「了解しました!散り際くらい、せいぜい派手にやりましょう!」
ライノサラスとは、ドリームキャスト専用ソフト『機動戦士ガンダム外伝 コロニーの落ちた地で…』に登場するジオン公国軍の大型試作機動兵器である。なお、ライノサラスは英語で「サイ」を意味する。
概要
『コロニーの落ちた地で…』のラスボス機体。ジオン公国軍オーストラリア方面軍の最後の砦であるヒューエンデン基地防衛に投入された。文献によっては拠点防衛用モビルアーマーと記載されている。通称スーパーザクタンク。
前線で、廃品を寄せ集めて急造された試作品であるため、詳しい性能や開発経緯などが不明で謎が多い。形式番号も不明。両腕にザクマシンガン、両肩にミサイルポッド、機体中央にバストライナー(もしくは大口径キャノン)、後方に二門のガトリング砲と、兵装がてんこ盛りとなっている。ただビーム兵器だけは入手できなかったようだ。実際、オーストラリア方面軍でビーム兵器を持っているのは、ヴィッシュ中尉のゲルググ1機だけである。後発のゲーム作品「サイドストーリーズ」では陸戦艇の熱核ホバーを流用している事が判明。作中ではダブデもギャロップも見受けられないが、小説版下巻の表紙にギャロップが映っているので、おそらくギャロップから剥ぎ取ったと推測される。ホバーで移動するが巨体さゆえ機動力はさほど高くなく、差し詰め移動砲台。その姿形からヒルドルブ・ザメルとの兄弟機ではないかと言われたり、IGLOO2話の「応急現地改良にも限度が!」というセリフはライノサラスを指しているとの推測もあるが詳細は不明。
武装にはA型とB型の2種類が存在し、2面でジオン軍への補給物資輸送を阻止したかどうかで武装が変わる。補給物資には連邦軍から奪取した対艦砲バストライナーが積載されており、阻止した場合は大口径キャノンを装備したA型が、阻止しなかった場合はバストライナーを装備したB型が出現する。ラスボスだけに火力はチートと思うくらい非常に高く、マシンガンだけでもゴリゴリ体力を削ってくるほど。特にバストライナーは直撃すれば即死する威力で、まともに撃ち合うと一方的にこちらが負けるレベル。なので僚機やオアシス(非武装の戦闘補助車両)を囮にしたり、小回りが利かない事を利用して、ぐるぐる回りながら攻撃したりするなどの工夫が必要。比較的耐久力は低いが、それでもモビルアーマーなのでMS以上の堅さを誇る。このようにトンデモ火力を有しているものの冷却機能に問題があるらしく長時間の稼働は出来ない。ゲーム中では、ヴィッシュに話しかけたパイロットの声は1人だけだったが小説版によると6人乗りのようだ。
第08MS小隊のアプサラスと名前が似ているが関係ない(ただしザクのパーツを流用している共通点はある)。また、GジェネではアプサラスⅡとⅢからライノサラスを開発できるため、関連性が増した。
作中での活躍
宇宙世紀0080年1月1日、地球連邦軍はジオン軍最後の砦であるヒューエンデン基地への攻撃を始めた。既に停戦命令が発せられていたが、オーストラリア戦線には届いておらず、両軍とも死闘を演じた。ジオン軍は連邦軍の攻勢を受け止めながら、HLVの発射準備を行う。だが遂に防衛線が破られ、先鋒のホワイトディンゴ隊が基地の中枢部分にまで進出。そこには無防備なHLV発射場があった。
もはや戦力が残っていないジオン軍は、最後の切り札を投入した。「荒野の迅雷」の異名を持つヴィッシュ・ドナヒュー中尉の駆陸戦型ゲルググと、試作大型機動兵器ライノサラスであった。前情報や伏線無しで登場するため、度肝を抜かれたプレイヤーも多いだろう。ゲーム中ではロックオンした敵モビルスーツには形式番号が表示されるがライノサラスの場合、唯一「UNKNOWN」と表示される。
陸戦型ゲルググとともにホワイトディンゴ隊を攻め立てる。先述の通りライノサラスは火力が非常に高く、そこへゲルググが加勢すれば勝ち目は無い。このためオアシスや味方機を使って分断する必要がある。加えて両腕のザクマシンガン以外の武装は破壊可能であり、弾幕をかいくぐって武装を破壊すれば勝率が高まる。最終的にはザクマシンガンしか撃てなくなるので、ここまで来れば勝ったも同然と言える。ライノサラスとゲルググを撃破すると、エンディングになる。
そして戦いが終わった直後に、停戦命令を伝えるラジオが流れ……ヒューエンデン基地は降伏した。後述のサイドストーリーズでは、炎上するライノサラスの残骸が映し出されている。だが、ジオン軍の陽動は成功。連邦軍の警戒が手薄になった大陸中央部を通り、ジオン残党がブルーム地方よりオーストラリアを脱出。被害無くアフリカ大陸へと逃げ込む事が出来たのだった。
その他のゲームでは
ギレンの野望
前線の地上軍が独自に開発した陸上用MAを正式採用する。
高い移動力を持つ拠点強襲用の機体として圧倒的な火力の実現を図る。
「ギレンの野望 ジオンの系譜」からシリーズに参戦しており、ジオン側でプレイすればライノサラスを正式採用し量産する事も可能。地上軍が独自開発したライノサラスをヴィッシュ中尉に回収させるというイベントがあり、これを実行するとライノサラスの現物が入手できる。しかしイベントの実行にはヴィッシュの存命が必須で、彼を回収に向かわせると生死不明(実質戦死)となる。一応、彼が戦死していても開発プランだけは入手可能。登場するのは全てA型である。
しかし高コストの割には、不当なくらい性能が低く設定されている。まず機動力が絶望的に低い。支援能力も登場時期が遅すぎる事から見劣りする。近接戦闘が不可能のため、敵に接近されたら成す術なく落とされる。モビルアーマーなので乗れるパイロットが限定されるのも辛い。そもそも初登場の系譜から一貫して弱体化だけを受けている理不尽な待遇。ラスボスの威光は何処に…。一応、モビルアーマーなのに何故か拠点の制圧が出来るという、唯一の強みがある。ただ、デラーズ・フリートでプレイすると地上に初期戦力として配備されており、寡兵で貧乏なデラーズ・フリートにとってありがたい存在となりうる。
ちなみにザメルの開発には、ライノサラスの開発が必須となる。先述の兄弟機説の理由の一つである。
連邦軍側でプレイした場合、アスタロス計画を放置するとジオン軍がライノサラスの量産を始める(ホワイトディンゴを使って阻止した場合は量産しなくなる)。量産が始まると、手始めにキリマンジャロ基地へライノサラス6機が投入される。
コロ落ちではライノサラスを撃破すると「敵モビルスーツ撃破!」という通信が入るがギレンの野望シリーズでは、モビルアーマーに分類されている。形状的にモビルアーマーと見て間違いないだろう。
サイドストーリーズ
「くっ! この重装甲、やすやすと抜けるものか!」
ジオンのオーストラリア方面軍が防衛用兵器として独自開発した特殊兵器。MSというよりはMAに近い巨体には、高出力のジェネレーターと、陸戦艇の熱核ホバーユニットを転用した推進器が内蔵され、その余剰出力を活かして連邦軍から奪取した高出力ビーム砲の試作品を主砲として搭載する。平地での機動性と、高火力、重装甲を誇り、独立した回転式対空機銃や、多連装ミサイルランチャーなど、過剰なまでの武装を持つ、動く要塞といった兵器になっている。しかし、現地で急造された寄せ集めの兵器のため、複数の乗員を必要とし、熱放射量が高く、感知されやすいなどの欠点を持つ。
しばらく出番が無かったライノサラスであったが、サイドストーリーズでリメイクされ再登場。原作同様にヴィッシュ中尉のゲルググとともに出現、ラスボスを務める。本作ではバストライナー装備固定のようで、A型は存在しない。戦闘中、与えたダメージの度合いによって台詞を喋り、バストライナー発射の際は専用の台詞まで用意されている。
絶え間なく機関砲で弾幕を張り、時折両肩からミサイルを放ったりバストライナーを撃ったりしてくる。弾幕の濃さは原作の比ではない。サイドストーリーズでは後方の二連装砲が機関砲に換装されており、四方八方に弾をばら撒いてくる。しかも戦艦のように武装を破壊する事が出来ず、常に激しい攻撃に曝される上、ヴィッシュ中尉のゲルググや守備隊のザクも相手にしないといけないため、初見だと思わぬ苦戦を強いられる。バストライナー砲の威力も健在で、当たれば一撃で撃墜される危険性がある。クリア条件はゲルググ、ライノサラス、HLVの破壊のため、必ず倒さなければならない。先にゲルググを撃破すると、ライノサラスパイロットが専用の台詞を言う。しかし、逆の場合は特に何もない。
重装甲だけあって硬いが、やや弱体化されており原作ほどの脅威は感じない。システムの都合、自機が破壊されても他の僚機に操作が移るため、そういう意味でも難易度が低下している。
余談だが原作版では深緑色だが、ギレンの野望及びガンダムウォー、サイドストーリーズでは黄色に塗装されている。本来は黄色だったが、塗装が間に合わなかった……のかもしれない。
小説版での設定
ライノサラスは小説版にも登場する。ヒューエンデンHLV基地に投入され、ホワイトディンゴ隊と交戦する点はゲーム版と殆ど同じだか一部設定が改変&追加されている。
戦争初期(一説によると3月18日)、オーストラリアへと降下したジオン軍は撤退する連邦軍からバストライナー砲を鹵獲した。このバストライナー砲を有効に活用するためライノサラスの開発計画が始まった。ライノサラスはバストライナーを装備し、先陣を切って敵陣地へと突撃。その大火力を以って突破口を無理やり開き、後続部隊が突入する穴を作り敵陣地を占領するというドイツ軍の突撃砲にも似た運用が想定されていた。後方に味方が控えている状況で運用するのが前提とされているため後方は完全に死角となっていた(ゲーム版では後方にも2門の機関砲が設置されている)。このような運用方法から絶大な火力を有しており、大型機銃やバルカンといった副砲ですら対モビルスーツ用として十分な脅威となった。このため小説版では制圧機動兵器という肩書きとなっている。
小説版によると、ヒューエンデン基地で試作されたとしている。原作では前線の廃品を寄せ集めて造ったが、小説版では特に言及は無い。基地内でテストを行うも、オーストラリア戦線に特化し過ぎた性能が災いして、開発順位が低かった。
バストライナーは大火力だがその分エネルギー消費も膨大なため、大型ジェネレーターを複数搭載している。しかし一度に複数のジェネレーターを稼動させると大量の熱を持つため、冷却装置も搭載しているのだが不完全で、オーバーヒートする危険性を孕んでいた。また大量の赤外線を放出し、ライノサラス自身のセンサーやレーダー機能を著しく低下させていた。ライノサラスが制式化されなかったのはこの難点があったせいと言われている。しかもセンサー類は申し訳程度しかない上、ザクの胴体部分に集中しておりセンサー密度は低いと言わざるを得なかった。重装甲、重武装を施しているがその巨体も相まって小回りも利かず、ライノサラスの死角は非常に多かった。もし本腰を入れて開発していれば、センサー周りの欠点は解決されたと言われる。ちなみにライノサラスは6人乗りで、ザクのコクピット部分に3人が搭乗するのだが元々ザクのコクピットは1人乗りなため非常に窮屈。
紆余曲折を経て、何とか完成したものの既にジオン軍が守勢に回っていたため突撃砲の役目は無く、基地内で放置されていた。月の階段作戦が水面下で進んでいた時も、巨大すぎて輸送不能という事で放置され続けた。様々な不具合が依然として残っていたせいか、機体こそ完成していたが開発中とされた。
しかし戦争末期の12月31日に連邦軍のヒューエンデン基地攻略が始まる。持てる戦力を全て投入して連邦軍を迎撃していたが、防衛線に穴を開けられる。どの戦線も余裕が無い中、アリソン大尉の鶴の一声が司令部に響く。ライノサラスを投入しようと言うのである。冷却装置に爆弾を抱えているとして反対する意見もあったが、「今日動けば、明日動く必要は無い」と強行。宇宙へ打ち上げるHLVを死守するべく、持て余していたライノサラスの投入が決まる。ドナヒュー隊から分離したグフ6機の後続に据えられた。テストパイロットを務めた兵員が、そのまま正規パイロットとして操縦している。ライノサラスのデータを見たユライア・ヒープ中佐は「まるで旧世紀の海軍にあった戦艦」と評した。
交戦の末、ホワイトディンゴは前面のグフ隊を撃破し、奥深くにまで侵攻。ついにホワイトディンゴと対峙する。その見た目から移動要塞と比喩され、ホワイトディンゴから敵の切り札だと思われた。ところがオアシスからの光学センサー画像により激しく赤外線を放射している事がばれ、試作兵器だと見抜かれてしまう。とはいえ見た目の強大さから、ホワイトディンゴの面々に恐竜のような力強さを感じさせている。
火力では圧倒的にライノサラスが優勢で、バストライナー砲の破壊力にホワイトディンゴの面々も焦燥する。しかしオアシスによって冷却装置の弱点を見抜かれ、また優勢な火力を発揮されないよう各機が分散して回り込みながら攻撃を加えてくる。随伴機がおらず、小回りの利かないライノサラスは一気に不利となり、敵機に背後を取られないようにするだけで一杯になってしまう。それでもパイロットは必死に機体を操縦、レイヤー中尉にして「思ったより軽快に動く」と言わしめる。ライノサラス側はレイヤー機のビームライフルを警戒し、射撃の機会を与えないよう撃ち続ける。武装が規格外に大きいライノサラスは副砲ですら高威力だったが、敵の連携に翻弄され続け、上手く性能を発揮できずにいた。
そしてホワイトディンゴに対しバストライナー砲を放つ。一瞬、全ての電源が途絶えて真っ暗になるが、およそ三秒ほどで回復する。しかしバストライナーを撃った弊害で主砲塔のモニターが焼き切れて使用不能と化す。その直後にジェネレーター異常を訴える。間髪入れずに機関室から放たれたプラズマでパイロットが全員死亡し、あっけない最期となった。が、ゲーム版ではバストライナー砲を何発も撃ってくる。
今際に放ったバストライナーは、レイヤー機をかすめただけで命中には至らなかった。しかし、命中しなかったにも関わらずシールドは「目玉焼きが出来るほど」と形容されるほど熱を持っていた。もし直撃していれば、ヒューエンデン攻防戦に大きな影響を与えていたと思われる。ライノサラス撃破後、周囲にジオン軍部隊は認められなかった。「みんな、この化け物(ライノサラス)に期待していた」とレイヤーは評した。
余談だが、小説版ではヴィッシュ中尉のゲルググとタッグを組んでいない。
その他の作品では
新作漫画「機動戦士ガンダム外伝 ザ・ブルー・ディスティニー」にて再登場を果たす。ライノサラスはオーストラリア方面軍が独自に開発したモビルアーマーだったが、本作では開発データが共有されており、北米方面軍が製造。模擬戦を行っていたモルモット小隊に強襲を仕掛けた。しかし相手が悪かった。ユウの駆るブルーディスティニー1号機によって、あっという間に撃墜されるという酷い役回りとなってしまった。
漫画「ガンダムEXA VS」にも登場。本作では、ホワイトディンゴ隊に撃墜されたライノサラスを回収して再生した事になっており、ヒューエンデン基地に現れた機体と同一である。ザク・デザートタイプやグフ重装型等とともにトリントン基地を襲撃し、再びホワイトディンゴ隊と交戦する。
Gジェネシリーズにも参戦。ヒルドルブやザメル、アプサラスシリーズから派生可能で、最終的にはシャンブロに進化するという可能性の獣。序盤から開発でき、しかもそこそこの性能を誇る事から十分起用の余地がある。ギレンの野望とは大違いだ。システムの都合上、パイロットは一人で済むので安心しよう。GジェネレーションFでは、登場時に専用のムービーが流れるという高待遇を受けている。追い詰められたジオン軍は、格納庫で眠っていたライノサラスを発進させる決意をする。サイレンが鳴り響く中、開いたハッチに向かってホバー移動していくライノサラス……という具合である。
関連動画
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