毛利元就(大河ドラマ)とは、1997年に放送された第36作目のNHK大河ドラマである。
概要
脚本は連続テレビ小説「ひらり」「私の青空」などのヒット作を生み出した内館牧子。主演は大河ドラマの常連でもある歌舞伎俳優の中村橋之助(現:8代目中村芝翫)。
「独眼竜政宗」の伊達政宗と同様に、それまで一般的には(三本の矢のエピソードを除いて)あまり知名度が高くなかった戦国大名・毛利元就を一躍有名にした作品。また、戦国時代を舞台にした作品でありながら、三英傑(信長・秀吉・家康)が誰も登場しない(どころか、家康が登場しない唯一の戦国大河である)。その一方、他の大河ドラマには登場しないマイナーな人物が多数を占めたにも拘わらず、ホームドラマと骨太な描写のバランスの良さも相まって(詳しくは後述)、前年の「秀吉」に劣らぬ人気を博した。なお、本編の登場人物で他の大河ドラマに登場したキャラクターは非常に少なく、足利義稙・吉川元春・小早川隆景・毛利輝元・山中鹿介ぐらいしかいない(義稙は「花の乱」に登場する)。
登場人物に馴染みのない人物が多い分、一人一人が丁寧かつ個性豊かに描かれている。特に前半では、時に元就の前に立ちはだかり、彼にとってはある意味人生の師とも言える梟雄・尼子経久が、緒形拳の好演もあって並外れた存在感を放っている。恐らく、このドラマで経久を知った人が多数であろう(詳しくは尼子経久の大百科記事を参照)。また、これまで下克上の代表例のひとりにして、松永久秀と共に逆臣というマイナスイメージが強かった陶晴賢が、大内家を守るために主君・義隆を討つ悲壮感漂う悲劇の人物として描かれ、結果的に晴賢の名誉挽回にも繫がった。この他にも、一癖二癖もある毛利家臣団の面々をはじめ、登場人物の描写の細かさではこの頃の田大河ドラマではトップクラスである。
原作小説「山霧」は元就の妻・美伊の方(原作の呼び名は「おかた」)が主人公で、美伊が元就に嫁いでから亡くなるまでの、原作の部分が描かれたのは本編中盤である。そのため、若き日の元就や美伊の死後(本編最大のクライマックスである厳島の戦いなど)は内館牧子のオリジナルストーリーが展開される。
本編最大の特徴は、女性キャラが皆元気で逞しいこと。なにしろ、第一回のサブタイトルが「妻たちの言い分」と、元就ではなく継母・杉の方の事を表したものである。美伊や杉の方のはじめ、本編に登場する女性達はみな気が強い面々ばかりで、元就は最初から最後まで振り回されてばかりであり、この作品で元就がぼやいてばかりいるのも原因の半分はだいたいこれらに起因する。しかし「利家とまつ」や「江〜姫たちの戦国〜」のような歴史上の出来事に女性キャラがやたらとしゃしゃり出ることはなく、男たちの戦いや謀略がうずまくシリアスパートと、毛利家の家庭内をユーモラスに描いたコメディパートが偏らずバランス良く描かれており、内舘のシナリオの質の高さが窺える。
90年代以降の大河ドラマでは、プロの書道家や大御所俳優が題字を担当するケースが主流となっているが、その中でも本作では題字を主人公である毛利元就本人が記している。当然ながら元就本人に書いてもらったわけではなく、元就が実際に残した書状を使用しており、ドラマのオープニングで一字ずつ記される演出が取られている。
キャスティングは森田剛を除いてアイドル枠がほとんど無く、小劇団をはじめとする舞台俳優が数多く出演しているのが特徴。そのためか、「新選組!」と共通するキャストが多く見られる。
毛利元就で是非見ておきたい回
第1回 | 松寿丸(少年時代の元就)と経久の運命的な出会い。酒乱で松寿丸に刃を振りかざす父・弘元で幕を閉じる衝撃の幕切れ。 |
第7回 | 戦で心に大きな傷を負った兄・興元の悲劇。大量の鼻水を流しながら号泣する渡部篤郎の熱演は必見! |
第10回 | 西の桶狭間と呼ばれる元就の初陣。捨て身の戦いで、武名を大いに轟かす。 |
第11回 | 美伊との新婚初夜・・・のはずが、元就がヘタレのせいで大惨事に。全家庭のお茶の間が凍り付いた。 |
第14回 | 主君を裏切った降将を容赦なく斬り捨てる経久。サブタイトルが経久と元就の関係をよく表している。 |
第15回 | 家督相続回。志道広良の捨て身の機転と、異母弟・相合元網への遠慮から渋る元就への説得は必見。 |
第16-17回 | 家督相続後の大粛清回。藤野の淡い初恋は、あまりにも残酷な結末へと向かう。 |
第22回 | 言わずと知れた三本の矢の逸話がここで登場。仲間外れにされた事に腹を立てた可愛が乱入し、四本の矢に!? |
第25回 | 一大の梟雄・尼子経久が太く長い生涯を終えた。死後もなお、彼の謀略は元就を追い詰める。 |
第30回 | 長らく病に伏した元就の愛妻・美伊が遂に死す。山霧が晴れる中、妻を抱きしめて涙する元就。 |
第31回 | 前回に続き、杉の方退場回。元就が初めて杉を「母上」と呼んだ日、彼女は極楽へと旅立った。 |
第35回 | 配下ながら長年元就を悩ませた奸臣・井上元兼を討伐。最期まで曲者っぷりを貫いた元兼は、火縄銃で派手に絶命する。 |
第41回 | 厳島にて、元就一世一代の大勝負。待っていたのは、勝者のない虚しき結末であった。 |
第45回 | 当主としての自信を無くした隆元のために、舞を披露する元就。橋之助の本領発揮。 |
第46-47回 | 父子の確執を乗り越えた矢先、隆元が尼子の刺客に斃れ、その悲報が元就に届く。わしの隆元-! |
第48回 | 父のいない寂しさと焦りから抜け駆けして返り討ちに遭う輝元。元就は鉄拳を振るって孫を諭す。森田は少年期の元就も演じたため、視聴者はある意味不思議な感触に。 |
最終回 | 元就が極楽へ登るか、地獄へ落ちるかを敵味方問わず亡くなった人物が再登場してジャッジを下す!視聴者を置いてけぼりにして、結局元就は極楽へ旅立った |
スタッフ
- 脚本:内館牧子
- 原作:永井路子(「山霧」「元就、そして女たち」)
- 音楽:渡辺俊幸
- 題字:毛利元就(自筆書状より)
- 語り:平野啓子
- 時代考証:岸田裕之・米原正義
- 風俗考証:二木謙一
- 衣装考証:小泉清子
- 殺陣・武術指導:林邦史朗
- 制作統括:木田幸紀
- 演出:松岡孝治、小林武
キャスト
- 毛利元就:中村橋之助(8代目・中村芝翫)
- 美伊の方:富田靖子
- 松寿丸(元就の少年時代)・毛利輝元:森田剛(二役)
- 毛利隆元:上川隆也
- 寿の方:大塚寧々
- 可愛:高橋由美子
- 吉川元春:松重豊
- 小早川隆景:恵俊彰
- 小三太:奈佐健臣
- 久:松金よね子
- 宍戸元源:石田太郎
- 宍戸隆家:加勢大周
- 阿古の方:藤吉久美子・三船美佳(少女時代)
- 美々:仁科扶紀
- 尼子義久:中村獅童
- 萩の方:高畑淳子
- 宇山久兼:磯部勉
- 亀井秀綱:河原さぶ
- 河副久信:上杉祥三
- 江良房栄:高岡健二
- 弘中隆兼:佐川満男
- 相良武任:白井晃
- 冷泉隆豊:春田純一
- 足利義殖:田口トモロヲ
- 村上虎吉:藤原喜昭
- なつ・玉姫:松本莉緒(二役)
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関連項目
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