懐かし自販機またはレトロ自販機とは、現在主流の自動販売機とは異なる商品や販売形態を持つ自販機で、現在はあまり見られないもののことである。
概要
2010年現在の自販機は飲料用が主流だが、かつてはカレーやラーメンなどの軽食を自動で調理し、販売するものもあった。
かつてはドライブインやオートレストラン、教習所の待合室や無人駅などで見かけることができた。
調理師を配置できない場所や、24時間営業が求められる場所でも温かいものを提供することができ、重宝されていた。
1980年代にコンビニエンスストアが登場し、24時間営業が主流になると、これらの自販機は優位性を失っていった。また、筐体はメーカーサポートの期限が切れ、販売する製品も対応するものを製造する業者は少なくなっていった。
それに伴い、これらの自販機は姿を消していった。2010年代まで生き残っている自販機はごくわずかである。
しかし、物珍しさや昭和ノスタルジーから、今なお利用する人もいる。
また、海外からの観光客には「日本には多種多様の自販機がある」という評判を聞いてくる人もおり、それ目的でわざわざ訪れる人もいる。
また、ド田舎の自動車教習所や都市高速のパーキングエリアなど、近くに飲食物を提供できるような場所がほとんど無い場所においてはいまだに本来の需要がある。
種類
「自動販売機」の記事も参照。
ここでは、2010年代ではあまり自販機では売られないものを取り上げる。
自動調理自販機
内蔵の電子レンジや給湯器によって、インスタント食品を温かい状態で提供できる自動販売機。
「レトロ自販機」の話題で取り上げられるものとして、真っ先に候補に挙がるものである。
提供できる食品は「温めるか、お湯を注げば食べられる」ものが中心である。
ハンバーガー・ポテトなどのファーストフード、うどんなどの麺類などが挙げられる。
あたためる時間などのため、商品が出てくるまで数分間かかるのが普通。
温度調節がまともにできない場合が多く、できたての商品は持てないほど熱い。知らずに触ってやけどしたり、落としたりしないように注意。
味はよくない。ハンバーガーやポテトは湿気を吸ってふにゃふにゃの状態で出てくるし、うどんもお湯が多すぎたり、スープの濃さが調整できていなかったり、麺が伸びていたりする。
価格はコンビニと同等だがインスタントよりは少し高い、程度に収まっている。
自販機本体は製造を終了していることも多く、メンテナンスや修理は自前で行わなければいけないこともしばしばである。
筐体が無事でも「中身」である食品の提供が終了してしまえばそれまでであるが、オートレストラン向け食品を製造販売する(株)ミトミは、2014年に自前で「自販機食堂」をオープンするなど調理自販機事業に今なお積極的であり、少なくとも同社は当分製造を続ける見込みである。
一方、商船三井フェリー内や首都高速のパーキングエリア(大井PAなど)など、大口の取引先があるニチレイは、筐体の販売終了と部品供給不可による修理受付終了を受け、自販機事業から2021年内に撤退予定である旨を発表している(参考)。
なお、無人コンビニに採用されている自販機は、パンやお菓子、(お湯を注いでいない状態の)カップ麺など、常温で提供できるものを中心に販売しており、このような機構を備えた自販機を採用する予定はないと見られる。その場で食べる場合は、通常のコンビニと同様、備え付けの電子レンジで温めたり、ポットでお湯を注いだりする。
めん類自販機
通称「うどん自販機」として有名であり、国内で稼動するレトロ自販機として最も多い機種である。
川崎製鉄(現:JFEスチール)製、富士電機製、シャープ製の3機種が存在し、2023年現在いずれも稼動状態で現存している。
最初期に登場したのは川崎製鉄製で通称「川鉄自販機」
元々は川鉄の製鋼所で三交代制で働く従業員のために「いつでも温かいおうどんを出したい」と、深夜でも無人稼動できる自販機を自社開発したのが始まりである。
川鉄自販機がヒットすると富士電機、シャープも参入し、大うどん自販機時代となる。
2023年現在最も多く稼動しているのは富士電機の「富士電機めん類自動調理販売機」である。
鉢を蓋で押さえた上で高速回転させて湯切りを行う「遠心湯切り機構」を採用しているのが特徴で、1990年代まで製造されていたロングセラー機種であるため今も群馬、新潟、島根、山口などで現役稼動している。
うどんだけではなくそばやラーメン、工夫を凝らせば「スープに浸る料理」も販売可能である。
かき氷自販機
逆に「冷たい」状態で販売する。業務用製氷機メーカーのホシザキが有名。
中身は氷と市販のシロップのため調達は容易であるが、筐体のサポートは終了している。
瓶入り飲料自販機
缶やペットボトルではなく、ガラス瓶の飲料を販売する自販機。
缶の自販機と同じように、縦にディスプレイされている場合もあるが、横に陳列された商品がそのままディスプレイとして見えている場合もあり、缶の自販機よりもバリエーション豊か。
自販機のどこかに栓抜きとして使えるくぼみがあり、そこに王冠を引っかけて開ける。
瓶は重くかさばるだけでなく、割れないようにする配慮が必要なこと、空き瓶はリユースが求められるため消費者に空き瓶の処分方法を限定させてしまうこと、ペットボトルと異なり、開けたら栓を閉められないことなどから、現在は廃れている。
しかし、缶やペットボトルにはない、ガラスならではのひんやりした感触を求める人も多く、完全にはなくなっていない。そればかりか、コカ・コーラの瓶自販機がメーカー公式に復刻された例もある。
玩具自販機
いわゆる「ガチャガチャ(カプセル販売機)」とは異なり、紙箱で販売する。
大きさは通常の飲料用自販機と同じぐらい。
切手自販機
通常と異なりロール状のシートになっていたため、目打ちが上下にしかない(ロール切手)。
コンビニで切手が買えるようになったことから、郵政民営化直前の2007年7月をもって全面廃止となった。
関連動画
「懐かし自販機~味わいの昭和レトロ自販機コーナー」の管理人・USKによる投稿が多数を占める。
関連静画
関連立体
関連項目
外部リンク
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