モンド映画(Mondo film)とは、映画のジャンルの一つである。
概要
由来は、グァルティエロ・ヤコペッティの映画『世界残酷物語』(1962年)。
原題は「Mondo Cane」、イタリア語で「犬の世界」を意味する。
世界各地の奇習や風俗のほか、事故・事件の衝撃映像、更には処刑の瞬間などの過激な内容が主題。これらをドキュメンタリー風に仕立て上げ、多少のやらせやフェイクを織り交ぜ、いわば「趣味の悪い見世物」として作られた映画である。
ラストではとってつけたように「世界とは悲劇なのか」的なナレーションやテロップを入れ、「本当に野蛮なのは文明人である」「自然や動物を大切にしなければならない」とそれらしい結論をつけ、ふわっと高尚な感じに持っていくのが、大体お約束である。
前述の『世界残酷物語』では「ネパールの祝祭で首を斬り落とされる家畜」「飛行機を神と崇める未開の部族」「原爆実験の影響で方向感覚を失い、海に帰れないまま死ぬウミガメ」などが描かれる。
日本も取り上げられており「ビールを飲ませ、マッサージを受けて育てられる松坂牛」「えっちなサービスでおもてなしするトルコ風呂東京の温泉」など、割とアレな扱いである。信じられない話だがこの映画、日本で公開された時には「人間の愚かさと自然の偉大さを描いた、衝撃的だが良質なドキュメンタリー」として評価されていた。
とは言え本作は世界中で大ヒットを記録。現在でもカルトムービーとして評価されているのは事実である。
この流れを受け、柳の下の2匹目のドジョウを狙った映画人が、我も我もと似たような作品を多数世に送り出した。その際に「Mondo~」とタイトルをつける事が流行し、これが「モンド映画」と称される所以である。
しかし1970年代にマンネリ化。ブームは下火となり、80年代にはあらかた駆逐されてしまった。
理由としては、海外旅行の一般化による外国の知識の変化、より刺激的な内容を目指しすぎて、そこらのスプラッター映画よりも残酷描写がひどくなった事などが挙げられる。
とは言え、モンド映画は「モキュメンタリー」の祖であるとも言え、2000年代に入ってその流れを継承した作品が復活しつつある。
代表的な作品
- 世界結婚奇習物語(1959年)
- モンド映画のハシリと呼ばれる。未開の地での「結婚」にまつわる風習がテーマ。
「宗教でキスが禁止」「子が出来ない嫁は自分の妹を差し出す」など珍妙な内容だが、バヌアツの通過儀礼「ナゴール(バンジージャンプ)」など、貴重な映像もある。 - ヨーロッパの夜(1959年)
- ヤコペッティが脚本として参加。ヨーロッパ各地のナイトクラブをテーマとしている。
豪華なショーやライブ、更にはストリップなどのいかがわしい出し物にまで及ぶ。いわゆる『夜モノ』ブームを巻き起こした。 - 世界残酷物語(1962年)
- 虚実取り交ぜた内容。ただし本作で面白おかしく取り上げられた画家、イヴ・クラインがあまりの内容にブチ切れ、心臓発作で亡くなるという事態を引き起こしている。
- さらばアフリカ(1965年)
- 植民地時代が終わり、近代化の道を歩み始めたアフリカが舞台。民族紛争、白人による搾取など。
親を殺されたシマウマの子をヘリコプターで吊るして安全な場所に移動させるカットは割と有名。 - スナッフ(1975年)
- 「本物のスナッフフィルム」という触れ込みで話題を集めて公開された作品。元はお蔵入りした低予算・低レベルのポルノを改変したスプラッター映画だった。
当時は「殺人カルト」ことチャールズ・マンソン一味の事件の記憶も新しく、本物だと信じられ、公開時には大騒動を引き起こした。 - グレートハンティング(1975年-1984年)
- 世界各地における「狩猟」のほか、動物の捕食シーンなどがテーマ。単純なテーマだけに人気があり、続編がリリースされた。
ライオンを撮影していた観光客が食い殺され、死体に群がるライオンの群れの間から足が突き出している(ように見せている)カットは衝撃を与えた。 - ジャンク 死と惨劇(1978年)
- 処刑、自殺、事故などの「死」を扱った過激な内容。ただし特撮・やらせが「多い」事は、後に監督が語っている。こちらも人気が高く、続編や類似作品が多く世に出回った。
- 食人族(1981年)
- アマゾン奥地で消息を絶った探検隊を襲った悲劇を描く。という体裁。
捜査に向かった教授が未開の部族・ヤマモモ族との接触に成功し、白骨死体の近くに落ちていたフィルムを入手。そこには、ヤマモモ族に対して蛮行を繰り返した探検隊が捕まって殺され、食べられるまでが克明に記録されていた。という体裁。
2013年に『グリーン・インフェルノ』というタイトルでリブートされている。
関連動画
やらせ・特殊撮影がほとんどとは言え、過激な内容もあるためここでは控える。
関連商品
関連項目
- 1
- 0pt