「四畳半神話大系」とは、森見登美彦の小説である。
2005年1月5日に刊行。2010年4月より「ノイタミナ」枠にてテレビアニメが放送開始された。

下鴨幽水荘。叡山出町柳裏にある下宿である。人から聞いた話によると幕末の混乱期に焼失して再建以後そのままであるという、窓から明かりが漏れていなければ廃墟同然、何も知らずにここを訪れた者は、九龍城に迷い込んだのかと思ってしまうというのも無理からぬ話だ。この今にも倒壊しそうな下宿に起居する私は、大学三回生の春までの二年間、実益のあることなど何一つしていないことを断言しておこう。
私とて大学入学当初からこんな有様だったわけではない。高校時代は特にクラブ活動もせず、同じような非活動的な男達とくすぶっているばかりであったが、晴れてピカピカの大学一回生、友達百人できるのも悪くないと思っていた私は数々のサークルが個人の情報処理能力を遥かに凌駕する無数のチラシを差し出す大学の時計台へと足を向けた。そこには光り輝く純金製の未来が扉を開いているように思われた。そのどれを選んでも「薔薇色のキャンパスライフが、黒髪の乙女が、そして全世界が約束される」と思っていた私は、手の施しようのない阿呆だった・・・。
もしあの時違うサークルを選んでいたならば、黒髪の乙女と薔薇色のキャンパスライフを送っていたに違いない!
第一話
晴れて大学に入学した私は、目の前に差し出される無数のサークル勧誘のチラシを目の当りにし、興奮ながら朦朧としていた。その中から私が選び取ったチラシは
テニスサークル「キューピット」
しかし、そのサークルで人と爽やかに交流するのがいかに難しいかを知らされる。柔軟な社交性を身に付けようにも、そもそも会話の中に入れない、会話に入り込むための社交性をどこか他所で身に付けてこなくてはならないと思い知った時にはサークル内での居場所を失っていた。
そのとき酷く縁起の悪い容貌をした男、小津と出会った。小津と出会ってからの私は、サークル内に張り巡らされた赤い糸を切って切って切りまくる「黒いキューピット」として悪名を轟かせることになった。
あの時、小津に出会わなければ、薔薇色のキャンパスライフを送っていたに違いない。もしあの時違うサークルを選んでいたならば・・・。
第二話
ピカピカの大学一回生の私の前に個人の情報処理能力を遥かに凌駕する量の無数のサークルのチラシが差し出される、そして私が選び取ったのが
映画サークル「みそぎ」
しかし、そのサークル内では、城ヶ崎先輩による忌々しい独裁体制が敷かれていたのだ。私は城ヶ崎先輩に反逆の狼煙を上げるべく独自に映画を取り始めるのだが、その全てが不評であり、逆に城ヶ崎先輩のカリスマぶりを高める結果となってしまった。
そのとき出合った、妖怪のような不気味なルックスを持つ小津と、城ヶ崎先輩の私生活を暴露する告発ドキュメント映画を作成する事に。
あの時、小津に出会わなければ、私の魂はもっと清らかだったに違いない。もしあの時違うサークルを選んでいたならば・・・。
第三話
当時、大学一回生であった私の前には無数のキャンパスライフへの扉が無数に開かれていた。だが私は大学の合格発表の時に誘われていたあるサークルに心を決めていた、その名は
サイクリング同好会「ソレイユ」
しかし、その実体は同好会というのは名ばかりのガチンコ自転車サークルであった。そもそも高校時代からスポーツ活動などやっていなかった私には本格的な体育会系など荷が重く、ズルズルと一回生を無駄にしていった。
体力が無い、ならば自転車のスペックで勝負すれば活路が開けると、私は二回生になって方向転換した。少しでもいい自転車を手に入れるため私は勉学そっちのけでありとあらゆるバイトに打ち込んだ。そして、ようやく手に入れたフルスペック自転車、この自転車でレースに優勝すれば薔薇色のキャンパスライフが待っているはずである。
しかし、レース直前、自転車が自転車整理軍によって撤去されてしまった・・・。
第四話
私が手にした一枚のチラシ、その胡散臭いチラシの向こうには、いかなる栄光の未来をも思い描く事が出来なかった。そのチラシ書かれていたのは
弟子求ム
「その千里眼は祇園の雑踏より意中の乙女を見つけ その地獄耳は疎水へ降り散る桜の音も逃さず 我こそは樋口清太郎 来たれ 仙才を秘めたる若者よ」
その内容を見て私は、今すぐこのチラシを手放さなければ、そして出来るだけここより遠くへ逃げおおせねばと予感したが出来ず、樋口師匠の弟子となってしまった。私の悪い予感は的中した、樋口師匠の下で私は、すでに師匠の弟子となっていた小津と共に、師匠の宿敵である城ヶ崎先輩との「自虐的代理代理戦争」という名のいたずら合戦に明け暮れる無益な2年間を過ごすハメになった。
ある日、師匠から伝説の亀の子束子を探すように命じられた私は、京都中を足を棒にして探し回るも一向に見つからない。あきらめかけていたところ妹弟子の明石さんとバッタリ出くわす、なんと明石さんも一緒に探してくれるというではないか・・・。
第五話
そのサークルはソストボールサークルと銘打っているものの、ほんのり温かく交流するのが主眼らしい。鬱々たる高校生活よさらば、こういう集いに参加して爽やかな汗を流す事で、美女たちと言葉のキャッチボールをこなす社交性が身に付くに違いない。そのサークルとは
ソフトボールサークル「ほんわか」
「ほんわか」はその名が示すとおり、春霞のかかった空に浮かぶ雲の様にほんわかとしていた。ただ一つ気になったのが、ほんわかし過ぎているということだった。一言で言うと皆善人すぎる。常にニコニコして口論もせず猥談もしない、唯一親近感を持ったのは妖怪の様な顔をした小津だけであった。
サークルになじめないまま一年あたりすぎた頃、私は運命の黒髪の乙女と遭遇する。彼女は「ほんわか」の母体組織である健康食品会社「ほんわか」の社長令嬢であり、そこの広告塔であったのだ。健康食品を大量に購入し、組織の広報活動にも積極的に参加し、組織内での地位を高めていけば彼女と接する可能性も上がっていくだろう・・・。
第六話
一つのサークルに身を捧げるという事は、ともすれば大学生活を丸ごと棒に振るということになりかねない。リスクは分散すべし。複数のサークルに参加し、多角的な薔薇色のキャンパスライフを送るのだ。私が選んだ三つのサークルのうちの一つが
英会話サークル「ジョイングリッシュ」
その英会話サークルに参加する羽貫さんは歯科衛生士であり、小津という共通の知り合いがいたため次第と親しくなり、サークルの後毎回カフェでお茶をする間柄となった。
ある日私は羽貫さんに始めて飲みの誘いを受ける。しかし、なんだかいつもと様子が違う。恋人と何かあったのかも知れない。だからこそ私を飲みに誘ってくれたのだ。羽貫さんは心の拠り所が欲しいのではないか?こういうときこそ私が支えてあげなければいけないのではないか?
しかし、私は羽貫さんと同時に別の女性二人から誘いを受けていた。華やかさとは無縁だった吾が人生がここへ来て、女性三人に囲まれる最高潮を迎えている。八面六臂の桃色遊戯の達人を目指す器で無いならば、誰か一人に決めなければならない・・・。
第七話
四年間の大学生活、時にはアグレッシブに子供の夢を叶えるのも良いかも知れぬ。少年の心を理解する黒髪の乙女が現れるかも知れぬ。三つのサークルのうち一つはこれにしよう
サークル「ヒーローショー同好会」
そのサークルで活躍する私は城ヶ崎先輩から、ある女性のボディーガードを依頼される。その女性とは、名を香織といい、髪は丁寧に撫で付けられ、きちんと上品な服を着、化粧・爪の手入れ・肌つやの良い、気品のある表情をした人形であった。しかし、とても人形とは思えない。
そんなある日、城ヶ崎先輩が香織さんを連れて私の下宿に駆け込んでくる。どうにも城ヶ崎先輩の部屋は物騒で香織さんを置いておくには危険らしい。こうして私と香織さんの同棲生活が始まった。愛の形は様々といえど、ここまで閉鎖的な愛の迷路に迷い込んだら危険である、帰り道が解らなくなる危険があるものの私は道の奥へ入り込んで行くのだった。
城ヶ崎先輩が香織さんを引き取りに来る日がやってきた。しかしその日に私は私は別の女性二人からも同時に誘いを受けていた、どれか一つを選ばねばならない。私は、香織さんを選んだ・・・。
第八話
もともとインドア派である私は、読書を通じて出会いを求める。多角的な薔薇色のキャンパスライフのために私が選んだ一つが
読書サークル「SEA」
小津から古本屋で買った一冊の本を貰い受ける。愚にもつかない青春小説であったが、最後のページに美しい筆跡で住所と名前が書いてあった。その樋口景子という名前に惹かれた私は、この景子さんに便箋一枚半にしたためた手紙を送った。こうして嘘のようなきっかけから私たちの文通の火蓋は切られたのだ。
手紙が届くたび景子さんの人柄が垣間見えた、それはまさしく私の理想像というべき女性だった。勢いで私もなるべくよく見られるように書いた、多少美化された部分もあるが、これは洒落た演出というべきであろう。
このまま景子さんとはプラトニックな関係が続くのかと思われたが、景子さんから「良ければ一度お目にかかれませんでしょうか?」と手紙が来る。彼女を本気にさせてしまったのは私の文才のなせる技だが、手紙の中の私は一人歩きし現実の私を大きく引き離していた。しかも、景子さんとの待ち合わせの当日私は別の女性二人と外せない用事を抱えていた。だが私は景子さんにありのままの私をさらけ出さねば・・・。
第九話
私はもはや決死の覚悟であった。一か八か、あるチラシを手にした。数あるチラシの中で異彩を放つそのチラシは
秘密機関「福猫飯店」
まさか秘密機関と大々的にチラシに書く秘密機関が有る訳無いと思っていたが「福猫飯店」は看板に偽り無く秘密機関であった。大学の裏家業を一手に引き受け大学を裏でコントロールしている組織それが「福猫飯店」 。
私は様々な下部組織に配属されるも成果が全く上がらない、反対に小津は悪質な技巧を凝らし、不可思議な人脈を広げつづけ一回生ながら店主・相島の右腕までに上り詰めていた。
ある日、相島の公私混同した指摘命令に嫌気が差した私はミッション遂行現場より逃亡してしまった。今度こそ私は相島の手によって社会的に抹殺されてしまうだろう。しかし追っ手が来る事は無く、私が小津のクーデターによる相島失脚を知ったのは逃亡より一週間後であった・・・。
第十話
四畳半というのは実に綺麗な正方形になっている。美しいではないか。四畳半こそ私の世界の全てである。それは私の信念で有る。そう、私は
四畳半主義者
私は数あるチラシの中から何一つ選ばなかった、薔薇色のキャンパスライフなど夢幻である。四畳半、ここが私の牙城である。裏を叡山電車が走る、一周数秒の空間ではあるが、ここには私の全てが詰まっている。大学入学後の2年間のほぼ全てを私はこの四畳半で過ごした。四畳半は一見物理的に狭いように思えるが、その拡張をインナーワールドに求める事が出来る。妄想世界を広げるのに制限は無い。
ある日、部屋から出ようとドアを開けると、そこには同じような部屋が存在した。窓を開けても同じ部屋、天井裏を覗いても同じ部屋、畳を返しても同じ部屋が続いていた。
四畳半こそ私の世界の全てである。それは私の信念で有った、そして今は客観的事実で有る・・・。
時間が巻き戻るなどありえない話である。しかし私はそのありえないと思われたどこまでも四畳半が続く並行世界に彷徨い込んでいた。それぞれの部屋は同じようで少しずつ様子が違い、少しずつ違う私が生息しているようであった。しかしその誰もが不毛なキャンパスライフを謳歌しているように思えた。
四畳半世界を放浪する内に、私の興味は各部屋に痕跡を残す私を取り巻く人物達の推察に移っていった。眼鏡の奥に慇懃無礼な瞳が伺える相島。樋口・城ヶ崎・羽貫の三人は私の大学の先輩であり同回生であったようだ。そして小津。情報通で、人の恋路を邪魔し、城ヶ崎の暴露映画を製作しながら、二重スパイとして樋口の浴衣をピンク色に染め、相島をはめて秘密組織のトップに踊り出る、そんな八面六臂の大活躍をしながら全ての私にちょっかいを出し続ける。こんな男に出会っていれば私のキャンパスライフは楽しい物になっていたであろう。小津はたった一人の私の親友らしかった。
四畳半紀の終わり
今なら踏み出せる、何十歩でも、何百歩でも。
第十一話
スタッフ
楽曲
放送局
フジテレビ、関西テレビ、東海テレビ、サガテレビ、BSフジ、さくらんぼテレビ
受賞歴
2010年12月8日、第14回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門の大賞を受賞。同賞創設以来初めてのテレビアニメ作品での大賞受賞を果たした。また、2011年3月1日、第10回東京アニメアワードでもテレビ部門優秀作品賞を受賞している。
BD
DVD
携帯版URL:
http://dic.nicomoba.jp/k/a/%E5%9B%9B%E7%95%B3%E5%8D%8A%E7%A5%9E%E8%A9%B1%E5%A4%A7%E7%B3%BB



ページ番号:
4356490
リビジョン番号:
1528354
読み:ヨジョウハンシンワタイケイ
初版作成日: 10/05/09 11:02
◆ 最終更新日: 12/05/13 23:28
編集内容についての説明/コメント: 冒頭改行
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