装甲列車とは、軍用列車の一種である。
概要
字の通り、装甲だけでなく火砲も装備することで戦闘を行える列車である。
背景
19世紀に実用化された鉄道は機関車の出力が強化されてゆくことで初期は数両、小型の車両しか牽引出来なかったのが十両以上、大型車両を牽引出来る=大量の物資・人員を高速で輸送できる事になった。
これは軍事関係の輸送にとっては大きなメリットであり戦局を大きく左右することになったがそれは鉄道が攻撃目標に繋がる事を意味していた。
そもそも鉄道は線路の上でしか走れない=線路がなければ事実上ただの箱に等しいため少数の部隊、極端な話一人の工作員でも線路を破壊し、かつ列車に攻撃を加えて敵の軍需物資・人員を足止めすれば戦局は大きく動くのである。
その結果、鉄道に銃砲を備えると共に装甲も備えて敵部隊と戦闘が出来る『装甲列車』が開発された。
構成車両
- 機関車
普通の列車では先頭に配置されるが中央部に配置して他の車両が盾になる事で間接的に防御力を高めた。
運用上、蒸気機関車若しくは内燃機関車(ディーゼルorガソリン)の二択となる。 - 警戒車
要塞に例えるなら櫓(監視塔)の役割を担い列車の先頭と後尾に連結された。走行中でも射撃に支障が出にくい機関銃や軽口径砲で敵を攻撃した。 - 砲車
警戒車より大口径かつ長射程の榴弾砲で先制+追撃を担った。種類によっては車体を地面に固定する必要があった。 - 指揮車
字の通り指揮官が乗り込んで配置された全将兵の指揮を執った。時代が下がると通信機を積載して他部隊との連絡を担った。 - 客車・貨車
前者は居住区を兼ねているが装甲化され銃眼も備えていた。後者は線路や列車の修復・修理用資材の積載もしくは火力強化の為旧式化したAFV[1]を乗せることがあった。 - 電源車
探照灯や通信機用の電力を供給した。
発展と衰退
装甲列車が使われだしたのはアメリカ南北戦争からと云われているがこの頃はまだ既存の列車に鉄板を貼ってこれを装甲とした上で銃眼を設けた=通常の小銃を射撃する程度だったが20世紀前半になると機関銃や火砲と装甲板の軽量化が進んだ事で能力が向上したが『小部隊への対応』=大部隊と直接戦わない用途は変わらなかった。
しかし当時はまだ自動車は発展途上で陸における軍事輸送の主力である人馬より迅速に火砲を輸送、攻撃できる装甲列車は魅力的であり、20世紀前半はユーラシア大陸(ヨーロッパ、アジア)の各国を中心に開発・戦力化が行われた。
これらの装甲列車は戦地及び植民地の重要鉄道線路を巡回して敵勢力から防衛する任務を担い、場合によっては列車砲と同様に迅速に支援火力を展開する任務を担った。
だが航空機によって地上からの攻撃より迅速かつ大打撃を与える事が可能になった上、自動車の能力向上により駅での積み替えをしなくとも重要拠点から直接最前線に物資・人員を送り込める上、攻撃を受けた場合、線路の上しか走れない列車より隠れ易かった。
また、国毎によって鉄道の規格が違う=線路の幅が違う事から線路を敷きなおす手間もあった。
こうして装甲列車は次第に衰退してゆく事になったが21世紀に入ってもアフリカや東欧の紛争地域では簡易的な装甲列車が細々と運用されている。
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関連項目
脚注
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