火縄銃とは、原始的な銃の一つである。
概要
マスケット(マスケット銃)のうち、火縄(可燃物を編み込んだ縄)を用いて点火する銃を日本語で「火縄銃」と呼ぶ。
戦国時代である16世紀(1543年説が有力)に日本に本格的に伝わった。これを「鉄砲伝来」という。その後、戦国時代や安土桃山時代、江戸時代などの戦場において活躍した。
火縄のことを英語でmatch(マッチ)とも言うため、この点火方式を「matchlock(マッチロック式)」とも言う。
鉄砲伝来は、種子島に漂着した船に積まれていたマッチロック式銃を島の領主である種子島恵時が船の乗員から購入したことに始まっている。そのため、火縄銃を通称「種子島」と呼ぶこともある。
機構
- 「ゆっくり燃えるように調整された火縄が、金具に挟まれて火皿の近くに保持されている」
- 「引き金(トリガー)を引くと、火縄が付いた金具が火皿側に移動する」
- 「火縄の火が火皿に盛られていた火薬に移ることで点火し、銃弾が発射される」
という機構を持つ銃を「火縄銃」と呼ぶことが多い。冒頭で原始的とは言ったが、これは結構進歩した機構である。
火縄銃以前 - タッチホール式
このように進歩する以前はどうしていたのか?というと、初期の銃は、火種を火皿に手で直接くっつけることで点火していた。このように直接手でくっつけるような方式の銃は、火種に火縄を使ったとしてもあまり「火縄銃」とは呼ばない。
こういった旧い方式を「タッチホール式(touch hole)」とも呼ぶ。火種が触れる(touch)ための穴(hole)が銃身に空いているためこの名がある。「直接手でくっつける」という光景をイメージしにくい人は、スタジオジブリのアニメ映画「もののけ姫」の中にそういった機構の兵器が登場するので鑑賞するとよい。面白いし。
少し話がそれたが、このタッチホール式では狙うのが難しいのは容易に想像できる。一人で撃つとすれば片手で構えてもう片手で点火しなければならないから両手で狙う安定性が望めないし、火種に意識が向くので狙いに集中できないし、火種を近づけるための動きで狙いがぶれる。
マッチロック式登場
そこで、引き金を引くだけで点火できるような工夫がなされていった。
その方法こそが「ゆっくり燃える火縄を金具で固定して」「引き金を引くと、火縄が付いた金具が火皿側に近づいて点火する」という方式である。ちなみに、引き金というアイディア自体はクロスボウにおいて既存のものである。
この引き金と火縄を使って点火する方式は、火縄(英語でmatch、マッチ)が要となるため、「マッチロック式」と呼ばれる。
ただし最初のうちは、火縄を挟む金具は引き金と直接連動していて、火縄は引き金を引いた距離に比例して火皿に近づいた。つまり引き金を引く力によって、火縄を火皿に「押し付けて」いたのである。
マッチロック式の中でも、こういった「押し付ける」方式を「sear lock(シアロック)」とか「sear matchlock(シア・マッチロック)」とも言ったりもするようだ。sear(シア)とは「焼き印を押す」「焦がす」「焼け焦げ」という意味である。
日本の火縄銃の基本形 - スナップ・マッチロック式
だが、シア・マッチロックの方式では引き金を引き始めてから点火されるまでにわずかながらもタイムラグがあり、やはり狙いがそれる可能性がある。
そこで、火縄を挟んでいる金具の固定に工夫を加えて、「引き金を引くと金具がバネの力によって火皿側に弾かれ、瞬時に点火される」という方式が採られるようになった。この機構を備えたものは、マッチロック式の中でも特に「snap matchlock(スナップ・マッチロック)」と呼ばれることがある。
日本の火縄銃は基本的に、マッチロック式の銃の中でもこのスナップ・マッチロックが採用されている。鉄砲伝来の時に購入された銃がスナップ・マッチロックであったためと思われる。
火縄銃もこうして機構の発展を順を追ってみると、改良を重ねた末に生まれ、当時の技術の粋を集めた兵器であったことがわかる。
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