総力報道!THE NEWSとは、TBSが社運を賭けてコケて散った(自称)報道番組である。
概要
2005年春の社運を賭けた改編(通称「TBSの変」)で始まった「イブニング・ファイブ」を終了させて2009年3月30日から再び社運を賭けた改編(通称「第二の開局」)の目玉として放送を開始した番組である。
この番組開始後は「情報7days ニュースキャスター」などの一部番組のニュースを除いてテロップが共通化され、番組タイトルも長年使用された「JNNニュース」「TBSニュース」から「THE NEWS」に変更したほどの力の入れようである。
民放としては19時台を丸ごとニュースに当てるのは初めての事であり、TBSの19時台のニュースは「JNNニュースコープ」以来となった。
なお、この番組の編成の関係でそれまで放送されていた番組は打ち切りもしくは枠移動となっているのだが、こんな無茶な編成が可能なのはTBS報道局の発言権がバラエティ部門よりも強い為である。
また、この番組の投入には経費削減の意味も大きかった。
平日19時台に月曜日から金曜日まで5つの番組を作るより、帯番組でなおかつ生放送の番組を作ったほうが圧倒的に番組制作費を軽減できるためである。
(同様の理由で同時期に日本テレビも平日19時台を生放送バラエティー帯番組「サプライズ MONDAY to FRIDAY」に切り替えた)
番組開始前
しかし、番組開始前からその行く末を危ぶむ声が大きかった。
過去に2度ほど大きなプライムタイムの帯番組編成で失敗しているためである。
- 1987年に「ニュースステーション」(テレビ朝日)に対抗して平日22時台に「ニュース22 プライムタイム」というニュース番組を社運を賭けて大々的に始めたが、わずか1年で敗北して終了している。
(その後「JNNニュースデスク’88~’89」となるもこれも1年で敗北して、1989年に「NEWS23」で平日22時台から撤退している) - 1992年10月にも当時の社長の鶴の一声で、月曜日~木曜日の19時台の番組を打ち切りや移動させて帯バラエティー番組ゾーン「ムーブ」を社運を賭けて大々的に始めた。とは言っても、事実上関口宏の続投となる月曜以外は当時日テレ系で放送され好評だった深夜番組「EXテレビ」のパーソナリティで固められており、単に他局の人気番組にあやかっただけだろといった顔ぶれだったが。
月曜と木曜はそこそこの成績を残したものの、火曜・水曜は低視聴率に苦しみ、1年で「ザッツ!」としてテコ入れリニューアルされた後、1年半後に枠自体が撤廃された。
ちなみに、この時に始まって、休止や枠移動を繰り返しつつ2011年まで続いていたのが「関口宏の東京フレンドパーク」である。
また木曜に放送された「上岡龍太郎の男と女ホントのところ」は「ザッツ!上岡龍太郎vs50人」→「上岡龍太郎がズバリ!」とタイトルを変えていったものの、全盛期には平均15%を超える視聴率を記録する人気番組となり、1996年9月までの4年間に渡り放送が継続した。
その他、「ザッツ!」枠からスタートした「ウェディングベル」もヒットと言うには微妙だったが大コケもせず地味に3年半放送が続けられるなど、成功した番組もいくらかあったため、このときの改革は他の2例と比べてまだ傷は浅かったと言える。 - また、他局ではテレビ朝日が1987年10月から「ニュースシャトル」を19時20分スタートで開始したが視聴率が振るわず1年半後の1989年4月から18時に戻したが半年後の9月に終了した。
そして、ここまで読んできてお分かりだと思うが、TBSが社運を賭けて始めた番組は大抵失敗するというジンクスがある。
余談であるが、TBSが社運を賭けて立ち上げた番組の一つに『社運バラエティー ギミア・ぶれいく』があったが、この番組は後に『社運』の文字をタイトルから外したあたりから視聴率が上向き、『笑ゥせぇるすまん』などの企画が話題となるなど人気番組となった。
それにしても、これだけ「社運」と言うフレーズが出てくる当たり、余程TBSは社運を賭けるのが好きなようである。いい加減学習しろよ。
低空飛行と悪あがき
悪い予感は見事に的中。
番組開始以降視聴率の低空飛行が続き、そのまま定着してしまった。
本来報道番組には固定視聴者がいる為最低10%は取れると見込んでいたのに、4~7%台と全く取れなかったのである。
平日19時台は、元々テレビ黎明期から50年以上NHKがニュースを放送し(現在は「NHKニュース7」)それが定着している事や、裏番組のバラエティが強い事(特にお台場)もあり、ニュースに興味のある視聴者はNHK、バラエティー番組等に興味のある視聴者は民放他局に移動した。そのため、改編前より視聴率が大幅に低下した。
TBS側は原因の一つとしてメインキャスターである小林麻耶のターゲット層が視聴不可の時間帯であり、その小林の好感度が放送時間帯にテレビを視聴する主婦層では高くない事が当時挙げられた。
もっとも、原因はそれ以外のモノがかなりのウェイトを占めているのだが・・・
次第に、この番組がテレビ東京の裏番組以下の同時間帯最下位の視聴率を叩き出すことも珍しくなくなり、ゴールデンタイムやプライムタイムへの入り口である19時台の低視聴率が後の時間帯の番組にも大きく響いて、連鎖的に低視聴率に陥るという悪循環に入ってしまった。
例えて言うなら、お店のメイン売り場の入り口に巨大な置物を置かれて中に入りづらくなったような状態・・・
テコ入れとして報道局から一人加入したのだが効果はなく、10月に放送時間を大幅短縮した上で16:53~18:40に「イブニングワイド」を放送する事となった。
だったら、それなりに結果を出していた「イブニング・ファイブ」を終了させずに放送しておけばよかったんじゃ・・・
ちなみに、「JNNニュースコープ」も19時台はNHKに負けた為18時台のみの放送に戻した過去がある。
(しかし、これは先述の「ニュース22 プライムタイム」を開始するにあたって人材や予算を集中させた意味も大きい)
そして打ち切り、伝説へ・・・(悪い意味で)
2009年12月8日、スポーツニッポンなどスポーツ新聞等の報道でついに2010年春改編での番組打ち切りが決定。
同年3月で終了に追い込まれた。
わずか1年の命であった。
この報道に先立ち、2009年11月4日付で、「総力報道!THE NEWS」など『TBS第二の開局』改編を推し進めた張本人の一人・吉崎隆が編成局長から社長室付担当局長へと左遷されていた。(敬称略)
やはりこの改編は結果的に大失敗だったことがTBS社内でも問題視され、これ以上の番組継続は困難と判断されたようである。
結果的に、2009年春の大改編は「TBSの失われた1年」として人々の記憶に刻み込まれることであろう・・・
後番組はJNN排他協定の適用となる全国ニュース枠は「イブニングワイド」がニュース枠を吸収する形でリニューアルした番組「Nスタ」が引き継ぎ、19時台はバラエティへ衣替えとなるが、これは前番組「イブニング・ファイブ」時代と同様の体制へ戻る事を意味する。
同時期に日本テレビが始めた「サプライズ MONDAY to FRIDAY」も結局1年で打ち切られたが火曜のみ火曜サプライズに改題して2021年3月まで続いたことも考えればどれだけこの番組の失敗が大きかったかわかるだろう。
「総力報道」が残した物
玉突き改編による負の連鎖
平日19時台の枠確保のために、同時間帯の番組を中心に大量の打ち切り・移動が発生した。
一部の人気番組もこの玉突き改編に巻き込まれ、「関口宏の東京フレンドパークⅡ」と「うたばん」はこの結果打ち切りへの引き金を引いてしまう形となってしまった。
関口宏の東京フレンドパークⅡ
1992年から中断期間を挟みつつも長年に渡って月曜19時に放送されていた人気番組であったが、この玉突き改変に巻き込まれ木曜20時に。
しかし、これが既存視聴者の流出をもたらし新規視聴者の獲得にも失敗、。「総力報道」終了後月曜19時台に出戻るも、同じようなゲーム番組である「ネプリーグ」(フジテレビ)がそれまで「フレンドパーク」を見ていた視聴者を奪って人気番組になってしまっており、さらに視聴率が低迷するという悪循環まで起こってしまった。
結果、2011年3月で18年半の歴史に幕を閉じる事となった。
うたばん
1996年に放送開始(火曜21時)し、1999年に木曜20時に移動してからも安定した視聴率で推移していた。
しかし、「フレンドパーク」移動による玉突きで日曜20時に移動を余儀なくされる。このTBS日曜20時台は歴史的に「鬼門枠」とされ、数多くの番組が低視聴率による打ち切りの憂き目を経験してきた枠である。「うたばん」も例外ではなく、急速に視聴率が低下。
わずか半年で最初の放送枠である火曜21時に戻ったものの、視聴率は戻らず更に低迷。2010年3月に13年半の歴史に幕を閉じる事となった。
NEWS23関連
この番組の副産物としては長岡杏子アナウンサーと夜の「NEWS23」の再評価である。
長岡アナウンサーの安定した原稿読みが再評価されており、「長岡さんをメインにしたら」という声も一部で上がっている。
また、この番組の開始により時間を短縮した「NEWS23」では膳場貴子キャスターのNHK仕込みの原稿読みとテンポの良い進行により視聴率で当初はこの番組に勝つ事もあった。
しかし、裏番組の「NEWS ZERO」(日本テレビ)の好調の煽りを喰らい視聴率は低下。視聴率5%未満の日も珍しくない。ちなみに、当時の消費税率と掛けて、5%を割ると「(当時の)消費税以下」と言われることもある。
なお、「NEWS23」は当番組の打ち切りにより50分番組への復帰し、「NEWS23X(クロス)」となる。
なにこの特撮番組の続編みたいなタイトル…
スーパーサッカー関連
長年日本のサッカー専門番組として一定の地位を誇ってきた「SUPER SOCCER」シリーズもこの改変により大打撃を受ける。
この改編で始まったスポーツ専門番組「S★1」に統合される形で改編前の1時間枠から30分枠へ時間短縮。
ただでさえ短くなった放送時間にサッカー以外のスポーツニュースや普通の一般ニュースまでも詰め込んでしまったせいで本来の番組のウリであったサッカーを取り上げる時間が大幅に短くなってしまう。
当然そんな内容で視聴者が納得するはずもなく改編前は野球やその他の番組の延長で番組の開始が1時になろうとも2時になろうとも高い視聴率を維持していた同番組はかつての勢いを完全に失い翌年の改編で番組の枠移動+地方局での番組打ち切りとなってしまった。
一時は番組の打ち切りまで検討されたがJリーグから公認番組という形で支援を得られることとなり、何とか首の皮一枚で繋がっている状態で現在まで続いている。
改編前までの同番組に改善するべき点は特になく(強いていうならサッカー以外の要素がJ-SPORTSの冠をつけているにも関わらず薄かったこと。しかし、日曜日のJ-SPORTSは野球偏重の傾向があったのである意味バランスはとれていた)この大改編に巻き込まれた形で打撃を受けたと言っても過言ではない。
この改編を例えでいうなら「テレビ東京がいきなり他民放と変わらない番組作りをやり始めたようなもの」であり固定視聴者の根強い支持を受けていた番組を一般化・共通化の名目で凡庸な内容にすることが如何に愚策かというのを身を持って証明したようなものである。
出演者
2009年9月28日以降
- 小林麻耶(元TBSアナウンサー)
- 後藤謙次(「NEWS23」より移動)
- 竹内明(2009年7月20日より出演)(※ちなみに、読みは「タケウチ メイ」である)
- 伊藤隆太(「ひるおび!」より移動)
- 岡村仁美(「みのもんたの朝ズバッ!」より移動)
- 佐藤文康
- 佐藤大介(気象予報士)
過去の出演者
- 長岡杏子(「ピンポン!」から移動、2009年9月25日まで)
- 藤森祥平(「イブニング・ファイブ」から続投、2009年9月25日まで)
- 赤荻歩(「イブニング・ファイブ」から続投、2009年9月25日まで)
関連動画
関連項目
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