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武霊王（生年不明～紀元前295年）とは、中国春秋戦国時代の趙の君主である。
なお、生前に王号を称したことはないが（他国が王号を称しても「君」と呼ばせていた）、子の恵文王が王号を称したため武霊王という諡を贈られている。本項でも武霊王という呼称で統一する。
君主として立つ
姓は嬴。氏は趙。諱は雍。粛侯の子。
紀元前326年に趙の君主として即位した時はまだ若く、先代の家臣である肥義の補佐を受けた。
武霊王の代、趙は商鞅の改革によって強大となった秦に侵略されつつあり、また中山国などの遊牧民族に囲まれ、常に外敵の脅威に晒されていた。
そこで武霊王は紀元前307年、遊牧民族の戦闘スタイルを身に付けさせ、まず衣服を遊牧民族のそれに改めようとした。これが「胡服騎射」である。
胡服騎射
武霊王が胡服騎射の導入を群臣にはかったところ、肥義は賛成したが、武霊王の叔父である公子成をはじめほとんどの群臣は反対した。
もともと中原諸国の風俗は裾の長いゆったりとした衣服であり、戦車に乗って矢を射るくらいなら良いが遊牧民族のように直接馬に乗るのには不便である。そこで武霊王は、ピチっと体に密着するような裾の短い上衣とズボンをまず着ることで、遊牧民族の戦闘スタイルを趙に導入しようとしたのである。
しかし長年の伝統をいきなり変えろと言われるのは抵抗がある人が多い。『史記』趙世家には、武霊王が公子成らに辛抱強く説得するシーンが描かれている。武霊王の熱意に公子成もついに折れて、他の群臣も胡服を着ることに従った。
胡服騎射を取り入れた趙の軍隊は何度も中山国を攻めてはその領土を奪い、ついに紀元前296年に中山国の併合に成功する。趙は武霊王のもとで秦に対抗すべく国力を増大していった。
秦への侵入
それより先の紀元前298年、武霊王は次男の公子何に王位を譲る（公子何は、武霊王が夢で見た美女と似ていたということで娶った孟姚という娘との間にできた子。それまで太子だった公子章は廃した）。主父と称し、引き続き趙の政治を執った。
武霊王は中原最強の秦を攻めようとして、その手始めに秦の偵察を行うべく、自ら使者に扮して秦王の昭襄王と会見した。もともと武霊王は紀元前307年、秦の武王が急死すると燕にいた弟の公子稷（後の昭襄王）を秦に送り込んだ過去があった。
昭襄王は趙の使者に異様な威圧感を持った人物が紛れ込んでいたのを思い出し、その使者を追わせたが既に国境を超えており、この人物が武霊王だと知ると秦の上下は大変驚いた。
沙丘の乱
紀元前295年、武霊王は元太子の公子章に憐れみの心を起こし、趙の北側の代国の君主としようとするが沙汰止みとなる。武霊王は恵文王と共に沙丘という所に遊びに行き、別々の宮殿に泊まった。
ここで公子章がお付きの田不礼と反乱を起こし、公子章は主父（武霊王）の命令と称し恵文王を招き殺そうとした。肥義がまず入った所を殺される。
この反乱を公子成と李兌が鎮圧、田不礼らの郎党を皆殺しにする。しかし公子章が武霊王の宮殿に逃げ込み、武霊王がこれを匿ったことで事態はややこしくなった。公子成と李兌は武霊王の宮殿を囲み、その間に公子章が死亡。
反乱は終わったはずだが、公子成と李兌は武霊王に兵を向けた形となり、包囲を解くと後で誅殺されるかもしれないと考え、武霊王の宮殿の包囲を続けた。周りの者は皆逃げて降ってしまい、一人宮殿に取り残された武霊王は食料も尽き鳥の巣の雛を食べるなどしたが、3ヶ月あまりで餓死した。
評価
『史記』の作者、司馬遷は「最初に太子がありながらそれを廃し次子を立てた。しかし元の太子に憐れみを起こし、決断できないうちに動乱のため父子共に死ぬ羽目になり、天下の笑い者となった。哀しいことである（為天下笑、豈不痛乎）」と言っている。
系図
趙衰(趙成子)
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（4代略）
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趙鞅(趙簡子)
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（6代略） 趙無恤(趙襄子)
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成侯(趙種)
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粛侯(趙語) 公子緤 安平君(趙成)
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武霊王(趙雍)
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安陽君(趙章) 恵文王(趙何) 平陽君(趙豹) 平原君(趙勝)
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孝成王(趙丹)
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悼襄王(趙偃)
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代王(趙嘉) 幽繆王(趙遷)
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関連項目
- 春秋戦国時代の人物の一覧
- 胡服騎射
- 平原君（武霊王の末子）
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