ヴェクサシオンはフランスの作曲家、エリック・サティによるピアノのための器楽曲である。
概要
エリック・サティ(1866年5月17日~1925年7月1日)はフランスの作曲家であり、ドビュッシーやラヴェルなど印象派の作曲家と同時期に活躍し、ピカソやジャン・コクトーと交流を持った。コクトーのバレエに曲の提供を行っている。生前は一般聴衆に理解される事が少なかったが、ドビュッシーやラヴェルが影響を受けたと公言しており、近代クラッシック音楽の伝統に扉を開いた変革者・前衛芸術家である。
サティは、私生活でも神秘主義に傾倒するなど奇異な行動が見られ、それは作風や曲のタイトルにも見受けられる。「君が欲しい」など優雅で分かりやすい曲がある一方、「冷たい小品」「梨の形をした3つの小品」など、タイトルが理解しがたい作品も少なくない。
ヴェクサシオンは彼の死後、弟子であったロベール・キャビーによって発見された。作品は「主題-和声づけ1-主題-和声づけ2」という構成になっており、1分程度の曲を繰り返す。楽譜には以下のように記されている。
「このモチーフを連続して840回繰り返し演奏するためには、
大きな静寂の中で、真剣に身動きしないことを、
あらかじめ心構えしておくべきであろう。」
この事から840回繰り返すことが作曲者の指示であると考えられているが、楽譜に明確な繰り返し符号が無いことから、サティ流のジョークと考える見方もある。繰り返し聞くと何が見えてくるのか、は、実際に体験したほうが早い。
なお、ヴェクサシオン(Vexations)とはフランス語で「嫌がらせ」あるいは「癪の虫」というような意味である。
現在では、奇異なタイトルや、「ギネスブックに載る世界最長の曲」としての知名度の方が高い。840回をきちんと繰り返した「初演」はジョン・ケージらによって1963年に行われ、演奏時間は18時間40分であった。日本の初演は1967年。近年でもテレビ番組(トリビアの泉)の企画で行われ、演奏時間は18時間18分であった。
CDで発売されているが、主題を数回繰り返して終わり、となっている場合が多く、CDの特性を生かし、「あとは各自連続再生してください」となっている。廃盤となっているようだが、ヴェクサシオンのみを収録したCDも存在した。
また、サティの楽譜の版権がきれているため、MIDIデータ化して公開されていることもある。
関連動画
関連商品
関連項目
- 2
- 0pt