概要
円の動きを多用し、合理をもって相手を制するを旨とする武道・武術。
会津藩のお抱え武術だった大東流合気柔術をベースに、武道家・植芝盛平がいろいろ工夫を凝らして完成させた。盛平の立ち上げた合気道以外にもいくつか「合気道」を名乗る流派は存在するが、基本的になんの説明もなく「合気道」と言えば植芝流(=「財団法人日本合気会」傘下団体)を指す。現在は3代目植芝守央が道主。
合気会以外の流派はいずれもマイナーであるが、比較的規模の大きいものとして、盛平の弟子の立ち上げた日本合気道協会(昭道館合気道)、養神館合気道などが存在する。また、80~90年代に「西野式呼吸法」を広めた西野皓三や、合気道の実戦性の低さから叛旗を翻した櫻井文夫の合気道S.A.あたりが武術オタを中心にやや知られていると思われる。古武術の例に漏れず、うさんくさい団体が多いので要注意(特に氣のパワーで吹っ飛ばすのを売りにしている系はまずオカルト武術)。高校・大学の合気道部は基本的に日本合気会の傘下と思われる。
この他、平井稔が創始した光輪洞合気道も存在しているが、名前が同じなだけで上記とは全く別の武術である。
通常、合気道場には植芝(開祖・盛平、2代・吉祥丸など)の写真が飾られている。部活の場合、柔道部と半分ずつ分け合ったりする羽目になるケースも多い。道場が使えない場合は外で基礎トレや木剣・杖術の稽古。
武術としての特徴は、基本的に相手に攻撃させるところから始まる点。
稽古は「相手が武器を振り上げ/振り下ろしてくる」「相手が突いてくる、または突進してくる」「相手が衣服の襟や胸倉をつかんでいる」「自分の持っている武器や腕を封じに来る」という想定の状態から始まり、相手の攻撃始動モーション(振り上げとか)と同時に動き、2モーション目(振り下ろしとか)と同時に制圧の形に入る。この際、正面から向き合わず、最初のモーションで接近すると同時に身体の向きを変えて側面や背面に密着し、相手の攻撃を“受け止め”ない。この相手の力に逆らわず、相手の動きに和合し、相手を制する術理、及びそれを可能にする精神と肉体の状態が「合気」の由来と思われる。相手から見て攻撃可能面積が狭く、次のモーションに移行しやすい「半身」を基本姿勢としており、最小限の体捌きで向きを変えながら懐に入り、あるいは攻撃の先端を捉え、無力化を狙う。
よくある誤解
- 体術のみと思われがちだが、木剣術と杖術もカリキュラムにおいては重視される。短刀取りも定番。なお、武器を用いる場合でも、無手の場合と術理はほぼ変わらない。
「合気の理合いは剣の理合い」という言葉もあるほどであり、武器の使い方から体の使い方、技の効かせ方を学んでいく。
- 投げ技のイメージが強いが、当て身(打撃技)とセットで学ぶ。投げる技の他に相手を寝かせて無力化させる動きも重視される。フィニッシュとなる関節技は、手首、肘、肩を極めるバリエーションが基本となる。
- 立ち技のイメージが強いが、お互い座った状態からの稽古も多い。膝行(膝歩き)は合気道の基本ムーヴ。
- 気功など超常的エネルギーで相手を投げ飛ばしたりするイメージがあるが、あくまでも人体の合理(関節や腱を極められて痛いので転がる、体軸のバランスを崩されて倒れる、接触する前に自分から飛ばないと危険、など)に基づいた術理である。気功パワーとかはたぶん西野式などの影響による誤ったイメージと思われる。
演武において力の流れを分かりやすくするために接触しない型を行う場合もあるが、これはあくまで教材として考えるべきである。
- たまにフィクションで「合気道の試合のために頑張る」みたいな話が出てくるが、合気道に「試合」というものは存在せず、演武会において型の美しさを競う(といっても競技ではない)。
- その方向性から(否定的な意味でも肯定的な意味でも)「ダンスを踊ってるよう」と形容されることがあるがそれは実際、相手の攻撃の動きに自分から併せて吸収するという、合気道の目標の形の一つである。(流派や道場によって演武の様相も大きく異なってくる)
- 合気道の演武はあまりにも華麗に技が決まりすぎるため、よく知らない人からはヤラセなどと思われることもあるが、単に係り稽古においては、合気道家は受け身が身に染み付いているので派手に見えてしまうというのもある。あくまで「演武」であり、デモンストレーションである。ただし綺麗に飛ぶには投げる方にも当然相応の実力が必要であり、また綺麗に飛ばないと怪我に繋がる。垂直落下を予感させる下手な投げの受け身はとても恐ろしいものである。
(この点、上級者は相手が怪我しないように上手に技を「崩している」とも言える。本来の形で技を行うと相手が負傷、もしくは死んでしまうからである。)
- ヤラセのイメージの代表格として軽く押されて前転受け身を取るとか、肩を掴みに行ったら派手に吹き飛ばされるように見える技がある。前述の通り受け身を取らないと怪我をするというのもあるが、掴みかかるために進もうとするのと同じ方向に押し出されたり、掴みかかった瞬間に引き出されるように力が加えられるので掴みかかる勢いによってはレベルの高い合気道家相手の場合本当に吹っ飛ぶ。(数十㎏の荷物の乗った動く台車を掴んで止めようとするのをイメージしてもらうと分かりやすいか)
- 力は必要ないと思われがちだが、それは流れの中で理想的な動きができた場合であり基本的には相手を持ち上げるに足る強い力が必要である。
そもそも筋力はあればあるだけリカバリーが効くし体を自由に動かせるようになる。攻撃をもらった際のダメージ軽減や怪我の防止にも効果がある。武術として用いるつもりなら当然のごとく筋肉は必要である。イメージとしては「引きずり回す等の作用させる力」は必要ないが「どのような状況や要求でも自分の体を動かしてしっかりと立ち続ける力」が存分に必要と言ったところだろうか。
歴史に残る合気道家は例外なく体に鉄芯が通ったような強い体幹を有しており、小柄で細身ながらもみっしりと筋肉がつまっている。この場合も「バレリーナのような筋肉」と形容されることがあるようだ。
稽古においても相手に呼吸力を効かせてしっかりと抑えてもらい、それを自らの呼吸力を以て投げるというハードな筋トレに近い技の鍛錬を通常として行う流派が多数ある(源流にあたる合気会や岩間からしてそうである)。
- 小よく大を制するイメージから、フィクションの世界では「護身術として合気道を学んだ美少女が巨漢を投げ飛ばす」ような図が見受けられるが、普通は無理であり、たぶん柔道とか超能力とかいろんなものとごっちゃになっている(道場の家に産まれて幼いころから稽古を始め、日ごろから良質な技に触れ続け朝晩の稽古を欠かさず、外部の稽古にもよく参加して合気道以外の武術の経験も豊富であり、体造りにも余念がないアスリートのような生活をしている御仁になら可能かもしれない)。
現在の合気道は精神性、及び体育的な学びを重視しており、決してお手軽に喧嘩に強くなれる武術ではない。有段者にはやたら強い先生などもいるにはいるが、たいてい柔道や剣道を同時に学んでいる人たちである。本気で護身術を学びたいなら、素直に柔道などと並行して習うことをおすすめしたい。そもそも開祖からして様々な剣術や柔術の集大成としてこの武術を興しているのである。
護身術として通用しないわけではないだろうが、実際に用立つレベルに至るには膨大な時間がかかる。はっきり言ってそこまで習熟してるならそれほど大きくない道場の師範代なら務められる力量と言える。(相手の動きの起りを見切り、稽古で行う型とは違う攻撃に応対するなど高度な技術が要求されるため。)また、実践の制圧において重要な要素である当身を安全性の確保や稽古方針のために指導から外している道場もある。
そもそも護身術の第一の要点は「いかにして危険な状況に陥らないか」であり二番は「いかにして危険な状況からの離脱を可能にするか」である。相手を制圧することで危機を脱しようとすれば難易度も危険性も跳ね上がり、護身を考えるのならば厳として選択肢から外すべきである。どのように相手を倒すかを考える暇があるのなら、どのように振舞えば危険から身を遠ざけられるかを考えるべきだろう。
高名な合気道家
植芝盛平
合気道の開祖。大東流の達人・武田惣角から伝授された柔術をベースに合気道を立ち上げた。大本という宗教に傾倒し、 霊能力者・出口王仁三郎の警護のために満州に渡って馬賊と戦ったりした。銃弾6発を回避したエピソードなどは合気道部に入ればだいたい先輩から聞かされること間違いなしの定番レジェンド。身長は150センチそこそこだった。
なお、小柄ながらその体躯は非常に体幹が強く、村人が複数人で抜こうと躍起になっていた木を少しずつずらしながらとうとう一人で抜いてしまったという逸話もあったりする。
(本気で武術として合気道を修めている人は柔道家に遜色ないほどしっかりと筋力をつけている。筋力トレーニングの積み重ねというより、膨大な量の鍛錬の中で体が作られていくのである。)
塩田剛三
盛平以上に人間離れしたエピソードをいくつも持つ、近代日本武術史のカリスマ。盛平の元で合気道を学んだのち、養神館合気道を立ち上げる。やはり身長は150センチ台、体重も40キロ台と極めて小柄だが、 その強さはまさに伝説的。「こんな小さい日本人が強いわけがない」と疑ったロバート・ケネディのボディガードを圧倒した映像は、たぶんニコニコのどこかで見ることができるだろう。漫画「グラップラー刃牙」の渋川剛気のモデル。
スティーブン・セガール
現在時点における人類の最終兵器。
その他、ニコニコ大百科によればリチャード・マック・マコウィッツ、狩野すみれ、泉こなた、花見川といった人物たちが合気道またはそれに類する武道をたしなんでいる模様。
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関連項目
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