ああ、こわいよ。
「邪眼は月輪に飛ぶ」(じゃがんはがちりんにとぶ)とは、藤田和日郎による漫画作品である。
2007年2号から2007年9号まで小学館の『週刊ビッグコミックスピリッツ』に連載。
単行本一巻が発売。
概要
ストーリー
むかしむかし……。
東京湾岸に米軍の最新空母「ジョン・スチュールズ」が座礁。
何故か乗組員達は一人残らず死んでおり、当初自衛隊は生物兵器テロの可能性があるとした。しかし空母には、厳重に管理された空っぽの積荷があるだけだった。
それが東京という街の、誰もが味わったことのない恐ろしい七日間の始まりであった。
積荷は<ミネルヴァ>と呼ばれるフクロウ。
13年前、鵜平という猟師が後一歩で仕留められる所を米軍が捕獲したものだった。
掟はただ一つ、「ミネルヴァに見られたものは皆死ぬ」。
電波に乗ろうがカメラ越しであろうが、見られたものは例外なく死ぬ。
かくして東京および日本は死に覆われ、多くの人々が犠牲となった。
事件発生から7日後。
デルタフォースのマイケルとCIAのケビンは、一度はミネルヴァを撃ち落とした鵜平に助力を求めに会いに行くが……
登場人物
- 杣口鵜平(そまぐち うへい)
齢70を超えるマタギ。鳥のような仮面をつけ、山奥で一人暮らしをしており、「仙人」と呼ばれている。愛銃は村田銃28番口径。
本編の13年前、猟犬・チーコの援護、および妻・智恵子の守りを得て、ミネルヴァの片翼に銃弾を撃ち込んで落とす事に成功。しかしチーコと智恵子は死亡、本人も瀕死となる。その後成すすべもなくミネルヴァが米軍に回収されるのを見過ごす事となった。
ミネルヴァ狙撃作戦の「アドバイザー」としてマイケルらに招聘されるが、当初はこれを断った。しかし輪の強い要請により重い腰を挙げる事となる。 - 輪(りん)
圓市(えんち)と呼ばれる祈祷師。同じく圓市であった智恵子の養女で、鵜平の事は養母の元夫にして死の原因になったと思い込み、呼び捨てにするなど扱いが悪かった。しかし後に鵜平の心を知り、ミネルヴァと刺し違えて死ぬのを止めようと強く決意する。
サイコメトリーの力を持っており、触れた人や物の記憶を読み取る事が出来る。これによりミネルヴァの詳細な居場所を突き止めたり、ケビンの過去や隠された目的を読み取った。 - マイケル・リード
本作の語り手。デルタフォース(アメリカ陸軍第一特殊作戦部隊分遣隊)所属の准尉。父はテキサス州でハンターをやっている。
アメリカ国務省書記官を名乗って隠遁する鵜平を尋ね、ミネルヴァ狙撃作戦にアドバイザーとしての参加を要請。しかし作戦は失敗、特殊作戦チームのメンバーがミネルヴァに「見られた」事で全員死亡。「ミネルヴァを狩る為に必要不可欠な」猟犬役を申し出て協力する事となる。 - ケビン
CIA(アメリカ中央情報局)エージェント。マイケルと共に鵜平を尋ねるが、性格的にマイケルとはソリが合わない。作戦遂行および秘密保持の障害となる要素を排除する事にも躊躇いはなく、真相を知った輪に銃を向けた事もあった。
かつては空軍のアクロバットチームに所属するパイロットだったが、編隊飛行中に隊長および僚機が墜落事故を起こした際、ただ一人生き残った事がトラウマになっている。終盤、ハリアー戦闘機を操縦して鵜平を同乗させ、ミネルヴァ狙撃の一手に貢献する。 - グリースン、ドーキンス、メドウズ、モーガン、フランク
ミネルヴァ狙撃作戦「トワイライト・フライト」参加メンバー。何れも狙撃において高い実績を持っており、最新鋭・最高級の狙撃銃を所持。旧式の村田銃しか使わない鵜平をハナから馬鹿にしていた。しかし作戦は失敗、全員がミネルヴァに「見られた」事で即死した。
ミネルヴァ
本作における恐怖の体現者。命名したのは捕獲したアメリカの研究施設で、フクロウを象徴とする知恵と戦いの女神ミネルヴァに由来する。
生物学的にはシロフクロウで、翼長150cmにも満たない小柄な個体。しかし能力は一般的なフクロウからは大きく逸脱しており、昼でも活動し、飛行時の瞬間速度は毎時340kmに到達するなど、ハヤブサの落下速度に匹敵する速度を誇る。
更にフクロウの特性として首が大きく動き、可視範囲は極めて広い。狙撃手の殺意に即応して銃弾を避ける事も容易くこなす。
大きく見開かれた巨大な眼からは絶えず黒い液体を滴らせており、「ミネルヴァに見られた生物は死ぬ」という恐るべき性質を備えている。「ミネルヴァを見た」ではなく「ミネルヴァに見られた」である。
映像を通じてさえその能力は発揮され、テレビ中継を通じてミネルヴァの視線に晒された日本国内閣や一般のテレビ視聴者は例外なく即死した。更には日本全国で420万人以上が犠牲となり、生き残った人々は家に閉じこもる事を余儀なくされている。
この特性を利用し、アメリカはテロ国家における大量殺戮兵器としてミネルヴァを運用する予定だった。しかしミネルヴァが脱走した為に計画は頓挫、隠蔽の為にケビンが派遣される事となる。
この能力は輪によると「呪毒」と呼ばれるものが目から侵入する事で起きるもので、圓市の「荒神祓い」を行う事で呪毒を散らし、侵入を一瞬食い止める事が出来る。またもう一つ「呪毒」を食い止める方法があり、自らの目を潰す事でも防げるが、目から入らなかった「呪毒」は次に耳から侵入する為、完璧ではない。
ただし「テレビの画面を撮影した写真」であれば効果はなく、カーテンやスモークガラスでも同様である。また捕獲後アメリカによって発信機が埋め込まれており、GPSによる位置の特定は可能となっている。
物語の中盤、児童病院の屋上直下に巣を作っている事が判明。(屋根によって発信機が完全機能しなかった)
これにより病院は事実上孤立し、患者である子供や医師、看護師らが身動きが取れなくなっていた。
そんなミネルヴァの目的はただひとつ──「自分に見られても死ぬ事がない伴侶」、すなわち病院屋上のフクロウの石像と寄り添い、共にあり続ける事だった。
逸話
後書き漫画によると、クライマックスで鵜平がミネルヴァに向けて銃を撃つシーンを藤田が描き上げた後、アシスタントに効果を入れるようお願いした。
しかし全員が「このページはこれでいいんです!」と言い、手を入れる事を断固拒否している。
実際にどのようなページなのかは、是非単行本で確認されたし。
二次創作など
本作の主役ともいえるフクロウ・ミネルヴァはなぜかメイド化されている。その際の名前は「ヤバいさん」。
相変わらず邪眼の目力は強いが、両腕が翼のままになっている点もポイントである。
もともとはふたば☆ちゃんねる発祥のメイドキャラ「ヤクいさん」が原型と思われる。pixivなどでもその姿を見ることはできる。→pixivで「ヤバいさん」を検索
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関連項目
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