概要
金原亭馬生は古くからある落語の名跡であるが、現在、一般に馬生といえば、十代目金原亭馬生を指すことが多い。
十代目金原亭馬生(1928~1982)は、天衣無縫の名人と謳われた古今亭志ん生の長男。弟は、やはり名人と名高い三代目古今亭志ん朝である。本来は長男の馬生が「志ん生」を継ぐはずが、次男の才能に惚れ込んだ父が「俺の名はいずれ次男に継がせる」と宣言、長男は父が志ん生となる前に名乗っていた名(七代目)である、金原亭馬生という名を継ぐことになった。しかしそれに文句も言わず、兄弟仲も大変良かったというあたりに、馬生の独特の人柄のよさが伺われる。
父と弟の影にやや隠れがちな馬生であるが、その芸は二人に決して劣るものではなく、上品で軽快でありながらじっくり聴かせる力を持つ、粋な江戸前の芸には、今なお多くのファンがいる。父ゆずり、どころか父をも超える無類の酒好きで、酒の噺をさせたら、他に並ぶもののない至芸を見せた。ニコニコ動画には、その芸を映像で堪能できる、貴重な動画がアップロードされている。四六時中酔っ払っていながら書画の腕は玄人はだし、私生活も和服で通した、じつに噺家らしい噺家であった。
完成度の高い芸風というイメージを持たれることが多いが、内実は度胸一番、出たとこ勝負の人だったと、弟子の五街道雲助は語っている(関連項目参照)。
いよいよ芸に深みが加わろうとしていた54歳の秋、食道がんで短すぎる生涯を終えた。
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