【 東方昭和伝第八部 複雑怪奇編 】 [ 昭和13年3月 ~ 昭和14年1月 ]
≪ 主なできごと ≫ ナチスドイツのオーストリア併合 近衛内閣改造 徐州作戦 張鼓峰事件 ミュンヘン会談 汪兆銘の和平工作 近衛内閣総辞職と平沼内閣成立 三国同盟問題 ノモンハン事件 日米通商航海条約破棄 独ソ不可侵条約 第二次世界大戦開戦
出演
≪ 役名・肩書き・演者 肩書きは原則として作中の現職。元職は特記のみ ≫
宮中
- 近衛文麿 (第34代総理大臣 枢密院議長 公爵) ・・・ アリス・マーガトロイド
- 平沼騏一郎 (第35代総理大臣 男爵) ・・・ 四季映姫・ヤマザナドゥ
- 木戸幸一 (近衛内閣厚生大臣 平沼内閣内務大臣 侯爵) ・・・ 八雲藍
- 賀屋興宣 (近衛内閣大蔵大臣) ・・・ 秋静葉
- 宇垣一成 (近衛内閣外務大臣 陸軍大将) ・・・ 伊吹萃香
- 岡田啓介 (重臣 元・総理大臣 予備役海軍大将) ・・・ 聖白蓮
官僚
- 板垣征四郎 (中将 近衛・平沼内閣陸軍大臣) ・・・ 魅魔
- 梅津美治郎 (中将 陸軍次官) ・・・ 朱鷺子
- 東条英機 (中将 陸軍次官) ・・・ 鍵山雛
- 武藤 章 (大佐 北支那方面軍参謀副長) ・・・ リグル・ナイトバグ
- 服部卓四郎 (中佐 関東軍参謀) ・・・ メルラン・プリズムリバー
- 辻 政信 (少佐 関東軍参謀) ・・・ リリカ・プリズムリバー
- 米内光政 (大将 近衛内閣海軍大臣) ・・・ 上白沢慧音
- 山本五十六 (中将 海軍次官) ・・・ 藤原妹紅
- 井上成美 (少将 海軍省軍務局長) ・・・ 河城にとり
- 高木惣吉 (大佐 海軍省官房調査課員) ・・・ 北白河ちゆり
外国要人
- 蒋介石 (中国国民党総裁 大元帥) ・・・ 紅美鈴
- 汪兆銘 (中国国民党副総裁) ・・・ 大妖精
- ウィンストン・チャーチル (大英帝国庶民院 保守党議員) ・・・ 八意永琳
- フランクリン・ルーズベルト (第32代合衆国大統領) ・・・ 古明地さとり
- コーデル・ハル (合衆国国務長官) ・・・ リリー・ホワイト
- ジョセフ・グルー (合衆国駐日大使) ・・・ 洩矢諏訪子
- ヨシフ・スターリン (ソ連共産党書記長) ・・・ 比那名居天子
- ヴャチェスラフ・モロトフ (ソ連外務人民委員) ・・・ カナ・アナベラル
- アドルフ・ヒトラー (ドイツ第三帝国総統) ・・・ フランドール・スカーレット
- ヨアヒム・フォン・リッベントロップ (ドイツ第三帝国外務大臣) ・・・ Elis(東方project)
そのほかモブ役として、射命丸文(マスコミ)・魂魄妖忌(将校級軍人)・高木社長(随時)
用語解説
海軍兵学校の卒業年次や兵学校同期間における卒業順位の俗称。「軍人はホシの数(階級)よりメシの数(古参/新参)」の不文律をあらわすもののひとつで、海軍においては階級の昇進・艦長や艦隊司令官への就任など、人事を左右する大きな指標となっていた。
海軍兵学校29期を68番/125人で卒業した米内光政が、海軍大将・連合艦隊司令長官・海軍大臣まで出世したのは異例のことで、ほとんどの場合は卒業年次・卒業席次による「順送り人事」が慣例化。このため、古参(先任)であるがゆえに門外漢の兵科を扱う艦隊・戦隊へ配属される事態を招くことも多く、有名なものとして水雷畑の南雲忠一(兵学校36期)が、航空戦に詳しい小沢治三郎(37期)や山口多聞(40期)より先任者だったため、第一航空艦隊(空母機動部隊)の長官に座らされた事例がある。
また「ハンモックナンバーの下位者が上位者を指揮できない」の慣例は、当然のことながら「上位者Aが出世しないので下位者Bが出世できない」「下位者Dを長官にするので上位者Cを予備役に回す」「下位者Fが大将になるので上位者Eも大将に昇進」といった、人事の硬直化・不適材不適所の弊害を数多くもたらした。
人物評伝
※キャスティングされていなくて、作中登場の多い人物につき
昭和期の陸軍軍人、最終階級は中将。岐阜県出身。陸軍大学校27期卒業で、同期生に今村均・本間雅晴、そして東条英機。
幼少期に在日ドイツ人の家庭に預けられていたという生い立ちから、ドイツとの関わりが深く、大正10年(1921年)以降は駐ドイツ大使館や駐オーストリア公使館付き武官を長く勤め、日本本国や大使館外交官らとは全く別の、独自のドイツ政界・軍部との関わりを形成。外務省が軽視していたナチスとも深くつながり、ナチスが政権を握るとたちまちのうちにドイツ政府との交渉は、大島無しにはできなくなってしまった。
日独防共協定締結問題では、反対派の駐英大使・吉田茂と論争。防共協定の日独同盟化問題では消極派の駐独大使・東郷茂徳を、親独派の陸軍幹部やドイツ外相リッベントロップとの提携で駐ソ大使へ転出させ、昭和13年(1938年)自らが駐独大使に就任。日独伊三国同盟の締結に邁進して、ヒトラーからの絶大な信頼を得る。
ヒトラーの信頼および自らのナチスへの心酔から、ナチス政府の枢密情報にすらしばしば与るようになった大島から日本本国への通信は、日本政府や軍部の深く信頼するものとなっていたが、第二次世界大戦そして独ソ戦でドイツの戦局が敗勢を増しても、ドイツ軍への過信・ナチス政府のプロパガンダへの盲信に基づいた「大島電」は、日本の外交判断を大きく誤らせることになった。ドイツの敗戦後、ベルリンからの逃亡先の南ドイツで連合軍に捕らえられ、日本へ送還。極東軍事裁判にA級戦犯として起訴され、1票差で絞首刑を免れて終身刑。
明治から昭和にかけての財界人・政治家。名を音読みして、通称「せいひん」。山形県出身。米沢中学から慶應義塾に出、のち渡米してハーバード大学で学ぶ。帰国後、慶應義塾塾長・小幡篤次郎の紹介で三井銀行に入り、頭角を現して三井財閥の中枢を担うようになる。財閥の実力者・中上川彦次郎の娘と結婚してその地位を固め、明治44年(1911年)より23年にわたって三井銀行常務取締役(大正8年から筆頭乗務)。
昭和金融恐慌(第1次若槻内閣 憲政会)に際しては、台湾銀行・鈴木商店の破綻が三井(池田)の資金引き揚げによるものだと批判され、のちの金解禁と世界恐慌による不況(浜口・第2次若槻内閣 民政党)下で起こったドル買事件(ドル買問題)においては、時の大蔵大臣・井上準之助と激しく争った。昭和7年(1932年)、三井合名理事に就任して財閥の実質的責任者となり「財閥総帥」の名を不動のものとする。
三井退職の翌昭和12年(1937年)、日本銀行総裁に就任。同年10月、近衛文麿首相に乞われて内閣参議に入り、昭和13年(1938年)5月の内閣改造で大蔵大臣兼商工大臣を務める。このころになると「首相候補」としても名前が挙がるようになり、実際に平沼内閣の後継を選ぶ過程において元老・西園寺公望が1度は「池田首相」を模索したが、陸軍や近衛の支持を得られずに終わった。
昭和16年(1941年)、枢密顧問官。開戦後はその経歴から親・米英派と見られて憲兵に監視される。敗戦後、いったんA級戦犯指定を受けたものの、解除。のち、GHQによる「財閥解体」に積極的に協力したことで、三井家から深く恨まれたと言われる。
大英帝国の第60代首相・第一大蔵卿。
父はボーア戦争当時の植民地大臣ジョゼフ・チェンバレン、異母兄は外相としてロカルノ条約を締結し、ノーベル平和賞を受賞したオースティン・チェンバレンという英国政界の名門出身。1918年に下院(庶民院)議員に当選し、1923年から37年にかけて、ボールドウィン内閣(保守党)・マクドナルド内閣(挙国一致)などで保健大臣・大蔵大臣を歴任。1937年、第3次ボールドウィン政権のあとを受けて内閣を組織する。
ヒトラー・ドイツの台頭により、ヨーロッパ情勢が風雲急を告げるなかで展開されたチェンバレンの外交は「宥和政策(宥和外交)」と称され、後世「腰抜け外交」の典型とされて激しく批判を浴びることになる。しかしミュンヘン会談の結果自体は、少なくともその直後においては「平和をもたらした」として絶賛されていたし、また英帝国の軍備や経済が前大戦の後遺症に苦しむ中、結果的には対独戦の準備をする時間を稼いだとする評価も、一部にはある。
とは言え、ドイツの強攻策で「ミュンヘンの平和」がなし崩しにされ、第二次世界大戦の勃発に至ってチェンバレンの名声は失墜し、1940年5月のドイツ軍オランダ侵攻をもって首相辞任に追い込まれる。後任のチャーチルは、蔵相・庶民院院内総務・枢密院議長として挙国一致内閣にチェンバレンを留めようとしたが、宥和外交の責任を問う労働党党首クレメント・アトリー(挙国一致内閣・王璽尚書)の反対で院内総務・枢相のみの就任となった。だがこの時すでに胃癌に犯されており、9月辞任・11月死去。
第八部の参考資料
・阿川弘之「山本五十六(上)」(新潮文庫)
・阿部牧郎「危機の外相東郷茂徳」(新潮文庫)
・阿部牧郎「勇断の外相重光葵」(新潮社)
・アラン・ブロック、鈴木主税訳「対比列伝 ヒトラーとスターリン第2巻」
・猪木正道「評伝吉田茂3」(ちくま学芸文庫)
・臼井勝美「新版 日中戦争」(中公新書)
・NHK取材班、下斗米伸夫「国際スパイ ゾルゲの真実」(角川文庫)
・生出寿「反戦大将井上成美」(徳間文庫)
・生出寿「悪魔的参謀辻政信」(徳間文庫)
・生出寿「米内光政」(徳間文庫)
・大井孝「欧州の国際関係 1919-1946」(たちばな出版)
・岡崎久彦「重光・東郷とその時代」(PHP文庫)
・荻原延壽「東郷茂徳 伝記と解説」(原書房)
・桶谷秀昭「昭和精神史」(文春文庫)
・御田重宝「人間の記録 ノモンハン戦(壊滅編)」(徳間文庫)
・勝田龍夫「重臣たちの昭和史(下)」(文芸春秋)
・加藤陽子「戦争の日本近現代史」(講談社現代新書)
・加藤陽子『昭和14年の対米工作と平沼騏一郎』
・風間道太郎「尾崎秀実伝」(教養選書)
・亀井宏「東條英機(上)」(光人社NF文庫)
・河合秀和「チャーチル」(中公新書)
・川田稔「昭和陸軍の軌跡」(中公新書)
・北岡伸一「日本の近代5 政党から軍部へ」(中央公論新社)
・木畑洋一「第二次世界大戦 現代世界への転換点」(吉川弘文館)
・纐纈厚「日本海軍の終戦工作」(中公新書)
・児島襄「天皇Ⅲ 二・二六事件」(文春文庫)
・児島襄「天皇Ⅳ 太平洋戦争」(文春文庫)
・児島襄「第二次大戦 ヒトラーの戦い2」(文春文庫)
・児島襄「日中戦争Vol.3」(文芸春秋)
・ゴードン・W・プランゲ「ゾルゲ東京を狙え(上)」(原書房)
・五味川純平「ノモンハン」(文藝春秋)
・斎藤勉「スターリン秘録」(扶桑社文庫)
・迫水久常「機関銃下の首相官邸」(恒文社)
・塩田潮「昭和の怪物 岸信介の真実」(WAC文庫)
・ジョセフ・グルー「滞日十年(下)」(ちくま学芸文庫)
・ジョン・ワイツ「ヒトラーの外交官 リッベントロップは、なぜ悪魔に仕えたか」(サイマル出版会)
・杉森久英「参謀・辻政信」(河出文庫)
・W.チャーチル「第二次世界大戦 1」(河出文庫)
・筒井清忠「近衛文麿 教養主義的ポピュリストの悲劇」(岩波現代文庫)
・筒井清忠「昭和十年代の陸軍と政治」(岩波書店)
・多田井善生「決断した男 木戸幸一の昭和」(文藝春秋)
・茶谷誠一「昭和天皇側近たちの戦争」(吉川弘文館)
・戸川猪佐武「昭和の宰相第2巻 近衛文麿と重臣たち」(講談社)
・戸部良一「失敗の本質 日本軍の組織論的研究」(中公文庫)
・豊田穣「孤高の外相 重光葵」(講談社)
・豊田穣「最後の元老 西園寺公望(下)」(新潮社)
・豊田穣「激流の弧舟 提督・米内光政の生涯」(講談社)
・中村隆英「昭和経済史」(岩波現代文庫)
・秦郁彦「昭和史の謎を追う(上)」(文春文庫)
・秦郁彦「昭和史の軍人たち」(文春文庫)
・半藤一利「昭和史」(平凡社)
・半藤一利「ノモンハンの夏」(文藝春秋)
・平瀬努「海軍少将 高木惣吉正伝」(光人社)
・福田和也「地ひらく 石原莞爾と昭和の夢」(文芸春秋)
・福田和也「昭和天皇 第五部 日米交渉と開戦」(文芸春秋)
・藤岡泰周「海軍少将 高木惣吉 海軍省調査課と民間人頭脳集団」(光人社)
・藤田安一『戦時財政経済政策における「生産力理論」の批判的検討』
・藤原彰「昭和の歴史5 日中全面戦争」(小学館)
・古川隆久「昭和天皇」(中公新書)
・保阪正康「東條英機と天皇の時代」(ちくま文庫)
・保阪正康「昭和陸軍の研究(上)」(朝日文庫)
・保阪正康「蒋介石」(文春新書)
・保阪正康「吉田茂という逆説」(中公文庫)
・毎日新聞社「決定版 昭和史9」
・前田靖一「帝国に奉じたチャーチル(下)」(彩流社)
・武藤章「比島から巣鴨へ」(中公文庫)
・森正蔵「解禁 昭和裏面史」(ちくま学芸文庫)
・森山康平「はじめてのノモンハン事件」(PHP新書)
・矢吹一夫「昭和動乱私史(中)」(経済往来社)
・R・ワイマント「ゾルゲ 引き裂かれたスパイ(上)」(新潮文庫)
・渡邉行男「宇垣一成」(中公新書)
・フランクリン・ルーズベルトの国家戦略―孤立主義からの変革―(http://www.mercuryparty.com/fdr.html)
関連項目
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