これより先は動画の核心に迫る記述が書かれています。 未視聴者はネタバレの可能性がありますので閲覧する場合は注意が必要です。 |
この記事は、ゲーム実況者 軍師ミノル(はぁと)が「ファイアーエムブレム トラキア776」において軍の指揮を取った際、志半ばに倒れてしまった者を記録するための記事である。
死傷者一覧
第一の戦死者 ブライトン
二年余りの休息に終りを告げ、軍師ミノル(はぁと)はその身をまた戦乱の世に投じた。
シリーズ最難関とも評されるトラキア776を序盤、危なげながらも損失なく突破してきたミノル軍師だったが、第四章外伝「風の勇者」にてついに最初に犠牲者が出た。それが、マギ団の一員でもあるブライトンだった。通路を塞ぐ壁役の最左を担っていたブライトンは、執拗なまでに襲い来る魔導師のファイアーに身を焦がされ倒れる間際、かつて犯した万引きの罪を自嘲するように呟き、そして事切れた。
「フフ・・・
むかしの・・・
むくいか・・・」
牢獄からの脱出を目指す第四章外伝「風の勇者」は、ミノル軍からまたしても仲間を奪った。軍全体における武器不足を危惧したミノルは、体格に優れるダルシンを捕獲要員として剣の確保を目論んでいた。が、そこに隙が生じてしまう。捕獲によるデメリットでダルシンが弱体化しているところに傭兵が斬りかかってきたのだ。中途半端に残っていた体力は血飛沫と化し、敵の刃に刻まれながらも、ダルシンは最後まで兄弟達の幸せを願っていた。
第三の戦死者 フェルグス
捕獲の成功によりマチュアを救出し、更には再行動によって前線から離脱、おまけに渇望していた鉄の剣まで手に入れてしまうという働きを示した彼は、ミノル軍師をして今回のMVPと言わしめるほどの魅せ場を遺した。そう、遺した、である。依然として解消されない武器不足のため敵の捕獲に急いていたミノル軍師は、索敵マップにも拘らず前方の確認を怠るという愚を犯してしまう。そして暗闇からアーチャーが現れ、敵兵を担いだままで身の重いフェルグスに向けて慈悲の心もなく弓矢を引き絞る。
こうして今回のMVPは、その今回が終わる前に力尽きたのだった。
「ぐっ・・・
そうそううまくは・・・
いかないものだな・・・」
第四の戦死者 ナンナ
悲劇、と言うより他になかった。
第五章「母と娘」において、ミノル軍師は長時間に渡り知略を巡らし続けた反動か集中力を欠き、こともあろうかエーヴェルと共に闘技場で閉じ込められているナンナに指示を出し忘れてしまったのだ。強力な専用装備を持っていても、そのときのナンナはか弱い少女に過ぎず、高みの見物を決め込んでいるレイドリックからすればその姿はあまりにも脆弱なものに見えたことだろう。軍師からの指示もない初めての戦闘だ、ナンナに為す術はなかった。敵の剣闘士は容赦なくナンナに一太刀を浴びせ、致命傷を追いながらも必死の抵抗を試みる彼女を嘲笑うかのように、返す刀でその命を摘み取った。
リーフとの再会を果たす前に散っていったナンナだが、トラキア776におけるメインヒロインである彼女の死は、未来の戦に多くの不利、損失を招くことになるのだが、ミノル軍師がその事実を知るのはまだまだ先のことである。
「・・・リーフさま・・・
負けない・・・で・・・」
第五の戦死者 ヒックス
息子のマフィーを助けられたことに恩義を感じ、ミノル軍に参戦していたヒックスだったが、その献身も第七章「トラキアの盾」にて早くも終わりを迎えた。
後方より大挙して押し寄せる援軍を向かい撃つべくミノル軍師は前線の維持を優先し、決して退こうとはしなかったのだが、その判断が凶と出た。リーフやマチュアを援護するため第一線で立ち回っていたヒックスに、魔導軍団が一斉に狙いを定めたのだ。二発のファイアーを辛くも回避したヒックスだったが、続いて飛んでくるメティオの連射には対応することが出来ず、業火に飲み込まれ、果てた。その場には「ヒックスさんはイケメン! 馬カッコいい!」と誰を褒めているのかわからない軍師の言葉だけが虚しく響いていた。
「・・・マフィー
とにかく・・・無事で・・・
育って・・・ぐふっ」
第六の戦死者 ダグダ
度重なる窮地と危局の連続は着実にミノル軍師を成長させ、彼の率いる軍に死者が出たことなど遠い過去のこととなっていた。
しかし第十八章「王都解放」で、ミノル軍師は最大の敵は懐に潜んでいることを知る。ミノル、アウグスト、ドリアスと言えば、トラキア軍の頭脳とも呼ぶべき偉大なる三軍師であったが、その一角には恐ろしいまでに深い闇が眠っていたのだ。
鬼畜軍師、アウグスト。
なんと彼は独断で、軍をふたつに割るという奇策に出てしまったのだ。だがその采配は非常にお粗末なものであり、結果、長らく忘れていた絶望と衝撃をミノル軍師に叩きつけることになる。
盗賊であるリフィスとラーラが一方に固まってしまったことで、切り込み隊長マチュアを始めとする多くの主力メンバーが扉を開けれずに立ち往生する羽目となったこと。これが第一にして最大の苦難であった。それでもミノル軍師は半分の戦力で現状の打開を目指し、なんとか敵城の大広間を占拠するまでに至った。後はもうリーフ達と合流するまで慎重に進軍すればいい……はずだったのに、ひょっこりと顔を見せたロプト兵はまるで虫を潰すかのように躊躇いなく、ダグダに殺意を差し向けた。遠距離闇魔法、フェンリル。その威力は凶悪の一言に尽きる。いかに強靭な肉体を誇るダグダとはいえ苛烈な戦いを強いられ疲弊した状態では、耐えることができなかった。
彼の死を皮切りに、順調かと思えた軍師ミノルの戦いは本格的に激化していくことになる。
「さして面白くもねえが
くだらなくもねえ
人生だったな・・・」
第七の戦死者 ラーラ
リーフ達の脱獄の手助けをしたことから始まり、この日までラーラは軍師ミノルと共に在った。全体的にぱっとしない能力値に加え、貴重な盗賊ユニットとはいえ劣化リフィスである事実は否めなく、彼女が真価を発揮する踊り子にもクラスチェンジできずに、もはや鍵を開けるくらいにしか使えない彼女でも、軍のマスコットキャラクターとしてその地位を確立し、みな(主に軍師)に癒しと安らぎを与えていた。だがそんな無力な少女でも、敵の前では等しく標的となるのが戦争なのである。第十八章「王都解放」にて、状況はダグダと同じだった。手の届かない場所から出現するロプト兵はフェンリルを用いてラーラを強襲し、どうすることもできぬまま歯噛みするミノル軍師の目の前で、彼女の華奢な体を情け容赦なく葬り去った。これにより盗賊はリフィスのみとなり、鍵に乏しいミノル軍は扉を開けられずに進行不可、つまり、完璧な詰みという可能性が浮上するのだった。
「ああっ・・・
次に生まれるときは・・・
もっと・・・」
第八の戦死者 セルフィナ
第十八章「王都解放」における最後の犠牲者は、ラーラの死から間もないタイミングで訪れ、ミノル軍師に多大な精神的ダメージを与えることになった。ラーラを失った直後、続くフェンリルが今度はセルフィナに照準を合わせた。一発受けただけならば、彼女は生き延びることができただろう。しかしセルフィナの所持するスキル『突撃』は、相手よりも体力が多い場合は戦闘を継続するというもの。たとえ一方的に攻撃されるだけの場合でも、だ。懸命に不発を祈るミノル軍師の言葉も通じず、スキルは発動した。二回のフェンリルをその身に受けて耐えうるはずもなく、セルフィナは戦死者一覧に名を連ねる運びとなった。
「フフ・・・これまで・・・ね・・・
ごめんなさい・・・
グレイド・・・」
第十九章「ザ・糞軍師」は、ミノル軍師の長い戦いの歴史において最大の戦禍をもたらした。まさに惨劇だ。
軍に最初の綻びを入れてしまったのは、皮肉なことに総大将たるリーフが大局を見誤ったことであった。 帝国からアルスターを救うため、リーフは三軍師の反対を強引に振り切って新たな戦場へと駈け出した。これが惨劇の幕開けとなる。先発隊として軍の半数を引き連れてアルスターに向かったドリアスは帝国の反撃を受け、味方の逃走時間を稼ぐため最後まで戦い抜き、死亡。その報を聞いて呆然とするリーフ。未だに数多くの仲間達が敵陣の眼前に残されたまま。 絶体絶命。この危機を覆すため、我らが天才軍師ミノルが立ち上がる。
しかし、ここでミノル軍師は痛烈なまでの挫折を味わうこととなった。
逃げ惑う市民を守るため、アスベルは最前線の森へと乗り込んでいった。抜群の回避力で余裕の迎撃を見せてくれるであろうとミノル軍師は予想していたようだが、現実は彼の思惑を大きく外れていた。本当に、呆気ないものである。ターラの防衛戦では、急襲にも臆せずオーシンと背中合わせに戦いトラキアのドラゴンナイト集団を一掃する大活躍を見せたアスベルが、たった二人の騎兵に敗れたのだ。その衝撃はミノル軍全体にまで伝播し、指揮官の頭脳をも鈍らせることになる。
第十の戦死者 グレイド
第十九章「ザ・糞軍師」の戦いは続く。
剣の錆となったアスベルを弔う寸暇すら与えずに、敵軍の波状攻撃は勢いを増していく。市民を連れて味方陣営へと避難しようとしていたグレイドを、敵は逃さなかった。移動性能、そして数で勝る敵の騎兵は簡単にグレイドに追いすがり、強力な銀の矢をもって彼の息の根を止めた。先の戦いで鬼籍に入っている妻・セルフィナと、グレイドが黄泉の国で再会できることを祈りたい。ところで、地味に指揮効果を持つグレイドのロストは決して看過できるものではないが、時を同じくしてミノル軍師は言い訳に勤しんでいたため、あまり気にはならなかったようだ。
「この身が・・・くちようと・・・
レンスターは・・・
再び・・・必ず・・・」
第十一の戦死者 ディーン
第十九章「ザ・糞軍師」の戦いはまだ続く。
竜騎士ディーンに命じられた指示は、打たれ弱いサラを安全圏まで運ぶことだった。大量の銀の弓が行き交う戦場で、飛行系であるディーンはまさしく飛んで火に入る夏の虫。どうにか接敵を避け続けていたものの、オーシン、マリータ、フィンの三人で抑えている前線は不安定極まりなく、ついには弓騎兵の攻撃範囲に捉えられてしまう。そして、勝負はただの一撃で片付いた。
第十二の戦死者 マリータ
第十九章「ザ・糞軍師」の戦いはまだまだ続く。
エーヴェルの養女にしてトラキア屈指の強者ガルザスの実子、そしてオードの直系という優れた血筋を持つ彼女は、加入当時からその系譜に恥じない強さでミノル軍に貢献していた。しかし、攻撃性能では軍のツートップであるマチュア、マーティすら超えていた彼女でも、いかんせん多勢に無勢であった。次々と仲間が各個撃破されていく中、平地で敵将コノモールを倒すという軍師の無茶な注文に応えたマリータだが、彼女にその先の未来は用意されていなかった。度重なる攻撃を凌ぎながら生き延びようとするも、最期にはアーチの矢にその身を貫かれ、儚くも戦場に散華した。それによってガルザスを説得する術は失われ、彼とは近い将来、刃を交えざるを得なくなってしまった。
「か、母様・・・くっ・・・」
第十九章「ザ・糞軍師」の戦いは依然として続く。
相次ぐ戦死者によりミノル軍の前線は総崩れとなり、撤退を余儀なくされる。しかし足の速さは敵の方が上だ。そこでミノル軍師はオーシンに非情の命令を下すこととなる。それは、味方の安全を確保するまでの間、オーシンたったひとりで敵勢を食い止めるというものだ。誰もが彼の生還を絶望視しただろう。だがオーシンは斧を握りしめて果敢に立ち向かった。マージナイトの魔法を受けて死の淵まで追い込まれても致死の一撃だけはかわし続け、スキル『怒り』で並み居る敵を蹴散らし、孤立無援の戦場で壮絶な死闘を繰り広げていた。その様を目にした者は彼を鬼神と呼んだという。だがそれも、敵からすれば姑息な悪足掻きに過ぎない。すべては時間の問題だった。傷つき疲れ果てたオーシンに敵将アマルダのマスターソードが振り上げられる。初撃は回避に成功したオーシンだったが間髪入れずに放たれる二撃目を見切ることは叶わず、多くの敵を道連れにして、絶命した。これにより前線は壊滅し、ミノル軍師は更なる犠牲を払うことになる。
「く、くそっ・・・
俺としたことが・・・」
第十四の戦死者 エダ
第十九章「ザ・糞軍師」の戦いは相も変わらず続く。
既にたくさんの戦友が土に還った。兄のディーンももうこの世にはいない。ミノル軍の主力はひとりずつ削られていく。そんな戦々恐々とした空間を、エダはドラゴンを駆りひたすら逃げ回っていた。アーチや銀の弓がひしめき、敵兵と渡り合える力もないエダにはそうすることしかできなかったのだ。だがマチュアを乗せて応援に駆けつけたカリンが敵に包囲されつつあるのを見て、彼女はついに背を向けることをやめた。カリンを助けるために戦いの渦中へと飛び込み、どうにか二人で脱出できないかと思索を巡らせた。しかし彼女の挺身も実を結ぶことはなく、エダは囚われの身となってしまう。そのまま連れ去られる前にカリンに救い出されたものの、逃げ込んだ森の中でアーチに狙撃され致命傷を負い、長年連れ添った騎竜に微笑みかけながら息を引き取った。
大人しく捕まっていたら恐らく生きて再会できたであろうことは、ミノル軍師には永遠に秘密である。
「ケイト・・・
ずっと・・・
ありがとう・・・
もういいよ・・・
トラキアへおかえり・・・」
第十五の戦死者 カリン
第十九章「ザ・糞軍師」の戦いはいつまでも続く。
ペガサスナイトと言えば、そう、ミノル軍師が愛してやまない少女達のことである。ミノル軍唯一のペガサスナイトとして大空を縦横無尽に駆け巡り、軍師の愛が作用したとしか思えない類稀なる爆発的機動力を駆使して、他の誰にも真似できない仕事をこなし続けてきたカリン。そんな彼女すらも生きて戦線を離脱することはできなかった。命を賭して守ろうとしたエダも敵の魔の手に落ち、心身共に消耗したカリンへと、敵将アマルダが再び剣を抜いた。オーシンの血潮を吸って間もないマスターソードが降り注ぐ。回避は儘ならなかった。斬撃をまともに喰らったカリンはとうとう命尽き果て、敬愛する主君の名を呼びながら瞳を閉じた。彼女の死を目の当たりにしたミノル軍師は半ば放心していたという。
この戦における犠牲者はカリンで最後だ。なんとか敗北は退けたものの、此度の戦いでミノル軍の戦力は半分近くが脱落したことになる。マチュアとマーティの最大戦力2Mは健在だ。リーフ、タニア、サラ、フィン、カリオンと頼もしい戦士達も残っている。だが、この先も今回のような大虐殺が起こりうるのだと考慮すれば、お世辞にも現存戦力では充分と言えない。
多くの屍によって築かれた山の頂に立つ軍師ミノルと総大将リーフ。二人は自らの過失により、かけがえのないものを失った。それでも前に進み続けなくてはならない。そう、ここからが本当の戦いなのである。果たして彼らはこの戦争に終止符を打つことができるのだろうか。
「・・・フュリー様・・・
ごめんなさい・・・
王子様・・・」
第十六の戦死者 ラルフ
あの悲劇から半年の月日が流れ、ミノル軍は今、敵将バラート率いるフリージ軍と交戦していた。それが第二十章「光の公子」である。
今回も鬼畜軍師アウグストの謎采配が光った。適当な分散はもはやご愛嬌として、何を血迷ったか数少ない戦力をまさかの単騎配置という、お前は敵の回し者かと本気で疑ってしまうほどわけのわからん策略を披露する。一部はいつぞやのように扉を開けられず閉じ込められ、ミノル軍の足並みは盛大に崩れていた。しかも牢に入れてある敵兵には武器を与えたままというサービス精神でミノル軍師への嫌がらせに余念がない。さすがアウグストである。
戦局は佳境に入り、形勢は有利と見るやミノル軍師は強気に踏み込んだ。そして主戦力のマチュアとマーティが敵将と対峙しているとき、後方ではラルフもまた戦っていた。攻め入ってくる敵軍から弱い仲間を守るため、ラルフは通路に立ちはだかる。しかし中途半端な能力の彼では、あまりに薄い壁だったようだ。「死んじゃやだ! 俺を守ってくれ……っ」というミノル軍師の願いも天には届かず、神はラルフを見放した。
「ちっ、これまでか・・・
後はたのんだぜ・・・」
第十七の戦死者 ケイン
「・・・志・・・
いまだ・・・
果たせず・・・」
第十八の戦死者 カリオン
前線での壁役に乏しいミノル軍で、カリオンは2Mに準ずる戦力になることを嘱望されていた。しかし有望視されていたはずの彼の将来は、第二十一章「解放戦争」にて潰えた。いつものように敵地でひとり暴れまわるマチュアを援護するため、瀕死の敵将軍セイメトルにトドメを刺そうとカリオンは前線に赴く。しかしセイメトルのスキル『祈り』が邪魔をしたのか、彼の投げた手槍は見当違いの方へと飛んでいった。そして彼の真横にはナイトキラー持ちの竜騎士が。馬から降りていれば何倍も安全になっていたのだがミノル軍師はそのことに思い至らず、特効の直撃によりカリオンは反撃の間もなく倒れ伏した。ミノル軍から残り少ない貴重な戦力が、またしても消滅した瞬間であった。
第十九の戦死者 アルバ
アルバがその短き生涯を終えたのは第二十四章「黒衣の男爵」にて。第十九章の惨劇の経て、彼は第二十一章から本格的に育成を開始される。その甲斐もあり、かつてのカリオンを思わせる良成長をアピールするアルバ。敵ロプトマージのフェンリルを受けたところで一撃で倒れる彼ではない。
だが、彼の命の芽はあまりにも些細なミスによって摘み取られた。一撃のフェンリルには耐えられる彼であったが、傷薬の使用を忘れ、満身創痍の状態に第2撃のフェンリルの前に倒れたのだ。第二十四章では部隊は3つに分散させられるのだが、3方面作戦の指揮を執ることは高度演算頭脳ミノルシステムを以てしても容易ではなかった。なお、この分散作戦がさらなる惨劇をもたらすことを軍師ミノルはまだ知らない。
弓騎士セルフィナ・軍師ドリアス・騎士団長グレイド・そして戦友ケインとカリオン。彼らに引き続きアルバもまた戦場の露と消えた。南トラキアにて再起を期したレンスター遺臣団は今、騎士ロベルトに全て託された。
「ノヴァの・・・軍旗よ・・・
永遠・・・なれ・・・」
第二十の戦死者 セティ
彼がミノル軍と合流したのは第二十三章「魔王の城」にて。マンスター城を奪い返したセティは第二十四章「黒衣の男爵」にて正式にミノル軍に参加する。 聖戦士セティの血を引き、神器フォルセティを扱い。命中率181%・回避率76%という尋常ではない数値を見せつける彼は間違いなくトラキア776最強の勇士である。彼が仲間に加入した時点でトラキア776というゲームをクリアすることはさほど困難ではない。第二十四章のガルザス、そして終章の六魔将等、彼をまともに撃破しうるユニットはわずかに存在するのみである。
そう、存在するのだ。たとえそれがわずかであろうとも。
トラキア最強の戦士ガルザス。技20とカンストし、マスターソード・マスターアクスを振い、流星剣と月光剣のスキルを持つ彼もまた、セティと同じく聖戦士の血を引く一騎当千の勇者である。スキルを発動させた彼を前にして生き残る猛者は存在しない。
「うまくおびき寄せて
私のフォルセティでしとめる」
セティの進言を聞いた我らが軍師ミノルはその言に従い、傭兵団を率いて突撃するガルザスの攻撃範囲にセティを配置。両者は一騎打ちの構えを見せる。勇者同士の勝負は一瞬でついた。ガルザスの投擲したマスターアクスはセティに反撃の余地も与えず、必殺の一撃を以て仕留めたのである。
戦場に倒れることを彼自身予期していたのであろうか。彼は自ら持ち込んだ扉の鍵で大広間への扉を開いた。そう、ミノル達に道を遺して。彼の戦績は1戦0勝1敗。人は彼をこう呼ぶ。鍵の勇者セティ、と。
「これまでか・・・
母上・・・フィー・・・
シレジアを・・・頼む」
第二十一の戦死者 ロナン
彼もまた、第二十四章「黒衣の男爵」にてその命を落とした。勇者セティを倒したガルザスは返す刀で無防備なロナンを至近距離から仕留めたのである。再行動率25%は伊達ではなかった。
第二章「イスの海岸」にてミノル軍に参加した彼は、序盤はタニアのセカンドバックとして、中盤は一杯になった倉庫を補助する輸送隊として。そして第十九章「ザ・糞軍師」にて歴戦の勇者が戦場の花と散った終盤、彼は一軍戦力としての活躍を見せた。
弓兵でありながら魔力55%の成長率を持つ彼は、終盤ロプトマージが跋扈する戦場においては独壇場となるはずである。そう、例えば第二十四章「黒衣の男爵」のような戦場では。だが、ミノル軍師の深謀遠慮により手塩に掛けられたロナンを、軍師アウグストの罠が襲う。第二十四章では部隊は3つに分散させられるのだが、よりにもよって、魔術師を相手取らない部隊に配置されたのである。カンスト寸前の魔力を持つ彼も、こうなっては脆弱な弓兵にすぎない。勇者セティをフォローする位置に陣取った彼の命運は、剣士ガルザスを目の前にして尽きたのだった。
「ああ・・・
母さん・・・」
第二十二の戦死者 ハルヴァン
第二十四章「黒衣の男爵」にて彼が倒れたのは、少々特殊な事情である。敵の闇魔法により毒を受けた彼は、強制的にHPを1とするヘルを敵ターンに受けてしまったのだ。
回復する間もなく、自軍ターンを迎えた彼は余りにも理不尽な毒死を遂げる。
彼のトラキアにおける生涯はあまりにも幸薄いものであったことは誰しもが認めるところであろう。第一章より参戦し、勇者の斧を片手に持つ彼は相棒オーシンと並び、優秀な斧戦士として序盤に活躍する。
だが、運命は過酷である。第九章「ノヴァの紋章」にて殿を務めた彼は、敵の殲滅と引き換えに帝国軍の虜囚となってしまう。
運命は過酷である。第二十一章外伝「ハルヴァン収容所」にてトラキア軍ではなく帝国軍の収容所より救出されるが、勇者の斧を失い十章余りを無成長で居た彼はあまりにも無力であった。
毒に倒れる中、同郷のマーティ、タニアがエースとして活躍する姿をどのような想いで彼は見つめていたのであろうか。
ミノル「毒とヘルなんて成立するわけない」⇒「そりゃそうだよな」
第二十四章「黒衣の男爵」は未だミノル軍に牙をむく。彼もまた非業の死を遂げたのである。第十九章「ザ・糞軍師」の惨劇の経て、彼もまたアルバと同じく主戦場に立つこととなる。
十一章外伝「マーダーホレス」にてミノル軍に参画したフレッドは決して目立つ存在ではなかった。だが、彼のもたらしたいかずちの剣は天馬騎士カリンへと引き継がれ数数多のアーチを粉砕した。そして上級職として決して低くない能力は戦力に欠乏をきたした終盤において欠かせるものではなかった。
そんな彼を襲ったのは奇しくもアルバを屠ったフェンリル、そして雑兵の一撃によるコンビネーションであった。従来ならば高度演算頭脳ミノルシステムを駆使する天才軍師がそのような組み合わせを許す筈もなく、フェンリルを無効化していた。だが、天才・そして数々の大陸を救った軍師といえども人間である。アルバ、セティ、ロナン、ハルヴァンと次々に戦友の倒れ行く中、平静で居られる道理がないのだ。
フレッドは斃れた。主君オルエンの盾となるように、その目の前で・・・
ミノル「もう駄目なんだよ俺は・・・・・・待ってくれ、待ってくれ頼む」
第二十四の戦死者 マーティ
ミノル軍師が歩みゆくトラキアの長い旅、その始まりにはもう、マーティの姿が傍らにあった。鈍重そうな容貌と底辺極まるパラメーターから、まず誰もが彼のことを弱者と決めつけ嘲ったことだろう。だが、ミノル軍師だけはマーティに秘められし潜在能力を見抜き、その才能を遺憾なく伸ばしていった。
頑強な肉体に不釣り合いな俊敏性、最大まで強化された体格、豊富なフィジカル、小手先のテクニック、ミノル軍師から授かったスキル『待ち伏せ』。力を、技を、そして心を磨き、ふと気がついたときには、マーティはもう名実共にミノル軍のエースだった。もうひとりの千両役者マチュアが手数と突破力に特化した機動力戦車なら、攻防共に図抜けた安定性を誇るマーティはさしずめ不沈艦といったところだろうか。彼がいなければ遂行できなかった作戦がいくつもあった。彼がいたからこそ救われたものがいくつもあった。彼は、ミノル軍に燦然と輝く明星だった。
まさに男が惚れる漢。
しかし、彼はもういない。誰の手も、誰の声も、誰の想いも、マーティにはもう届かないのだ。決して。
第二十四章外伝「ロプトの祭壇」が、ファイアーエムブレム史上最悪最凶の鬼畜マップと揶揄される所以は多々ある。毎度恒例となりつつある有無を言わさない適当な分散。延々と湧き出し続ける増援。ヘルとヨツムンガンドによる即死コンボの恐怖。『怒り』を標準搭載したバーサーカー達。事前に察知のしようがない強制ワープの罠。通常の手段では脱出不可能の折檻部屋。暗闇から飛んでくるスリープ、サイレス、バサーク。魔法床によって威力を増強された極悪なフェンリル。
上記のラインナップを改めて鑑みて、目眩を覚える者は少なくないだろう。
その脅威を前にして、豪傑マーティはあまりにも早く、あまりにも簡単に落命した。
戦闘開始の序盤、マーティはロプト兵が操るスリープの標的となり、意識を奪われてしまう。更に敵の戦略は狡猾だった。杖使いのリノアンにはサイレスをかけレストを封じ、攻撃性能に優れたタニアにはバサークをかけ、ミノル軍の布陣の内側より崩そうと画策したのだ。ミノル軍師は懸命に知恵を絞り、マーティを守る手段を模索した。だが、切れるカードは存在しなかった。正気を失ったタニアは赤子同然に横臥するマーティに向かい、望まぬ弓を引いてしまう。結果、マーティは皮肉なことに、数多くの戦場を共にくぐり抜けてきた同郷の士タニアの手によって死出の旅路へと送り出されたのだ。
さぞや不本意だっただろう。
さぞや無念だっただろう。
霊体となったマーティが自らの死に様を知ることがあるならば、そのときの彼の心境を想像するだけで胸が締めつけられる思いである。
しかし、だ。考えてもみて欲しい。彼があの場にいなければ、狂乱するタニアの矢は別の仲間を射抜いていたのかもしれない。そう、マーティは意識を奪われて尚、己が命を代償として傍らに立つ輩を守ったのだ。
となれば、案外マーティは草葉の陰で満足げに笑っていたのかもしれない。
「ちぇっ
ついてねえな・・・」
第二十五の戦死者 リフィス
かつては海賊団の頭目を張っていた彼も、ミノル軍に移籍してからは惨憺たる日々を送っていた。みんなからゴミ箱と呼ばれ、金策のためのパシリに使われ、いつも最低限の装備しか与えられず、ときには島流しの刑に処されたこともあった。そこまで冷遇されても軍を抜け出さないのはひとえに想い人の存在ゆえだろうか。
しかし、なんやかんやでリフィスがもたらした恩恵は相当なものである。
物資に乏しいミノル軍のため傷薬や魔導書を盗んだり、扉や宝箱の鍵を開けるために奔走したり、何気に戦力としても使えたりと、正味なところ2Mとは違う方向で大活躍である。
そんな影の功労者は、第二十四章外伝「ロプトの祭壇」にて、マーティが散ってからどれほども経たないうちに終焉を迎えた。なんの因果か、彼に引導を渡したのも味方の手だった。タニアと同じくバサークによって乱心し、こともあろうに総大将であるリーフに刃を向けてしまう。そのときのリーフは、果たして何を考え何を思い何を優先したのだろうか。横合いから突如として切りかかってきたリフィスを敵を見紛えたか、それともリフィスを放置することによって起こりうるかもしれない未知の損害を回避しようとしたのか、単に前々からムカついていたのか、とにかく、リーフの剣はリフィスの急所に深々と突き刺さってしまった。
これにより盗賊ユニットは全滅。難易度が格段に跳ね上がった瞬間であった。
「うう・・・
いてえよ・・・
サフィ・・・」
第二十六の戦死者 オルエン
第二十四章外伝「ロプトの祭壇」の猛攻は続き、次なる生贄としてターゲットされたのは、フリージの魔道騎士オルエンだった。
魔法も剣術も嗜むオルエンだが若干器用貧乏なきらいがあり、守備面には大きな不安を抱え、ダイムサンダという強みを加味してもミノル軍における彼女の立ち位置は微妙なところだった。
しかし守護神マーティを欠き、杖によって状態異常に陥れられた仲間達を後方に控えた今、オルエンは守られる立場から守る立場へと変わる。自身もサイレスを浴びながらも銀の剣を携え不退転の決意を掲げ、リーフと肩を並べて仲間の壁となり好機が訪れるのを待った。ところが、ロプト兵達の無慈悲なる連続攻撃は、オルエンの決死の覚悟をいとも容易く打ち砕いてみせた。軍師ミノルの指揮効果のひとつに味方のリアルラックを上昇させるというものがあるが、土壇場でオルエンはその加護に恵まれなかった。命中率僅か7%のヘルを食らって瀕死の重傷を負い、立て続けに肉薄するダークマージが闇魔法を唱える。万事休すだった。オルエンに回避行動を取る余力は残されておらず、ヨツムンガンドの暗黒に抱かれながら崩れ落ちた。
第二十七の戦死者 ロベルト
彼もまた、第二十四章外伝「ロプトの祭壇」にて志半ばで討たれた。
最後のレンスター遺臣団としてその名誉と矜持を一身に背負っていたロベルトだが、その能力はどれだけ贔屓目に見ても低すぎた。長らく倉庫番として裏方を担当し、戦線に駆り出されたものの満足に修練を積む機会もなかったのだ。それでも臆することなく戦場に立とうとした彼を、いかに戦力外だったとはいえ誰が責められよう。恐らくは、いつかこのときが来ることをロベルトも薄々は勘づいていたのではないだろうか。彼を物言わぬ屍に変えたのは偶然にも、母親同然に慕ってきたセルフィナを死に追いやったフェンリルだった。ただでさえ魔法に耐性のないロベルトなのに、敵は魔法床に乗ってマジックパワーの底上げまで図っていたのだ。それは一巻の終わりを意味していた。あえなくロベルトは一撃必殺の闇に沈み、レンスター遺臣団は全滅した。
「セルフィナ様・・・
もっと・・・
お役に・・・立ちたかった・・・」
第二十八の戦死者 タニア
本来ならば彼女は、生きて第二十四章外伝「ロプトの祭壇」を終わらせることができたのだろう。しかし、運命は彼女の生存を拒んだ。
仮にタニアの死を何者かの責任として追求するならば、槍玉に挙げられるのはミノル軍師なのだろうか。いつまでも尽きることのない増援に彼はメンタルを削られ、冷静な状況判断能力を損なっていた。それが致命的だったのだ。ミノル軍師は敵方の命中力を侮り、二度も危ない橋を渡りながら尚もタニアをロプト兵の殲滅係として起用し続けた。いかに低確率とはいえ、タニアが死ぬ可能性を踏まえれば考え直すべきだったのだろう。が、ミノル軍師がそのことに気づいたときにはもうタニアは玉砕していた。ヘルを貰って体力が激減したところに追撃のヨツムンガンド。いずれも高いとは言えないパーセンテージだったが当たるときは当たる。ミノル軍師は後に「馬鹿すぎて何も言えない」と自らの甘さを嘆いていた。
タニアの戦死により、レンスター遺臣団に次いでフィアナ義勇軍のメンバーも絶えた。幼馴染のオーシンや父ダグダを始めとした今は亡き身内の許を目指し、タニアはここに永眠する。願わくば、その眠りがどうか安らかであらんことを。
這々の体で戦地を離脱したミノル軍だが、安堵の息をつくのは早計だろう。その先には最後の関門が待ち構えているのだ。いよいよ最終章に挑むときがきた。疲労で出られない誰かを除いた最低出撃人数……たったの六人で、ミノル軍師は最終章を攻略せねばならない。この戦争がどのような結末を迎えるか、すべてはミノル軍師の双肩にかかっているのだ。
「そんな・・・
助けて・・・
オーシ・・・」
それぞれの意志と信念を掲げてリーフの旗下に集い、それぞれの覚悟と生き様を戦場で瞬かせ、それぞれの使命と未来のために散っていった気高い勇者達。変遷激しいトラキアの歴史は、彼らのことなどすぐに忘れてしまうかもしれない。だが、ここに刻まれた名前は確かに在った。それをいつまでも覚えておくことが生き残った人間にできる一番の手向けであり、義務であり、礼儀であり、そして感謝の印となる。
みなに、幸あれ。
生存者一覧
此度の戦で、心身共に誰よりも成長したのは疑いなく彼であろう。
思い返せば、ナンナとマリータを救うためフィアナの村を後にした頃のリーフはあまりに世界を知らなかった。しかし行く行くは軍の総大将として恥じることのない実力を身につけることになる。攻、速、守が高い水準でバランス良く揃い、最終的には忠臣フィンや戦神マチュアにも比肩する戦士となった。軍の旗印ゆえに中盤までは後方でどっしり構えていることも多かったが、戦力が枯渇した終盤以降は常に第一線で剣を振るい、仲間を助け、仲間に助けられながら逆境を打ち破ってきた。その力量は彼本来のポテンシャルを遥かに上回っているとされ、その点からもリーフの背負う覚悟の重みが伝わってくる。彼は、強くならねばいけなかったのだ。
己の過ちを認め受け入れる胆力。いかなる困難にも屈さない意志。アウグストの嫌味を聞き流す度量。剣の腕前のみならず精神面でも成長したリーフは、ついに最後の決戦に臨んだ。
六魔将(九割方エルフ)に苦しめられながらもなんとか封印を解除したリーフ達だったが、姿を見せたロプト教団の司祭ベルドは石化魔法ストーンを用いて彼らを退けようとする。そこでミノル軍師の号の下、リーフを除いた五人の仲間達がその身を危険に晒して突破口を開いた。無論、その戦術はリーフとミノルに確たる信頼があったからこそ成り立ったに相違ない。
仲間の石像を乗り越え、ロプト兵の残党を薙ぎ払い毒に侵されながらも、リーフはとうとうベルトとの一騎打ちに挑む。そして、劇的な勝利を飾った。その内容は手に汗握るものであり、是非とも自身の目で確かめて欲しい。
閑話であるが、進撃の途中でリーフはエーヴェルと瓜二つの弓兵に出会った。どうしても手を下すことが出来ずに感極まったリーフは、自らの分身とも呼べる光の剣を譲り渡し、彼女を戦場から逃した。そんな感動の一幕に涙した者は枚挙に暇がない。
グラン歴777年。こうして北トラキアは解放された。リーフは数年後、新トラキア王国の王位に就き、その一生を祖国のために捧げたという。今はまだ未熟な王だとしても、彼なら必ずやトラキアを繁栄に導き、民草を守ることができるだろう。
その魂に、多くの戦友の名を記して。
「セリス皇子と共にユグドラル解放戦争を指導。
バーハラでの勝利の後も各地を転戦し。
その名声は聖王セリスをも凌ぐものであったと言われる。
グラン歴780年。
南北トラキアを統合した『新トラキア王国』を建国し、その王位に就く。
姉アルテナと共にトラキアの民をこよなく愛し、
ダインとノヴァの『遺志を継ぐ者』として、
その生涯を祖国の統一と繁栄に捧げ続けた。
賢王リーフの名はトラキアに歴史ある限り永遠に
忘れられることはないであろう・・・」
バーハラの悲劇を生き延び、今日この日までリーフを育て見守ってきた忠臣の中の忠臣、フィン。思えばフィアナ村から最後までリーフの傍らに立ち続けたのはフィンだけである。
序盤から中盤にかけて戦場にいるのかいないのかもわからないくらい存在感の薄い彼だったが、華々しく活躍するマチュアやマーティの影に隠れてしっかりと働いていた。戦力が極限まで絞られた終盤では過去の目立たさなど嘘のような雄姿を披露し、リーフとの支援も相俟って、場合によってはかのマチュアよりも優先して起用されるようになる。果てには最強の六魔将エルフまでも打倒した。勇者の槍などいらなかったのだ。
軍の重大な戦力を担っていたフィンだが、過去に守るべき主君や愛する妻を亡くし、今回の戦で娘のナンナや旧知の仲であるグレイドやセルフィナ、他にも数多くの同士を失い、その無表情の裏には計り知れない悲しみが隠されているのだろう。それでも心を折ることなく最後までリーフに尽くした愚直なまでの忠義心は、確かに伝説と言っても過言ではない。
終戦後、リーフが王の座に即位した後に行方不明となり、それからの三年間、フィンが何をしていたのかは謎に包まれている。だが、どうやらミノル軍師だけは彼の目的に勘付いていたようだった。
「リーフの即位を見届けた後、不意に人々の前から姿を消す。
彼が、再び姿を現したのはそれから三年後のことだった。
『空白の三年間』に彼がどこへ行き何をしていたか、正史には全く記されていない。
僅かにイード砂漠で彼を見た者がいるという異聞が、残るのみである」
神に仕えし者 サフィ
参戦時からリノアンの加入まで軍の回復役を一手に引き受けてきたのが彼女、サフィだ。クラスチェンジしてからはライトニングを扱えるようになり、場数こそ少ないもののダークマージを殲滅するなど、その戦闘能力は決して低くない。だがサフィの真価は治癒でも光魔法でもなく、彼女の専門杖であるリペアだ。状態異常の杖がスナック感覚で飛来する終盤において、眠らされる前に眠らす、という流れは避けて通れない。そのため、リペアはほとんどがスリープの修復に消費された。その判断はいずれも功を奏し、もしサフィが不在であればミノル軍は現状に倍する苦境に嵌っていたことだろう。杖の数がモノを言うトラキアの世において彼女が示した功績は偉大であり、もしかしたら実は一番のキーパーソンだった可能性もある。いや、最後まで生き抜いたこの七英雄は間違いなくみなが主人公であり、誰が最も重要かなどと論じたところで詮方ないことか。
心優しい彼女は、たとえ敵対する者でも叶うならば生殺与奪のやり取りなどしたくはなかったことだろう。だが、サフィはもう人を傷つけ殺めるような真似をしなくていい。今後は心の中に息づく仲間達の分まで主リノアンを支え、祖国ターラをあまねく慈愛で満たしていくはずだ。
「ターラに戻り病める者貧しい者を救うために力を尽くす
そんな彼女の姿は人々の目にあたかも女神の如く映ったと伝えられている」
彼女の偉業を今更語る必要があるのかどうか、もはや疑問ですらある。
マギ団で唯一の生き残りとなったマチュア。マンスター復興のためリーフに協力し、いつだって先陣を切って血路を切り開き、数々の敵将を討ち取ってきた。その有能さ故にミノル軍師もマチュアを主軸においた策を弄する機会が多々あり、疲労困憊を押して参戦することもしばしば。常に過労死の心配をされるほどである。こと戦闘面に関しては彼女が一番の功労者であることに異を唱える者はいないだろう。
冴え渡る剣技の鋭さは多くの人を魅了し、血生臭い戦場に在りながら尚目映く輝き、かくも鮮烈に美しい。その姿はまさしく戦いの庭に咲く一輪の花である。だが何よりも語るべきなのはマチュアの雄々しさでも美々しさでもなく、恐るべき生存率であろう。彼女の首筋めがけて死神が鎌をもたげた回数は一度や二度ではない。しかし、まるで運命が彼女の退場を認めないと言わんばかりに、あるときは回避で、あるときは先制攻撃で、あるときは捕獲されるだけ、あるときは『待ち伏せ・怒り』が炸裂、あるときは奥義『太陽剣』で回復し、挙句の果てには必殺を出したバーサーカーをデビルアクスの自爆に追いやる始末である。万事において最後の最後で肝要なのは運であることを体現したかのような存在だ。しかも彼女は紛れもない実力まで兼ね揃えているので敵もさぞかし手に負えなかったことだろう。
戦争終結後は故郷のマンスターに戻り、その再建に尽力した。やがて長く苦しい戦いを支え合い静かな愛を育んできたミノル軍師と結ばれ、幸せな人生を送ることになる。子宝にも恵まれたようで、軍神と剣聖の間に生まれた子供がどれだけの才能を開花させるのか気になるところではあるが、それはまた別のお話だろう。
「マンスターに戻りその再建に情熱を注ぐ。
やがてかつての戦友と結婚、出産するが、マンスター再建への彼女の情熱は
生涯変わらなかったという」
今は亡き父に代わってターラを導くうら若き市長リノアンは、帝国の圧政に長い間苛まれていた。だがもう苦悩の日々は終わった。彼女は己の力で愛しき都市と市民を救ったのだ。
下級職ながら回復と攻撃の魔法を自在に操る才を持ち、サフィに次ぐ二人目の杖使いリノアン。クラスチェンジし損ねて最後までシスターのままだったのは残念だが、それでも英雄と呼んで差し支えない戦功を残した。その最たる場面は第二十四章外伝「ロプトの祭壇」だろう。わらわらと湯水のように湧いてくるロプトマージを駆逐するためリザイアさんに進化し、ヘルとヨツムンガンドの即死コンボを打開する切り札として立ちはだかった。が、強制ワープという卑劣なるトラップに見舞われ、孤立無援の折檻部屋で十何人という敵兵をしのぎ続けたが、ついには必殺を浴びて捕縛されてしまう。あの状況下では死と同義と見てよかったはずだ。仲間を決して見捨てないことに定評のあるミノル軍師さえもが諦めたのだから間違いないだろう。ところがどっこい、なんのつもりかリノアンを捕らえた魔導師はリワープを使って彼女をリーフ達の許へと送り届けたのだ。いったいその魔導師が何を考えていたのか、今をもっても謎のままである。とにかく、リノアンは奇跡の生還を果たしたのだった。このあたり、リノアンもマチュアのように特別な何かを持っているのかもしれない。
それはミノル軍師の伴侶としての暮らしだ。
彼女もまた苦難を共にしたミノル軍師に恋慕の情を抱いたのだが、そのときにはもう彼はマチュアと恋仲にあり、それがわかっていたリノアンは潔く身を引いた。そのため彼女の想いは誰にも明かされることはなく、ずっと胸のうちに秘められたままである。にもかかわらずリノアンはミノル軍師を健気に愛し続け、一生涯の間、他の誰にも心を動かさなかったという。そんな一途なリノアンだからこそ、一時は荒廃したターラを立ち上げることができたのだろう。
「ターラへと戻り戦乱に荒れたこの都市を復興。
かつて以上の繁栄を実現し、リーフの覇業を陰ながら助けた。
しかしその美貌にもかかわらず生涯を独身で通し、後の人々の様々な憶測を呼ぶことになる」
クロード司祭の啓示を受け、ツヴァイの光を持つとされるリーフの行く末を見届けるため同行することとなったスルーフだが、まさかここまでの逆境が待ち構えているとは夢にも思っていなかったことだろう。
スルーフもリノアンと同じくクラスチェンジの機会には恵まれなかったのだが、この二人が決定的に違うのは攻撃手段の有無だ。杖を振ることしかできないスルーフは戦力としてカウントできず、もちろん自衛の方法もなくて、接敵はそれ即ち捕獲に直結していた。だからといって彼が足手まといだということは決してなく、むしろ杖使いとしてまっとうに働き続けた。再行動率も高く、しかも有用な局面での発動が多くて、激しく地味だが攻勢時、守勢時共に絶妙な送りバントを何度か決めている。初期杖レベルAは伊達じゃない。杖ゲーとも称されるトラキア776では貴重すぎる存在で、それを示唆するかのように、七英雄の半分以上は杖使いだ。単なる偶然ではないだろう。
仕方のないことかもしれないが、その能力値は七英雄の中で断トツの最下位だ。HPと守備が低いのは職業柄だとしてもプリーストのくせに魔力まで低く、フェンリルで一撃即死の危機まであったほどだ。そのせいか最終章では、疲労によって休んでいるサラを出すために「スルーフは殺しておくべきだったな」「お前はいらない」「なぜフェンリルを避けた」などとどこかの誰かさん達に散々な言われようであった。石化したのが五人なのに対しキアの杖の使用回数が残り四回、さてどうするか……と意味深な視線を投げかけられたりもしたが、どうにか無事に終戦を迎えることができたようだった。しかし、戦争が終わったからといって彼の使命は変わらない。エッダ教団の教えを説くため、今日もスルーフは大陸を流浪していることだろう。
「戦乱終結後もブラギの塔へは戻らず、大陸を渡り歩いてエッダの教えを広める。
このスルーフを始めとするエッダ神官による懸命の布教活動により、
エッダ教団は再び多くの人々の心の拠り所として信仰を集めるようになっていく」
ロプトの大司教マンフロイの孫娘にあたるサラだが、父親を祖父に殺害されたことにより両者の関係は険悪だった。そんな折、リーフのエーヴェルを救いたいという内なる声を聞いて力を貸してくれるようになる。
12歳という軍の中でも恐らくは最年少であるにも拘らず、皮肉にもマンフロイから魔導の才覚が濃く受け継がれていたのか、サラの潜在能力には末恐ろしいものがあった。ほとんどの成長率が飛び抜けて高く、行動も☆5。最初からみっつのスキルを持っており、クラスチェンジすれば更にもうひとつプラスされる。魔導書も各種使いこなすことができ、歳相応なのは打たれ弱さくらいのものか。アスベルが帰らぬ者になってからはただひとりの攻撃的魔法使いとして怒涛の活躍を見せ、リワープを利用した単騎奇襲で敵陣を撹乱することなど日常茶飯事。雑魚の無双など朝飯どころか昨日の夕飯前。そこらの凡夫に土を付けられることなどありえぬ話だ。当然回復や状態異常の杖も使えるため後衛の仕事にも秀で、彼女が戦闘に参加したときはだいたい最初から最後まで働きづくである。
そんなブラック運用が祟って、肝心要の最終章にサラの姿はなかった。だが、彼女は特に懸念などしていなかっただろう。リーフ達の実力を修羅場を共にしてきたサラはよく知っている。それに軍の指揮を執るのは他ならぬミノル軍師だ。気を揉むことなくゆったりと疲れを癒すことができたはずだ。そして帰ってきたリーフから受けた報告はもちろん、勝利であった。
すべてが終わった後、サラは人知れず歴史の表舞台から消えた。身寄りもなく、元より厭世的な部分のあるサラだ、そんな少女がひとりで生きていけるほどこのトラキア大陸は穏やかではない。だが聞くところによると、国王リーフの庇護下で絢爛ではないが自由気ままな生活を送っているという。そんな毎日が彼女にとっては幸せだったのだろう。なぜなら、そこにはサラを大切に思ってくれる人達がいるのだから。
「ひっそりと姿を消す。
諸伝によればリーフの保護のもと、つつましくも心豊かな一生を送ったという」
関連項目
- 軍師ミノル(はぁと)
- ザ・糞軍師シリーズ
- 軍師ミノルの封印の剣死傷者一覧
- 軍師ミノルの聖魔の光石死傷者一覧
- 軍師ミノルの蒼炎の軌跡死傷者一覧
- 軍師ミノルの暁の女神死傷者一覧
- 軍師ミノルの風花雪月天刻使用者・死傷者一覧
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