助手さんは、田中ロミオによるライトノベル「人類は衰退しました」の登場人物の1人である。アニメCVは福山潤。
概要
初登場は原作2巻後章であるが、1巻前章で既にその存在が『祖父』から『わたし』に仄めかされている。3巻以降は、5巻前章を除いて毎エピソードに登場している。
呼び名は、『わたし』が「助手さん」、『祖父』が「助手くん」・「彼」である。
人物
ローティーンの小柄な少年であり、見た目にそぐわないアロハシャツがトレードマークである。その人物像について、『わたし』は、優しくて物静か、大人しくて礼儀正しい少年だと語っている。さらっとした栗毛の髪と透き通った碧眼を併せ持っている。その物憂げな印象に反して、都市遺跡のメカなどを見てはしゃぐ男の子らしい一面もあり、『わたし』曰く「たまには大胆」とのこと。
名目上は『祖父』の助手であるが、『祖父』が業務にあまり熱心で無いため、『わたし』と行動をともにすることが多い。
『祖父』が行った教育の一環として絵本を描いていたことがあり(原作3巻)、イラストは達者である。スケッチブックを肌身離さず持ち歩いていて、彼のトレードマークのもう一つである。
言葉は全く喋らず、『わたし』や『祖父』等とのコミュニケーションは、目線やスケッチブックで行なっている。アニメ8話にて一言だけ喋っている。
原作2巻後章(アニメ7、8話)において
「このこうもく、ねたばれですゆえ」 「しらなくてもよいしんじつもあるです?」 「すきっぷできますが」 |
助手さんは、外部から長らく隔絶されていた高原地域に住む少数民族の出身である。
この民族の由来は何らかの理由で人間の文明から引き離された者たちであり、外との交易を行わず、自給自足の生活を続けていた。やがて科学文明から継承された"技術"は失われ、この民族は衰退の一途を辿る。助手さんはこの民族の最後の1人であり、「発見」された時には、肉親や仲間は残されていなかった。(以上は『祖父』の推測による)
助手さんが女医のもとに預けられたとき、女医は彼のことを「ニュー」([英]numerical;数値化された)と呼んでいた。彼は身長、体重、心拍数といったデータの上では1人の人間として存在していた。しかし、その存在は意識や記憶からしばしば抜け出てしまうものであったため、こう呼ばれたのである。特殊な生い立ちである彼はいわば「純然たる無個性」たる存在であり、個性でものを記憶する人間達は、彼を記憶することができないのである。(この「自己を規定するのは他人の認識でしかない」という世界観は、田中ロミオの作品にしばしば現れる。)
そのような他者と隔絶された孤独の中に置かれても助手さんは賢かったようで、自分を閉ざすことをせず、「個性」を手に入れようと考える。
女医の手から離れ、自らの「個性」を求めて放浪した彼は、妖精さんによって直近の過去~未来から何人もの『わたし』が集められた空間(「竈の林」)に赴く。そこで自身に関する『わたし』の噂話(これは専ら、「『わたし』が抱いた理想の助手さん像」と言えるものであった)を耳にし、この”他者の認識”によって、自分という存在を確立させた。
興味深いのは、この助手さんの姿が『わたし』の希望によって生み出されたものであるということである。もし『わたし』の希望が異なるものだったら、マッチョ少年の助手さんや、おじいさん(13)のようなエロガキ助手さん、男の娘の助手さんなどといった様々な助手さんになり得た可能性もあるのだ。じつにもったいないですな
たいむばなな
様々な時系列の『わたし』を「竈の林」に集めたのが妖精さんのアイテム「たいむばなな」(助手さん命名)である。
この「たいむばなな」事件は、『わたし』の不用意な発言から妖精さんの「おかしたべたい」欲求が弾けてしまい引き起こされたと考えるのが妥当であるが、原作の『五月期報告』では助手さんが「個性」を獲得する以前に妖精さんと接触した経験があることが明かされており、助手さんの「個性」獲得の手伝いとして妖精さんが企んだものとも考えることもできる。
以下、「たいむばなな」にまつわる『わたし』の動きをまとめる(原作準拠)。
以下の記述は当記事執筆者の解釈をもとにしたもので、原作者が意図した作品内の事実と合致するとは限りません。
1周目
初めて『わたし』に与えられた「ばなな」は味無しで、食べてから転ぶまでに時間がある仕様である。チャリオットに乗ったおじいさん達とその後女医に遭遇し「竈の林」に到達した『わたし』(この時、2週目の『わたし』に会う)を”スリップ”させた。この”スリップ”では、1人の『わたし』が「竈の林」に残されたままもう1人が過去に送られ、『わたし』の複製が実現する。しかしながら、以下のような難点がある。
2周目
12:30くらいからスタートし、腕時計を取りに事務所に戻った1周目の『わたし』と統合され、矛盾(TimeParadogs;タイムパラドッグス)が生まれる。女医から「純然たる無個性」の話を聴いた後、また「ばなな」が与えられる。これにはバナナらしい味が付いていて、さらに”スリップ”した時の痛みを軽減した(と思われる)『わたし』にやさしい仕様である。『わたし』は再びチャリオット、女医に遭遇し(この時間軸では一度女医の元に向かっているが、既に『わたし』達のとる行動は1周目で決定されているため、再び同じ行動をとる)、さらに「竈の林」で1周目の『わたし』に会い、”スリップ”する。
3周目
13:15からスタートし、妖精さんにナンパされている『わたし』と統合され、矛盾(タイムパラドッグス)が生まれる。2周目とほぼ同じ仕様の「ばなな」を与えられるが、ここで妖精さんに対する言葉攻めプレイに興じたため(1周目と違う行動)、矛盾(タイムパry)が生まれる。チャリ女医遭遇後、「竈の林」で1、2周目の『わたし』達に会うが、このとき、1、2周目の『わたし』の行動が変化している。「やさしいくうかん」である「竈の林」は過去から切り離されているためこのような矛盾が許容される(『わたし』が入ってくる度に、上書きされる)。その後、”スリップ”する。
4周目
13:30からスタートし、おじいさんに説教されている『わたし』と統合され、矛盾(犬)生まれ、女医と話した後、「竈の林」で3周目までの『わたし』達に会う。妖精さんの目論見を阻止しようとするも、「ばなな」を食べさせられ、”スリップ”する。この「ばなな」は改良が加えられており、食べてすぐに”スリップ”する仕様で『わたし』複製の効率化が図られていたが、遠い過去にタイムスリップする不具合が存在した。
遠い過去
祖父 on チャリオットに説教された時点までの記憶を引き継いだ状態でスタートし、里に向かうが、里の描写がこれまでと変化している。アロハシャツを着た13歳の祖父に出会い、セクハラを受ける。このアロハシャツというモチーフは『わたし』が抱く助手さん像のなかに深く植え付けられ、助手さんの「個性」形成に影響を与える。1周目で祖父に与えられた腕日時計を奪われる。その後、現世の『わたし』に統合する。
5周目
14:30からスタートし、「竈の林」で大量の『わたし』に出会う。この『わたし』は"完成"した「たいむばなな」を食べて未来から連れられてきた様々な年齢の『わたし』である。その『わたし』達と自分が希望する助手さん像を語った後、「ばなな」の春巻を食べて”スリップ”する。
定まった出来事
13:15からスタートする。妖精さんから「さいしんがた」の「ばなな」を受け取る。この「ばなな」は以下のような改良が施された完成版である。
つまるところ、『わたし』の(現世での)意識の継続性を保ったまま『わたし』を「竈の林」に送れる仕様になったのである。残された唯一の欠点は”転ぶ”ことのみである。他の人間が食した場合にどうなるのかは不明である(助手さんが実際に口にし、”スリップ”している)。この「ばなな」は妖精さんによって事務所のすぐ外に植えられ、『わたし』はいつまでも好物のバナナを食べることができるようになった。
ネタバレ
以下最終巻のネタバレを含みます
「妖精」のものになってしまった地球に生きる、なめくじうおから進化し衰退した「旧地球人類」最後の一人。
実は無口ではなくべらんめえ口調で結構しゃべっていた。「妖精」同士の意思疎通に慣れきっていた「妖精」達は、彼の言語を理解できず、無口だと思っていただけだった。
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関連項目
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