モビルアーマーとは、機動戦士ガンダムシリーズに登場する架空の機動兵器である。
概要
モビルアーマーはモビルスーツ同様にシリーズの垣根を越えて登場しているが、モビルスーツほどの種類は無い。
作品(世界観)によって細部が異なるが、基本的にモビルスーツよりも巨大で非人型である事が多い。また巨大さ故に大火力を有していたり、または大型ブースターを搭載してモビルスーツより遥かに高機動だったり、Iフィールドのようなバリアを発生させて被弾に強くしていたりと強力なモビルアーマーが多数確認されている。このように高いスペックを誇るため、敵方の切り札として登場するケースも少なくない。ただしガンダムSEEDのメビウスのように、モビルスーツの性能に大きく劣るモビルアーマーも存在する。
ちなみによくボールが「連邦側のモビルアーマー」とされることがあるが、これは「ギレンの野望」というゲームでのことである。ボールは簡易MS、あるいはモビルポッドとされることがほとんどであり、モビルアーマーとして扱うのは正しくない(そもそも一年戦争時に地球連邦軍側には「モビルアーマー」という種類の兵器が存在していない)。
「モビルスーツよりモビルアーマーが強いのなら、そちらを大量生産すれば良いじゃん」と思うかもしれないが大人の事情でモビルスーツが大量生産される事が多い。その理由を列挙する。
- 生産コストが高い
モビルスーツと比べると、どうしてもモビルアーマーはコストが掛かってしまう。確かに性能は高いが、コストが邪魔をして生産されても少数のみで留まる事が多い。中には試作品だけで生産が打ち切られる場合もある(ザクレロやビグ・ラング等)。連邦より10年技術が進歩しているジオン公国は各分野に合ったモビルアーマーを製作したが、殆どが少数のみの生産であった。唯一量産に至ったビグロでさえ20機程度の生産で終戦を迎えている(諸説あり)。どうせ大量生産できないのなら徹底的に性能を上げてモビルスーツ数機分の活躍をさせようという考えなのか、大火力や重装甲を持ったモビルアーマーやニュータイプ専用モビルアーマーが作られたが時代が進むにつれてモビルスーツがその役目を負うようになっていった。しかしモビルアーマー全てが高コストという訳ではなく、ボールやメビウスは安価なモビルアーマーで、こちらは大量生産されている。またモビルアーマーより高コストであるはずの可変モビルアーマーや可変モビルスーツが量産されていたりするあたり、小型化できていないシステムを積んだ巨大なモビルアーマーが高コストなだけとも思われる。 - 一人では操作できない場合が多い
モビルアーマーは高性能だが操作系統が複雑で、複座式(コクピットに二人以上が乗る)になっているものがある。ブラウ・ブロ、ザムザザー、ゲルズゲー、ライノサラス、アプサラスⅢ、ビグ・ザムなどが挙げられる。無論、一人乗りのモビルアーマーも存在するうえ、複座式でも操作系統を弄る事で一人でも操作可能になるモビルアーマーもある(アプサラスⅢやビグ・ザム)。 - 適性が無いとパイロットになれない
これはビグロやメビウス・ゼロなどに当てはまる。ビグロは高機動戦闘を主眼に置いたモビルアーマーであるため強力なGに耐えうるだけの身体を持った者でなければ気絶してしまう。ビグロのパイロットだったトクワンは高Gにも耐えて操縦していたが、偶然ビグロの機体に引っかかったガンダムのパイロット・アムロは高Gに耐え切れず気絶してしまった。メビウス・ゼロは卓越した空間認識能力を持った者でないとガンバレルを展開できず、性能を引き出せなくなる。ガンバレルを以って、ようやくザフトのモビルスーツ「ジン」と対等に戦えるため、ガンバレルを操作できないとただのメビウス同様たやすく撃墜されるため必然的に操縦できるパイロットが限られる。 - 死角が多い
モビルアーマーはその巨体さゆえ、死角の多さに悩まされる。質量も大きいため機体の旋回も迅速に行えず、運動性に勝るモビルスーツや他の機動兵器に攻撃を許してしまう事が多々ある。実際ビグ・ラングも死角からの砲撃が致命傷となって撃墜されている。しかしモビルアーマー側もこの問題を対処しようと様々な工夫を凝らしている。装甲を厚くして被弾に強くしている他、ビーム兵器に対抗するためにビーム撹乱幕やIフィールドを装備、死角を補うための砲塔や対空砲を各所に備え付ける、友軍機の随伴させる等をして自衛能力を向上させている。 - 汎用性に欠ける
モビルスーツは武装の付け替え、持ち替えで多数の戦場に対応できるが、モビルアーマーの大半は役割を絞った設計になっているため、戦場が限定されてしまう。また、補給を受ける際も専用の設備や母艦、スタッフが必要になるため、それらがない場所には出撃させられない。そのため、重要な拠点の防衛や、短期決戦が見込める戦場への出撃が主な役割となっている。
ガンダムSEEDにおけるモビルアーマー
従来の作品において、モビルアーマーは一貫して強大な敵だった。しかしガンダムSEEDのモビルアーマーは少々毛色が違っている。本作では量産型のやられメカに過ぎず、全編を通して撃墜されるシーンが目立った。ラウ・ル・クルーゼ曰くモビルアーマーは「旧来の兵器の延長線上」らしく、どうやら現代兵器を拡大発展させたものらしい。
モビルアーマー「メビウス」は宇宙における地球連合軍の主力兵器で、言うなれば戦闘機の役割を果たしていた。安価だった事から大量に生産された。あの血のバレンタインを引き起こしたのもメビウスである。
長らく主力の座にいたようで、プラントとの戦争では先陣を切って戦った。しかしザフト軍のモビルスーツ「ジン」の性能差に苦戦し、片端から叩き落とされる事が多かった。本編でも為す術なくXナンバーやジンに撃墜されており、地球軍が数で何とか防いでいる戦況を視聴者に知らしめた。
しかし物語終盤でニュートロンジャマーキャンセラーが地球軍に渡った事により、核魚雷を搭載したメビウスが登場。ストライクダガーや後期GATシリーズに守られた核攻撃隊は、ザフト軍の軍事要塞ボアズを焼き尽くし、陥落せしめた。続いてプラント本国を核攻撃しようとしたが、三隻同盟やザフト軍の抵抗により核魚雷を撃ち落とされ、予備の弾頭を積んだ母艦も撃沈させられた事から失敗に終わっている。
続編のSEED DESTINYでは、メビウスのほぼ全機が一線を退いた。代わりに現れたのがザムザザーやゲルズゲーといった従来どおりの強力なモビルアーマーである。モビルアーマーを建造していた勢力は地球軍のみであり、いかに地球軍がモビルアーマーを愛用していたかが窺える。
鉄血のオルフェンズにおけるモビルアーマー
『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』においてはモビルアーマーの立ち位置・設定がこれまでの作品とは大きく異なり、本編の300年以上前に起きた戦乱「厄祭戦」の引き金を引いた元凶であり総人口の4分の1を死に至らしめたという過去作とは比べ物にならないほどの強大な存在として扱われている。人口密集地を優先的に攻撃するようにプログラミングされており、厄祭戦では本能同然に人を襲撃・殺戮していたという。
同作世界のモビルスーツはMAへの対抗手段として開発されたという位置づけとなっており、怨敵であるMSのエイハブ・ウェーブを感知して自律的に行動し、コクピット狙いの攻撃を執拗に行う。ソロモン72柱の悪魔の名を冠するガンダム・フレームとは対照的に天使の名を冠しているのも特徴。
「新機動戦記ガンダムW」のモビルドール(MD)と同様自立稼働型の無人兵器であるが、外部からの指令に忠実なMDとは違い、その思想は「機動戦士ガンダムF91」のバグに近い。
ギャラルホルンの開祖であるアグニカ・カイエルとセブンスターズの祖先達により全機が破壊されたと言われていたが、実際は火星のハーフメタル採掘場でガンダム・フラウロスと共に発掘された大型のモビルアーマー「ハシュマル」及び子機にあたる複数機の小型モビルアーマー「プルーマ」のように休眠状態のまま忘れ去られた機体も存在する。第35話のラストでイオク・クジャンのレギンレイズに反応して起動したハシュマルは、目覚めると同時に天高くビームを放出しており、これは厄祭戦の時代には今まで確認されていなかったビーム兵器が存在していたことを意味している。
関連項目
- 3
- 0pt