中崎の21球とは、2016年10月27日の広島東洋カープ×北海道日本ハムファイターズの日本シリーズ第5戦で行われた投球である。○○の21球で有名なのが1979年の『江夏の21球』であり、同じ広島東洋カープの日本シリーズで起きた出来事である。それに派生した言葉である。
9回表まで
広島2勝、日本ハム2勝の状態で行われた第5戦が札幌ドームで行われた。ここまでの4戦はいずれもホームチームが勝利する『内弁慶シリーズ』であり、2003年の再来か、それとも広島が32年ぶりの日本一に王手を決めるのか注目されていた。
広島はクリス・ジョンソン、日本ハムは加藤貴之の両先発でプレイボールとなった。
1回表、二死一、三塁より鈴木誠也のセンター前タイムリーヒットで広島が1点を先制した。
2回表、小窪哲也の四球の後、下水流昴の打球は右中間へのあわやホームランというあたりであり、リプレイ映像検証の結果フェンス直撃の二塁打となった。この後一死満塁になったところで、栗山英樹監督はスパッと加藤を諦めてルイス・メンドーサを2番手として登板させる。結局メンドーサは後続を抑え、広島は追加点の絶好機を逃し、メンドーサは広島打線に対し、5回2/3を投げ、被安打1、奪三振5、四死球1、失点0というほぼ完璧な内容で広島打線を封じ込めた。
一方日本ハム打線はジョンソンの前に6回まで4安打を放ち、3度スコアリングポジションにランナーを置くも決定機を掴めずにいた。
7回裏、広島は好投のジョンソンを降板させ、2番手に今村猛がマウンドに登った。しかし、先頭打者の田中賢介に簡単に四球を与えると、次の打者・市川友也には初球で犠打を決められ、9番打者・中島卓也に対しても甘い球をレフト前へ簡単に運ばれてしまった。打順はトップに帰り、岡大海にフォークボールをセンターに弾き返され、犠牲フライで同点に追いつかれてしまった。
この後も両軍は決定打を決められないまま、9回裏を迎えた………。
ここで広島・緒方孝市監督は守護神・中崎翔太をマウンドへと送った。
ニコニコ生放送の【TV実況】プロ野球 日本シリーズ「広島東洋カープvs北海道日本ハムファイターズ」5戦目で試合を見ていた元ロッテ・中日の愛甲猛氏は「9回に中崎が出るとこれはサヨナラあるな……」と呟いた。
日本ハムがサヨナラで王手を決めるのか?広島が9回裏を抑えて延長戦に持ち込むのか?全ては中崎の投球にかかっていた。
9回裏の日本ハムの攻撃、途中出場の陽岱鋼が先頭バッターとして打席に入った………。
中崎の21球詳細説明
今回は5×5の25マスの表で表現する。うち、中の3×3はストライクゾーンである。
1~6球目
無死走者なし
中崎翔太 | |||||
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⑤ | ④ | ||||
②③ | |||||
⑥ | |||||
① | |||||
6番・陽岱鋼 |
1・2・4球目はスライダー、3・5球目はストレート、6球目はシュートを使った。陽はレフトフライに倒れて一死。
7~14球目
一死走者なし
中崎翔太 | |||||
---|---|---|---|---|---|
③ | |||||
⑦ | |||||
⑤ | ⑥ | ||||
② | ④ | ||||
①⑧ | |||||
7番・田中賢介 |
田中賢介には全て直球で対応した。中には惜しい球もあったが、球審の右手は上がらず、田中賢介も巧くカットしてファールにし、低めに外れた8球目で四球を選んで一死一塁となった。
15球目
一死1塁
中崎翔太 | |||||
---|---|---|---|---|---|
① | |||||
8番・市川友也 |
この日1打数ノーヒットの市川。しかし内角高めの130km/hのスライダーを簡単にバントを決められてしまい、二死二塁となり、日本ハムはサヨナラのチャンスとなった。尚、市川はこの打席のバントにより3打席連続投犠打と記録された。
16~18球目
二死2塁
中崎翔太 | |||||
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① | |||||
③ | ② | ||||
9番・中島卓也 |
1・3球目はストレート、2球目はスライダーだった。中島卓也は3球目の内角高めのボール球を打ち返すとボテボテのピッチャーゴロだった………、しかし中島の俊足が上回り、間一髪でセーフとなった。状況は二死一、三塁へと変わった。
19球目
二死1,3塁
中崎翔太 | |||||
---|---|---|---|---|---|
① | |||||
1番・岡大海 |
それは初球だった。一塁ランナーの中島がスタートしキャッチャー・石原慶幸が二塁へ送球しようとしたが、141km/hのストレートは岡大海の左脇腹から左太腿のあたりに当たった。死球となって二死満塁に。両軍ベンチがグラウンドへ出て、札幌ドーム内は一触即発の雰囲気となった。
20・21球目
二死満塁
中崎翔太 | |||||
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② | |||||
① | |||||
2番・西川遥輝 |
打席には日本シリーズ20打数2安打、打率.100で1盗塁と絶不調の西川遥輝。
1球目はストライクととられてもおかしくない136km/hのスライダーだった。
そして西川への第21球目は、149km/hの内角高めの甘い球だった。西川はこれを逃さずにライトスタンドへ叩き込む。サヨナラ満塁ホームランだった。ちなみに日本シリーズでのサヨナラ満塁ホームランは1992年のヤクルトスワローズ×西武ライオンズの第1戦でヤクルト・杉浦享が西武・鹿取義隆から放った代打サヨナラ満塁ホームラン以来24年ぶりの出来事であった。
こうして広島OB・前田智徳氏が地上波で悲痛の叫びをあげるなか、日本ハムは3勝2敗で日本一に王手を決め、広島へと向かった。
スコア
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
広島 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
日本ハム | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 4x | 5 |
その後
2016年10月29日に日本シリーズ第6戦が行われた。8回表まで4対4の接戦を繰り広げるも、8回表に6試合連続で登板させられていた広島東洋カープのジェイ・ジャクソンが連続でヒットを打たれ、満塁時に見せ大谷をされた結果、中田翔を四球で押出してしまい、更にはピッチャーであるアンソニー・バースにヒットを打たれ、挙句にはブランドン・レアードに満塁ホームランを打たれ、そのまま日ハムの日本一が決まった。中崎はブルペンで準備をしていたが、結局登板する事はなかった。
奇しくも決勝点となった中田翔への四球が決まったのは中崎が満塁ホームランを打たれた時と同じ21球目であった。
さらにその後
2018年、セントラル・リーグ3連覇を果たした広島は2年ぶりの日本シリーズに進出。ここまで2試合に登板し2イニング無失点の中崎は、1勝2敗1分で迎えた第5戦の9回裏途中から登板。アウト2つを取ると、そのまま10回にも続投する。しかし先頭の柳田悠岐にサヨナラソロ本塁打を浴び、中崎は3年ぶり2回目となる「日本シリーズ第5戦でサヨナラ本塁打を打たれた敗戦投手」になってしまった。これで1勝3敗1分と後がなくなった広島は第6戦を2-0で落とし、34年ぶりの日本一を逃した。
関連動画
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関連項目
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