ラファイエット級フリゲートとは、フランス海軍が運用しているフリゲートである。
概要
本級の最大の特徴はステルス性に最大の配慮がなされていることである。
1996年から2001年にかけて5隻が建造されフランス海軍で運用されているが派生型15隻が台湾(中華民国)、サウジアラビア、シンガポールで運用されている。
なお、フランス海軍では2030年代により多用途に運用できるアミラル・ロナルク級フリゲートによって更新される予定になる。
船体
前述の通り、本級の特徴はステルス性に最大の配慮がなされているので船体は以下の特徴を持つ。
- 船体と一体化した艦上構造物+ブルワーク(波除け)のない艦首
- 艦上構造物の側面は傾斜10度+艦載艇は全て艦内収納
- 船体の表面は複合材(ガラス繊維強化プラスチックX2の間にバルサ材=木材と推定されている)
この結果、全長124.2m、満載排水量3600tの規模にもかかわらずレーダースクリーンには7分の1程度の艦船にしか映らないと言われている。
一方、推進方式はCODAD方式=ディーゼルエンジンx4を採用しており、最大速力25kt、巡航速度15ktで7000海里となる。
ディーゼルエンジンは振動・雑音が多いことで知られており、潜水艦に探知されやすいという懸念があるがエンジンと船体の間には防振台が備えられているなどの対策をとっている。
兵装
本級は100㎜砲x1、クロタル艦対空ミサイル8連装発射機[1]、エグゾゼ対艦ミサイル4連装2基、近接戦闘用に20㎜機関砲2基とヘリコプター1機搭載と一通りの能力を備えているが一つだけ欠落している兵装がある。
それは対潜装備である。即ちアスロックどころか欧米標準の324㎜3連装魚雷発射管、果てはソナーまで積んでおらず、潜水艦を相手にした場合は艦載機を除くと対魚雷用のデコイしかない=潜水艦自体には対応できない欠点がある。
何故かというと本級の主任務は自国の海外領土及び同盟国=欧州連合の警備と防衛である。即ち警備地域で紛争等の緊急事態が発生した場合、先遣隊として出動し牽制や場合によっては搭載火器で実力行使を行う=砲艦外交用の軍艦なのである。
但し2020年代になって延命改修措置が実施されその内3隻がクロタルをミストラル近距離艦対空ミサイル6連装発射機2基に換装、ソナーの追加が実施される。
乗員
本級の乗員は152名だがこれとは別に25人の便乗者を搭乗させることができる。この25名はフランス海軍コマンド=特殊部隊である。
即ち、艦載機ないし艦載艇、もしくは自力(遠泳または潜水)で目標に接近して作戦を遂行し、場合によっては本級が搭載兵装で援護するというのが前述の任務の一つである。この能力は前級のフロレアル級フリゲートから引き継いだものである。
派生型
これらは多くの相違があるが概ね共通しているのは艦載機に加え固定対潜装備が増設されている、主砲が76㎜砲に変更されていることである。
康定級フリゲート
1992年から1998年にかけて6隻が建造・就役が行われた台湾仕様。原型との相違は以下の通り。
- ソナー(艦首固定+曳航式)+ヘリ甲板の両舷に3連装324㎜魚雷発射管を装備。
- 主砲と艦橋の間にシーチャパラル艦対空ミサイル4連装発射機を配置(後述)
- 対艦ミサイルは台湾国産の雄風2を採用。
- ヘリ格納庫入口両舷に対水上近接戦用の40㎜機関砲、その真中=入口屋根にファランクス配置。
- マストの装備レーダー、アンテナを前後逆に入れ替え。
- 固定乗員が176人に増加。
この結果、原型より用途が広がった反面、本級の売りであるステルス性が低下するなどワケあり艦になってしまった。
どうしてこうなった
理由は国際関係である。
台湾は1980年代から海軍の近代化計画『光華計画』を進め、3000t級(対空)ミサイル駆逐艦と1500t級フリゲートの2本立てとし、ドイツ、フランス、韓国からフリゲートを輸入+ライセンス生産で賄おうとしたが大陸=中国との関係悪化を恐れたドイツ、韓国は手を引いた。フランスも1990年1月に政府側が撤回を発表したが軍需産業側からの要望が大きく、7か月後に改めて輸出6隻+ライセンス生産10隻の許可を出した。
ところがフランス側は台湾の足元を見てライセンス生産料を吊り上げるだけでなく各種装備品の売却代も上げてきた結果6隻の代金は2倍以上に高騰、更に建造代の一部が政界にリベートされている汚職疑惑=ラファイエット事件に発展することになった[2]。
このあおりを受けて台湾はライセンス生産を諦めフランスで建造した6隻を搭載兵装なしで台湾に回航し自前で調達できる兵装を搭載することになった。
配備後
こうして紆余曲折を経て形になった康定級フリゲートだが前述の通りワケあり艦となっている。
- 76㎜砲、40㎜機関砲はステルス化されてない従来型の砲塔+魚雷発射管は甲板にむき出しで配置
=ステルス性が低下 - シーチャパラルは射程5㎞弱と射程が短い上、旧型の赤外線誘導方式のため熱源を探知できないと反応しない=役立たずになる
- 搭載している戦術情報処理システムは原型と同様だが其の1世代前のシステムが人民解放軍が運用し派生型を使っている=手の内が分かっていて有事の際、容易にハッキングされる危険性がある
という具合に問題のある艦ではあるが貴重な台湾海軍の戦力として現在6隻が活動し、以下のアップデートが計画・実行されている。
SAMの更新計画 | 国産AAM『天剣2』を艦載化してシーチャパラルから換装する案。 当初は垂直発射式にする予定だったが予算の都合で対艦ミサイル と同様に両舷に連装発射機を固定する方式になる模様。 |
主砲のステルス化 | 2014年に1隻が台湾独自設計のステルス砲塔に換装したが2017年 に製造元のイタリア・オートメラーラ社から正規のステルス砲塔を 輸入し順次換装している。 |
アル・リヤド級フリゲート
1999年から2004年にかけて3隻が建造されたサウジアラビア仕様。産油国でもあり、対中関係も気にしなくていいので康定級より後述の対潜装備を除くと高度な内容となっている。
- 艦対空ミサイルは主砲と艦橋の間に配置されたVLS16セルに装備されたアスター15(射程30㎞)を使用。
- 煙突を後部に一本化しマストは3本に増強。
- 対潜兵器として艦尾固定の533㎜長魚雷発射管x2を装備。使用する有線式誘導魚雷は射程20㎞+最速40ktを発揮。
- 全長133m、満載排水量4650t、乗員180人と肥大化するもエンジン出力は強化されているので最速は25kt維持。
フォーミダブル級フリゲート
2002年から2009年にかけて6隻が建造・配備が行われたシンガポール仕様。原型開発から10年近く経ったこともあり、新技術などで能力がさらに向上した。
- 艦対空ミサイルはアル・リヤド級同様アスターをVLSで運用するが15に加え最大射程120㎞の30を装備。
- 対潜装備は艦内格納式3連装短魚雷発射管+曳航ソナー。
- 対艦ミサイルはハープーンを採用。
- 水上近接戦闘用にイスラエル製25㎜RWS×2+シンガポール国産12.7㎜機銃×4搭載。
- ヘラクレス多機能レーダー(経空脅威探知距離200㎞~20㎞程度)を艦橋上部に搭載。
- 全長114.8m、満載排水量3800t、固定乗員85名と小型化されたが最速は31ktに向上。
関連動画
- 康定級フリゲート
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関連項目
脚注
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