「――僕たちは常に、誰かが勝ち取った平和を、譲ってもらっているんだ。
たとえそれが、一日限りの平和だったとしても…僕は、その価値に、感謝する」
『蒼穹のファフナー RIGHT OF LEFT』とは、TVアニメ『蒼穹のファフナー』の前日譚となるTVスペシャルアニメーションである。2005年12月放映。
よく勘違いされるが、OVAでも劇場版アニメでもない。
概要
TVアニメシリーズ(第一期)『蒼穹のファフナー』の前日譚にあたるエピソード。本編の放送終了から一年後、2005年12月29日に、テレビ東京系他で一時間枠のTVスペシャルとして放映された。
平成18年度・第10回文化庁メディア芸術祭の審査委員会推薦作にノミネート。
副題「RIGHT OF LEFT」には、『去りゆく者達(left)の権利(right)』という意味が込められている。そのタイトル通り、竜宮島を守るため立案された陽動作戦=「L計画」に参加し、島から去っていった者達の物語となっている。
ストーリー
『蒼穹のファフナー』でフェストゥムが襲来する一年前、竜宮島はまだ仮初の平和のなかにあった。
だが実際は、まだ戦う力の整わない島にフェストゥムの探知が迫っており、水面下では対応が進められていた。
アルヴィス司令・皆城公蔵は、敵の来襲を遅らせるため、陽動による危機回避プログラム「L計画」の発動を承認する。それはアルヴィスの一区画を分離させ、自動航行のそれが島に成り代わり敵を引きつけながら迎撃、2ヶ月間を耐え凌ぐという苛酷なものだった――。
主な登場人物
- 将陵僚(まさおか りょう) CV:宮野真守
本作の主人公。竜宮島中学の3年生で生徒会長を務める、非の打ち所がないような性格をした少年。(羽佐間翔子と同じく)生来の持病を肝臓にもち、体調の悪いときは休息を取りながらでなければ行動できないほどだが、それをなるべく悟らせないよう振る舞う。そのため周囲の人物には昼行灯な怠け者にも見られている。両親ともすでに亡くし、老犬のプクと暮らしている。
L計画に志願し、ファフナー・ティターンモデルのパイロットとして参加。シナジェティック・コード形成値は低い反面、同化現象への高い耐久力をもつ。
年は近いが叔母にあたる「佐喜(さき)」という親族がおり、「EXODUS」では溝口の部下となって登場している。 - 生駒祐未(いこま ゆみ) CV:甲斐田裕子
本作のヒロイン。竜宮島中学生徒会の副会長。L計画立案者である生駒正幸のひとり娘。母親と早くに死別し、病と障害で病床から動けない父親のために幼少から家事と介護に時間を費やしてきたため、同年代のなかでも大人びた性格。僚とは幼なじみであり、お互い意識し合う間柄。
しかし、僚に心を許していた間に父親を失ったことで責任を感じ、同時に島の真実を知った混乱と相まって一時険悪な仲になってしまう。彼と共にL計画に参加するうち、関係は改善されていくが…。
L計画にはファフナー・ティターンモデルのパイロットの一員として参加。非常に高いコード形成値をもつが、同化耐久率が極めて低い。 - 蔵前果林(くらまえ かりん) CV:木村亜希子
『蒼穹のファフナー』本編の主人公である真壁一騎たちと同学年の少女。中学生徒会では書記を務める。アルベリヒド機関出身で皆城家に引き取られ、総士とは義理の姉弟の関係にある。しかし家族としての関係性は希薄で、彼女自身も弟である総士を「皆城君」と呼んでいる。それでも、子供たちの中では総士と同じく外の世界の真実を知る数少ない人物であり、彼の良き理解者でもあった。
L計画には参加せず、作中では新造されたノートゥング・モデルのテストパイロットとしてファフナー・マークツヴァイに搭乗。同化耐久率が低く、3回の起動実験で同化現象の初期症状(瞳の赤色化)が現れてしまい、それを隠すために特殊偏光レンズのメガネを着けている。
なお本編でもマークツヴァイで実戦に出る予定だったが、搭乗前にフェストゥムの急襲を受けてしまう。 - 皆城総士(みなしろ そうし) CV:喜安浩平
竜宮島中学生徒会の一員であり、『蒼穹のファフナー』本編で極めて重要な立場にあった少年。本作時点ではノートゥング・モデル〈ファフナー・マークアイン〉のパイロット候補であった。
L計画には参加せず、計画終了の際に必ず迎えに行くと約束して僚たちを送り出す。しかし、見えないはずの左目が「見えてしまう」ことから、起動実験でファフナーと一体化が果たせず断念を余儀なくされる。その後、公蔵の命令で自身の能力を活かすためにジークフリード・システムの担当者となった。 - 生駒正幸(いこま まさゆき) CV:永井誠
生駒祐未の父親で、元日本自衛軍戦略研究所所属の一等技官。かつての新国連による核攻撃の影響で、いまは一人で行動することもままならない重度の障害を負っている。島を守るためにL計画を立案し自らも参加するつもりであったが、計画始動前に他界した。病床にあっても生きることを強く望み、絶望的な作戦と諦めずに参加者全員を生還させるための策を講じていた。 - 皆城公蔵(みなしろ こうぞう) CV:中田譲治
アーカディアン・プロジェクトの責任者かつアルヴィス総司令であり、総士の父。フェストゥムに島が発見されることを回避するため、生駒の提案したL計画発動を承認した。また、未覚醒状態にある島のコアが同化されてしまう事態に備え、ファフナーの武装の大半を封印した。結果的にだが、これが裏目にでてTVシリーズ第2話で命を失う要因となってしまった。 - 日野恵(ひの めぐみ) CV:小宮和枝
アルヴィスのファフナー研究員で、パイロットの教官も務める女性。L計画の参加パイロットたちの訓練を担当した。本編に登場した日野道生の母親であり、日野洋治の妻。L計画では送り出す側だったが、本編1話の開戦時に命を落とすこととなる。 - 早乙女柄鎖(さおとめ つかさ) CV:大川透
L計画の作戦司令を務めた指揮官。誰も全貌を知らされず先の見えない計画を遂行するための、的確な判断力と冷静沈着さを兼ね備えた人物。参加者の意見が割れた際も、感情に流されずに取りまとめ、脱出まで生き抜いた。 - 立木惇(たちぎ じゅん) CV:奈良徹
L計画参加パイロットの一人。僚達の同級生で、冒頭の卒業式で「心残り」がないよう僚に忠告を残していた少年。L計画では負傷しながらも最後の脱出の瞬間まで生存する。 - 船橋幸弘(ふなはし ゆきひろ) CV:-
L計画参加パイロットの一人で、小柄で純朴そうな少年。冒頭の卒業組のひとり。ファフナーでの戦闘で一気に同化現象が末期症状まで進行、戦闘後に助けようとした僚の目の前で結晶化し、砕け散った。最初に「いなくなった」パイロット。 - 柳瀬徹(やなせ とおる) CV:笹田貴之
L計画参加パイロットの一人で、小太り気味の少年。冒頭の卒業組。計画中盤で僚たちを呼びに甲板にやってきた。3番目に同化現象の昏睡で倒れ、やがて結晶化していなくなった。 - 村上剛史(むらかみ たけし) CV:梯篤司
L計画参加パイロットの一人。長身で気の強そうな顔立ちの少年。度重なる戦闘で身も心も消耗し、次々と同化現象でいなくなっていく仲間たちの姿に自暴自棄になり、「どうせみんないなくなる」と壁に書き殴ってしまった。その後、戦闘でファフナーを大破させ、犠牲者となる。 - 鏑木早苗(かぶらぎ さなえ) CV:大村香奈子
L計画参加パイロットの一人で、長身でショートカットの少女。冒頭の卒業組のひとり。2番目に昏睡状態となり、なんの処置もできないまま結晶化し、いなくなった。
「彗(すい)」という名の弟がおり、新シリーズ「EXODUS」でノートゥング・モデルのパイロットとなる。 - 柴田小百合(しばた さゆり) CV:西野陽子
L計画参加パイロットの一人で、髪をツーサイドアップにした、背が低く幼い雰囲気の少女。パイロットのうち最も早く同化現象が進行し昏睡状態で倒れる。そのまま目覚めることなく症状が進行し、結晶化・崩壊していなくなった。
L計画の概要
新国連・フェストゥム両陣営の追跡を逃れてきた竜宮島だが、島の防衛を司るコアが覚醒せず、ノートゥング・モデルも起動実験中であり、予期されるフェストゥム襲来への備えはいまだ不完全であった。しかし、敵を探知するソロモンは応答を繰り返し、島へ敵来襲の時が迫っていた。
そこで生駒正幸が立案した危機回避プログラムが"PLAN L"――通称「L計画」である。
L計画とは、アルヴィス左翼のL区画を切り離して自動操縦の〈Lボート〉として航行させ、それをフェストゥムに竜宮島として認識させつつ、敵を迎撃しながら2ヶ月間を耐え凌ぎ、本島を追跡から逃れさせるというものである。迎撃戦力としてファフナー〈ティターン・モデル〉全4機が実戦投入され、将陵僚をはじめとする8名のパイロット、さらに指揮・整備・医療などの担当スタッフ32名の、計40名が参加した。
敵の読心能力による作戦中の計画破綻を防ぐため、航行進路や現在位置のほか、補給の手段・タイミング・終了後の脱出方法の有無など、計画の全容は指揮官含め誰にも一切知らされていなかった。
(以下、結末について反転) 結果的に、生還者ゼロという悲劇的結末を迎えることとなったが、実際、これによって竜宮島本島へのフェストゥム侵攻再開までに半年近い猶予が確保され、なにより将陵僚が託した貴重なデータの数々は、後の本編で一騎たち後輩の世代以降のパイロットを生き延びさせる上で非常に大きく貢献を果たした。
”死に場所ではなく、生きる場所を求めつづけた”彼らの戦いは、決して無駄ではなかった。
L計画・その後
劇場版『蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH』で、難局打開のために元人類軍のイアンとジェレミーが作戦立案を行った際、L計画が言及されている。
島への恩義を返すべく彼らが提案した”第2次L計画”とも言える作戦は、事実上の特攻自爆戦術であり、あくまで全員の生還を目的としていたかつてのL計画と根本的に異なった。真壁史彦司令はこれを即座に取り下げるとともに「L計画は二度と繰り返してはならない」と明言しており、竜宮島の大人たちにとって、今なお戒めとすべき経験として深く刻み込まれていることが覗える。
Lボートの消滅以来、失われたままだったアルヴィスのL区画だが、『蒼穹のファフナー EXODUS』開始時点では再建が完了していることが艦影やモニター表示から見て取れる。
しかし、遺族の中には未だ暗い影を落としており、その結果「第2次L計画」後追い自殺を立案に至るも真壁指令がその都度却下している為この作戦は実現されないものと思われたが・・・
しかし、羽佐間カノンのSDP(未来視?)によればその計画は実行され、竜宮島壊滅の引き金となる。
その後、様々な人たちの尽力により未練を断ち切った遺族自らが「第二次L計画」を破棄。これにより島の未来は紡がれる事となった。
しかし、その続編にあたる「蒼穹のファフナー THE BEYOND」で公開された第3章キービジュアルにおいて第9話「第二次L計画」が明らかになった。
スタッフ
音楽
(全曲)【歌:angela / 作詞:atsuko / 作曲:atsuko、KATSU】
上記の楽曲は、全てangelaの3rdアルバム『PRHYTHM』に収録されている。また、「DEAD SET」及び「peace of mind」はシングルが発売されている。
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関連項目
外部リンク
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