"Birdemic: Shock and Terror" (直訳すれば『バーデミック: 衝撃と恐怖』) とは、2010年にアメリカ合衆国で公開された映画のようなものである。しばしばメインタイトルの "Birdemic" の名で呼ばれ、その完成度からサブタイトルの通り全米に衝撃と恐怖を悪い意味で与えた。なお "Birdemic" は "Bird (鳥) " と "Pandemic (世界流行) " を重ね合わせた造語である。
概要
Birdemic はベトナム出身のジェームズ・グエン (Jamez Nguyen) 監督によって製作された作品である。後述する通りあらゆる方向に悪い意味で突き抜けた、映画と言ってもいいのか分からないくらいの作品となっており、Birdemic とグエン監督自身が一部でカルト的人気を得る事となった。この人気はイギリスのガーディアンやアメリカのニューヨーク・タイムズなどの大手紙でも取り上げられている。
グエン自身の談によれば、Birdemic を作成するにあたって、アルフレッド・ヒッチコックの『鳥』の影響を受けたというかパクったとされている。また『不都合な真実』も影響を受けた作品として挙げられている。
なお、グエンは Birdemic 以前には2003年に "Julie and Jack" を、未公開であるが2005年に "Replica" を製作している。
あらすじ
若いソフトウェアセールスマンのロッドは、シリコンバレーで手腕を発揮し成功した人生を送っていた。彼は町で昔の同級生で現在はファッションモデルであるナタリーと偶然再開し、付き合うことになる。しかしながら、彼らのすぐ身近で、原因不明の山火事が発生している事や、海岸に打ちあがった大量の鳥の死体に気付く事はなかった。
やがてモーテルで宿泊していた彼らは、町がワシやハゲタカに襲撃されている事に気付く。
特徴というか問題点
誰もが一目見てわかる問題として、CGの合成技術が挙げられるだろう。CGで作られた鳥は、実写に対して明らかに浮いており、2010年の作品である事が信じられないレベルである。逆に言えばこの合成技術の酷さが作品の知名度を上げるのに貢献しているとも言える。特に有名な場面では、襲ってくるCGの鳥に対して針金ハンガーを振り回して抵抗するという、極めてシュールな映像が展開される。
CGばかりに目が行くが、そもそも本体の実写自体も画質があまり良いものではなく、音声や編集もかなり酷い物である。登場人物たちの演技も明らかに素人レベルである。肝心の鳥の襲撃でさえ、93分の映画の中でほぼ半分の47分経ってからようやく登場するなど、前置きも明らかに長すぎる。
設定もガバガバである。鳥が人々やガソリンスタンドや車を襲うのは、一応地球温暖化が理由らしい事が劇中で説明されている。しかしながら、ラストで鳥が突然襲撃を辞めて去っていた理由は明らかにされていない。また、鳥がなぜか飛行機の音を立てながら、墜落すると爆発炎上する理由は不明である。一応ガソリンスタンドのような爆発しそうな所に突っ込んでいるシーンもあるが、明らかにそうではない場所でも爆発している。細かい話であるが、ワシやハゲタカは空中で停止する事は生態的に不可能である。
これらの問題点は、1万ドル以下とされる超低額予算で作製した事によるものと、グエン監督自身に起因するものである。無論、6万ドルで製作された『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』のような、低予算映画にも名作がない訳ではないが、グエン自身は映画の製作に関する何らかの教育を受けた人物ではなく、彼の本業はシリコンバレーにおけるソフトウェアセールスマンである。あれ、どこかで見たなこれ。
映画自身とは関係ないが、グエンは2009年1月にサンダンス映画祭が開催されるユタ州・パークシティにプロモーションしている。無論彼自身はサンダンス映画祭に呼ばれた訳ではなく、勝手に便乗しただけである。グエンは Birdemic 宣伝のために作り物の鳥が突っ込んだ微妙に血まみれの車に手書きの広告を貼って宣伝していたが、この時に宣伝していたWebサイトのURLを "BIDEMIC.COM" と表記している。自分自身の映画タイトルすらまともに書けていない。
その後
あまりにも突き抜けた、並ではない出来の酷さからか、Birdemic は一部でカルト的人気を博す事になる。そしてセヴェリン・フィルムズ配給によって本作品のDVDとBlue-rayが入手可能となっている。
これによって調子に乗ったのか、グエンは続編として "Birdemic 2: The Resurrection" (直訳すれば『バーデミック2: 復活』) を2013年に製作している。内容はお察しください。
公開から約12年経過した2022年8月1日、日本テレビ系列の番組「世界まる見え!テレビ特捜部」でネットはちょっとした話題になった。
その日は「下手くそかSP」と題して、色々な笑えるおバカな失敗談などを取り上げていたが、その内の1つとして本作が紹介されてしまったのだ。何てことを……。
12年経っても話題にのぼるBirdemic、興味を持ったのであれば……自己責任で視聴してみよう。
関連動画
Birdemic
↑ジョン・トロン (Jon Tron) による解説動画。
画質や編集技術、そして面白さは明らかに本編より上である。
Birdemic 2: The Resurrection
↑続編で進化した?クラゲの襲撃シーン。
迫真のBGMがCGと相まって笑いを誘う。
↑ジョン・トロンのBirdemicレビュー等を翻訳・投稿した、Black_Pegasus氏による続編「Birdemic 2: The Resurrection」レビューの前編。続編て……。
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