単語記事: 潜水艦

編集

潜水艦とは、水中に潜行可能な軍艦の総称である。

概要

第一次世界大戦ごろから本格的に導入され始めた潜水艦だが、現在の潜水艦はその推進機関から大きく分けて以下の二つに分かれる。

原子力潜水艦(原潜)
小型の原子炉を搭載し、炉から発生する熱で水蒸気を生成しタービンを回して推進力、あるいは発電機を回して電力にする。
一度燃料を装填すれば補充が年単位で要らなくなる上に豊富なエネルギーから水を電気分解して酸素も作りだせるので、乗組員の食料が続く限り・撃沈されない限り、長期間にわたって潜行することが可能(とはいえ乗組員のストレスを加味すると数ヶ月程度が限度)。また、原子炉の大出力にモノを言わせた高速航行も大きな特徴である。
一方で原子炉は常に稼働させねばならず、常時熱と音を発するため潜水艦の特性である隠密性の面では難がある(しかしシーウルフ級以降の米原潜は通常動力と遜色無い静粛性だといわれている)。核燃料を使う関係上、建造費はもちろん整備維持や定期的な燃料交換等のメンテナンスコストも非常に高い。
勘違いされやすいが、原潜(核動力)であるからといって戦略・戦術核(核兵器)を搭載しているとは限らない。
通常動力型潜水艦
早い話が「原子炉以外の動力で動く潜水艦」。
主流はディーゼルエンジンで、補助としてスターリング・エンジンなどのAIP[1]を用いて推進、もしくはそれらの機関で蓄電池に充電した電力で航行する。しかし出力や航続時間は原子力潜水艦と比べれば僅少である。また内燃機関を使う関係上、浮上航行または浅深度でのシュノーケル航行によって継続的に空気を取り入れねばならないため、水上や空中から発見されるリスクが高い。
一方、主な騒音源である機関を任意に停止させバッテリ駆動で航行することができるため、原子力潜水艦に比べると静粛性では有利である場合が多く、隠密性に長ける。近年はバッテリ技術の進歩により、潜行できる時間も以前に比べ格段に長くなっているとされる(しかし前述の通り空気補給時の被発見リスクを加味すると必ずしも原潜より静粛性で優れているとは言い難い)。

また、役割も大別すると二つに分けられる。

タイプ 説明
攻撃型潜水艦
(SS、SSK、SSN)
敵水上艦、輸送艦、輸送船などに対する攻撃を主任務とする。最近では特殊部隊の輸送、ミサイルによる対地/対艦攻撃、敵拠点の監視、機雷戦など様々な用途に用いられる。一般に潜水艦の多くはこちらに属する。
戦略型潜水艦
(SSBN)
戦略核ミサイル(潜水艦発射型弾道ミサイル)を搭載し、敵の都市を標的とした相互確証破壊(MAD)を担う。戦略爆撃機、地上発射ICBMと並び核戦略では重要な要素で、海中深く潜行し位置を秘匿しつつ移動できるため抗堪性は最も高いとされる。米英露仏中が運用し、北極海などに常に展開している。

長期間潜行して核抑止を担う関係上ほとんどが原子力駆動の潜水艦である。また、弾道弾を撤去して多数の巡航ミサイルを搭載したものを巡航ミサイル潜水艦(SSGN)として区別する場合がある(巡航ミサイル運用専門に開発されたものもある)。

潜水艦は(特に原子力潜水艦の場合)出航、入港時以外は常に海中で航行しているため、他の水上艦艇とは違い衛星などでも探知しづらい。また、哨戒機やソナーで相手の位置を知ることも困難である一方、多種多様な任務をこなせることから現在の海軍の影の主力といってもいいかもしれない。

ただし爆雷や対潜ミサイル、対潜哨戒機などの対潜水艦装備(対潜装備)も多く、また発見されて撃沈されると乗組員はまず船体の回収すらままならないため、特長である隠密性の裏には決死というリスクも存在する。そのような事情から、潜水艦勤務は海軍の中でも比較的"快適"な生活を送れることが多い。

日本では潜水艦といえば「沈黙の艦隊」や各種ゲームのおかげでイメージがしやすくなっただろう。もっとも、あの作品に描かれているような潜水艦同士の戦いは現在(公表されているかぎり)発生していない。一応念のために書いておくけど、発生してないのは潜水艦同士の戦いであって、「沈黙の艦隊」や「Battlestation」で起きているようなトンデモ仮想戦ではないのであしからず!

各国の潜水艦

今現在、世界で潜水艦を独自に開発、建造している国は少ない。これは潜水艦の動力、あるいは水圧に耐えられる鋼材や耐圧構造などにかなりの技術蓄積が必要なためでもある。以下は主な潜水艦建造国。

国家 原潜 通常 状況
アメリカ

対地攻撃用の巡航ミサイルや特殊戦部隊投入能力など、研究・発展にも余念がない。

世界初の原子力潜水艦ノーチラスを就航させた後、現在ではすべてを原子力潜水艦として、攻撃型原子力潜水艦(SSN)ロスアンゼルス級、シーウルフ級、ヴァージニア級をはじめ、戦略型潜水艦オハイオ級も含め計71隻を配備しており、非常に強力な潜水艦戦力をもつ。

ロシア

アメリカと異なり、沿岸警備などの理由から通常動力型潜水艦も建造しており、ソ連時代からは大幅に減少したものの、原子力潜水艦とあわせて計70隻あまりを保持している。
初期にはあまりに低い放射線遮断技術や原子炉の安全性の問題があったものの、アルファ級・シエラ級・アクラ級といった高性能艦を次々と登場させアメリカを驚かせた。

有名な潜水艦としては映画「レッド・オクトーバーを追え」などで有名になった戦略型潜水艦タイフーン級(世界最大の潜水艦)・攻撃型原子力潜水艦アルファ級など。ただしこれらの艦名はNATOコード名なので、ソ連、ロシアで実際はタイフーン級は「アクラ」(→後にドミトリー・ドンスコイへ改名)(project941)。アルファ級「リーラ」(project705)と呼ばれていた。

また、中国などはロシアから潜水艦を購入、あるいはロシア系技術を用いて潜水艦を建造しているなど、ドイツと並んでロシアの(流れをうけつぐ)潜水艦は世界に広まっている。

イギリス

現在も数隻規模であるものの独自に建造した原子力潜水艦をもつ。戦略型4隻、攻撃型6隻の編成である。特に注目すべきは世界でも珍しいポンプジェット方式で推進する攻撃型原子力潜水艦トラファルガー級。また原子力潜水艦でただ一隻、水上艦艇を撃沈させたチャーチル級「コンカラー」などが有名。現在、トラファルガー級の代替としてアスチュート級が建造中。
戦略型原潜としてはタイフーン級・オハイオ級に次ぐ大型艦であるヴァンガード級を運用中。

フランス

第二次世界大戦以前より潜水艦を建造していた歴史のある国で、現在も原子力潜水艦を建造、配備している。
ド・ゴール大統領の積極的な核戦力保有政策で戦略型原潜を最優先で開発し、攻撃型原潜の開発を後回しにするという類を見ない開発計画を行った(通常、攻撃型原潜の運用実績を元に戦略型原潜を開発するのが普通)。
最新型はル・トリオンファン級原潜(戦略型、4隻)がある。攻撃型原潜としてリュビ級(6隻)があるが、次世代攻撃型原潜として、シュフラン級の建造が計画されている。

中国

ソ連時代に潜水艦を供与されたのがスタート。ただし、お世辞にいって建造技術は褒められたものではなく、一世代前の騒音レベルだとか色々評価は散々だった。日本の領海を通っていた漢級の一件が最たるもので、台湾-アメリカ-日本と延々と追跡されることになった事件まである(ただし2004年当時の時点で漢級は中国においても旧式扱いであったことを留意すべし)。

ただ、最近はロシアのキロ級通常動力型潜水艦を導入する一方、建造技術をいろいろな国から習得しているようで、パキスタン経由でフランスのAIP機関技術など取り入れ静粛性はかなり向上した模様(ロシアのヴィクターIII級、あるいはアメリカのロスアンゼルス級原子力潜水艦相当ともいわれる)。093型、094型といわれる最新型の戦略型、攻撃型原子力潜水艦を建造・あるいは導入中ともいわれる。

ドイツ

第一次大戦で、圧倒的な海軍力を持つイギリスのシーレーンを絶つために、潜水艦技術を発展させた。二つの世界大戦で猛威を振るったUボートは特に有名であり、潜水艦=ドイツという1つの固定観念すら出来上がっている。

その血統なのか、通常動力型潜水艦を今でも多く建造し、世界各国に輸出、あるいはライセンス供与している。特に209型なんかは輸出ベストセラー潜水艦である。また214型は財政危機の国が導入することと不良に定評がある。

建造する潜水艦は比較的小型で、沿岸向けの通常動力型潜水艦でAIP推進が主体なので使い勝手が良いようだ。もっとも、最新型はあまりいい評判が流れてこないようだ。

スウェーデン

武装中立の国是から独自の軍事技術の確立に力を入れており、意外と知られていないが、コンパクトな潜水艦を建造している。実はスターリング・エンジンを潜水艦AIPとして取り入れた最初の国。ゴトランド級潜水艦は数年前にアメリカにも貸し出しされたほど。

インド

インドの原潜の歴史はまだ浅く、80年代ソ連製の原潜アクラⅡ級「ネルパ」をインドが購入、「チャクラ」と名づけられて2012年にロシアからインドへと引き渡された。ただ、インドでは初の国産ミサイル原潜としてアリハント型(Arihant)も開発され、2015年から配備されている。

実は、常任理事国以外での国において原潜を保有しているという珍しい例。

日本

第二次世界大戦終了後発足した海上自衛隊の潜水艦は、最初に導入した潜水艦(米海軍から貸与されたガトー級)を除けばすべて国産の通常動力潜水艦を使用しており、昭和40年以降はほぼ年に1隻のペースで新造艦を就役させている。平成22(2010)年に決定した防衛計画の大綱によって、海上自衛隊の潜水艦は16隻態勢から22隻態勢に移行することが決定しているため、[2]建造のペースは変えずに既存艦の寿命を16年から22年に延長することで最終的に22隻態勢を実現すると思われる。

特徴として、通常動力型潜水艦であるにもかかわらず、その船体の大きさがあげられるだろう。荒天がつづく日本海や太平洋をふくむ広大な領海があるため、艦の安定性確保や長期間の航海任務につく必要性があること、さらには乗組員が三直制で艦の運用にあたるなど日本特有の事情のため、沿岸での活動を主とするロシア、ドイツなど他国の通常動力型潜水艦に比べてほぼ二倍のサイズとなっている。

サイズ的にはもはや小型の攻撃型原子力潜水艦とほぼ同じサイズとなっており、このようなサイズの通常動力型潜水艦を建造しているのは日本しかないのだが、それも理由があってのことである。スターリング機関などAIP技術の取得にも取り組んでおり、最新潜水艦として「そうりゅう」型が建造されている。

「米軍から技術供与を受けて秘密裏に原子力潜水艦を建造した」などという噂は今のところない。

潜水艦の記事一覧

ロシア

  • アルファ級原子力潜水艦
  • オスカー型原子力潜水艦
  • タイフーン級原子力潜水艦
  • ボレイ級原子力潜水艦
  • ヤーセン型

日本

  • 伊四〇〇型潜水艦
  • 甲標的
  • 三式潜航輸送艇
  • おやしお型潜水艦
  • そうりゅう型潜水艦

その他の国

  • XXI型
  • ガトー級潜水艦
    • アルバコア
  • バラオ級潜水艦
  • シーウルフ

架空の潜水艦

純粋な『潜水艦』

  • トゥアハー・デ・ダナン (フルメタル・パニック!)
  • レムレース (鋼鉄の咆哮)
  • ドレッドノート (鋼鉄の咆哮シリーズ)
  • ノーチラス (鋼鉄の咆哮シリーズ)
  • アームドウイング (鋼鉄の咆哮3)
  • シンファクシ級(エースコンバット5)
  • ノーチラス号(海底二万里)
  • やまと(沈黙の艦隊)

副次的な『潜水艦』

  • BBY-01 (宇宙戦艦ヤマト2199)
  • UX-01 (宇宙戦艦ヤマト2199) [3]
  • 超ストレインジ・デルタ (鋼鉄の咆哮2 エクストラキット)

関連動画

関連商品

関連コミュニティ

関連項目

  • 軍事 / 軍事関連項目一覧 / 軍用艦艇の一覧/潜水空母
  • 海上自衛隊
  • スターリングエンジン
  • 駆逐艦/アスロック
  • 魚雷
  • 対潜哨戒機/P-3/P-1
  • 青の6号
  • サイレントハンター
  • 沈黙の艦隊
  • 海上自衛隊呉史料館(てつのくじら館)

脚注

  1. *非大気依存推進(Air Independent Propulsion)を意味する英語略称、およびその技術。大気を必要としない・またはごくわずかの大気でいいので、浮上する必要のない推進機関のことを指す。
  2. *「海上自衛隊 潜水艦建艦史」勝目 純也 2014
  3. *上記とは違い純粋な宇宙船だが、運用は潜水艦そのもの

【スポンサーリンク】

携帯版URL:
http://dic.nicomoba.jp/k/a/%E6%BD%9C%E6%B0%B4%E8%89%A6
ページ番号: 2657496 リビジョン番号: 2397346
読み:センスイカン
初版作成日: 09/04/02 21:33 ◆ 最終更新日: 16/08/22 20:17
編集内容についての説明/コメント: 架空の潜水艦にやまと(沈黙の艦隊)を追加
記事編集 / 編集履歴を閲覧

この記事の掲示板に最近描かれたお絵カキコ


笑うノコギリ鮫

沈む潜水艦

この記事の掲示板に最近投稿されたピコカキコ

ピコカキコがありません

潜水艦について語るスレ

262 : ななしのよっしん :2016/05/15(日) 23:12:02 ID: ZOCidbDBSG
紺碧の艦隊みたいな電磁推進式潜水艦って実際に現れるんだろうか?
263 : ななしのよっしん :2016/05/16(月) 19:29:34 ID: PtewgIU3+1
電磁推進に関しては日本が「ヤマト1」って船作って色々試験してたけど、
現状だとあれが最初で最後の電磁推進船になるんじゃないかって言われてるね。
推進に必要な磁力を発生させる装置が大掛かりになりすぎて実用に耐えるものを
作るのはまず無理なんだそうな。

ヤマト1の結果見てアメリカとかも電磁推進の研究は打ち切っちゃってたはず。
264 : ななしのよっしん :2016/06/08(水) 21:45:07 ID: c9v5eZgXqt
≪ジィスイシズ ナイアーッド!!≫

何気にナイアッド大好き ・・・機雷に接触して浮上したけど
265 : ななしのよっしん :2016/06/11(土) 23:23:06 ID: WWrQhcu3aL
>>264
氷山の破壊もナイアッドの魚雷を使えばほぼ一撃で粉砕できそうだよね。
ダメージ的に魚雷発射すらできなかったんだろうけど。
266 : ななしのよっしん :2016/06/27(月) 19:54:08 ID: hIWs6L/OX4
>>263
装置の冷却、大きさ、出力、磁場の漏洩あたりが問題だったみたいだね。
出力はまだしも、他の3つ、特に磁場は潜水艦にとって致命的…
267 : ななしのよっしん :2016/09/13(火) 14:31:35 ID: XIjb2jA+Iu
Uボートの映画は面白かったな
特に潜水艦の内部の至るところに食料がぶら下がってたのが衝撃的だった
ミリタリー趣味に嵌まる前の自分は長期間過ごす潜水艦の内部は当然洗練されたものだと思ってた
268 : ななしのよっしん :2016/09/19(月) 15:34:05 ID: 3KhhyPJ5N4
呉のてつのくじら館行ったことあんだけど、
一週間の献立表と配膳の様子食品サンプルで再現した原寸模型がおいてあんの。
流石に現代潜水艦だわって感心してたら
案内の人(退職なされた元潜水艦乗り)が仰るには戦闘照明下じゃ何食ってんのかまるで分からんのだとか。
見た目大事ね
269 : ななしのよっしん :2016/10/15(土) 21:42:17 ID: WWrQhcu3aL
各国の潜水艦の表だけど、
アメリカの通常動力潜水艦は50年以上前に建造したバーベル級が最後で、現在のアメリカは戦闘用有人潜水艦は全て原子力推進なので、
事実上、通常動力潜水艦の開発建造能力を喪失したといえるんじゃないかな。

アメリカが古くなったディーゼル潜水艦を買い替えたい台湾に対して、
潜水艦を供与しないのも通常動力潜水艦のノウハウを喪失してるからなのかな。
270 : ななしのよっしん :2016/10/18(火) 22:15:29 ID: WWrQhcu3aL
アメリカは事実上通常動力潜水艦の建造能力がないので、
各国の潜水艦グラフを修正すべきじゃないですか?
271 : ななしのよっしん :2017/01/26(木) 22:52:51 ID: ABf+IxJOtB
無人原子力潜水艦揃えたら通常潜水艦はお役御免でそ
  JASRAC許諾番号: 9011622001Y31015