モンテスマ、あるいはモクテスマ、モテウクソマ等(Montezuma, Moctezuma, Moteuczoma, etc...)とは、アステカ人を含むナワトル族の男性名である。特に有名なのはアステカ帝国の大帝(征服者)である1世と2世である。
この名前の発音および表記には何通りものバリエーションがあるが、古典ナワトル語による原型はモテーゥクソーマ(Motēuczōma)で、「主(tēuctli)たる神の如く、怒りに顔を顰め(mo-zōmā)威圧する者」という意味。
後述『Civ4』のモンテスマ(2世)が有名。そのため暴君のように見えるかもしれないが、実は意外と教養があり、哲学者でもあったらしい。なお『Civ5』でも続投したが、以前のシリーズと違いこちらは1世の方である。
概要(モンテスマ2世)
モンテスマ2世はアステカ帝国第9代皇帝。在位1502年-1520年。1世と対比して「若い御方」という意味のショーコヨーツィン(Xōcoyōtzin)という添え名を付けて呼ばれることもある(ちなみに1世は名前に「老いた方の」を意味するウェーウェ(Huēhue)を冠することがある。また「天空の射手」を意味するイルウィカミーナ(Ilhuicamīna)という添え名を持つ)。
アステカ帝国とは今のメキシコ中央部、北米大陸と南米大陸の接合点(中南米)に存在した一大帝国である。
特に人身御供すなわち生贄の習慣があることで知られ、これは彼らの神話の一節「太陽(神)はいずれ沈んだままになるが、新鮮な人間の心臓を捧げることでその期間を先延ばしできる」という伝承によるためである。
1519年、エルナン・コルテスらスペイン人(コンキスタドール)が中南米に上陸した際、アステカにおいてはその年に起こった天変地異からケツアルコアトル神がアステカに帰還する年とされ、そこに訪れたコルテスはケツァルコアトル神の遣いと考えられたため大いに歓待された。しかしコルテス一行は計略によりモンテスマを幽閉し、その間に帝国の有力者を逮捕したり祭礼儀式に集まった祭司を虐殺するなどして帝国の弱体化を図る。
こうした一連の事件にアステカ人(自称はメーシカ人(Mēxihcah)。語源のメーシコ(Mēxihco, 帝都ティノチティトランの別名で、語義は不明)はメキシコの語源でもある)は激怒、コルテスらスペイン人に対して暴動を起こす。この際に幽閉を解かれたモンテスマは民衆を説得しようと防壁の上に上がるも、暴徒の投石が頭を直撃し、その傷がもとで翌日に息を引き取った。またはコルテスらの謀略により暗殺されたとも伝わる。
その後アステカ人は新たな皇帝を担ぎあげ、一旦はコルテスを撃退することに成功するものの、後にコルテスらの逆襲に遭った帝国は完全に打ち負かされ、国民は猛烈な勢いで虐殺、または奴隷にされた。折しもスペイン本国から運ばれた病原菌(天然痘)が抵抗力を持たなかったアステカ人の間に蔓延したため、1,100万人いたとされる国民人口は虐殺が終わる頃にはその1割未満である 100万にも満たない数にまで激減し、モンテスマ2世の崩御から僅か1年1月でアステカ帝国は完全に消滅した。
とはいえ、モンテスマ2世は決して無能な帝だったわけでは無く、周辺諸国と盛んに外交と戦争を繰り返して帝国版図を最大にしつつ、国内では徹底的に中央集権化を推し進めて帝権強化を図った、なかなかの名君であった。
なお、彼の子女はキリスト教に改宗した上であるが高貴な子供として厚遇を受けており、スペイン貴族の家系が三家も建てられている。現在、スペイン貴族の大半がモンテスマ2世の子孫である。
Civilizationにおけるモンテスマ
Civ4
特に『Civilization4』におけるモンテスマ(通称モンちゃん)が有名なので、ここで紹介する。
『Civ4』におけるモンテスマは宗教志向・攻撃志向を持ち、どのバージョンでも一貫して「警察国家」制度を好む。
ユニークユニットはジャガー戦士(剣士の代替。資源"鉄"が不要で森林・密林に対して強くなり必要コストが35(-5)だが、通常6の攻撃力が5に減退している。)、ユニークビルドは生贄の祭壇(裁判所の代替。建設コスト-30、奴隷制の強制労働による不満ペナルティ半減。)を持つ。ぶっちゃけPCとして使うとあまり強くない。
しかしこれらは大事な要素ではなく、むしろモンテスマが有名なのはNPCが操った時である。なぜならば…
- 格上相手にも宣戦を布告したりする、異常な好戦性。
この上に後述の要因が重なり、彼の機嫌を損ねると圧倒的戦力比でない限り宣戦布告される。ことNPCのAIに設定される「戦争を布告する条件」が彼にとっては非常に緩く、そのため文字通り肩が触れる程度の事で宣戦を布告したり、最悪の場合ランダムイベントの友好度悪化でいきなり宣戦を布告したりする。そのため非戦争プレイ、または不死以降の難易度では大きな壁となる。 - 機嫌を取るのが容易でない。
上述「警察国家」は技術「ファシズム」を研究することでこの体制にできるのだが、一番危険な時代である太古~中世の技術でないため、制度による友好度ボーナスは実質ないに等しい。また異宗教に大変敏感な性格で、異教徒の多い国家に対し異常な不満を持つ。また「国境隣接」「文化圧迫」「要求拒否」「スパイ逮捕」などは開戦フラグであり、これを1つ満たすだけで開戦する場合もある。場合によっては「こんにちは、死ね!」ということも…。 - AI特有の判断能力がモンテスマに限り非常に自重しない。
最初に出会った時点で既に友好度は-1。しかも戦力で劣る相手には-3、国境を接すれば-4の友好度修正、平和志向度0、「宣戦しない」戦力比は130%、要求拒否時に60%の確率で宣戦布告、開戦時10ターンは対話拒否、態度が「満足している」にならないと防衛同盟すら結べないなど、悪夢としかいえないAI判断能力。特に戦力比劣勢相手の-3修正は同じような戦争狂であるアレクサンドロスよりもひどく、弱者には徹底的に容赦しない。 - これらのAIが難易度上昇時のAIボーナスと非常にかみ合う。
特に天帝におけるユニット生産コスト修正(通常難易度の60%)やボーナス初期保有技術(車輪農業狩猟弓術)などが合わさり、高難易度では極めて初期Rに向いた各種補正がかかる。これら修正を(ほとんどの場合)兵力に費やし、整ったとみるや隣国の中で最も弱そうな相手を血祭りに上げ、同じ大陸にいる奴を悉く叩き潰す。
特に難易度ボーナスは他のNPC指導者にも平等にかかるがPCにはかからないため、よほど扱いに長けたPCでない限り真っ先にPCに襲いかかる。彼の機嫌を取り、手綱を取ることができれば一人前の『Civ4』プレイヤーであろう。その色々な意味で自重しないAIは、そのまんまヨハネスブルグのガイドラインにできそうな勢いである。
指導者の中でも飛びぬけたファッションセンスの外見を持つため、『Civ4』プレーヤーの間では「狂犬」や「モンちゃん」などのあだ名・二つ名で親しまれている。
Civ5
『Civ5』でも続投。奇抜なファッションと、「こんにちは、死ね!」の洗礼は健在。固有ユニットが強力なズールー族のシャカ(おシャカ様)やフン族のアッティラ大王ほどの脅威はないとはいえ、出会ったときからやはり万全の対策をしておきたい相手。
今のところシリーズ皆勤というCiv界トップアイドルの貫禄である。ただし、Civilopediaによると、こちらは以前のシリーズに登場していた2世ではなく、第5代皇帝であるモンテスマ1世(在位1440–1469)。三国同盟として形成されたアステカ帝国をテノチティトラン主導の中央集権国家に組み直し、さらに周辺諸都市を制圧した偉大な覇王である。また生贄狩り「花の戦」を開始した皇帝でもあり、2世よりも『Civ4』『Civ5』の狂王イメージに近い。一方で、兄のトラカエレルやテスココ王子で大建築家のネサワルコヨトルと共同でテノチティトランの大水路・水上庭園を造営する等、内政の強化にも努めていた。
指導者特性は、敵ユニットを血祭りにあげるごとに文化力プラスの「捕虜の生贄」。固有ユニットの「ジャガー戦士」は森・ジャングルでは強くなる上に地形コストを無視して駆けまわり、敵ユニットを屠るたびに体力が回復する。…と、一見したところトンデモないキワモノ国家。さらにこの体力回復能力はジャガー戦士自体の能力ではなくジャガー戦士についてくる昇進である。これはどういうことかというと、アップグレードしても性能が引き継がれるということで、大切に使えば機械化歩兵になっても体力回復ができるということである。
しかし『Civ5』では、バージョンが進むごとに共通敵ユニットの蛮族が強化されてきたために序盤が厳しく、蛮族対策に優れるジャガー戦士を持つアステカは立ち上げ時に有利である。しかも、倒す度に文化力上昇=社会政策を他人より速く取ることができるというおまけ付き。また固有建造物「水上庭園」はただでさえ強力な水車小屋のアップグレードという超強力な建造物で、川沿いor湖畔の都市の人口をぐんぐん伸ばすことができる。
したがって、プレイヤーが使った場合、たとえ戦争をしなくても、序〜中盤にかけて手堅く素早い国力増強をできる、意外にも癖がない万能タイプの指導者になっている。初心者にもお薦め。AIが戦闘国家である一方で、文化ポイントを稼ぎやすいので文化勝利をしやすい国家でもある。君も世界にアステカ製ジーンズを履かせよう!
関連動画
関連項目
- アステカ
- メキシコ (過去にアステカ帝国が栄えていた土地)
- Civilization4
- Civilization5
- 少佐(HELLSING)
- キン肉マンマリポーサ
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