概要
各地から見える富士山(富嶽)の景色を描いた葛飾北斎の浮世絵で、1822年から1831年の時期に出版されたと考えられている。
三十六景の名から36枚分の絵があると思われがちであるが、実は人気が高かったため後に10枚(俗に「裏富士」と言われる)が追加されて合計46枚になっている。
中でも世界的に有名なのは、横浜の本牧沖から富士山を見た景色を描いた「神奈川沖浪裏」で、激しい嵐の中、大波が船を漕ぐ人々をダイナミックに翻弄している様が描かれている。また、赤富士を描いた「凱風快晴」、空中から富士を真横に見る視点の「山下白雨」(通称「黒富士」)も人気が高く、この三つを「三役」という。ほかに飛脚の手紙が舞い散る様を描くことで風の描写を与えた「駿州江尻」や桶職人の巨大な箍をフレームに富士を収めた「尾州不二見原」などが著名。
フィンセント・ヴィレム・ファン・ゴッホ、クロード・モネ、アンリ・リヴィエールなどの海外の画家にも影響を与えたと言われている。リヴィエールは富嶽三十六景のフランス版として「エッフェル塔三十六景」と呼ばれるリトグラフの連作を描いている。
なお、作品そのものに記載されているタイトルは「冨嶽三十六景」で、現在の表記とは異なっている。
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