ユンガス・ロード(ユンガスの道、西語:El camino a los Yungas 英語:The Yungas Road)とは、南米のボリビアにある道路の通称。別名「死の道」(El camino de la Muerte , The Road of Death / the Death Road)。
概要
ボリビアの行政上の首都ラ・パス(海抜約3,600m)からアンデス山脈のラ・クンブレ峠(La Cumbre 海抜約4,700m)を超えて、アンデス東斜面の北ユンガス地方を一気に3,600mほど下り、ベニ川(El río Beni 、アマゾン川の支流マデイラ川の源流の一つ)上流のジャングル地帯の街コロイコ(Coroico 標高約1,500m)へと至る複数の国道を経由する幹線の一部で、65km前後の区間である。
行政首都とアマゾン川上流を結ぶ交通量の多い幹線道路なのだが、その実態は場所によっては車一台通るのがやっとの道幅しかない簡易舗装ガタガタの細道が、壁のようにほぼ垂直な斜面にへばりつくような形で延々と伸びているに過ぎない。当地方は雨や霧の発生が多くて見通しが悪い上に地盤が緩く、ガードレール敷設はおろかろくな道路整備がなされていないので、転落を含む死亡事故が後を絶たない。
そんな踏み外せば何百mもまっ逆さまに落ちて行くような断崖の上の悪路を、今日も猛スピードのトラックやバスやマウンテンバイクがすれ違っている。年平均事故数200件(1週間で約4件)、死者は年平均100人ほど(1週間で約2名)だとか。詳しくはWikipediaの「ユンガスの道」を参照。
ちなみに南ユンガス地方にも同様の道があり、そちらもかなり危険らしい。
どうしてちゃんと整備しないの?
ユンガス地方は日本の屋久島のような雲霧林地帯であり、枯れた枝葉や樹木が熱帯高地の常緑樹林特有の多湿・少日照な環境で多量の腐葉土を生み、それが何千年にも亘り積み重なって生まれた泥炭を多く含む腐植質の土壌である。泥炭は植物由来の繊維質を含むために通気性と保水性が高く、園芸用の土壌改善に使われる程。つまり地盤としては非常に脆くて風化しやすく、雨が降ればたちまち泥濘と化す、というわけだ。そもそもこの地方の急峻な崖もそうした地質が風雨に曝され続けることによって生み出されたものである。
道路の舗装というものは家屋と同様、ある程度は安定した下地が無くては成り立たない。しかしながら腐植質の土壌では下地として充分な耐久力を確保することができないので、道路を補強する為の舗装すらままならないというわけだ。ガードレールなどつけても路肩が弱くなってガードレールごと崩れ落ちてしまうだろうし、そもそもただでさえ狭い道が一層狭まってしまって寧ろ「邪魔」である。
「じゃあ道を拡げればいいんじゃん?」
うん、確かにその通り。しかしボリビアは中南米諸国の例外に漏れぬ農業中心の発展途上国である。世界の半分以上の埋蔵量が見込まれ、今後の需要拡大が期待されるレアメタルであるウユニ塩原のリチウムを掘り出す為の資本すら持ち合わせない「黄金の玉座に座る乞食」と称される現状では、とてもではないが山の斜面を掘ることにカネを回している余裕は残念ながら無い。まあこの程度の犠牲で済んでいるだけマシ、といった認識なのかもしれない。
つまり、整備しないんじゃなくて、したくてもできないのである。
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関連項目
外部リンク
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