鬱ごはんとは、ヤングチャンピオン烈において連載している施川ユウキのダイエット漫画ギャグメシ漫画作品である。
連載までの経緯
2010年前後の漫画界では新たなブームの潮流が生まれていた。
孤独のグルメが文庫化によってヒットしたのを皮切りに、花のズボラ飯、めしばな刑事タチバナなどメシ漫画が次々とヒットを飛ばしていったのである。これらはこれまでヒットしたグルメ漫画とは違い高級な食材や料理人の高度な技術によって成り立っている最高の料理を題材としているのではなく、平凡な食事を題材とし、なんてことはない料理に対して真摯に向き合って食事を行うことで読者の笑いと共感を得ていた。
以後雨後のタケノコのようにメシ漫画が乱立していくことになる。中にはダンジョン飯のように架空の食材を題材にした漫画まで現れた。
こんな流れがある中、施川ユウキの下にも編集より「メシ漫画を描かないか」との声がかかる。
施川は当然のように断った。施川本人は食事にそれほど関心がない上に、メシ漫画は料理をおいしそうに描けなければ成立しないと考えていた。施川は絵がヘタだった。
それでも食い下がる編集に根負けした施川はメシ漫画を描くことになる。
結果、とんでもないことになった。
メシ漫画はすべて食事の快楽を描いたものである。
一人であろうと複数であろうと食事の楽しさというのは人生においてかけがえのないもの。
そう思わせるのがこれまでのメシ漫画であった。
しかし施川はメシ漫画の常識をぶち壊してしまった。
一人飯の無残さを丹念に描いていく異形のメシ漫画を作り上げてしまったのである。
絵がヘタだったためこうならざるを得なかった。
鬱ごはんはこうして生まれた。
概要
就職浪人である鬱野たけしがメシを食べるだけの漫画である。
これだけなら他のメシ漫画と変わらないがこの漫画の最大の特徴は鬱野の食事シーンが全くおいしそうに見えないという点である。料理もマズそうなら食べている鬱野もおいしそうに食べない。
など食欲を失わせるようなことばかりである。
メシ漫画は主人公の独白によって成り立っているものが多いが、食べている本人がこんなことを考えていてうまいはずがない。その他周囲の目を気にし過ぎてしまい食事をするにはあまりに悲惨な状況に追い込まれるなど彼の食事シーンは無残の一言に尽きる。この無残さによってギャグ漫画として成立している。
読むと食欲が失せること請け合いでありダイエットに適している漫画である。
就職浪人の生態と内面を描いているため鬱野に近い境遇を持つものからはこの漫画のあまりの切れ味の鋭さに鬱野を笑っているのか自分を笑っているのか分らなくなる。
ただし実はこの漫画、主人公がこれだけマズそうに飯を食べているにも関わらず、料理自体がマズいという事はほとんどない。結局彼のメンタルや状況が食事を楽しむに足るものではないというだけである。従来のメシ漫画とは別のアプローチで食事に対する姿勢をいうものを考えさせる漫画でもある。
登場人物
- 鬱野たけし
本作の主人公。大学卒業後、就職出来ずアルバイトで生計を立てている。食事に関心がないどころか懐疑的な見解を示すなどメシ漫画の主人公にあるまじきキャラクターである。就職浪人であることに焦燥感を募らせていくものの就活をなにかと避けている傾向がある。この状況に引け目を感じているのか周囲を気にし過ぎる。
恐ろしいことにこの漫画はサザエさん時空どころか現実時間と連動している。連載当初22歳の就職浪人だった彼は現実時間と同じように歳を重ね現在28歳の就職浪人。彼が就職出来る日は来るのだろうか…。 - 妖精
黒猫の姿をした鬱野の妄想上の存在。鬱野にしか見えない。
関西弁でしゃべり何かと鬱野に辛辣な言葉を浴びせかける。
本作のツッコミ役。
その他
- 施川はこの作品で手塚治虫文化賞を受賞している。(オンノジ、バーナード嬢曰く。と合同)
オンノジ、バーナード嬢曰く。が一巻完結作品であるのに対して、何故か一番読者を暗澹たる気分にさせる鬱ごはんだけは巻数表記が存在していた。 - 施川はオンノジ、バーナード嬢曰く。と比較して鬱ごはんが最もメディアミックス(実写化)に向いているという見解を示していたが同時に「こんな作品にスポンサー付かないだろう」という趣旨の言葉を残している。
この発言の後、実際にメディアミックス化(アニメ化)されたのはバーナード嬢曰く。だった。残当
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