概要
野球のルール上、攻撃側はまだ試合に出ていない控え選手と現在の打者を交代できる。これを利用し、打撃の苦手な現打者と打撃の得意な控え選手を交代し、攻撃力を高めるのが代打である。
- 代打で出場した選手は退いた選手の打順・守備位置を引き継いで試合に残る。
- 代打で出た選手にすぐさま代打を出すことも可能である(代打の代打)左投手に強い右の代打を出したら右投手に代えられたので、今度は左の代打を出す、というケース(あるいはその逆)が多い。ちなみに投手は原則として打者一人を処理するまで交代が許されないので、上記のケースで出場した左の代打に対して左投手を登板させることはできない。
- 指名打者の一打席目には代打を送れない。指名打者は強打者であることが多いのであまり問題になることはないが、予告先発制度のなかった時代には偵察要員を指名打者に入れて一打席目に代打を送ろうとしたがこのルールのため失敗したというケースがあった。
- 1回表の投手には代打を送れない。投手は打者1人と対戦するかイニングを終了するかしないと交代できないが、先攻チームの投手はまだ1球も投げておらず交代できないためである。
- 指名打者に代打を出す場合に限り、登板中の投手を代打とすることができる。出場中の選手を代打に送れるのはこのケースのみ。この代打を行った場合、指名打者は解除される。
代打の名選手たち
長いプロ野球の歴史においては数シーズン、あるいは選手人生を通して専ら代打として活躍した選手も存在している。打撃面では優れているが、加齢や故障、あるいは資質の問題で、スタメン起用に耐える守備走塁能力に欠けていたり、より総合力の高い選手が同一ポジションを確保していたりといった事情で控えに甘んじた選手が多い。
なお指名打者制を採用しているパ・リーグでは、このような選手も指名打者としてスタメンに名を連ねるチャンスがあり、さらに基本的に投手が打席に立たずその分代打を出す機会も少ないため、代打屋として名を残す選手は現れにくい。
以下、代打として名を残した選手たちを紹介する(打率・本塁打・打点などの成績は全て代打起用時のもの)。
- 宮川孝雄【広島(60~74) 778回起用 打率.290(644-187) 6HR 118打点】
- 15年に及ぶ選手生活を代打一筋で過ごした生粋の代打屋。起用回数・安打数・打点の全てでプロ野球歴代1位の記録を有している。代打中心の起用なのにリーグ最多死球を2度も達成するなど、当たり屋としても有名。引退後は妻の「村上」姓を名乗り、スカウトとして北別府学・緒方孝市・前田智徳などの名選手を発掘した。
- 川藤幸三【阪神(68~86) 352起用 打率.267(318-85)11HR 73打点】
- それほど際立った活躍はしていないものの、1974年以降、代打の切り札として活躍。
- 代打で凡退すると「なんで川藤出したんや~!」と野次られる事もあったが、全力プレーでファンから愛され、主力選手に劣らない程の人気選手であった。
- また、1985年の阪神日本一の際には、生え抜き大ベテランとして選手達の精神的支柱となりチームを支えた。
- 高井保弘【阪急(64~82) 559回起用 打率.248(483-120)27HR 109打点】
- 通算代打本塁打27本の世界記録を残した「世界の代打男」。ポジションは一塁手だが、後の名球会員加藤英司が不動の一塁手として君臨していた時期と重なったため、代打起用がメインとなった。指名打者制導入後は2年連続規定打席3割・20HRを達成するなど、本来ならレギュラーとして活躍できる器だった。
- 川又米利【中日(79~97) 632回起用 打率.265(494-131) 16HR 105打点】
- 強打の外野手として20代後半はレギュラーを務めたが、鈍足と拙守からレギュラー失陥。しかしその後も腐らずに長きに渡り代打・準レギュラーとして安定した成績を残した。起用回数・安打数・本塁打数・打点の全てでプロ野球歴代5位以内に入っている隠れた代打の実力者。
- 吉村禎章【巨人(82~98) 504回起用 打率.255(427-109) 14HR 87打点】
- 毎年3割を記録し巨人の主砲として定着しかかっていた矢先、守備時の交錯事故で左膝靱帯断裂の大ケガを負う。重度障害者認定を受け再起不能とまで言われたが、執念のリハビリで復活。軸足を失うというハンデを負いながらその後90年代における巨人軍の代打の切り札として活躍した。
- 八木裕【阪神(87~04) 463回起用 打率.235(400-94) 13HR 98打点】
- 若い頃は俊足強打の好選手として打線の中軸を担うも、その後故障で低迷。クビ寸前まで追い詰められた97年に代打として大活躍、以後代打の切り札として暗黒時代の阪神を代表する選手の一人となった。成功率は高くないが94安打で98打点という数字が物語るように勝負強さは抜群で、ファンからは「代打の神様」と呼ばれていた。
- 浅井樹【広島(90~06) 582回起用 打率.315(489-154) 8HR 93打点】
- 俊足に加え長打力・巧打力を併せ持ち、オフェンス面では非の打ちどころのない選手だったが、守備の拙さに加え、当時の広島が誇った超豪華外野陣(金本・緒方・前田)にはさすがに敵わず、左の代打兼外野陣故障時の穴埋め要員として選手生活を過ごした。代打成功率.315は代打起用400回以上の選手ではプロ野球歴代1位。
- 町田公二郎【広島(92~04)・阪神(05~06) 472回起用 打率.227(397-90) 20HR 71打点】
- 浅井と同時期に右の代打兼外野陣故障時の穴埋め要員として活躍。やはり浅井同様に、守備難と強力外野陣に阻まれレギュラーに定着できなかった。確実性では浅井に劣ったが長打力は町田が上で、通算代打本塁打20本はセ・リーグ歴代1位。浅井とのコンビで他球団に恐れられた。
現役の「代打の切り札」たち
以下、2021年の代打成績を部門別に表記する。打率・出塁率は代打で30打席以上立った者を対象とする。
セ
部門 | 順位 | 成績 | 打席 | 選手 | 所属 |
---|---|---|---|---|---|
打率 | 1位 | .366 | 89 | 川端慎吾 | ヤクルト |
2位 | .318 | 48 | 松山竜平 | 広島 | |
本塁打 | 1位 | 3本 | 36 | 福田永将 | 中日 |
2位 | 2本 |
49
48 19 |
楠本泰史
長野久義 中村奨成 |
DeNA
広島 広島 |
|
打点 | 1位 | 18 | 89 | 川端慎吾 | ヤクルト |
2位 | 10 | 49 | 楠本泰史 | DeNA | |
安打 | 1位 | 30 | 89 | 川端慎吾 | ヤクルト |
2位 | 14 | 48 | 松山竜平 | 広島 | |
出塁率 | 1位 | .452 | 46 | 宮本丈 | ヤクルト |
2位 | .416 | 89 | 川端慎吾 | ヤクルト |
パ
部門 | 順位 | 成績 | 打席 | 選手 | 所属 |
---|---|---|---|---|---|
打率 | 1位 | .429 | 37 | A.ジョーンズ | オリックス |
2位 | .220 | 54 | 長谷川勇也 | ソフトバンク | |
本塁打 | 1位 | 2本 |
16
12 11 |
T-岡田
菅野剛士 川越誠司 |
オリックス
ロッテ 西武 |
打点 | 1位 | 6 |
37
33 |
A.ジョーンズ 川島慶三 |
オリックス
ソフトバンク |
2位 | 5 |
54
11 11 |
長谷川勇也
髙濱祐仁 松田宣浩 |
ソフトバンク
日本ハム ソフトバンク |
|
安打 | 1位 | 12 | 37 | A.ジョーンズ | オリックス |
2位 | 9 | 54 | 長谷川勇也 | ソフトバンク | |
出塁率 | 1位 | .568 | 37 | A.ジョーンズ | オリックス |
2位 | .370 | 54 | 長谷川勇也 | ソフトバンク |
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