『劇場版ポケットモンスター 結晶塔の帝王 ENTEI』とは、TVアニメ『ポケットモンスター』の劇場版第3作目である。
同時上映は『ピチューとピカチュウ』。
概要
金銀編初の劇場版であり、キャッチコピーは『誰も知らない金と銀の世界をかけろ!』
テーマは「父と娘」「家族の絆」となっており、裏のテーマとして「自分のいる世界とは何なのか?」が存在する。
ドイツのケルン大聖堂が屋敷のモデルになっている。また、結晶に関しては、脚本の首藤剛志がバラードの「結晶世界」にインスパイアされたと述べている。
ゲスト声優は竹中直人、加藤あい、薬丸裕英、そして山寺宏一。竹中直人はミュウツーの市村正親やジラルダンの鹿賀丈史と同様、総監督である湯山の人選である。
今作は特にゲームに近いバトルシーンが多く、タケシやカスミの「ここは私に任せて先に行け!」的展開はBGMも相まって非常に熱い。
そしてなんと言ってもアニメで別れたリザードンがサトシのピンチに駆けつけるシーンは前作のロケット団の時のように少年少女の心を激しく振るわせたことだろう。
しかし、上記のテーマにあるように、特に子どもを持った大人にはまた違った視点でこの映画を見ることが出来るのではないだろうか。
エンテイの「ミーが望むなら……」や「例え間違いでも……私はミーの願いを叶えてあげたい」といったセリフや、自分が消滅するのを厭わず娘の為に行動する様は、子どもの頃には分からずとも人の親となった今なら涙無しには見られないだろう。
ちなみに本作から入場者限定プレゼントとしてポケモンカードが貰えるようになった。
配布されたカードは『ポケモンカード★neo「カポエラー」「ププリン」2枚セット』。どちらのカードも使いやすく、当時デッキに入れていた人も多いのではないだろうか。
また、コロコロコミックではスペシャルジャンボカードとして「結晶塔のエンテイ」というふろくが付いてきた。
技は『【特殊能力】のぞみをかなえる』、『ほのおのうず』の二つ。特に『のぞみをかなえる』は、「自分の持っているポケモンのカードから一枚選び、山札に加える。その結果デッキが60枚以上になっても構わない」といったなんともロマン溢れる能力だった(ジャンボカードなのでそもそもデッキに入れることはできないが)。
あらすじ
美しい高原の街「グリーンフィールド」に父親のシュリーと共に暮らすミーという少女がいた。 ある日、父親が遺跡の調査中に行方不明となった。父親が残した奇妙なカードをミーが並び替えた時、謎のポケモン「アンノーン」と共にエンテイが現れた。
一方、サトシたちも旅の途中で「グリーンフィールド」を訪れていた。突如グリーンフィールドがクリスタルで囲まれたことに困惑するサトシ達の前にエンテイが現れ、偶然現場に居合わせたサトシの母親を連れ去ってしまう。
主な登場キャラクター
- サトシ(cv:松本梨香)
毎度お馴染み主人公。物語序盤から母親をさらわれる羽目に。ミーとは小さい頃に知り合っており、今回バトルを通じてミーに仲間とはどのようなものかを教えた。でも吹っ飛ばされた時ピカチュウだけじゃなくてリザードンの事も心配してあげてください - カスミ(cv:飯塚雅弓)
世界の美少女名はカスミ。元ハナダジムリーダーであり水ポケモンのエキスパートで、ミー(10歳)との激しい水中戦は必見。『ヘアッ!』『ボオオオオオオ』 - タケシ(cv:上田祐司)
元ニビジムリーダー。世界一のポケモンブリーダーになるのが夢。勢いで結晶塔に向かおうとしたサトシを止めたり、成長したミーを一目で看破するなどサトシ一行での年長者らしい冷静さや洞察力を見せる。 - ムサシ(cv:林原めぐみ)・コジロウ(cv:三木眞一郎)・ニャース(cv:犬山犬子)
ロケット団員。今回はお宝を求めて屋敷に侵入しようとするも、撃墜されるわお宝は無いわバトルに巻き込まれるわと散々な目に。だが最後は綺麗に締める。 - ミー(cv:矢島晶子)
今作の重要キャラクター。父親を慕っているが、仕事が多忙であまり家におらず寂しく感じている。その父親がアンノーンを調査中に行方不明となり、父親が発見した石版を「おみやげ」として遊んでいたが、耐えきれなくなり嗚咽を漏らす。その時アンノーンと共鳴し、アンノーンを召喚し屋敷を結晶塔にしてしまう。また、父親がいなくなった寂しさからエンテイを作り出してしまうが、ミー自身は「パパがエンテイになって帰ってきた」と喜び勘違いしている。本来の年齢は5歳だが、アンノーンの力によって自分の年齢を自由に変えることが出来る。作中では18歳と10歳の外見に変わった。ちなみに声優の矢島はその三人のミーの声を見事に演じ分けた。監督の湯山曰く、「(声優が同じという事に)気が付いていない方もいるんじゃないかと思います」とのこと。 - シェリー博士(cv:竹中直人)
ミーの父親。オーキド博士の教え子で、サトシの母親とも知り合い。助手のジョンから呼び出されアンノーンの研究に向かったところ、アンノーンに拉致られた。 - エンテイ(cv:竹中直人)
唯一神伝説のポケモン。その実態は本物のエンテイではなく、ミーの心が生み出したマボロシ。ミーはエンテイの事を「強くって、優しくって、パパみたい」と思っていたことから、アンノーンが変な解釈をしたのだと思われる。 - リン(cv:加藤あい)
OPでサトシとバトルした女の子。サトシ達がグリーンフィールドに着くまでの道案内をしたが、結晶化を目撃する。その後サトシにポケギアを渡した後出番が無くなる。 - ジョン(cv:薬丸裕英)
諸悪の根源。こいつがシェリー博士を呼び出さなかったらシェリー博士は行方不明にならずミーは悲しむ事も無くなり、石版を屋敷に持ち込まなかったらそもそも結晶化は起こらなかった。ある意味今作最高のトリックスター。 - デイビッド(cv:山寺宏一)
屋敷の執事。本編では名前で呼ばれることが無く、EDのキャスト欄で名前が確認できる。
ピチューとピカチュウ
大都会へとやって来たサトシ一行。ピカチュウはサトシとの約束の時間まで屋上庭園へ遊びに行き、ひょんなことから知り合ったピチュー兄弟と都会の町を走り回る。
サトシ達人間の顔が映らず、正にポケモンが主体といった短編。ナレーターは酒井法子。この時はまさかあんな事になるとは誰も思わなかっただろう……
余談
- 脚本を担当していた首藤が当初考えていたストーリーは『ポケモンと人間しかいないはずの世界でティラノサウルスの骨が発見され、しかもその骨に意識が宿り動き出す』という内容で、テーマは【自分のいる世界とは何なのか?】というものだった。しかし「無機質なものに意識が宿り動きだすというストーリーはヒットしない」という理由からこのプロットは却下された。
却下されやけ酒を飲んでいた首藤の頭にふと浮かんだのは、『ミュウツーの誕生』の時に思いついたアイデアだった。それに出てくる少女・アイはミーという名前の予定(語源は「私」のI・MY・MEから)だったが、MEはIより語感的に自己主張が強い感じがしたそうでアイに変更になった過去があった。
そしてさらに、首藤の娘の略称もミーだった。そこから首藤は「父親の娘に対する思い」から『結晶塔の帝王』の脚本を作り、「年老いた自分はなにもしてあげられない故に、この映画を僕から娘へのプレゼントにしよう」との考えから『結晶塔の帝王』の主人公の女子の名前がミーになった。 - EDでミーの母親らしき人物が現れるシーンがあるが、フィルムコミックでは病気で入院していた母親という記述がなされている。しかし母親が生きているのであれば執事の言った「お嬢様は本当に御独りになられてしまった」という言葉に少々矛盾を感じるし、そもそも生きているのなら偽物の母親を欲するのではなく、某ジブリアニメのように療養中の母親の所までアンノーンやエンテイの能力を利用して赴き治してもらおうと考えるのが自然である。これは、脚本を書き終えた後首藤が倒れてしまい、その後の手直しの際に別の脚本家(以後劇場版ポケモンの脚本を手がけることとなる園田英樹)がそれを受け継いだことが原因だとされている。
関連動画
関連商品
>
関連項目
- 0
- 0pt