数学(教科)とは、学校(日本では、中学校や高等学校など。学校教育法第一条で定められている。)において指導される教科の一つである。日本の小学校の教科では算数科が相当する。
ここでは日本の学校における教科としての数学を扱い、記事内容は現行の学習指導要領(平成24年4月入学生より実施)による。
概要
日本の学校の指導教科における数学は、文字通り学問としての数学の基礎を学ぶ。学校での指導に当たっては法律で定められる教員免許状が求められる。文部科学省の定める学習指導要領において教科の目標が次のようにかかげられている。
数学的活動を通して,数量や図形などに関する基礎的な概念や原理・法則についての理解を深め,数学的な表現や処理の仕方を習得し,事象を数理的に考察し表現する能力を高めるとともに,数学的活動の楽しさや数学のよさを実感し,それらを活用して考えたり判断したりしようとする態度を育てる。
高等学校学習指導要領 第2章 学科に共通する各教科 第4節 数学
数学的活動を通して,数学における基本的な概念や原理・法則の体系的な理解を深め,事象を数 学的に考察し表現する能力を高め,創造性の基礎を培うとともに,数学のよさを認識し,それらを 積極的に活用して数学的論拠に基づいて判断する態度を育てる。
教科の内容についても、学習指導要領にて定められている。現行の学習指導要領では、中学校および高等学校においては教科として定められ、さらに高等学校においては「数学I」など6科目に細分化されている。
中学校における数学
中学校における数学の授業時数は、学校教育法施行規則によると、次のように定められている。
学年 | 第一学年 | 第二学年 | 第三学年 |
授業時数 | 140 | 105 | 140 |
また、各学年の内容は学習指導要領解説によると次のように定められている。詳細は学習指導要領解説を参照されたい。
高等学校における数学
ここでは、2003年施行の課程を「旧課程」、2012年施行の課程を「現行課程」、2022年4月施行の課程を「新課程」とする。2023年現在、高校3年にあたる世代が現行課程、高校1・2年にあたる世代が新課程を履修している。
新課程における高等学校での数学の標準単位数は次のように定められている。「数学I」については必修科目と定められている。
科目 | 数学I | 数学II | 数学III | 数学A | 数学B | 数学C |
標準単位数 | 3 | 4 | 3 | 2 | 2 | 2 |
また各科目の内容は次のように定められている。
数学I | 数学A |
数学II | 数学B |
数学III | 数学C |
各科目の概要や特性
数学I
上述した通り、「数学I」は必履修科目と定められている。また科目は「高等学校数学における基礎的・基本的な知識や技能及びそれらを活用する能力などを身に付けることをねらい」(学習指導要領解説)とされている。
現行課程と新課程の内容に大きな違いは無いが、細かな変更点が何点か存在する。
数学II
3次、4次方程式といった高次方程式の解き方や、「図形と方程式」「指数関数・対数関数」「三角関数」で関数と図形についての理解を深め、「微分・積分の考え」で微分法・積分法の基本的な考え方を学ぶ。
現行課程と新課程に大きな違いはない。
数学III
微分法・積分法についてさらに詳しく扱う。この科目のみ、数学に強い興味や関心を持ちさらに学習しようとする生徒や将来数学を必要とする分野や学問に進む生徒が履修する科目である。
現行課程の「平面上の曲線と複素数平面」は新課程では数学Cに移行した。
数学A
3項目のうち、選択して履修することになる。
新課程における変更点は以下のとおり。
このため、現行課程では多くの高校で三項目全てを履修対象としていたが、新課程では「場合の数と確率」「図形の性質」の二項目を履修対象としている。
数学B
3項目のうち、選択して履修することになる。
新課程における変更点は以下のとおり。
現行課程では多くの高校が「ベクトル」「数列」を履修していたが、新課程では「統計的な推測」「数列」を履修することになる。
「ベクトル」が数学Cに移行した点については後述。
数学C
現行課程では廃止となっていたが、新課程で復活。
旧課程に実施していたセンター試験と異なり、大学入試共通テストは数学Cも数学②の対象に含まれる(後述)。
3項目のうち、選択して履修することになる。
2単位分履修する場合、「ベクトル」「平面上の曲線と複素数平面」を履修することになる。
一方、1単位のみの場合、「ベクトル」のみの履修が主流となる。
現行課程に沿うなら理系は前者、文系は後者に当てはまる。
このため、数学Cの中からベクトルのみ収録した参考書も存在する。
行列の扱いについて
線形代数学で扱われ、物理学や計算機など広い分野で行列は扱われるが、現行課程では数学Cの消滅とともに数学活用で、新課程では数学Cの「数学的な表現の工夫」内で扱われている。この科目においては離散グラフなど、数学的事象を行列で表現することや演算などを学習する。しかし、必修科目ではないため、多くの高校では履修しない。
実施年度 | 行列を扱う科目 |
昭和31年発表 | なし |
昭和35年10月施行 | なし(応用数学の中で学科により必要に応じて「行列式」を扱える) |
昭和48年4月施行 | 数学一般、数学IIA、数学IIB、応用数学 |
昭和57年4月施行 | 代数・幾何 |
平成15年4月施行(旧課程) | 数学C |
平成24年4月施行(現行課程) | 数学活用 |
令和4年4月実施(新課程) | 数学C |
これらは国立教育政策研究所の学習指導要領データーベースで確認できる。
ベクトルの数学C以降について
さて、ベクトルが数学Cに移行した理由は、旧課程と新課程における数学B・数学Cの位置づけの変化したからである。
旧課程では数学Ⅱと数学Bを高校2~3年で履修、数学Ⅲと数学Cは理系を中心に高校3年で履修するのが一般的だった。この構図は数学Cが廃止になった現行課程でも変わりない。
しかし、新課程においては数学Ⅰを履修していれば数学Bよりも先に数学Cを履修するケースが存在する。これは、数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲが順番に履修するのが前提の科目に対して、数学A・B・Cは数学Ⅰの履修を前提としているのみで、履修する順番は問われていないからだ。
特に、数学Cの「ベクトル」は数学Ⅱの「図形と方程式」と結び付けて理解を深めることが可能で、理系にとっても物理の力学を履修する上でベクトルは必要不可欠な要素である。
従って、数学Bよりも先に数学Cの「ベクトル」を履修することは理に適っていると言える。
大学入試共通テストにおける数学Ⅱ・数学B・数学C
では、大学入試共通テストではどうか。
共通テストでは数学②において、数学Ⅱ・数学B・数学Cを1つの科目(数ⅡBC)として扱っている。
このうち、必須問題は数学Ⅱの範囲から出題、選択問題は数学B・数学Cの範囲から出題される。
選択問題については、4問中3問選択。受験者は「統計的な推測」「数列」「ベクトル」「平面上の曲線と複素数平面」の中から選択することになる。
関連項目
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