ワニ肉では、世界各地で爬虫類の「ワニ」(alligator)を食する習慣や肉そのものについて解説する。
日本の中国地方の一部で「ワニ」と呼ばれて親しまれる、サメ(shark)を調理したものについては「ワニ料理」を参照。
概要
英語圏ではもっぱらアリゲーター・ミート(alligator meat)と称され、しっぽに近い部位がテールミートとして最も好まれる。ワニの生息域であるアメリカ南部から南米の北部にかけて、および東南アジアからオーストラリア北部、アフリカの一部などで養殖されている。豪州・アフリカのサファリなどではジビエ(狩猟で得た肉料理)としても盛んである。
代用食として優秀で、鶏肉・豚肉・仔牛肉および魚肉のかわりに使用可能である。実際にヨーロッパでは狂牛病流行時に多く輸入されたようだ。
国外からの持ち込みはビーフジャーキーなどと同じくワシントン条約にひっかかる可能性が高いので控えたほうが良い。許可を得て輸入されたワニ肉や国内で養殖したワニを食べるほうのがよい。日本でもamazonなどのWebサイトで取り扱われていたり、大きな食糧販売店でまれに置かれていることがある。また、一部の店では輸入されたワニ肉でのワニ料理がふるまわれている。
冷凍しておけば3か月ほど持つ…らしい。
で、味は?
ワニ肉自体はマイナーな存在であるが、「獰猛なイメージからは意外に思われるほどあっさり」というのは知識として意外と知られているような気がする。
この知識は一般的にワニ肉料理として最も提供されるしっぽ(アリゲーターテール)の肉の特徴であり、つまりもっともヒトの口に合う部分であるともいえる。白身の肉と意外とマイルドな味からたしかに鶏肉を思わせる。鶏肉に似た味と評されることが多いが「豚の食感と鶏の味」「鶏と豚の中間の味」「豚の食感で鶏と魚の中間の味」「仔牛の食感」「鶏とウサギの中間の味」「鶏の味にフグやヒラメを混ぜた食感」などさまざまな表現がなされる。さっぱりした味に合わせた濃い目の味付けを成されることが多い。
一方でしっぽ以外の胴・脚の部分(リブとナゲット)はより濃い味がして、こちらは豚肉に近い触感とされる。脚の肉はカエルの脚と似た味とされる。カエルもまた鶏肉に似てるとか言われてるしやっぱり鶏ではないか。
調理法
焼く・揚げる・煮込む…など他の肉と同様の調理法ができる。ステーキ、ハンバーガー、ナゲット、スープ・シチュー・ジャンバラヤなどにする。生肉食はできない。
栄養
低脂肪・低カロリー・低コレステロール・低炭水化物で高たんぱく・高鉄分・DHAやEPAを含む食材であり健康食として注目されている。食物繊維も豊富。英語圏ではアリゲーターとクロコダイルを区別する(そしてよく混同される)が、肉としてはほとんど同じでありクロコダイルのほうがややナトリウム分の含有量が多い程度だそう。
各地域のワニ肉
アメリカ大陸
北米ではミシシッピーワニが分布している。中南米でみられるカイマン属はワニとしてはやや小さいため収益性が低いが、南米ではメガネカイマンの養殖がおこなわれている。
アメリカ南部の多くの先住民族は数千年間ワニを主食としてきた。アメリカアリゲーター(ミシシッピーワニ)は19世紀から革として使われるようになり、20世紀に入ると乱獲が進んで1950年ごろからはめっきりワニの生息数が減った。1960年代から70年代の禁猟を経て現在供給は安定しており、年間数十万頭が収穫される。ワニ革を生産する際に当然ワニ肉も供出されるため、ヒトの口に合うワニ肉は廃棄されずに食材として利用されてきた。
ルイジアナ州・フロリダ州・ジョージア州などのアメリカ南部の各地では比較的ありふれたものだが、北部ではなじみがない。ワニ狩猟はルイジアナ・フロリダ・ジョージア・アーカンソー・サウスカロライナ・テキサスの各州のみで合法である。アメリカ国内でも各地のワニ農場で養殖したものが合法だが、おおむねオーストラリア・ニュージーランドとアフリカ諸国からの輸入が多数を占めている。ワニ肉はワニ農場や専門食料品店で買い求めることができる。
アメリカ南部ではフランスクレオールのケイジャン料理の一部としてワニは取り扱われる。ガンボと呼ばれる料理は肉と野菜の入ったスープないしシチューであるが、ワニ肉を使うこともある。
アジア・オセアニア
東南アジアのタイ・フィリピン・ベトナム・シンガポール・パプアニューギニアなどでは沿岸部に生息するイリエワニや、内水に生息するシャムワニの肉を使う。シャムワニは抗体を持っているため家畜伝染病がないらしい。もっぱらワニ肉は高級食とみなされる。
1989年、プロ野球球団のヤクルトスワローズに入団してきた助っ人ラリー・パリッシュの好物がワニ肉だということが話題となり、有楽町阪急ではそれに乗っかってワニ肉を販売していた。パリッシュはワニ肉の本場・フロリダ州出身であった。
2003年ごろから静岡県湖西市でワニの養殖が行われており、近隣の浜松市でワニ料理を出す店もあったが2014年ごろにワニ養殖は廃業してしまったようだ。
2005年、愛知万博のオーストラリア館で揚げたパンにワニ肉をはさんだ「ワニロール」(1100円)が人気を博し、多い日には1日1000食を販売し、累計で10万食を売り上げたという。
2017年に大阪府豊中市では「マチカネミート」と称したワニ肉を新名物として打ち出した。市内では「マチカネワニ」の化石が1964年に発掘されており、それにのっかった数店が協力しタイから仕入れたワニ肉を使った料理を振舞っている。
ワニ肉はMEGAドンキホーテなどで手に入れられることがあるらしい。グラム400円程度で。
静岡県の動物園「iZoo」ではシャムワニの料理が食べられる。
- 中国 ヨウスコウアリゲーター(揚子江ワニ、近絶滅種)が生息しており、その肉は姿煮などにする。明時代の医術書によると、当時の結婚披露宴において豪華さの象徴としてワニ料理が用意されたという。伝統的中国医学では、ワニ肉は風邪の治療やがん予防に効果があると信じられている。
- シンガポールではサテー(焼き鳥)の屋台の一部にワニがあるらしい。
- ベトナムでは他の肉より安く、より簡単に調達できるという。
- オーストラリアは北部海岸が生息域。現地でのワニ肉は日本で言うイノシシ肉くらいの珍しさらしい。先住民のアボリジニが伝統料理としている。サファリなどでジビエ料理として楽しめるところもある。高級食材。
- サモアでも家庭料理として親しまれる。
アフリカ
サハラ砂漠以外の地域にナイルワニが分布しており、伝統的な料理にワニ肉が使われているほか、国立公園のレストランやサファリ等などで観光客向けにワニ料理が供されている。
ヨーロッパ
ヨーロッパにはワニが生息していないため主にオーストラリアからの輸入でワニ肉を揃えている。2003年ごろ狂牛病が流行したころに、牛肉の代替食としてヨーロッパで多く出回った。
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関連項目
参考文献
読売新聞
朝日新聞
- 1989.2/24 西サモア文相ら、儀式ばらずに草の根交流 弔問外交 東京 東京1朝
- 2003.9/20 小池勝弘さん 今夏からワニの養殖(人ひとしずおか)/静岡 静岡2朝p026
- 2017.6/30 豊中発、ワニ肉を新名物に 市内8店、スタンプラリー企画 /大阪府 大阪市内1 朝 p31
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