預金保険機構とは、預金保険を運用する機構である。預金保険制度についても当記事にて説明する。
概要
Deposit Insurance Corporation of Japan、略称はDIC
日本のセーフティネットのひとつで、銀行や信用組合などが加入する社会保険である。
預金保険法にて規定されており銀行が破綻した場合に、預金者の資産を1人当たり1,000万円まで(決済用預金については全額)補償・保護する機能を持っている。政府と日本銀行と民間金融機関全体がほぼ同じ割合で出資しており、保険料の徴収にて運用されている。制度設計としてはアメリカの連邦預金保険公社を参考に作成された。
業務としては主に預金保険の維持、及びクラッシュした金融機関を再生させることに主体的に関与し、日本銀行、金融庁と連携し金融システムの安定に寄与する組織である。保険金支払いと資金援助の二つの機能を持っている、詳細は下記の保険金支払い以下を参照。
アメリカ、日本のように預金保険の仕組みのある国は金融システムが安定する傾向にある。なお、社会保険の一種であるため支払い余力のある金融機関が育った国でしか成立しない。
あまり知られていないが振り込め詐欺被害救済(被害回復分配金)や特定回収困難債権の買い取り(暴力団や反社会的勢力)もここが担当している。また危なくなりつつある銀行には子会社の株式会社整理回収機構を経由して公的資金を入れる。
対象となる金融機関
以下が預金保険制度の対象となる日本国内に本店のある金融機関である。
- 銀行法に規定する銀行
- 信用金庫
- 信用組合
- 労働金庫
- 信金中央金庫
- 全国信用協同組合連合会
- 労働金庫連合会
- 商工組合中央金庫
- 長期信用銀行法に規定する長期信用銀行(長期信用銀行法に該当する銀行は現在は消えている)
預金保険料率の推移
預金保険料率 | 責任準備金(単位:億円) | ||
---|---|---|---|
昭和46年(制度発足時)~ | 0.006% | 30 | |
平成8年度~ | 0.048% | △ 3,951 | |
平成13年度~ | 特定預金 | その他預金等 | |
平成13年度 | 0.048% | 0.048% | △ 37,982 |
平成14年度 | 0.094% | 0.080% | △ 40,065 |
平成15年度~ | 決済用預金 | 一般預金等 | |
平成15年度 | 0.090% | 0.080% | △ 34,938 |
平成17年度 | 0.115% | 0.083% | △ 24,549 |
平成21年度 | 0.107% | 0.081% | △ 2,732 |
平成22年度 | 0.107% | 0.082% | 1,373 |
平成23年度 | 0.107% | 0.082% | 4,205 |
平成24年度 | 0.107% | 0.082% | 10,300 |
平成25年度 | 0.107% | 0.082% | 16,880 |
平成26年度 | 0.054% | 0.041% | 23,804 |
平成27年度 | 0.054% | 0.041% | 公開データ無し |
平成28年度 | 0.054% | 0.041% | 公開データ無し |
平成29年度 | 0.049% | 0.036% | 公開データ無し |
特定預金は、当座預金、普通預金及び別段預金、その他預金等は、特定預金以外の定期性預金のこと。
責任準備金は支払いのために預金保険機構が保持している資金で平成8年度から平成21年度の間はマイナス(△)となっている。
平成15年度に決済用と一般預金を分離、平成17年度に最大保険料率を記録しそれ以降下がってきている。これは日本の金融システムが安定してきているためである。
現在、平成33年度末までに「5兆円程度」を積み立てを目標として運用している。これは過去の前回の金融危機のときに4.9兆円の支払いが必要となり上記にあるように4兆円の欠損金をだしたことからの設定額である。
保険金支払い
1人あたり1000万円以内の普通預金等、および決済用預金を全額補償する。
なお、上記は名寄せ、融資の相殺はされる。それを越えた分は民事再生法等の倒産法にて処理する。
こうすることで保険としての枠内で無理なく預金を保証し、かつ金融システムをまずは安定させ取り付け騒ぎを防ぐことができる。そうして時間を稼いだ状態で次の資金援助に移行する。
資金援助
改正預金保険法に基づき預金保険コスト範囲内の資金援助や不良債権の買い取りを行い、子会社の整理回収機構へ不良債権を譲渡、それを全資産の受け皿金融機関への譲渡ことで預金者を保護する。受け皿金融機関がすぐに選定できないときには下記の承継銀行を設立し再承継金融機関を選定する流れとなる。
承継銀行
預金保険法第91条により破綻した金融機関に受け皿金融機関が決まらないときに設立する。預金保険機構の子会社として構築し引き取り手のめどが立つ、もしくは三年たった時点で解散する。
今までに以下の二社を設立している。
バッドバンク
産業再生機構
少し難しい話になるがかつての日本においては会社は原則として破たんしないものとして扱われてきた。
その結果、会社間の株式持ち合いや、企業のメインバンクが融資先企業の株式を大量に保有するということが発生し、結果としてバブル崩壊後に金融システム全体が不安定となったのである。そこでスウェーデンのセキュラムを参考にして預金保険機構の子会社として産業再生機構を構築、2003年から2007年の4年の間集中的に債務処理をさせた。産業再生機構は予定より1年早く2007年に解散した。それまでに312億円を納税し、残余財産の分配で約432億円を国庫に納付できるという結果となった。この産業再生機構は民間からも9割近い職員を引き受けており、解散後に産業再生機構にいた人たちが自分自身で債権回収や企業再生のための企業を作り上げることとなった。
休眠預金
日本では預入のあった預金に商法の消滅時効が適用される。そのため銀行ならば5年間、信用金庫だと10年の間に利用実績が一切無かった場合、時効消滅が成立し預金に対する法的な権利が消える。
この時効消滅した預金を休眠預金と呼び、休眠預金は預入された銀行の臨時収入となっていた。
これについて2018年に休眠預金活用法が施行された。この法律は10年たっても利用されない預金は預金保険機構に管理が移管され、そこから指定活用団体に交付、団体から融資・貸付するという形をとる。同時に移管された資金について預金者が返還請求(預け入れていた銀行が窓口になる)をした場合には速やかに返金される。
子会社
金融危機において承継銀行を作製した場合には以下の組織に承継銀行が一時的に増える形となる。
関連商品
関連項目
- 1
- 0pt