※この項目では、『艦隊これくしょん~艦これ~』における「軽巡洋艦」について、史実解説を中心に記述しています。
概要
『艦これ』での軽巡は、ある意味で鎮守府“経営”の要である。最も利用頻度が高いのは、毎日の遠征任務での駆逐艦の引率役。これがなければ、鎮守府は成り立ちはしない。
戦闘でも、装甲の弱さに目をつむれば、やはり対潜能力の有無は重巡に対する大きなアドバンテージだし、重雷装巡洋艦となる「北上」「大井」をはじめとして雷撃力が重巡より上。2013年秋まではびこっていた『重巡無用論』の流れの中で、軽巡は『艦これ』の艦隊の中で枢要な位置を占めてきた。
2013年夏のイベント終了の後、重巡に対する改造限界値の向上・夜戦能力強化などのテコ入れ、以前から“強化駆逐艦”的存在だった「雪風」「島風」に加えて「時雨(改二)」「夕立(改二)」といった、一芸だけ(火力、対空など)なら軽巡を凌駕する駆逐艦が登場し、「軽巡と駆逐艦の装甲なら、大きいの一撃食らえばどうせ一緒」で、「だったら少しでもコストダウンのために軽巡より駆逐艦」という考えから、主戦力に駆逐(改二)を採用するケースも増え、雷巡の「北上」「大井」「木曾(改二)」を別枠とすれば 、2013年後半の軽巡は実戦では少し影が薄くなってきていたかもしれない。
しかし、その後の川内型および由良型の改二実装による強化、「連合艦隊」の実装に伴う軽巡の出撃回数の増加、敵潜水艦の登場回数の増加、さらに「弾着観測射撃」実装に伴う昼戦の駆逐艦との差別化、「対潜先制爆雷攻撃」実装による対潜能力強化など、細かいアップデートで軽巡の出番が減る事は無かった。
2013年秋のイベントでは、史実日本海軍が20年ぶりに建造した新型軽巡である、阿賀野型の「阿賀野」「能代」「矢矧」が先行実装された。2014年春イベントでは阿賀野型四番艦「酒匂」が実装された。
また、以前より実装が確実視されていた「大淀」(“任務娘”と同一人物)は、2014年夏イベントにて先行実装され、元々潜水艦隊の旗艦用だったために魚雷を持たなかった点を「他軽巡よりも雷装が低い」という形で再現されることとなった。
なお、海外にも数多くの名軽巡洋艦は存在しつつも、長らく艦これでは実装されてこなかったが、サービス開始から5年以上経過した2018年9月になって、スエーデン海軍の「ゴトランド」が、初の海外軽巡として実装されている。→ゴトランド(艦これ)
また、その後イタリア、オランダ、オーストラリア、アメリカと次々と軽巡が実装され、2020年時点では一転して最も数多くの国々の艦が実装されているカテゴリーとなっている。
天龍型
日本海軍における最初の“軽巡洋艦”となる艦型。当初計画では6隻の建造が予定されていたが、3,300トンという排水量は、水雷戦隊旗艦として使用するにはさすがに小さすぎるとして「天龍」「龍田」のみで打ち止めとなり、次の球磨型からは5,500トン級へ拡張されることになった。
軽巡洋艦は、19世紀では防護巡洋艦と呼ばれていた艦種から発展したもので、のちに巡洋戦艦へ発展する装甲巡洋艦ほどではないが、軽度の装甲を持つ巡洋艦として登場した。軽巡洋艦の本来の意味は、「軽量」や「軽武装」ではなく「軽装甲」である。
天龍型軽巡は八八艦隊計画の第一 段階である八四艦隊の一員として、戦艦「長門」とともに大正5年予算計上。6隻建造は取りやめとなったが2隻については続行され、大正8年に就役した。ちなみに起工と進水は「天龍」が先だが、完成・就役は「龍田」の方が先である。
太平洋戦争の時代では当然のことながら旧式艦扱いで、隷下に駆逐隊を持たず、「天龍」「龍田」のみで第十八戦隊を編成。回線劈頭のウェーク島をはじめ、中・南部太平洋諸島の攻略戦を戦う。昭和17年は第八艦隊に所属し、「天龍」は『三川艦隊』で第一次ソロモン海戦に参戦する(「龍田」はこの時、ニューギニア島・ブナへの輸送任務中で不在)。
「天龍」は昭和17年末、「龍田」は昭和19年3月に、どちらも潜水艦の攻撃で戦没する。
大戦中、日本軍の軽巡洋艦は約半数が潜水艦によって撃沈されているが、最古参の天龍型から最新鋭の阿賀野型までまんべんなくその撃沈リストに入ってしまっているのは、艦隊決戦における水雷戦隊の活用に執着して、潜水艦対策をおざなりにしてきた海軍の欠点を象徴するものだった。
『艦これ』では、簡単な任務で「龍田」を入手できるものがあり、「天龍」型軽巡姉妹の全2艦を編成せよ!が固有任務としてあって、序盤から目にすることが多い艦。「天龍」には『三川艦隊』に関する任務もある。
史実の最古参軽巡とあってステータスが低いにも関わらず、やたらとビッグマウスな「天龍」。かたやサディスティック全開な「龍田」。ともに個性的なキャラクターとなっていて人気が高い。また、その低ステータスが『艦これ』では逆に燃費の良さという最大の利点として現れていて、毎日の遠征では必ずと言っていいほど旗艦に据えられる存在である。
2018年1月、龍田に改二が実装。ステータスこそ他の軽巡の改程度だが、先制対潜爆雷攻撃やカ号観測機搭載可能という固有スキルに加えて大発動艇を装備可能でありながら、燃費が据え置きという遠征や輸送連合艦隊などの裏方向きに特化した能力になっている。それから遅れる事約半年、天龍にも改二が実装。実に川内型以来ほぼ4年ぶりに姉妹艦が改二で揃い踏みとなった(二人だけではあるが)裏方向きの龍田と正反対の火力と対空に特化し(大発動艇装備及び無条件先制対潜も出来ない)史実通りのカチコミ専門という良くも悪くも対照的な改二になった。
球磨型
→ 球磨(艦これ) 多摩(艦これ) 北上(艦これ) 大井(艦これ) 木曾(艦これ)
いわゆる【5,500トン型軽巡洋艦】として最初に建造された艦型。『艦これ』では、三番艦「北上」と四番艦「大井」が、重雷装巡洋艦へ改造される関係から絵師・声優ともに異なっており、しばしば両艦も元は球磨型であることを忘れられてしまう存在。
また、「球磨」と「多摩」の音が似ていることから、どちらがネームシップだったかも忘れてしまうことが多い。
天龍型が3,300トンと、やや小ぶりな形で出来上がったため、一線級として使用することに不安を覚えた海軍は、大正5年計画で天龍型6隻・7,200トン級3隻の予定だったのを改め、5,000トン級の巡洋艦9隻の建造とした。このうちの最初の5隻が球磨型である(残る4隻は改・球磨型となる長良型3隻と、実験艦的性格を与えられた「夕張」)。
5番艦「木曾」の就役は大正10年4月。次級・長良型一番艦「長良」(大正11年4月)までが、空母「鳳翔」(大正11年12月)より就役が早いと言えば、この艦型の艦歴の長さが理解できると思われるが、太平洋戦争どころか支那事変の時点ですでに老朽化を危惧されていた一方、対米戦に備えての重武装艦の配備も求められていた。
このため、球磨型の中から「北上」「大井」「木曾」に重雷装巡洋艦への改造が検討され、「北上」「大井」については実行された(昭和16年9月)。
【開戦時所属】
老朽化のため、水雷戦隊旗艦の座は長良型・川内型の各艦へ譲っていた球磨型は、隷下の駆逐隊を持たずに巡洋艦だけで戦隊を編成。重雷装の2艦は決戦兵力として戦艦部隊(第一艦隊)に加わり、第十六戦隊と第二十一戦隊へは妙高型重巡が艦隊・戦隊旗艦として配備される。
東南アジアの第十六戦隊は大きな戦いに関わらなかったが、資源輸送を脅かす潜水艦対策に忙殺され、北方海域へ進出した第二十一戦隊はキスカ島撤退作戦などの困難な作戦を戦う。
一方で、決戦様式が砲雷撃戦から空母による航空戦へ変化したことから、重雷装の第九戦隊は大艦巨砲の戦艦ともども動員機会を失い、せっかくの武装は半分撤去されて輸送艦扱いとなり、戦隊も解隊となる。
「球磨」は昭和19年1月、マレー沖で潜水艦により戦没。
「多摩」はレイテ沖海戦で空母部隊の護衛として出撃し、損傷して単独で帰投中に潜水艦により戦没。
「大井」は昭和19年7月、潜水艦により戦没。
「木曾」は昭和19年11月、マニラ空襲で戦没。
「北上」のみ、最後は特攻兵器「回天」搭載艦に改造されながらも浮揚状態(大破)で生き延びた。
『艦これ』では、事実上最強(チート)とも言われる重雷装艦「北上」「大井」の人気・実力が突出。「球磨」と「多摩」は、その音からくる愛玩動物キャラとしての立ち位置が、すっかり定着した感がある。ちなみに「球磨」はネームシップの為か改造限界が高い。「木曾」は2013年12月、史実では計画倒れだった重雷装艦への改造が改二として実装されたが、性能的には雷装方向に突き抜けた姉2人とは違い、万能型重雷装艦とでも呼ぶべきスタイルとなった。
そして2017年12月には満を持して多摩に改二が実装。後期長良型改二勢の流れを組む万能型の改二となった。なお前述の通り球磨型の下3人は重雷装巡洋艦になっているため、球磨型で軽巡洋艦のまま改二となったのは多摩が初である。
長良型
→ 長良(艦これ) 五十鈴(艦これ) 名取(艦これ) 由良(艦これ) 鬼怒(艦これ) 阿武隈(艦これ)
【5,500トン型軽巡洋艦】のひとつで、球磨型の改良型。球磨型の53cm魚雷より強力な、61cm魚雷を初めて装備した。
同型艦は6隻だが、「八四艦隊計画」として「長良」「五十鈴」「名取」が大正6年に、「八六艦隊計画」として「由良」「鬼怒」「阿武隈」が大正7年にと建造計画が別れた。設計に大きな違いはないが、一部資料では「由良」「鬼怒」「阿武隈」をまとめて「由良型」と記述する資料もある。
実際に、海軍艦政本部が昭和13年に「由良」「鬼怒」「阿武隈」を防空巡洋艦へ改造する計画を立ち上げた際に、「由良型」として資料に記載していた。
『艦これ』ではおそらくこういった点を踏まえて、前半3隻と後半3隻で絵師・声優を変えている(「由良」と「鬼怒」「阿武隈」では更に声優を変えている)。
長良型は球磨型の後継艦ではあるが、「鬼怒」までの5艦は、大正11年~12年の間に相次いで完成(「阿武隈」のみ、関東大震災の影響で大正14年にズレ込む)したため球磨型と1~2年程度しか艦歴が違わず、太平洋戦争の時点ではやはり老朽化が懸念されていた。
【長良型軽巡・所属変遷】
- 「長良」 … 【開戦時】第十六戦隊(第二南遣艦隊) → 【昭17.4】第十戦隊(第一航空艦隊)
→ 【昭17.7】第十戦隊(第三艦隊) → 【昭18.8】第八艦隊(附属)
→ 【昭18.11】第四艦隊(旗艦) → 【昭19.5】第十一水雷戦隊 (連合艦隊直属)
→ 昭和19年8月7日、戦没(潜水艦)- 「五十鈴」 … 【開戦時】第十五戦隊(第二遣支艦隊) → 【昭17.4】第十六戦隊(第二南遣艦隊)
→ 【昭17.10】第二水雷戦隊(第二艦隊) → (修理、防空艦へ改装)
→ 【昭19.9】第三十一戦隊(第三艦隊) → 昭和20年4月7日、戦没(潜水艦)- 「名取」 … 【開戦時】第五水雷戦隊(第二南遣艦隊) → 【昭17.3】第十六戦隊(第二南遣艦隊)
→ 【昭19.5】第三水雷戦隊(旗艦) → 昭和19年8月18日、戦没(潜水艦)- 「由良」 … 【開戦時】第五潜水戦隊(連合艦隊直属) → 【昭17.5】第四水雷戦隊(第二艦隊)
→ 昭和17年10月25日、戦没(ルンガ沖、空襲)- 「鬼怒」 … 【開戦時】第四潜水戦隊(連合艦隊直属) → 【昭17.3】第十六戦隊(第二南遣艦隊)
→ 昭和19年10月26日、戦没(第一次多号作戦)- 「阿武隈」 … 【開戦時】第一水雷戦隊(第一航空艦隊) → 【昭17.4】第一水雷戦隊(第五艦隊)
→ 昭和19年10月26日、戦没(レイテ沖海戦)
しかし長良型の各艦は、次世代の阿賀野型登場が戦中となったため、いずれも主力軽巡として北方や南方の各海域を戦った。軽巡最初の喪失となったのは「由良」である。
また「五十鈴」は、第三次ソロモン海戦で受けた損害の修理で主砲を高角砲へ換装して防空艦となり、同時に対潜装備も強化されたのだが、新鋭の阿賀野型が従来の艦隊決戦用として就役してしまったため、皮肉なことに旧式の「五十鈴」が、太平洋戦争において最も求められた形の軽巡となった。
『艦これ』では、「五十鈴」がとにかく色々な意味で中心的存在。軽巡枠ではいち早く改二が実装されたうえ、史実を反映して、改および改二で電探・爆雷のレア装備をつけてくる他、ステータスも高く、ほとんど重巡と同等の扱いすら受けている感があった(現在は弾着観測の実装によりやや不利にはなっている)。後に実装された「対空カットイン」にも対応している。また、2016年7月に「対潜先制爆雷攻撃」が実装されたが、五十鈴改二のみ対潜値や装備に関係なくこの攻撃が行えるという仕様になっている。
「由良」は初期値で対潜が高いため、敵に潜水艦が登場するとたちまち“対潜番長”の座を不動にした。
ネームシップである「長良」も、「球磨」と並んで改造限界が高い事から“最強軽巡”の評価が立っていて、『艦これ』の艦隊の中では主力の一角を担うことの多い艦の候補となっている。
2015年7月に末妹の「阿武隈」に改二が実装。軽巡の枠にいながら『甲標的』による先制雷撃と遠征で獲得資源が増加する『大発動艇』を装備できる万能性を持った希少種として独特の立ち位置を取るようになった。
2016年11月に「鬼怒」にも改二が実装され、こちらも五十鈴同様対空カットインが出来るようになり、阿武隈同様『大発動艇』系の装備が使えるようになった。さらに鬼怒固有の能力として内部に大発動艇を搭載しているというものがあり、何も装備していなくとも遠征などで大発動艇1隻分のボーナスが入るようになっている。
そして2017年6月に「由良」に改二が実装。甲標的、大発、さらに水上戦闘機まで搭載可能という、妹達をしのぐ汎用性を手に入れた。ただ、それとバーターになったわけでもないのだろうが、ステータスだけ見れば改二軽巡ではそう高くは無いため、下手をすれば器用貧乏となりかねない。提督の運用能力が問われる艦となっている。
川内型
【5,500トン型軽巡洋艦】の最後の艦型。球磨型・長良型との最大の違いは、動力設備の変更により、煙突が4本となっている点(球磨・長良は3本)である。
八八艦隊の最終段階となる大正9年度計画で予算が成立し、川内型は8隻の建造が予定されていたが、ワシントン海軍軍縮条約の成立によって3隻で打ち止めとなる。
これ以後の日本海軍は、保有数を制限された戦艦に代わって巡洋艦へ如何に重武装を施すかに躍起となり、最上・利根の各艦型は軽巡洋艦として起工しながら、重巡洋艦へ改造してしまう偽装すら行った。
ゆえに、これらの艦型を軽巡に数えないのであれば、川内型は阿賀野型登場までの20年間において、海軍が建造した最後の軽巡洋艦であった。
太平洋戦争時で最も艦齢の若かった川内型の3隻は、「川内」が第三水雷戦隊、「神通」が第二水雷戦隊、「那珂」が第四水雷戦隊のそれぞれ旗艦の座にあり、かねてより日本海軍が欲してやまなかった高速・水雷・夜戦の主力を担うものとして期待されていた。
しかし、その当の海軍が編成した第一航空艦隊(南雲機動部隊)と第十一航空艦隊(マレー沖海戦で「プリンス・オブ・ウェールズ」と「レパルス」を撃沈)の大戦果により、海戦の主役は戦艦・水雷部隊から空母機動部隊へ取って代わられる。各水雷戦隊も東南アジア攻略戦では現地の連合国軍艦艇と会敵し、苦しい戦いもあったが、もともと考えられていた艦隊決戦での雷撃戦とはいささか異なった戦いを強いられる。
戦域がソロモン諸島の島嶼戦へ移ると、水雷戦隊はその高速機動をもってガダルカナル島への物資輸送を行う一方、これを妨害せんとする米軍艦隊とも戦わなければならず、戦力は日増しに消耗していった。
昭和18年7月のコロンバンガラ島沖海戦で「神通」、11月のブーゲンビル島沖海戦で「川内」が相次いで戦没。「那珂」は昭和19年2月、トラック島空襲で戦没する。※「那珂」の最後は、これを撮影した米軍機のビデオが現存している。
『艦これ』では、この3人を揃える任務「川内」型軽巡姉妹の全3艦を編成せよ!が第三艦隊解放の条件となっている。使える艦隊が2つと3つでは、ゲーム効率の回転が段違いなため、序盤からほとんどのユーザーが全員を揃えるのに躍起になる軽巡である。
キャラクター面に関しては、「五十鈴」同様色々な意味で中心的存在の「那珂」、公認夜戦バカの「川内」の印象が強く、内気キャラの「神通」がやや埋没気味だったが、コロンバンガラ島沖海戦の戦史が知られると一転して、改二を期待される強キャラ認定が広まりつつあった。
そして、先に改二が実装された「那珂」に続いて、レア装備の探照灯を装備し、満を持して「神通」の改二が登場した。長らく公認夜戦バカこと「川内」も待たされていたが、2014年6月20日のアップデートで改二が登場。しかも全装備がレア装備(探照灯・照明弾・九八式水上偵察機(夜偵))という豪華仕様である。これにより航空巡洋艦になった利根姉妹に続いて川内型は全員に改二が実装された艦種になった。三人揃って軽巡でトップクラスの能力を持つためか水雷戦隊の旗艦として必要なイベントマップでは彼女たちが起用されるケースは多い。
阿賀野型
→ 阿賀野(艦これ) 能代(艦これ) 矢矧(艦これ) 酒匂(艦これ)
史実日本海軍が、川内型以来20年ぶりに建造した軽巡洋艦。『艦これ』では、2013年秋のイベントから実装が開始された。
軍縮条約が雲散霧消し、対米戦争の危機が増幅する中で立てられた、「マル4計画」こと『第四次海軍軍備充実計画』において構想された軽巡。老朽化の進む、大正時代建造の各軽巡に代わる水雷戦隊旗艦として造られた。
しかし太平洋戦争が始まって阿賀野型が就役したとき、海戦の主役は戦艦・水雷部隊のものから空母・航空機動部隊へと激変してしまっていた。
ネームシップ「阿賀野」が昭和17年12月に初めてトラック泊地へ出た際、もともと大艦巨砲主義者だった連合艦隊参謀長・宇垣纏にすら「果たして(航空主力となった)現下の戦況において、満足のいく戦いができる性能だろうか」というようなことを言われる有り様。もちろん結果論ではあるが、同時期の米海軍がアトランタ級防空巡洋艦(11隻)を建造していたのに対し、日本海軍が従来型の艦隊決戦用巡洋艦を建造してしまったことは、時代の趨勢を見誤ったものとして批判の対象となることがある。
宇垣の言葉通りだろうか、ネームシップの「阿賀野」は大きな戦いへ参加すること無く、昭和19年2月に潜水艦により戦没。二番艦の「能代」は第二水雷戦隊旗艦としてマリアナ沖海戦とレイテ沖海戦に参加するが、その水雷能力を発揮すること無く、米機動部隊の航空攻撃により戦没する。
しかし阿賀野型の存在は、三番艦「矢矧」と四番艦「酒匂」によって名を残すこととなった。「矢矧」は戦艦「大和」の、「酒匂」は戦艦「長門」の最後の戦いに、それぞれ殉じたからである。
日本海軍にはかつて、戦艦「ドレッドノート」登場の後に、古い設計思想のまま就役してしまったため、生まれた途端に時代遅れのレッテルを貼られた「薩摩」という戦艦がいた。阿賀野型もまた、水雷戦隊の軽巡洋艦としては優れた性能を持ちながら、時代の激変によってそれを活かすことが出来なかった不運な艦型であった。
『艦これ』では、単純な性能面では軽巡トップクラスだが、「球磨」「長良」及び改二艦には及ばない上に、当初は燃費が他軽巡と比較するとやや悪かった、という位置付けである(口の悪い提督曰く「性能向上前の重巡ポジ」)。その上、入手が困難(現時点では大量に資材を消耗する大型艦建造及び後半及びイベント海域のボスドロップ、酒匂は高難易度の6-2のボスドロップ)なため、運用出来る提督がかなり限られていることもあり、いまいち阿賀野型が有利となる運用方法というものは確立されていない・・・
だったが、2018年4月のアップデートで阿賀野型は水上爆撃機(瑞雲や晴嵐系統)の搭載が可能に、持参装備である8cm高角砲系統が補助増設スロットへの装備が可能になるなど、空母を伴わない水雷戦隊単独による制空権の確保や観測弾着射撃・夜戦・対空カットイン・連撃の仕様による装備の選択の幅が他の軽巡より大きくなり、投入できる機会が増えつつある。
なお、「阿賀野」「能代」「矢矧」と姉三人は2013年秋のイベントにて実装され、末妹の「酒匂」だけが長らく未実装のままであったが、公式ツイッターでもその存在を匂わせる発言をしているところから、近日中に実装されるのではとの期待と、そう簡単に取れないんでしょうという不安が日に日に高まっていた。そしてついに、2014年4月のイベントで、その最終面となる北太平洋海域のクリア報酬として実装された。
全員揃えるのは難しいが、史実ではついに叶うことがなかった阿賀野型四姉妹の揃い踏み[1]を、是非とも叶えてあげて頂きたい。
大淀型
→ 大淀(艦これ)
水雷戦隊の旗艦として設計された阿賀野型に対し、太平洋で敵艦隊の戦力を削る潜水艦隊の旗艦として、新型の高速水上機を飛ばして最前線で敵の位置を探り、配下の潜水艦隊を指揮してこれを叩くことを目的として設計されたのが大淀型である。
最初から、水偵を搭載することを目的とした艦であり、重巡の利根型のように、艦砲を前方に集め、魚雷発射管もなく、後方は水上機用の格納庫(その2階に潜水艦隊司令部)と大型カタパルトのみ、という割り切った艦形となっている。また潜水艦隊司令艦として通信設備も充実していた。
しかし、当初は2隻建造される予定だったが、太平洋戦争の勃発により2番艦「仁淀」は建造中止となり、完成した1番艦「大淀」も、本来の運用目的とは異なる運用となった。というのも、搭載するはずだった新型高速水上偵察機「紫雲」が開発に失敗し、さらに潜水艦隊による敵艦隊削りという局面もついに訪れなかったためである。
こうなると、潜水艦隊旗艦として割り切った設計が仇となる。主砲の門数も少なく、魚雷もなく、さらに同型艦も存在しない「大淀」は、最新鋭軽巡から一転、海軍のお荷物となってしまった。
そんな「大淀」に、太平洋戦争も終盤となってから、思わぬ転機が訪れる。
その充実していた通信設備に目を付け、最前線で指揮を執るための連合艦隊旗艦として「大淀」に白羽の矢が立ったのだ。
だが、司令部は最後方から指揮を執るわけで、「大淀」の旗艦デビューとなったマリアナ沖海戦では、なんと呉の柱島に停泊した状態での指揮となった。こんな状況では無理に海上にいる必要はないわけで、連合艦隊司令部はあっさりと陸に上がってしまい、「大淀」の"最後の連合艦隊旗艦"の任務も解かれることになった。
そして、最後は呉にて米軍の空襲により大破着底、戦後解体されることになる。しかし、逆に言えば数々の海戦に参加しつつも戦いでは沈まなかったわけで、幸運艦に数えられることもある。
『艦これ』では、長らく「任務娘」としてプレイヤーの前に立ち続けた後、2014年夏のイベントで、満を持して"艦娘"「大淀」として登場する形となった。さらに、夏イベント終了直後に改のグラフィックが更新されている。
全体的な性能としては(燃費も含め)阿賀野型に準じるが、魚雷を搭載していなかった史実に準じて雷撃値が非常に低く、夜戦に弱いという軽巡にあるまじき性能になっている。しかし、代わりに火力が軽巡でもトップクラス(4スロットの装備数からステータスで上回る神通改二より上)かつレアな対空砲を持っており、索敵値が非常に高く、育てると利根姉妹(改)を上回るまでに上昇する(流石に改二には負けるが)。さらに、改造すると、これまで「夕張」の独壇場であった「4スロット軽巡」となる。が、当然艦のステータスが異なるので、「夕張」と同じような運用をしても「大淀」の実力を発揮することは出来ない。運用する提督には適材適所を願いたい。
同型艦なし
→ 夕張(艦これ)
艦船を建造する際は同じ型の艦を2つ以上造って、戦隊を組ませたり、現役と予備のローテーションで運用したりするのが一般的である。しかし、あくまで試験的に建造したものや、性能が特殊すぎて2つ以上の量産が困難だったりしたもの、予算制約などの理由で1つしか建造できなかったもの、という場合も存在する。
日本海軍の軽巡洋艦で、これに該当したのが「夕張」である。
「夕張」は軽巡洋艦の建造計画が、3,000トン級(天龍型)から5,500トン級(球磨型以降)へ変わった際、5,500トン級のひとつとして当初計画されていたが、予算逼迫と軍縮という世情の変化により、もとの3,000トン級船体に5,500トン級艦並みの武装を施すことを目論んで、計画変更となった。
“造船の神”とも謳われた技術将校・平賀譲によって手がけられた「夕張」は、まさにこの要求を満たした傑作とされ、世界各国の軍艦の大百科にあたる『ジェーン海軍年鑑』で特別項目として掲載される等、大反響を呼んだ。
日本海軍においても「夕張」の“成功”は、この後の巡洋艦建造に多大な影響をおよぼし、古鷹型以降の巡洋艦の“重巡洋艦”化への大きな一歩となった。
しかし軍艦としての「夕張」のその後は、順風満帆とはいかなかった。
友鶴事件・第四艦隊事件の発生で、軽船体・重武装という海軍の目論んだ“いいとこ取り”が、船体の不安定性へ繋がるのが明らかになったこと。最初から色々と設備を詰め込んでいたため、その後の近代化改修を行うスペースが乏しかったこと。そして「夕張」は「夕張」1隻しか造られなかったため、周りは全て性能の違う艦ばかりで、歩調合わせに苦しんだ点がある。
それでも実戦に参加した「夕張」は、戦果を挙げた。支那事変で中国軍の装甲巡洋艦を撃破しているし、太平洋戦争・第一次ソロモン海戦で米重巡「ヴィンセンス」を沈めた魚雷のうち、一本は「夕張」のものである。小柄な船体へ無理に重ねた改修や故障のため、酷い時には速力が30ノットまで低下していたとされるが、実験艦「夕張」はその本分を尽くしたと言えるだろう。
『艦これ』では、ややレアリティの高い艦として登場。“実験艦”の史実を反映して、軽巡の中で唯一装備スロットが4つあり(初期時。後に4スロット艦として大淀やゴトラント、イタリア軽巡が登場した)、皮肉にも史実とは逆に軽巡では最高の拡張性を誇っている。足の遅さを気にするセリフが多いが、史実で改修のたびに速力を落としたこと、もしくは駆逐艦にすら劣っていた航続力の短さを表したものだろうか。
2020年には改二、改二特、改二丁の3タイプを自由に変更出来る(資源は消耗するし近代化改修は基本的に戻ってしまうが)、という初の3タイプコンバート改装が実装され、さらに軽巡初の5スロットを備え、様々な兵装を搭載出来る実験艦の名を再び見せつけることになった。
香取型
正確に言えば軽巡ではないのだが、艦の大きさ等からこのカテゴリに分類されることから、練習巡洋艦についてもここで解説する。
当然ながら、学校で座学だけしていた者をいきなり船に乗せて「さぁ動かせ」で艦が動くわけが無く、実際の艦に乗っての実習は非常に重要である。軍隊であればなおさら、と言っても良い。特に、将来指揮を執る立場となる士官候補生の教育に航海実習は必須と言えたのだが、太平洋戦争前の時期になると、それまで練習用に使っていた装甲巡洋艦もいい加減旧式化したこと、また遠洋実習航海では諸外国の目にも触れることから、新たに練習専用の巡洋艦の予算が計上された。
こうして誕生したのが、香取型練習巡洋艦で、その艦名は全て「カ」が付く神宮名から「香取」「鹿島」「香椎」「橿原」と付けられた。が、4番艦「橿原」は結局計画中止となり、3番艦「香椎」までが建造された。
特色としては、予算削減(3隻分の予算を合わせて阿賀野型軽巡1隻分という)のため、商船の構造を使ったこと、また訓練生の実習のため、あえて最新設備ではなく、その頃使用されていた軍艦の設備を搭載したこと(機関はディーゼルとタービンを併用していたが、一説ではこれも訓練のためという)である。
1番艦「香取」と2番艦「鹿島」は、元々2隻の予算が通った(「香椎」の予算は翌年通った)ことから、ほぼ同時に建造・竣工となった。そして完成した2隻による初の遠洋練習航海は1940年8月に始まった。しかし、開戦が迫り風雲急を告げる中、この航海は僅か1ヶ月ばかりで打ち切りとなってしまい、これが香取型練習巡洋艦にとって、最初で最後の練習航海となってしまう。
その後、「香取」は第六艦隊、「鹿島」は第四艦隊の旗艦へ転用されることになる。これは、元々艦隊旗艦は後方から指揮を執るため、艦自体の戦闘力は求められないこと、そして両艦は練習艦ゆえに後から司令部設備を搭載できる等、余裕のある艦体となっていたことが挙げられる。また、1940年10月に完成した「香椎」は、一度も練習航海を経験すること無く、こちらも南遣艦隊旗艦となる。
そして、「香取」「香椎」は戦没。姉妹でただ一隻生き残った「鹿島」は、復員船を勤めたのちに解体となる。
『艦これ』では、2015年2月のイベントにてまず「香取」が、そして同年11月のイベントにて「鹿島」が実装された。練習巡洋艦という新しいカテゴリで登場し、「演習」時の経験値を増加させるという能力を持っている。「香取」実装当初はまだ練習巡洋艦というシステムもこなれていなかったが、「鹿島」実装と共にシステムも改良されて使いやすくなった。また、余裕がある艦体という特徴を、4スロット使用可能という仕様で現しており、また、ほぼ軽巡として使えるところから、「夕張」「大淀」に次ぐ4スロット枠としても注目を浴びることになった(場合によっては、「軽巡ではないが4スロットが使える」艦として、軽巡の投入数が限定されている海域で重宝されるというパターンもある)。また、特に「鹿島」がその魅力から提督達の人気をかっさらったのも記憶に新しい。
海外艦
2022年9月現在、以下の海外艦が実装されている。詳細は各記事に委ねる。(太字は改二実装)
アメリカ合衆国海軍
- Brooklyn級軽巡洋艦
- St. Louis級軽巡洋艦 2番艦 Helena (USS CL-50)
- Atlanta級軽巡洋艦(ゲームでは「防空巡洋艦」)1番艦 Atlanta (USS CL-51)
英国海軍
オランダ王国海軍
オーストラリア海軍
スウェーデン王国海軍
イタリア王国海軍
関連動画
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関連項目
脚注
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