概要
第一次世界大戦ごろから本格的に導入され始めた潜水艦だが、現在の潜水艦はその推進機関から大きく分けて以下の二つに分かれる。
- 通常動力による通常動力型潜水艦
- 通常動力型潜水艦では、ディーゼルエンジン、またはスターリング・エンジンなどAIPと呼ばれる大気を必要としない(または極僅かでいい)補助推進機関を用いて推進、もしくは蓄電池に充電した電力で航行する。しかし出力や航続時間は原子力潜水艦と比べれば僅少である。また内燃機関を使う関係上、浮上航行または浅深度でのシュノーケル航行によって継続的に空気を取り入れねばならないため、水上や空中から発見されるリスクが高い。
一方、バッテリ駆動が行えるため、原子力潜水艦に比べると静粛性では有利である場合が多く、隠密性に長ける。 - 動力源に原子炉をもつ原子力潜水艦(原潜)
- 原子力潜水艦では、小型の原子炉を搭載し、炉から発生する熱で水蒸気を生成しタービンを回して推進力、あるいはバッテリに充電する電力を得る。原子炉の大発電力から水を電気分解して酸素も作り だせるので、 乗組員の食料が続く限り・撃沈されない限り、長期間にわたって潜行することが可能である。一方で常時稼動する原子炉とタービン、および専用のスクリューが熱と音を発し、潜水艦の特性である隠密性の面では難がある。 核燃料を使う関係上整備維持や定期的な燃料交換が必要であり、メンテナンスコストも高く、また原子力を用いても最終的には蒸気駆動やバッテリ駆動に頼っているため、性能上の限界が予見されている。
- また勘違いされやすいが、原潜であるからといって戦略核(爆弾)を搭載しているとは限らない。
ただし、潜水艦には海水という強固な鎧があるため、核ミサイルなどの切り札となる兵器を(原子力)潜水艦に搭載する場合も大いにありうる。
また、役割も大別すると二つに分けられる。
- 攻撃型潜水艦(SS、SSK、SSN)
- 敵水上艦、輸送艦、輸送船などに対する攻撃を主任務とする。最近では特殊部隊の輸送、ミサイルによる対地/対艦攻撃、敵拠点の監視、機雷戦など様々な用途に用いられる。一般に潜水艦の多くはこちらに属する。
- 戦略型潜水艦(SSBN)
- 戦略核ミサイル(潜水艦発射型弾道ミサイル)を搭載し、敵の都市を標的とした相互確証破壊(MAD)を担う。戦略爆撃機、地上発射ICBMと並び核戦略では重要な要素で、海中深く潜行し位置を秘匿しつつ移動できるため抗堪性は最も高いとされる。米英露仏中が運用し、北極海などに常に展開している。
長期間潜行して核抑止を担う関係上すべて原子力駆動、というか原潜以降の区分である。また、弾道弾を撤去して多数の巡航ミサイルを搭載したものを巡航ミサイル潜水艦(SSGN)として区別する場合がある。
潜水艦は(特に原子力潜水艦の場合)出航、入港時以外は常に海中で航行しているため、他の水上艦艇とは違い衛星などでも探知しづらい。また、哨戒機やソナーで相手の位置を知ることも困難である一方、多種多様な任務をこなせることから現在の海軍の影の主力といってもいいかもしれない。
ただし爆雷や対潜ミサイル、対潜哨戒機などの対潜水艦装備(対潜装備)も多く、また発見されて撃沈されると船体の回収すらままならないため、コストの裏には使い捨てというリスクも存在する。そのような事情から、潜水艦搭乗員は海軍の中でも比較的"快適"な生活を送れることが多い。
日本では潜水艦といえば「沈黙の艦隊」や各種ゲームのおかげでイメージがしやすくなっただろう。
もっとも、あの作品に描かれているような潜水艦同士の戦いは現在(公表されているかぎり)発生していない。
一応念のために書いておくけど、発生してないのは潜水艦同士の戦いであって、「沈黙の艦隊」や「Battlestation」で起きているようなトンデモ仮想戦ではないのであしからず!
各国の潜水艦
今現在、世界で潜水艦を独自に開発、建造している国は少ない。これは潜水艦の動力、あるいは水圧に耐えられる鋼材や耐圧構造などかなりの技術蓄積が必要なためでもある。以下は主な潜水艦建造国。
- アメリカ
世界初の原子力潜水艦ノーチラス号を就航させた後、現在ではすべてを原子力潜水艦として、攻撃型原子力潜水艦(SSN)ロスアンゼルス級、シーウルフ級、ヴァージニア級をはじめ、戦略型潜水艦オハイオ級も含め計71隻を配備。非常に強力な潜水艦戦力をもつ。対地攻撃用の巡航ミサイルや特殊戦部隊投入能力など、研究・発展にも余念がない。 - ロシア
アメリカと異なり、沿岸警備などの理由から通常動力型潜水艦も建造しており、ソ連時代からは大幅に減少したものの、原子力潜水艦とあわせて計70隻あまりを保持している。有名な潜水艦としては映画「レッド・オクトーバーを追え」などで有名になった戦略型潜水艦タイフーン級(世界最大の潜水艦)・攻撃型原子力潜水艦アルファ級など。ただしこれらの艦名はNATOコード名なので、ソ連、ロシアで実際はタイフーン級は「アクラ」(→後にドミトリー・ドンスコイへ改名)(project941)。アルファ級「リーラ」(project705)と呼ばれていた。
また、中国などロシアから潜水艦を購入、あるいはロシア系技術を用いて潜水艦を建造しているなど、次にあげるドイツと並んでロシアの(流れをうけつぐ)潜水艦は世界に広まっている。 - ドイツ
第一次大戦で、圧倒的な海軍力を持つイギリスのシーレーンを絶つために、潜水艦技術を発展させた。二つの世界大戦で猛威を振るったUボートは特に有名であり、潜水艦=ドイツという1つの固定観念すら出来上がっている。
その血統なのか、通常動力型潜水艦を今でも多く建造し、世界各国に輸出、あるいはライセンス供与している。特に209型なんかは輸出ベストセラー潜水艦である。建造する潜水艦は比較的小型で、沿岸向けの通常動力型潜水艦でAIP推進が主体なので使い勝手が良いようだ。もっとも、最新型はあまりいい評判が流れてこないようだ。 - スウェーデン
武装中立の国是から独自の軍事技術の確立に力を入れており、意外と知られていないが、コンパクトな潜水艦を建造している。実はスターリング・エンジンを潜水艦AIPとして取り入れた最初の国。ゴトランド級潜水艦は数年前にアメリカにも貸し出しされたほど。 - イギリス
現在も数隻規模であるものの独自に建造した原子力潜水艦をもつ。戦略型4隻、攻撃型6隻の編成である。特に注目すべきは世界でも珍しいポンプジェット方式で推進する攻撃型原子力潜水艦トラファルガー級。また原子力潜水艦でただ一隻、水上艦艇を撃沈させたコンカラーなどが有名。現在、トラファルガー級の代替としてアスチュート級が建造中。 - フランス
第二次世界大戦以前より潜水艦を建造していた歴史のある国で、現在も原子力潜水艦を建造、配備している。最新型はル・トリオンファン級原潜(戦略型、4隻)がある。攻撃型原潜としてリュビ級(6隻)があるが、次世代攻撃型原潜として、シュフラン級の建造が計画されている。 - 中国
ソ連時代に潜水艦を供与されたのがスタート。ただし、お世辞にいって建造技術は褒められたものではなく、一世代前の騒音レベルだとか色々評価は散々だった。日本の領海を通っていた漢級の一件が最たるもので、台湾-アメリカ-日本と延々と追跡されることになった事件まである。
ただ、最近はロシアのキロ級通常動力型潜水艦を導入する一方、建造技術をいろいろな国から習得しているようで、パキスタン経由でフランスのAIP機関技術など取り入れ静粛性はかなり向上した模様(ロシアのヴィクターIII級、あるいはアメリカのロスアンゼルス級原子力潜水艦相当ともいわれる)。093型、094型といわれる最新型の戦略型、攻撃型原子力潜水艦を建造・あるいは導入中とも言われる。 - 日本
国内外の様々な問題から原子力潜水艦を保有できないため、そのすべてが通常動力型潜水艦。ついでに16隻という潜水艦の定数が決まっている。
とはいうものの技術力維持の観点からか、毎年1隻ずつ新造艦が配備されるという諸外国から見ると勿体無すぎる運用形式をとっている。1隻あたりの運用年数は16年程度であるということなので、通常建造してから20年以上は過ぎた潜水艦をだましだまし運用する国が多い中、贅沢といわれるのも仕方ない。
しかし、昨今の周辺各国の潜水艦導入ペースを考えついに増隻に転ずることを決定。耐用年数を延ばして、20隻台にまで伸ばす予定とのこと。
特徴として、通常動力型潜水艦の大きさがあげられるだろう。荒天がつづく日本海や太平洋をふくむ広大な領海があるため、艦の安定性確保や長期間の航海任務につく必要性があること、さらには乗組員が三直制で艦の運用にあたるなど日本特有の事情のため、沿岸での活動を主とするロシア、ドイツなど他国の通常動力型潜水艦に比べてほぼ二倍のサイズとなっている。
サイズ的にはもはや攻撃型原子力潜水艦とほぼ同じサイズとなっており、このようなサイズの通常動力型潜水艦を建造しているのは日本しかないのだが、それも理由があってのことである。スターリング機関、水素燃料電池などAIP技術の取得にも取り組んでおり、最新潜水艦として「そうりゅう」型が建造されている。
今のところ米軍から技術供与を受けて秘密裏に原子力潜水艦を建造したなどと言ううわさはない。
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読み:センスイカン
初版作成日: 09/04/02 21:33 ◆ 最終更新日: 12/03/21 12:49
編集内容についての説明/コメント: 日米原子力協定により核動力艦を保有することが不可能なため、国内から国内外に修正
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