300系新幹線電車とは、かつて東海旅客鉄道(JR東海)及び西日本旅客鉄道(JR西日本)に在籍した新幹線車両である。
概要
JR東海が開発した東海道・山陽新幹線第3世代車両。のぞみ型車両とも言う。新幹線電車として初となる技術を数多く実用化した。
開発のきっかけはドイツへリニア視察に行った帰りにTGVに乗車した葛西敬之が車内で「東海道でこの速度は無理なのか」と尋ねた際にJR東海の技術陣が「270km/hならいけます」と答えたことである。1990年に量産先行車(J0→J1編成)が登場、その後1992年から98年まで量産された。93年以降製造分は山陽新幹線博多延伸用に製造された0系の置き換えを兼ねていた。のぞみ号博多乗り入れ決定後はJR西日本が3000番台を製造した。
2007年以降、N700系によって急速に置き換えられた。後期は主にこだま号での運用が中心であり、ひかり号やのぞみ号運用は稀であった。
当初の報道では2012年12月までに引退となっていたが、JR東海・JR西日本から2012年3月17日ダイヤ改正での引退が発表された(■ )。
また、ユニット構成が特殊(MTMユニット)な事から0系や100系のように短編成化するのが難しかった(どうやっても無改造なら最短7両、運転台の切り接ぎ改造をしても6両にしかできない)ため、JR西日本のF編成もJR西日本保有の100系と同時期に消滅となった。
※ちなみに、本系列は登場から20年で形式消滅と400系ほどではないが他の新幹線車両より短い。東海道新幹線用の車両の寿命はもともと『製造後13年~15年を過ぎた次の検査時期まで』であり、300系の最終増備車が単にその時を迎えたに過ぎない。また300系の最高速度性能270km/hは、東海道新幹線区間では300系引退の3年後の2015年3月13日まで変わっておらず、285km/h以上の走行が可能である山陽新幹線区間は別として、東海道新幹線区間に限ればスピード面では別に差し迫った問題ではなかった。即ち、700系の製造に移行された時点で2012年前後の全廃が事実上「既定路線」となっていたことに留意する必要がある。
現在はリニア・鉄道館に量産先行車が1両のみ保存されており、それが一般的に目にする事が出来る唯一の300系車両となっている。一般的に目にする事こそ出来ないが量産車のJ46編成の1号車(323-45)が作業訓練用として2010年に浜松工場から関西新幹線サービックに移送・保存され2015年時点においても活用されている。
技術
1世代前の100系と300系を比較してみると、似ているところを探すことは難しい。一方、300系の登場から10年後の主力であるN700系とでは、時間的な隔たりがありながらも共通点をいくつも見出せることだろう。これは300系が今日の技術の真の礎となっていることを意味する。まさに新幹線電車における技術革新の金字塔である。
具体的な例として、車体構造、制御方式、台車構造が主なものとして挙げられる。
車体の材質に採用されたアルミニウム合金は、既に200系で実用化されていた。しかし200系は鉄製車体を1.5倍程度の厚さのアルミで置き換えた構造で、アルミの特性を生かしたものではなかった。300系は組立を容易にし(製造価格の低減)、無駄を一切排除した(重量の低減)新しい構造のアルミ車体を持ち、革命的な軽量化での量産を達成した。
制御方式にはVVVFインバーターを採用、大出力ときめ細かな空転制御により、編成内の動力車を減らした。また制御装置やモーターはコンパクトで軽くなり、車両重量・編成重量の軽量化に寄与した。
台車は、枕ばりを廃し小型軽量化した円筒案内式ボルスタレス台車(台車(鉄道)の項を参照)を採用。上記2項による車体の大幅な軽量化によって台車にかかる荷重も軽減、台車自身も軽量化が可能になった。
軽量化は、鉄道を取り巻く非常に広い分野にメリットをもたらす。より低価格で、より速く、より省エネで、より低騒音で、より軌道破壊の少ない車両を最新の技術で目指すという方針は、300系で初めて確立し実現された。
1993年までに製造された初期型の車両(2次車まで)は、空気抵抗低減のため客用扉にプラグドアを採用していたが、コストダウンのため3次車からは通常の引き戸に変更されている。
番台区分
9000番台(J0→J1編成)
1990年に製造された量産先行車。JR東海が所有する。完成当初はJ0編成を名乗っていたが、営業運転開始にともない量産化改造を受けJ1編成となった。登場当初は量産車と違い水色の帯を巻いていた。
トランスポンダの関係で山陽区間では「のぞみ」運用に入れなかった(ひかり・こだま運用には入っていた)。2001年以降は営業運転から外され試験車として用いられ、2007年3月に廃車。東京方先頭車の322-9001のみ浜松工場に保存されていたが、新設されるリニア・鉄道館に移され、2011年3月のオープン以降こちらで展示されている。
0番台(J編成)
JR東海が所有する。0系の置き換えを行った。1992年から1998年に16両編成60本が製造された(J2~J61編成)。
J15編成までが前期型にあたり、乗降扉にプラグドアを採用している。
2007年以降、N700系量産車の増備と入れ替わりに廃車が始まった。
東海道新幹線での0番台定期運用は2012年2月1日で終了し、以後は記念の車体装飾が施された編成が臨時「のぞみ」に運用された。
ラストランは2012年3月16日の臨時列車「のぞみ329号」(J57編成・東京→新大阪、全車指定)。
当初は323-21が322-9001と共にリニア・鉄道館に保存され、量産先行車と量産車の先頭部の明確な違いを見比べることができるようになっていた。しかし2013年12月27日に700系の量産先行車・723-9001と入れ替えられて展示終了となり、2014年3月頃解体された。残るJ編成は前述のJ46編成1号車(323-45)のみ。
3000番台(F編成)
JR西日本が所有する。1993年から1994年に16両編成9本が製造された(F1~F9編成)。
F5編成までが前期型にあたり、0番台の前期型同様プラグドア。
山陽新幹線に残る100系の置き換えは、500系V編成と700系E編成で完了する為短編成化の予定もなく、JR東海の700系C編成がJR西日本に9編成譲渡される形で置き換えられた。なお、当初はJ編成引退後も当面は残ると言われていたのだが、概要にあるとおり結局同時に引退することになった。定期列車最終は3月13日の「こだま727号」(F8編成)。ラストランは3月16日の「のぞみ609号」(F7編成・新大阪→博多、全車指定)。
その後2012年10月1日時点ではF9編成が廃車待ちで残っていたが、2013年4月1日の時点では全編成廃車となり車籍が無くなった。全車解体されており現存しない。
ちなみに、JR西日本所属車両ではあるが2010年3月13日時点での定期運用はJ編成同様に岡山以東の「ひかり」「こだま」となっていた。
なおJ編成が東海道定期運用から引退した2012年2月2日以降も3月12日まで東海道での定期運用に就いていた。
関連動画
関連項目
東海道新幹線・山陽新幹線・九州新幹線の使用車両 |
0系 - 100系 - 300系 - 500系(WIN350) - 700系 - 800系 - N700系 - N700S - ドクターイエロー |
東海道新幹線・山陽新幹線・九州新幹線の列車名 |
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