Chapman Stick(チャップマン・スティック)とは、タッピングで発音するエレクトリック楽器である。
通称はスティックだが、主にドラムスティックと区別するため、発明者であるエメット・チャップマンの名前と併せてチャップマン・スティックと呼称する事が多い。タッチボードと呼称する事もある。
概要
1970年代前半に登場した弦楽器で、構造はエレクトリックギター/ベースとほぼ同じだが、ピックや指を用いて弦を弾いて音を出すのではなく、フレットに対し弦を叩き付ける事(タッピング)で発音するのが最大の特徴。プレイヤーにスキンヘッドのおっちゃんが多いのも特徴。
ギター等のようにフレットを押さえ弦を弾いて発音するのではなく、指一本でタッピングで発音するため両手の自由度が高い。そのため両手で演奏をするのが前提の設計で、ギターやベースよりも遙かに多くの音を同時に奏でる事ができる。
多くの場合、ベースパートとコード、メロディラインを同時に両手でタッピングして発音する。そのため演奏技術自体はピアノに通じる部分もある。一応、通常のギターのように弾く事も出来る。
熟練したプレイヤーの演奏は、それが一本の楽器とは思えない程の複雑なメロディと音色を持つものとなる。音源だけを聴くとその凄さが伝わらない事が多い。だが動画を見ると(特にギター、ベースの経験者は)その変態性がよくわかる。習得には並外れた努力が必要で、それがこの楽器のいまひとつ市民権が得られない壁の一つとなっている。
外観と特徴
外観上の特徴は、多数の弦が張られた幅広のネックだけのような外観をしている(アコースティックギターのような構造の共鳴ボディを持つものもある)。共鳴器となるボディを持たず、ピックアップとコントロール類はThe Blockと呼ばれるユニットにまとめて内蔵されている。
出力はメロディパートとベースパートが独立している2チャンネル出力。そのため各パートそれぞれの音作りが容易に行え、エフェクトも別でかけられるのが特徴。
弦のスケールは36インチ。初期のものは34インチである。
基本的には立奏を前提に設計されており、ボディ背部のフックをズボンのベルトなどに引っ掛け、ナット脇のフックに専用のストラップを繋げてたすき掛けにし、これらの2点支持で身体に固定する。これによって両手はフリーになるため両手での演奏が容易に行える。
また座奏のために腿の上に木製のバーを渡してそこに固定したり、スタンドに固定して演奏するプレイヤーも居る。
音質などはギターやバリトンギターに似るが、無機質でどこか退廃的なサウンドが特徴。ギターやベース用のエフェクター等も使用可能である。というか、エフェクトの無いスティックの音はやや味気ないため、残響系エフェクトはほぼ必須と言ってよい。
アンプは上記のように2ch出力のため、ギターアンプとベースアンプなど2系統を用意する事が多い。
機材や演奏スペースなどの理由で2ch入力対応のアンプやコンパクトミキサーを使用する者も多いが、その場合イコライザがチャンネル毎に独立していないと音が混ざりやすい。
エフェクターはギター用、ベース用がそれぞれよく使用される他、ステレオ入出力のPA用エフェクターなどもよく用いられる。またごく僅かながらスティック専用のエフェクターも存在する。
Warr GuitarやKOYABU BOARD等、似た構造のタッピング楽器をひとくくりにしてスティックと呼ぶ事があるが、これは誤り。このジャンルの楽器が圧倒的に知名度が少ない事によると思われる。
国内での流通がそもそも少ないため弦の確保が困難で、ベースパートはともかく、メロディパートに対応する太さの弦で長さの足りるものが少ないため代用品の確保が難しい。
チャップマン・スティックの種類
Chapman Stickは特殊な楽器ゆえか、多様なヴァリエーションが存在している。
- The Stick(10弦スティック)
5本のメロディー弦+5本のベース弦という構成の基本モデル。 - Stick Bass(8弦スティック)
4本のメロディー弦+4本のベース弦という構成のモデルと、8弦ベースに似たチューニングを施したモデルとが存在する。 - NS Stick(8弦スティック)
ヘッドレスベースで有名なネッド・スタインバーガー氏とコラボによって作られたStick。通常のStickと異なりヘッド部分が無く、チューニングも異なる。 - Alto Stick(10弦スティック)
- 5本のメロディー弦+5本の伴奏弦という構成。スケールがどちらかと言えばギターに似て短め。
- Ten String Grand(10弦スティック)
Grand Stickよりも張られている弦の本数が2本少ないが、指板がより広くなっている。 - Grand Stick(12弦スティック)
6本のメロディー弦+6本のベース弦という構成。 - Stick Guitar(12弦スティック)
6本の弦を2組張ったモデル。Alto Stickと同様にスケールがギターに似て短め。 - Stick XG
構造を変形させたもの。グラファイトと連続炭素繊維で作られている。 - Stick XBL
空洞で調律な可能な複合材料を使用したもの。BassLab社開発のプロトタイプ。 - The Acoustick(アコースティック・スティック)
スティック奏者である、ボブ・カルバートソンの為に作られた。 - 24弦スティック
主なチャップマン・スティックの奏者
- エメット・チャップマン(この楽器の生みの親でスティック奏者でもある)
- トニー・レヴィン キング・クリムゾンの元ベーシスト
- ニック・ベッグス カジャグーグーのベーシスト
- ジョン・マイアング ドリーム・シアターのベーシスト
- トレイ・ガン キング・クリムゾンの元ベーシスト
- バカボン鈴木 パール兄弟のベーシスト
- アルフォンソ・ジョンソン ウェザー・リポートの元ベーシスト
- ベルナール・パガノッティ
- ヤニク・トップ
- キャリー・メルボルン
- ケヴィン・キース
- 瀬川信二
- 小籔良隆 コヤブボードの開発者、ウォー・ギター奏者
- ボブ・カルバートソン
- ショーン・マローン シニックの元ベーシスト、ゴーディアン・ノットのベーシスト。
- グレッグ・ハワード(グレッグ・ハウ)
- 辻賢 十一(juuichi)のスティック奏者
関連動画
関連商品
関連項目
- ギター
- ベース
- アコースティック・ギター
- アコースティック・ベース
- エレクトリック・ギター
- エレクトリック・ベース
- 7弦ギター
- 8弦ギター
- 5弦ベース
- 6弦ベース
- 7弦ベース
- ウォー・ギター
- コヤブボード
- タッピング
- ライトハンド奏法
- KING CRIMSON
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