戦隊(日本海軍)単語

　太平洋戦争時における主な戦隊

　第一戦隊

　連合艦隊司令長官が直率する戦隊であり、第一艦隊の第一部隊を構成していたが、昭和16年8月の組織変更によって、それまで連合艦隊長官と第一艦隊長官が兼職だったものが別々になったため、第一戦隊は第一艦隊から離れて連合艦隊司令部直属の部隊となった。
　昭和19年になると、空母機動部隊の前衛兵力として戦艦を動員する必要が出てきたこと、連合艦隊司令部を洋上の軍艦から陸上基地へ移転する構想が進められたことなどから、第一戦隊は連合艦隊直率部隊から第二艦隊の部隊へ編成替えとなった。また、同じ時期に「第一艦隊」自体が廃止された。
　レイテ沖海戦で「武蔵」が撃沈され、昭和20年を待たずして戦隊は解隊。「大和」は寄せ集め編成の第一航空戦隊へ転属、「長門」は書類上第三戦隊へ属した後、予備艦となった。

　第二戦隊

　第一戦隊に次ぐ戦艦の戦隊となっていたが、大正11年から昭和15年までは戦艦が第一戦隊のみで編成されていたので、第二戦隊は立てられなかった。連合艦隊と第一艦隊が組織として分離すると、第二戦隊が第一艦隊の主力部隊となった。主に扶桑型と伊勢型の戦艦で構成された。
　しかし太平洋戦争では空母が主役となったため出番はなく、戦隊も長門型が第一戦隊から移ってきたり、伊勢型が航空戦艦へ改装されたりでメンバーが安定せず、最後は扶桑型の2隻のみとなってレイテ沖海戦で全滅した。

　第三戦隊

　第三戦隊は長らく、「金剛型戦艦隊」か「軽巡洋艦隊」で編成・解隊が繰り返されてきたが、太平洋戦争においては金剛型の定位置となった。金剛型の高速力は空母機動部隊の随伴に必要とされ、編成によって個別に艦が引き抜かれたので、金剛型4隻が第三戦隊で揃って行動したのはセイロン沖海戦のときのみだった。
　ミッドウェー海戦後に常設機動部隊の「第三艦隊」が編成されると、「比叡」と「霧島」のペアで「第十一戦隊」が立てられて移籍。両艦は第三次ソロモン海戦で戦没する。
　第三戦隊は「金剛」と「榛名」のペアでレイテ沖海戦までを戦い、「金剛」喪失後は書類上一時的に「長門」が所属したものの、すぐに解隊となった。

　第四戦隊

　太平洋戦争における第四戦隊は高雄型重巡洋艦の定位置。第一次ソロモン海戦時に「鳥海」が第八艦隊旗艦として離籍した以外は、ほぼ一貫して4艦そろった編成で、「愛宕」は戦没まで第二艦隊の旗艦を努めた。
　レイテ沖海戦で「愛宕」「摩耶」「鳥海」を一気に喪失。「高雄」はかろうじて沈没を免れたものの、大破して戦線復帰はならず、同海戦後に解隊となった。

　第五戦隊

　第五戦隊は妙高型の定位置だったが、「那智」は千島・アリューシャン方面を担当する第五艦隊の旗艦、「足柄」は東南アジア海域の攻略・治安を担当する南遣艦隊（第十六戦隊）の旗艦として別部隊にあり、戦争中ほとんどの期間は「妙高」「羽黒」のペアで戦隊を構成していた。
　レイテ沖海戦の後は残存重巡の寄せ集め所帯となり、「妙高」のみが大破状態で終戦を迎えた。

　第六戦隊

　古鷹型と青葉型という準・同型艦による編成。開戦から一貫して4艦による編成だったが、ガダルカナル島をめぐる一連の戦闘で消耗。「青葉」のみが、修理と別戦隊への編成替えを転々として、大破状態で終戦を迎えた。

　第七戦隊

　最上型の定位置だったが、ミッドウェー海戦で「三隈」を喪失、「最上」が航空巡洋艦へ改装されて隊から離れ、昭和19年には第八戦隊と統合されて利根型の2隻が転入し、編成が大きく変わる。
　レイテ沖海戦とフィリピンの戦いの結果、残存艦が「利根」だけになったところで解隊となった。

　第八戦隊

　利根型の2隻による編成。利根型は零式水上偵察機6機を搭載できる航空巡洋艦だったので、開戦以来、空母機動部隊（第一航空艦隊・第三艦隊）に編成されて艦隊の索敵任務を担った。
　昭和19年に第七戦隊と統合されて、こちらは解隊となった。

　第九戦隊

　軽巡洋艦はふつう、駆逐隊を率いて水雷戦隊の旗艦となるが、「北上」と「大井」は重雷装艦に改装された特殊な艦だったので、この2隻によって組まれたのが第九戦隊である。
　しかし空母主兵時代の到来で重雷装艦の出番はなく、出撃機会のないまま解隊されて、両艦は連合艦隊司令部の附属艦へ移籍した。「大井」は昭和19年7月に戦没、「北上」は大破状態で終戦を迎えた。

　第二十一戦隊

　開戦時は軽巡「多摩」「木曾」と特設水上機母艦「君川丸」によって編成され、南方攻略作戦へ参加。昭和17年からは重巡「那智」が第五艦隊旗艦として配され、北方作戦に投入される。
　昭和19年、マリアナ沖海戦後に第二遊撃部隊として南方へ転戦し、「足柄」が編入。「多摩」は第一機動艦隊の空母護衛艦に残り、「那智」「足柄」はレイテ沖海戦でスリガオ海峡へ突入する。

　その他の戦隊

• 第十戦隊は軽巡「長良」→「阿賀野」→「矢矧」を旗艦とする水雷戦隊として編成。
• 第十一戦隊は上記のように、第三戦隊から「比叡」「霧島」を引き抜いて編成。
• 第二南遣艦隊として「足柄」を旗艦とする第十六戦隊。「足柄」の他は「長良」や「球磨」など、重巡と軽巡によって編成される特殊な構成でメンバー入れ替わり激しい。レイテ沖海戦時は重巡「青葉」が旗艦。
• 第十八戦隊は軽巡「天龍」「龍田」による水雷戦隊として編成。駆逐隊は持たず。
• この他、引き抜きや臨時編成・旧式艦による編成などで、幾つもの戦隊が立てられた。戦争末期には急ごしらえの護衛艦隊（100番代の戦隊）や、特攻兵器による「特攻戦隊」があった。

　太平洋戦争時における主な航空戦隊

→一航戦 も参照

　第一航空戦隊

　航空戦隊には空母のほかに、いわゆる“トンボ釣り”のための駆逐艦が配属されていたが、第一航空艦隊の編成を期に駆逐艦は艦隊内の水雷戦隊へ集約され、航空戦隊には空母のみが配属された。
　開戦時は「赤城」「加賀」。両艦をミッドウェー海戦で喪失すると、五航戦から「翔鶴」「瑞鶴」が横滑りして戦争後期の機動部隊中核戦力を担った。昭和19年6月のマリアナ沖海戦敗北で、航空戦力は事実上消滅。形式的に空母が配属され続けたが、搭載する航空機は無かった。
　最末期は残存空母の寄せ集めで戦隊司令官すらいなくなり、書類上は戦艦「大和」が配属されるなど、部隊としての体をなしていなかった。

　第二航空戦隊

　昭和14年以来「蒼龍」「飛龍」の定位置。両艦をミッドウェー海戦で喪失すると、商船改造空母「隼鷹」「飛鷹」が配属されて南方戦線を戦う。マリアナ沖海戦で「飛鷹」が撃沈された後は、搭載する航空機が無くなって解隊された。

　第三航空戦隊

　戦争前は主に水上機母艦で構成されていた戦隊で、開戦時は空母「鳳翔」「瑞鳳」だったが特に戦力として計上されているわけではなく、昭和17年に一度解隊される。
　空母「千歳」「千代田」が就役すると、一航戦にいた「瑞鳳」が転入して再編成。マリアナ沖海戦後は「瑞鶴」も転入して事実上唯一の空母部隊となり、レイテ沖海戦で囮の任務を全うして全滅する。

　第四航空戦隊

　開戦時の空母は「龍驤」だけで、「祥鳳」が就役すると四航戦に入れられたが、「龍驤」は東南アジア方面へ出撃していたので統一行動を取ることはなかった。昭和17年に一度解隊。
　戦艦「伊勢」「日向」が航空戦艦に改装されると、両艦は戦艦戦力ではなく空母戦力として数えられ、これで四航戦を再編成。しかし搭載する航空機が無かったので、結局は戦艦としてレイテ沖海戦を戦った。

　第五航空戦隊

　開戦直前に完成した翔鶴型空母「翔鶴」「瑞鶴」によって編成。他の航空戦隊からの転勤と新人パイロットで構成されていたので、練度が劣ると一段低く見られていたが、真珠湾やセイロン沖では十分に戦った。ただし珊瑚海海戦では、米空母を味方空母と誤認して着艦しようとしたり、指揮の乱れで多くの損害を出した。
　珊瑚海での損害を回復するためにミッドウェー海戦へは参加していなかったので、機動部隊が再編されると「赤城」「加賀」を喪失した一航戦へ横滑り。五航戦はそのまま自然消滅となった。

　太平洋戦争時における主な水雷戦隊

※本節では開戦時編成のみ解説する。

第一水雷戦隊(連合艦隊第一艦隊)

第二水雷戦隊(第二艦隊)

第三水雷戦隊(連合艦隊第一艦隊)

第四水雷戦隊(第二艦隊)

第五水雷戦隊(第三艦隊)

第六水雷戦隊(第四艦隊)

　関連静画

　関連項目