、八重野統摩)、少女小説(友桐夏)、SF(上田早夕里、平谷美樹)、時代小説(畠中恵)、ホラー(三津田信三、保科昌彦、早瀬乱)、純文学(ほしおさなえ)、児童文学(藤野恵美)など非常に幅広い。特に米澤穂信と桜庭一樹を拾い上げ、一般文芸進出のきっかけを作ったことがこのレーベルの最大の功績だろう。
ミステリーズ!新人賞受賞作家の初単行本は基本的にここから出る。鮎川哲也賞受賞作はここからは出ないが、鮎川賞作家の2作目や3作目がここから出ることはある(森谷明子、七河迦南など)。
ある程度実績を積むとこの叢書からは卒業認定されるのか、初期にミステリ・フロンティアで作品を出した作家が数年後には東京創元社で今度は普通の四六判ハードカバーを出すこともある(伊坂幸太郎、石持浅海、米澤穂信など)。
2014年で刊行点数は80冊を超え、日本最大の書き下ろし推理小説叢書になったらしい。2018年、岡崎琢磨『夏を取り戻す』で通算100冊(上下巻は2冊でカウント)を達成。
なお、実績のない作家のための叢書であるため、文庫化されない作品も結構多い。藤野恵美『ハルさん』や沢村浩輔『夜の床屋』のように文庫化してからヒットする作品もあるので、もうちょっと文庫にしてもらいたいものだが……。ただ東京創元社は伝統的に他の出版社に比べて文庫化が遅いので、5年や6年ぐらい空くのはそんなに珍しくない。10年以上経ってから思いだしたように文庫化されることもあるので、文庫待ちの人は気長に構える必要がある。
大百科に記事のある作品
大百科に記事のある執筆作家
- 芦沢央 『今だけのあの子』
- 伊坂幸太郎 『アヒルと鴨のコインロッカー』
- 石持浅海 『BG、あるいは死せるカイニス』
- 大山誠一郎 『アルファベット・パズラーズ』
- 海堂尊 『夢見る黄金地球儀』
- 北山猛邦 『少年検閲官』『オルゴーリェンヌ』
- 久住四季 『星読島に星は流れた』
- 桜庭一樹 『少女には向かない職業』
- 辻堂ゆめ 『悪女の品格』
- 鳥飼否宇 『太陽と戦慄』『樹霊』
- 東川篤哉 『館島』
- 道尾秀介 『シャドウ』
- 三津田信三 『シェルター 終末の殺人』
- 湊かなえ 『贖罪』
- 山本巧次 『開化鐵道探偵』『開化鐵道探偵 第一〇二列車の謎』
- 米澤穂信 『さよなら妖精』『犬はどこだ』『折れた竜骨』
- 詠坂雄二 『亡霊ふたり』
文学賞受賞作
自社新人賞のミステリーズ!新人賞は除く。
- 伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』 - 第25回吉川英治文学新人賞
- 道尾秀介『シャドウ』 - 第7回本格ミステリ大賞
- 米澤穂信『折れた竜骨』 - 第64回日本推理作家協会賞・長編および連作短編集部門
- 八重野統摩『ペンギンは空を見上げる』 - 第34回坪田譲治文学賞
- 伊吹亜門『刀と傘 明治京洛推理帖』 - 第19回本格ミステリ大賞
- 櫻田智也『蟬かえる』 - 第74回日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門、第21回本格ミステリ大賞
関連項目
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- 1
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