――葛根市で若者たちの間で流行しているドラッグ、通称「カプセル」。 カプセルには、飲めば天使や悪魔が現れてどんな願いも叶えてくれる、という不可思議な噂があった。
帰国子女の姫木梓(ひめき・あずさ)は幼馴染みの物部景(もののべ・けい)との7年振りの再会を果たす。しかし実の弟のように懐いていたかつての記憶がまるで嘘であったかのように、景の態度は冷淡そのもので、むしろ何者の接触をも拒絶するような陰鬱な空気を漂わせていた。
景と同じ葛根東高に転入していた梓は、学校でも浮いた存在の景が例のカプセルの常用者である、との噂を耳にした。米国滞在により薬物中毒の現実をよく知る梓は景に問い質すが、完全に黙殺される。渡米は両親の都合であり梓に非は無かったが、梓は景を置き去りにした過去を深く悔いる。
そんな矢先、東高でカプセルを常用する女生徒の飛び降り事件が発生した。 護身術の心得のある梓は、カプセル撲滅を目指す級友の「ミス・ホームズ」海野千絵(うみの・ちえ)と、市内最大のカプセルユーザー組織「セルネット」の元メンバー・水原勇司(みずはら・ゆうじ)と共に真相究明に乗り出す。
・・・・・・それこそが、7年前とまるで変わってしまった二人の絆を取り戻せる、唯一つの道と信じて。
カプセルの闇に追るうちに、梓たちは「悪魔持ち」と呼ばれるカプセルユーザーたちと、彼らが呼び出す強大で暴力的な「悪魔」、そして悪魔狩りを行う謎の存在「ウィザード」と遭遇することになる。
カプセル、悪魔、セルネット、そして「ウィザード」「無慈悲な女王」「王国」。 梓と景の二人を中心に、物語の裏側に隠された真実の歯車は大きく回り出す・・・・・・。
概要
『Dクラッカーズ』とは、あざの耕平によるライトノベルである。 口絵・挿絵は村崎久都が担当。
富士見ミステリー文庫より刊行された後、富士見ファンタジア文庫に移籍し新装版と番外篇が刊行された。
作者にとって初の長篇シリーズであり、後に自ら「筆者の原点のような作品」「思い入れのあるキャラばかり」と述懐している(作者個人ブログ「あざログ」より。外部リンク参照)。
1998年に「ドラゴンマガジン」誌上で行われた第一回龍皇杯にて短篇版「Dクラッカーズ」(「Dクラッカーズ・ショート・ショート」/新装版短篇集第2巻所収)を発表。優勝こそ逃したものの、2年後の富士ミスレーベル立ち上げに伴い、編集長からの薦めもあって長篇に書き改められ、晴れて2000年に第1巻を刊行。これが好評を博し、続巻の運びとなった(以下オリジナル版)。
その後もレーベルのカバーレイアウト変更(大部に変更無し)やリニューアル(所謂「LOVE寄せ」)に伴うカバーイラスト大幅変更(以下リニューアル版)を経由しつつ、本篇8巻、短篇集2巻を刊行し、大好評のうちに完結した。
そして、本篇完結から3年後の2007年、富士見ファンタジア文庫に移籍。装丁と挿画を一新し再版された(以下新装版)。さらに梓と景のそれからを描く、新作書き下ろし番外篇『Dクラッカーズ+』が刊行され、堂々と幕を下ろした。
上記のあらすじのように、本作ではカプセルと呼ばれるドラッグを巡り、景をはじめとしたジャンキー達が超常バトルを繰り広げる。登場人物の殆んどがジャンキーという、ライトノベルの中でも異色な作品ではあったが、ネット上の口コミによって徐々に人気を伸ばしてきた。
やや局地的ではあるが、それなりの人気作であるにも関わらずアニメ化などの話が無かったのは、ぶっちゃければ青少年たちがドラッグを飲んで夜な夜な暴れまわる話だからだろう(とは言っても、本作はドラッグをどちらかといえば否定的に扱っている。だが小説刊行時の深夜アニメのビジネススタイルを慮ると、なかなか企画の通りにくい仕様である感は否めない)。まあ解ってはいても非常に惜しまれるところである。
また、2003年には主人公たちがオリジナル版第3巻前半までの顛末を物語るドラマCD「THE EVE」が発売されている。キャストは物部景(古島清孝)、姫木梓(浅井晴美)、海野千絵(今井麻美)、水原勇司(加藤寛規)。
『Dクラッカーズ』最大の魅力は、「ネオ・サスペンス・アクション」と銘打つとおり、やはり悪魔召喚による臨場感溢れる戦闘描写だが、その中に織り成される梓と景という幼馴染の強い絆、二人を取り巻く仲間達の群像劇といった人物描写、そしてカプセルとセルネットの誕生に潜む真実が徐々に解き明かされる流れは、まさに秀逸と言えよう。
曲がりなりにも一応「ミステリー」を冠したレーベルリリース第1弾の面目躍如といった所だが、現在は電子書籍としてニコニコ静画でリニューアル版と新装版が有料配信されているので、その凄さがどんなものなのかは、是非ともその目でお確かめあれ。
オリジナル/リニューアル版-新装版 比較対応表
レーベル移籍に際しての主な変更点は以下の通り。個別巻内の変更については表中の補足を参照。
また、各巻の副題はニコニコ静画内の電子書籍へのリンクになっている(ただし富士ミスはリニューアル版のみ)。
レーベル | 富士見ミステリー文庫 (オリジナル版/リニューアル版) |
富士見ファンタジア文庫 (新装版) |
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Dクラッカーズ (長篇本篇) |
1. 接触 -touch- | I. 接触 -touch- |
2. 敵手 -pursuer- ※新装版ではI・IIに分割収録 |
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II. 祭典 -ceremony- | ||
3. 祭典 -ceremony- | ||
4. 決意 -resolution- | III. 決意 -resolution- |
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5. 乱 -rondo- | IV. 乱 -rondo- |
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6. 追憶 -refrain- | V. 追憶 -refrain- |
|
7-1. 王国 -the limited world- | VI. 王国 -the limited world- |
|
7-2. 王国 -a boy & a girl | VII. 王国 -a boy & a girl |
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Dクラッカーズ・ショート (短篇集) |
1. 欠片 -piece- | I. 欠片 -piece- ※「Dクラッカーズ 逸脱 -deviate-」 追加収録 |
2. 過日 -roots- | II. 過日 -roots- ※「夏祭 -midsummer-」および 「Dクラッカーズ・ショート・ショート」追加収録 |
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Dクラッカーズ+ (番外篇) |
―――― | 世界 -after kingdom- ※新装に伴う書き下ろし新作 |
関連商品
関連動画
『幻想クラッカーズ』(幻想入りシリーズ) 『iクラッカーズ』(NovelsM@ster)
『コタロウの小さな冒険』(BBB×Dクラ)※停止中 『Dクラララ!!』(デュラララ!!EDパロリンク)
外部リンク
関連項目
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