概要
超絶技巧練習曲とは、ハンガリーの作曲家・ピアニストのフランツ・リストが作曲した12のピアノ練習曲である。Transcendante Etudes と呼ばれ、肉体・精神・魂、これらからの超越という宗教的な意味を持つ。よって、技巧的に高難易度であるという意味に捉われがちなこの邦題は、リストが意図したものとは遠のいた形となっている。
曲集全体は2度に渡り改訂されており、現在最も演奏される機会が多く一般的に超絶技巧練習曲と呼ばれている物は、一番新しい第3稿(1852年)である。
練習曲とは
尚同曲集は読んで字の如く、超絶的な技巧を身に付けるための物で、素人にはお勧めできない。プロクラスの演奏家が、更なる技術を磨く為の曲とも言える。よって同曲集や、他にもショパンのエチュード等の動画に、「練習曲ってレベルじゃねーぞwww」といったコメントを寄せるのは、いささかお門違いである。
勿論、ツェルニーやブルグミュラー等が作曲した、初心者がピアノの指遣いから練習できるような練習曲集も世の中には存在する。これらは、技巧取得の為の練習曲(ツェルニー等)、演奏会用練習曲(リスト・ショパン等)と区別される。詳細はwikipediaにでも。
簡単な違いとしては、練習するために演奏するのが技巧取得の為の練習曲、演奏するために膨大な練習が必要なのが演奏会用練習曲、と言っていいだろう。
改訂の歴史
- 1826年、「すべての長短調のための48の練習曲 Op.1」(実際には12曲)として第1稿を出版。サール番号はS.136。代表的な演奏者:大井和郎、レスリー・ハワード。
- 1837年、「24の大練習曲 Op.6」(実際には12曲)として第2稿を出版。その難易度はピアノの楽曲史上最高峰とも言われ、著名なピアニストが演奏不可能だと口を揃えるほどだったと言われている。師匠のカール・チェルニーに献呈。代表的な演奏者:レスリー・ハワード。
- 1840年、同曲集第4番「マゼッパ」を改訂。サール番号は単独でS.138となる。代表的な演奏者:レスリー・ハワード。
- 1852年、「超絶技巧練習曲」として第3稿を出版(第2稿同様チェルニーに献呈)。サール番号はS.139。現在最も演奏されるのはこの稿である。第2稿よりは劣るものの、その難易度・演奏効果は極めて高く、並のピアニストでは楽譜を追う事が関の山だろう。代表的な演奏者:ボリス・ベレゾフスキー、ジョルジュ・シフラ、横山幸雄等。
収録曲
以下は、第3稿の収録曲目である。
- ハ長調「前奏曲」
- イ短調
- ヘ長調「風景」
- ニ短調「マゼッパ」
- 変ロ長調「鬼火」
- ト短調「幻影」
- 変ホ長調「英雄」
- ハ短調「狩り」
- 変イ長調「回想」
- ヘ短調
- 変ニ長調「夕べの調べ」
- 変ロ短調「雪あらし」
余談
ロシアの作曲家であるセルゲイ・リャプノフが、リストの使っていない残り12の調を使って同じく超絶技巧練習曲を作曲している。
そちらは以下のとおりである。
- 嬰ヘ長調「子守歌」
- 嬰二短調「幽鬼の踊り」
- ロ長調「鐘」
- 嬰ト長調「テレク川」
- ホ長調「夏の夜」
- 嬰ハ長調「嵐」
- 変ホ長調「牧歌」
- イ長調「叙事詩」
- ニ長調「エオリアン・ハープ」
- ロ短調「レスギンカ」
- ト長調「妖精のロンド」
- ホ短調「リストを偲ぶ哀歌」
また、こちらはリストとは無関係だが、イギリスのカイホスルー・シャプルジ・ソラブジが超絶技巧百番練習曲という全曲演奏すると7~8時間程度の超絶技巧練習曲集を作っており、1940年代に作られた曲にもかかわらず2016年現在全曲録音のプロジェクトがようやく7割まで終わったところというほどである。
このようにリスト以外にも超絶技巧練習曲を作る作曲家はちらほらおり、ある意味ジャンルとして確立したものとなっている…のかもしれない。
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関連コミュニティ
関連項目
- フランツ・リスト
- 楽曲の一覧
- クラシック音楽の楽曲の一覧
- 超絶技巧
- ピアノ
- パガニーニによる超絶技巧練習曲
- セルゲイ・リャプノフ
- DIAVOLO(BEMANI)
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