大前一樹(おおまえ かずき)とは、フリーアナウンサーである。
略歴
1961年6月13日、兵庫県生まれ。外見と年齢に見合わぬ魅惑のイケメンボイスが魅力のアナウンサー。
関西学院大学文学部在学中、「野球に携わる職業がしたい」という希望からアナウンサーを志す。それも、下宿先の隣室の男子学生がアナウンサー志望で、夜な夜な模擬実況をしているのを聴いているうちに「これぐらいやったら、俺でもできるんちゃうか」と思ったのがきっかけという変わり種で、自身も「間違った動機」と述懐している。
大学卒業後、1984年春に和歌山放送にアナウンサーとして入社(なお、その隣室の学生は南日本放送のアナウンサーになったそうである)。南海ホークス戦や近鉄バファローズ戦、高校野球、社会人野球などの中継を中心に、スポーツアナとして活躍してきたが、1988年限りで南海は本拠地を福岡へ移転し、翌1989年以降は自社制作の中継枠が激減してしまった。1990年、オリックス・ブレーブス(のちのオリックス・ブルーウェーブ、現在のオリックス・バファローズ)が球団職員を募集している旨を知り、面接の末に合格、和歌山放送を退社した。この時点でアナウンサーとしては「もう5年喋ったから、ええかな」と引退を決意したという。
オリックス入社後は、本拠地を西宮球場からグリーンスタジアム神戸へ移転するプロジェクトのうち、場内アナウンスに男性のスタジアムDJ(初代:DJ KIMURA、2代目:谷口広明)を採用するというエポックメーキングに携わったほか、広報部ではビジュアルプロデューサーを務めた。また1993年シーズンから、スカパー!発足以前のCSチャンネル「スポーツ・アイ・ESPN」でオリックス主催公式戦の中継が始まることになり、経験者の大前さんに実況アナとして白羽の矢が立ち、ひょんなことからスポーツアナとして復活を遂げることになった。さらに、のちに球団に籍を置きつつ他球団の主催公式戦や、サッカーなど他競技の実況も手掛けるようになった。
現在は神戸市に個人事務所「オール・コレクト」を構えてアナウンサー、スポーツジャーナリストとして活動する傍ら、アナウンススクール「関西メディアアカデミー」の代表を務めるほか、古巣のオリックスで引き続きシニアビジュアルプロデューサーとして後進の指導に当たっている。
なお、J SPORTSの野球関連番組のタイトル「野球好き」は、プロデューサーの三木慎太郎(2012~2014年の3シーズンにわたり横浜DeNAへ出向し、映像事業部長としてドキュメンタリー「ダグアウトの向こう」の撮影・制作等を手掛けた)が「やっぱり野球中継に関わる人間は『野球好き』やないとあかん!それにしても、毎日毎日野球を観てる僕らはほんま『野球好き』やな。そや!番組タイトルも『野球好き』にしたろ!」・・・と決めたもので、当時オリックスのビジュアルプロデューサーだった大前さんは「番組タイトルの決まり方なんて、大体こんなものです」と述懐している。
ニコニコにおける大前さん
2015年シーズン現在、ニコニコ生放送ではプロ野球チャンネルのうち、横浜DeNAベイスターズ主催試合(TBS、東通、ニコニコと球団の共同制作)で実況を担当しているほか、パ・リーグ5球団ディレイ中継のうちオリックス・バファローズ主催試合(J SPORTS、エキスプレスと球団の共同制作)では実況とリポーター、福岡ソフトバンクホークス主催試合(FOX SPORTS、九州東通と球団の共同制作)では実況を担当している。なお2014年当時はオリックス・福岡ソフトバンクについても生配信(いずれもFOX SPORTSと球団の共同制作)を実施していた。
大前さんには特にニックネームはないが、オリックス戦・ソフトバンク戦で実況を務めている際、ベンチリポーターからの呼びかけが早口過ぎて「おまえさん」と聞こえることから、ユーザーからはしばしば「お前さん」「おまえさん」とも呼ばれる。
ニコ生独自の音声実況であるDeNA枠では、石原敬士や加藤暁、節丸裕一のようにコメントを拾って視聴者と積極的にコミュニケーションするアナウンサーが人気だが、大前さんは基本的にコメを拾わず、雑談に走ることは全くなく、通常の野球放送と変わらないスタイルでの実況を貫いている。とはいえコメ自体にはきっちり目を通しており、試合の流れに沿った内容のコメであれば、気付かない程度にさりげなく拾って返し、放送終了時には「たくさんのコメント、ありがとうございました!」と労ってくれるなど、関西人特有の優しさも垣間見せる。
ただ2015年シーズンからはニコ生と並行して、DeNAのライブ配信サービス「SHOWROOM」でもDeNA戦中継の配信が開始された。SHOWROOMの運営サイドが実況担当者に「コメントをどんどん拾って下さい」との指示を出している影響もあってか、ニコ生での大前さんも例に漏れず、イニング間にはネタ系のコメントでも積極的に拾うようになるなど、徐々に「本性」を現しつつある。特に3回表終了時に放映される「バート&チャピー」のショートアニメに対する冷静且つ的確なツッコミや、同年からネット裏最上段の配水槽下に新設されたニコ生用の「仮設放送席」の状況説明などは、今や見せ場の一つとなっている。とはいうものの、インプレー中に拾うのは試合絡みのコメントのみに絞るなど、その辺は一線を画しているようである。
また何の巡り合わせなのか、DeNA枠ではドラマティックなシーンを伝えることが多い。下記の試合はいずれも、大前さんが実況を担当している。
- 2012年4月15日・対巨人2回戦(ハードオフ新潟) = DeNAとしてのホーム初勝利を、中村紀洋のサヨナラ本塁打で飾る
- 2013年4月9日・対広島1回戦(横浜スタジアム) = 二塁を守っていた梶谷隆幸がベースカバーを怠る「消えたセカンド事件」が発生
- 2014年4月2日・対巨人2回戦(同) = 7回までDeNAが5点リードを奪いながら、山口俊らの大乱調で1イニングに一挙10点を失い逆転負けを喫した「魔の8回事件」が発生
- 2014年8月9日・対東京ヤクルト16回戦(同) = 8月上旬恒例の「YOKOHAMA STAR☆NIGHT」は過去2年間で6戦全敗を喫し、同年の初戦も敗れて7連敗となっていたが、この試合で遂に待望の初勝利を飾る
- 2014年8月10日・対東京ヤクルト17回戦(同) = 前掲のスターナイト3日目。荒天に見舞われ、異例ともいえる1時間21分に及ぶレインディレイを経て快勝し連勝を収める
- 2015年7月3日・対阪神11回戦(同) = 2点ビハインドの9回、DeNA打線が阪神のクローザー・呉昇桓から一挙3点を奪って逆転サヨナラ勝ち。序盤戦は逆転勝利に恵まれながら、交流戦中盤以降は12連敗を喫するなど凡戦が続いていたDeNAに対し、大前さんは「逆転のベイスターズは生きていました~!」の名言でゲームセットに華を添えた
実況のテンションは基本的に常時高いが、特にオリックス枠では現在も自身が球団に籍を置いていることもあってか、更に輪をかけてテンションが高くなる。またオリ枠での最大の見せ場は、大前さんがベンチリポーターを務めた際に楽しむことができる、勝利後の監督インタビューにおける森脇浩司監督との絶妙な駆け引きだったが、その森脇監督は2015年6月2日付で成績不振を理由に途中休養が決定。このインタビューも残念ながら過去帳入りしてしまった。
迫力ある実況スキルが注目されがちだが、2014年8月18日のSB枠・対埼玉西武16回戦(京セラドーム大阪)では解説の石毛宏典と、往年のパ・リーグをネタにした絶妙な居酒屋トークを繰り広げるなど、関西人特有のユーモラスな一面も披露している。
蛇足だが、オリックス戦の中継後には後輩のフリーアナウンサー「はざまっくす」こと波佐間崇晃ら若手を引き連れ、食事に行くのを何よりの楽しみにしているらしい。因みにその際の口実は「反省会じゃボケ~!」だそうである。
関連動画
ニコ生
関連項目
外部リンク
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