ヴィクトリー・ドラゴンは、遊戯王OCGに登場するカードのひとつである。
概要
2003年4月に、週刊少年ジャンプにて実施された応募全員サービスのパック「LIMITED EDITION 5」の海馬パックで初登場。効果は以下の通り。
効果モンスター(禁止カード) 星8/闇属性/ドラゴン族/攻2400/守3000 このカードは特殊召喚できない。 自分フィールド上のドラゴン族モンスター3体を 生け贄にして生け贄召喚しなければならない。 このカードの直接攻撃によって相手ライフを0にした場合、 このカードのコントローラーはマッチに勝利する。※遊戯王カードWiki より引用
このカードの直接攻撃でデュエルに勝利すれば、マッチにも勝利できるという珍しい効果を持つ。
フリーデュエルなどでシングル戦を行う、マッチ戦をあまりしない人にはなじみが薄く、またそのようなデュエルではただ出しにくいだけのモンスターに過ぎない。このカードの真価は公式大会のマッチ戦ルールにおいて発揮される。
マッチ戦は要するに3回勝負で、勝ち数の多いほうが最終的な勝者となるものである。マッチの中には3回のデュエルがあり、各デュエルの間にはサイドデッキと呼ばれるカードの集まり(0~15枚、あらかじめ用意しておく)とデュエルで使用するメインデッキ、エクストラデッキのカードを入れ替えることができる。これによって、相手のデッキに合わせてカードを入れ替えたり、工夫すればほとんど別の戦術を取るデッキに切り替えたりすることもできる。
このカードはそんなマッチ戦のルールを吹き飛ばすものであり、サイドデッキによる対策を不可能とする。サイドデッキが無意味なものとなり、メインデッキでこのカードの対策を取る必要が出てくる。特定のデッキにはよい対策となる(刺さる)が、その他のデッキとのデュエルでは無意味というカードの場合、サイドデッキに入れておくのが一般的だが、それが不可能となる。
とはいえ、登場当初は、種族を指定された生け贄(リリース)の確保、相手フィールド上モンスターをあらかじめ排除する必要があること、このカードでとどめを刺せるようにライフを調整する必要があることなど、実際にマッチ勝利を狙うのは厳しいものがあった。リリースなどで相当カードを消費してしまうため、このカードを破壊されると後がないということになりやすい。
攻撃力もレベル5・6の上級モンスター級で、3体のリリースを必要とする割には物足りなく、不安定であった。
そのようなことから、決まれば強力だが簡単には決められないロマンの塊とみなされた。
しかし、効果自体は魅力的なのだから研究はされる。
ループによってフィールドを充実させリリースするモンスターを揃え、ワンターンでマッチキルを行えるデッキや、さまざまな魔法・罠を駆使して、相手の行動を封じつつ、自分は着々とマッチキルの準備を進めるデッキ、「八汰烏」などを利用して相手の行動を完全に封殺した上でこのカードでマッチキルを行うデッキなど、このカードを有効に活用したさまざまなデッキが生み出された。
このカードはプレイヤーに完全なる勝利をもたらす、ヴィクトリー(Victory:勝利)の名に相応しいカードとなった。
さらに「龍の鏡」の登場により、墓地融合で「F・G・D」を融合召喚し「次元融合」で融合素材を呼び戻してこのカードを召喚できるようになり、ドラゴン族デッキにおいてもこのカードが活躍できるようになった。
マッチキルという特異な効果の故に、2006年3月1日に、デッキに一枚も入れられない「禁止カード」にいきなり指定される。同年9月1日に一度、デッキに一枚だけ入れられる「制限カード」になるが、翌年3月1日には再び禁止カードに戻り、現在までずっと禁止状態である。
現在はノーリミットデュエルのような禁止カードも使用可能な(リミットレギュレーションを無視できる)ルールも存在するため、そちらであればこのカードも使用可能。マッチキル系のカードでは唯一、「公式デュエル使用不可」という旨の表記がないため、ノーリミットデュエルで使用できるマッチキルモンスターはこのカードだけ。
もっとも、ノーリミットデュエルには店舗独自の制限が課せられることもあるので、それには従わなければならない。
現在では手札から妨害可能な「エフェクト・ヴェーラー」など、対策となるカードは増えたものの、このカードを召喚しやすくする手段のほうもかなり増えているため、制限緩和ということは望みにくい。
当初は「スキルドレイン」がある状態でこのカードの直接攻撃でデュエルに勝利しても、マッチに勝利することはできない裁定で、一時期調整中扱いにされたことがあったが、2014年に発行されたパーフェクトルールブックでは「マッチキルは効果外テキスト」という扱いとなったことにより、マッチキル効果を無効にされることはなくなった。
後に大会賞品として、このカードと同じくマッチ勝利の効果を持つカードが何枚か登場しているが、それらはすべて公式デュエルでは使用できないカードとされている。
2004年12月9日に発売された「ストラクチャーデッキ -デラックスセット- Volume.2」に再録されていたが、現在は絶版である。
サレンダーの話
→「サレンダー」も参照。
余談だが、このカードのマッチ勝利を避けるためにサレンダー(自ら負けを認める)をしようとした場合、ルール上相手は拒否することが可能。それでもサレンダーしたければ、マッチを丸ごと放棄しなければならない。当然、あまり好ましい行為ではない。
一応、故意にルール違反(デッキの山を崩すなど)をすることで罰則「デュエルの敗北」を受けて事実上のサレンダーを行うという方法もないわけではないが、大会罰則規定上、故意のルール違反はより重い罰(受賞資格を失う失格)を受けることになるし、そもそもマナーとしてもよろしくはない。
ただ、このカードの効果を確実に発揮しようとすると、相手の行動を強く制限してそのうえでいかに直接攻撃を決めるかということになってしまう。もちろん、そういったデッキ構築を考えるというのも1つの楽しみではあるのだが、デュエルをする相手からすると何もさせてもらえないというのは非常につまらないものである。
マッチによる3回勝負というルールすら崩されてしまうので、本当にただ向かいに座っているだけで終わりということすら起こりうる。
そのような状況であれば、多少ルール違反してでもサレンダーしたいというのはデュエリスト(プレイヤー)としては当然の感情だろう。
そういった感情も汲んだのか、公認大会において、このカードに絡んだ故意のルール違反に対して「デュエルの敗北」が適用された事例が存在する。しかし、これを認めてしまうとこのカードの存在意義がなくなってしまい、ルール違反を助長するような裁定となることから、物議をかもした。いくら嫌がられるプレイングでも、公式が認めて出したものであり、ルールの範囲内であることには違いない。
このカードが禁止となった背景には、このようなトラブルを引き起こす原因となるカードであったということもあるのかもしれない。
その他の作品において
アニメでは何度か登場人物たちが所有しているのが確認できるシーンがある。しかし、デュエル内で使用されているシーンは一度もない。そもそも、原作・アニメ内でマッチ戦のデュエルが行われる描写が一度もなく、原作・アニメ内の大会もすべてシングル戦なので、向こうの世界でのこのカードの活躍はないだろう。
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関連項目
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