能面単語

ノウメン
3.4千文字の記事
  • 6
  • 0pt
掲示板へ

能面とは、能楽において用いられる仮面の一つである。
なお、『面』とだけ書いた場合は『おもて』と読み、『能面』となることで『のうめん』と読むようになる。

概要

能楽を上演する際、役となるシテや、助演者であるツレがかぶる仮面である。
面は一般的に木彫によって制作されているが、近年は和で作られたり子の面も登場している。

能面の歴史

そもそも能楽が生まれる前の仮面の用法は、装着して人格を変身させる事により、超能力をその身につけてを迎えるといったものや、自らの精エネルギーを高めて病の治癒などに使うといったものがあった。その後、七世紀初頭に伎楽というものが日本に伝わった際、聖徳太子導によって様々な場面で仮面が使われるようになったと言われている。この時に使用された伎楽面と呼ばれる仮面は、現在のものとは違ってかなり大きく、いわば狂言に使われる面のようなものであった。なお、この時代に使われていた獅子や金剛の面などは、現在も正倉院や法隆寺といった場所に現存している。

伎楽自体は盛から半世紀ほどでれてしまうが、平安時代の宮廷文化により、入れ替わる形で舞楽が定着する。この舞楽にも面が使われた。これが舞楽面である。伎楽面が一の感情のみを表現していたのに対し、こちらは普通の顔を要約したようなものとなっており、舞楽に用いられた伴奏楽器リズムに合った演出ができる。その点では、舞楽面は伎楽面よりも能面に近いものといえる。しかし、舞楽自体が宮廷文化であったことと、貴族が安定した生活の中で文化の発達を遅らせてしまったこともあり、武社会の到来に伴って衰退してしまう。

鎌倉時代に入ると、農民たちが即的に作った踊りや唄といったものからった田楽、及び八世紀初頭に伝来した「唐散楽」から発展した楽が発達する。それぞれがを与え合いながら共存していき、のちの能楽になるにつれて、能面もまたその重要な構成要素として発展していった。

能面の種類

大きく分けると以下の5種類。

  • 老人面(翁面・尉面など)
  • 女面
  • 男面
  • 霊面(霊面・霊面など)

これをさらに細かいカテゴリーに分類すると、基本形の能面は約70種類程度あると言われている。
さらに、この中から同一種を細分化していくと、その総数は200種類をえると言われている。

以下に、それぞれの能面の特徴と、代表的な面を挙げる。

老人面

翁系面

能面の中で最古の歴史を誇ると言われている面の種類。古くは日本書紀にもその存在が描かれているほどである。老人の中でも延命冠者の役に用いられる。特徴として、ぼうぼうのと上半分がわかれている切りなど、他の面には見られない特徴がある。


  • 切りがあり、最も最初に出来た面。正正銘の最古参じじいである。白色尉と式尉という二種類がある。白色尉はその名の通り塗り。式尉は肌色。演の関係上、最もに近い面もしくはの面とされる。やたらにこやかな顔と、丸く形どられた眉毛が特徴でもある。
  • 式尉
    三番叟とも言う。その別名の通り、三番に舞い踊る翁のこと。顔がい。
    白色尉や式尉とべると、庶民に近い存在になったという。
  • の尉
    要するに翁のお父さん釣り上がったがどことなく怖いが、特別な催事に用いられる由緒正しき能面。
  • 延命冠者
    翁面系統の面ではあるのだが、翁というよりは気のいいおっさんのような相貌。
    胡散臭い面構えではあるが、延命の徳を備えているのだとか。なお、冠者とは少年の意味。少年なのに翁系列に入れ込まれていることも不思議である。

尉系面

老人を表す。翁面と同様、のような老人を演じる際に用いることが多い。

  • 小尉
    どことなく申し訳さそうな顔をした老人。もともと小尉と言うのは老人が自分を謙遜して言う言葉。とはいえ、この老人は普通の老人以上の心霊的なを持つ。いわゆる高性能じいちゃんである。
  • 笑尉
    笑っている老人の面。尉の面の系列の中では、最も古いものだと言われている。

  • がやたら長い老人の面。名前の由来は室町末期に三坊という僧が作ったからとも、日月神の三つのによって照らされて出来た面だからともいわれている。
  • 舞尉
    そのまま、舞う老人のこと。老体な神様ではあるが、精霊として扱われる。いわばデクの樹サマみたいなもの。

女面

現実女性の顔形とはだいぶ違う形をしているが、一つの面だけで喜怒哀楽のすべてを表すことができるというものである。

  • 小面
    右の絵のもの。
    最も若い女性の面である。いわゆるロリっ子を表す。
    女面の中では最も代表的なものとして知られる。

  • こちらも幼い女性の面。小面に似ているが、みがかかっている。
    つまり頬染めである。
  • 万媚
    若く美しく色っぽい女性の面。
  • 若女
    若い女性の面。どうやらこちらには色っぽさをめていないようだ。
  • 増女
    女を表す面。上述の面たちにべて表情が薄い。解脱状態を表した面とも。
  • 泣増
    泣いている増女。なお、公家に送られた際にこの面が泣いていたためこの名付けがなされたのだとか。もしもそれが本当ならばホラーも顔負けである。ただでさえ怖いのに
  • 曲見
    中年女性を表す面。その憂いと慈を表す表情が子を失った役に最適なことから、狂女物に使われる。

男面

男性を表す。ただし、現在と呼ばれる現在進行形の状態を演じるにおいては、成年男性役は能面を用いない。この時の役者の素顔は「直面」と呼ばれており、素顔が能面に見立てられる。
その性質上、成人男性の面は古人を模したものが多い。


  • 寺で食事の時間を報せる役をする少年僧を表した面。額に大銀杏のような前があるのが特徴。
  • 十六
    少年の面。こちらは平敦盛が戦いの最中に姿を見失った少年の顔を描いたものである。口の横にえくぼができているのが特徴。
  • 痩男
    弱々しい表情をした男の面。地獄に落ち、その責め苦に苦しむ表情を示している。

鬼神面

邪悪なものを追い払う、威の強いを表した面。

  • 獅子口
    大きな口を開けた色の面。古くは中国から伝来したもの。似たものに、大獅子・小獅子がある。
  • 大飛出
    眼球が飛び出している面。上から下界を見下ろすようにが下向きに付いている。何かを威嚇する表情を表しているようだが、どうみても驚きすぎた男の姿に見える。ちなみに、牙飛出という牙も飛び出している面が存在する。

  • 口を開けている獅子面が、口を閉じて噛みしている状態を表した面。
  • 大べし見
    口を閉じ、大きなや大きなを特徴とする。威圧感のある威嚇を表した面。小べし見や牙べし見という類縁種もいる。
  • 大悪尉
    とても怖い老人の面。悪という文字が付いているからといって、決して悪人というわけではない。

霊面

怨霊面

みを持ち、生きとし生けるものに災いを与える霊の面。

  • 般若
    あまりにも有名な面であり、個別記事が作られているためそちらに詳しい。
    女性霊、みの復讐による敵愾心を表した面のこと。
    ツノを生やし、牙の生えた口を大きく開けた形相が特徴的な面。
  • 生成
    般若になる前の状態を表した面。般若べるとツノが短く、まだどことなく『なりかけ感』を漂わせている。

  • 般若がさらににとりつかれた状態を表した面。動物になっているため、般若や生成にはあったがなくなっている。ちなみに、霊の中では最もく出来た面。この面を元にして、般若→生成という順番で作られている。

神霊系

こちらはの面である。にとりつかれないためにとしてり、それを沈静化しようとするために作られた。適用範囲は広く、亡霊や霊、菩薩や明王を模した能面もこのカテゴリに入る。

  • 怪士
    武将の霊を表した面。もしくは妖怪のこと。を見開き、を食いしばった表情をしている。
  • 仙人
    といっているのに、がふたつに分かれている系仙人を表した能面。ちなみにこの仙人自体は強神通を持っているにもかかわらず、ハニートラップによって神通を失うという逸話を持つ。

  • 痩男よりもさらに哀れな状態を表した面。水死体あがりのため、仙人なのにどことなく頼りない貌が漂う。

能面を用いる有名人

関連動画

関連商品


関連項目

【スポンサーリンク】

  • 6
  • 0pt
記事編集 編集履歴を閲覧

この記事の掲示板に最近描かれたお絵カキコ

この記事の掲示板に最近投稿されたピコカキコ

ピコカキコがありません

能面

1 ななしのよっしん
2015/04/10(金) 04:58:10 ID: 53gu3W0VaN
眼がこわい
翁
タイトル:翁
Twitterで紹介する

2 ななしのよっしん
2015/04/11(土) 18:56:05 ID: 53gu3W0VaN
なげーなおい
黒式尉
タイトル:黒式尉
Twitterで紹介する

3 ななしのよっしん
2016/12/11(日) 18:45:27 ID: vzSilB+RnA
お絵カキコ
実際に舞台で見ると物凄くギラギラしてて迫ある
大飛出
タイトル:大飛出
Twitterで紹介する

4 お自慰ちゃん
2020/01/15(水) 22:52:21 ID: 9tXZ1/fWNH
やはり能面はなんともいえない秘的なきを感じるのぅ
結局ワシ日本人なんじゃな
👍
高評価
0
👎
低評価
0