What will we do with the drunken whaler?
(酔いどれ捕鯨夫をどうしてくれよう?)
Stuff him in a sack and throw him over
(袋詰めにして投げ捨てろ)
Feed him to the hungry rats for dinner
(はらぺこネズミのご馳走にしちまいな)
Shoot him through the heart with a loaded pistol
(弾を込めた鉄砲で心臓をぶち抜きな)
Slice his throat with a rusty cleaver
(錆びた包丁で喉をバッサリだ)
Way, hey and up she rises
(ウェイ、ヘイ、帆を上げろ)
LA VENGEANCE EST LE REMEDE A TOUS LES MAUX
Dishonored(ディスオナード)とは、2012年発売のファーストパーソンステルスアクションアドベンチャーゲームである。
プラットフォームはPC、PlayStation3、Xbox 360。
開発はArkane Studios、パブリッシャーはBethesda Softworks。
日本での知名度は低いものの、海外では数多くの賞を受賞しており、メタスコアがPCが92/100、PS3が89/100、360が88/100と評価が高い。
DLCによる外伝の他、短編アニメーションとして、前日譚「ダンウォール物語(The Tales from Dunwall)」が公式サイト及びYoutubeで視聴可能。
2016年、続編「Dishonored2」が発売された。
世界観
舞台
「汚された名誉」というタイトルに相応しい、ダークでスチームパンク風な独特の世界観を持つ。
舞台となるのは、諸島帝国(Empire of Isles)の帝都「ダンウォール(Dunwall)」。
産業革命黎明期のイギリスを彷彿とさせる街だが、ネズミが媒介する「疫病(Rat Plague)」により、凶暴化した感染者「ウィーパー(Weeper)」の増加という問題に悩まされている。
そこに技術革新によりもたらされた新エネルギー、未知の力を持つ謎の存在といった要素が加わり、産業革命の熱量、社会に漂うデカダンス、未だ残る神秘主義を色濃く描き出している。
未来への希望と現実への失望で混沌とするこの街で、プレイヤーは陰謀や犯罪といった世界の裏側に触れていくことになる。
練り込まれた世界観は、膨大に用意されたNPCの会話だけでなく、あちこちに配された本やノートでより深く楽しむこともできる。これにより、イベント中には語られない真実を探し歩くのもこのゲームの楽しみの一つになっている。
登場人物
コルヴォ・アッターノ(Corvo Attano)
ゲームの主人公。ちなみにコルヴォとは「鴉」を意味する。
カルドウィン女王直属の王室護衛官 (Lord Protector)であり、極めて優秀。隠密行動と格闘能力の高い技能を持つ。女王の命を受け、「疫病」に対する救援を要請する為に外国を訪問していた。
ゲーム内では一切喋らず、性格等はプレイヤーの想像に任されている。続編「Dishonored2」にも登場。
謁見の場に突如現れた暗殺者と剣を交えるが、暗殺者の異能に敗北して女王を殺害されてしまう。更には女王暗殺の実行犯の汚名を着せられて虜囚の身となり、死刑を宣告されるが、アウトサイダーから異能を与えられて脱獄に成功。王政支持派に協力し、自らの汚された名誉を回復し、自身を陥れた者への復讐と、エミリーの救出の為に動き出す。
ジェサミン・カルドウィン(Jessamine Kaldwin)
諸島帝国の女王。コルヴォに全幅の信頼を寄せる。
その美貌と高潔な精神、慈悲深さで国民から愛されている。
蔓延する「疫病」を憂い、コルヴォを派遣して外国に救援を要請するが、協力を得られずに苦悩する。
直後に現れた暗殺者によって暗殺され、コルヴォの腕の中で息を引き取った。
その後アウトサイダーによって魂を奇怪な装置「心臓」に移植され、コルヴォの手に渡った。「心臓」に封じられて以降は性格が変わり、皮肉屋の一面を覗かせながらも密かに愛する者を心配している。
エミリー・カルドウィン(Emily Kaldwin)
カルドウィン女王の一人娘。
あどけなさの残る少女だが、正統王位継承者であり、誇り高さと気の強さを持ち合わせている。
幼い頃から傍にいるコルヴォをとても慕っている。続編「Dishonored2」では成長した姿で登場。
物語序盤において目の前で母を失い、更には母を暗殺した勢力に誘拐・監禁されてしまう。また彼女の父は世間には公表されていないが、実は……。
ハイラム・バローズ摂政伯爵(Lord Regent Hiram Burrows)
情報機関である王室間諜の責任者。
女王の政治手腕を柔弱なものと考え、より強く出るように求めている。
女王暗殺の首謀者で、コルヴォに罪を着せて投獄した張本人。女王が殺害され、後継者たる王女が「失踪」した後、ダンウォールの指導者となる。
女王が取っていた従来路線に反発する形で、強硬な政治姿勢を維持。強権によって軍を支配し、他の政治勢力や暴動を抑圧している。彼が摂政に就任後、ダンウォールの荒廃が大きく進んだ。
サディアス・キャンベル (Thaddeus Campbell)
宗教組織「大衆の大修道院」の指導者「上級監督官」を務める。
近年の「疫病」に始まる諸問題を、宗教家として憂いている様子。
宗教指導者でありながら職場に娼婦を派遣させるなど典型的な悪党で、ハイラムに加担して女王暗殺に協力した。その後コルヴォにより「排除」されるが、生かして「排除」した場合、後に思わぬ形で再会する事となる。
アントン・ソコロフ (Anton Sokolov)
王室医師にして画家。
ダンウォールの礎となった新技術の生みの親で、文字通りの天才。「疫病」に対する唯一の対抗策である予防薬の開発に成功しており、高値で取引されている。
彼の描いた肖像画は貴族の間で人気が高く、探索中に見つける事が出来る。
その思考は善悪を超越しており、「疫病」の特効薬を作る為なら人体実験も厭わない。
ルートによってはピエロと共同戦線を組んで「疫病」の治療に全力を注ぐ。
ハブロック提督 (Admiral Farley Havelock)
コルヴォの協力者。厳めしく軍人然とした初老の男。
良くも悪くも体育会系的気質で、過去の武勇伝にすがる一面も見られる。
王政支持派のリーダーで、エミリーを救出し、ハイラムを排除しようとしている。
愛国主義者であり、そもそもは善意によって活動していたが、コルヴォの活躍によって情勢が変わっていく中、彼の目的も変質してゆく。
トレバー・ペンドルトン (Treavor Pendleton)
ハブロック提督に協力する貴族。
兄が二人いるが、長年いじめられ続けた事もあり、政治思想の違いから対立している。
女性遍歴が派手だが、それに関連して自分が受けた決闘をコルヴォに代理してもらうほどのヘタレ。
ハブロック提督に迎合し、自らの臆病さも手伝って彼らに加担していくようになる。
テーグ・マーティン (Teague Martin)
宗教組織「大衆の大修道院」の聖職者「監督官」を務めている。
ハブロック提督の協力者だったが、物語の序盤ではそれが災いして拘束されていた。
後にコルヴォに救出され、王政支持派に合流。誠実な男だったが、次第に権力に取り憑かれていく。
ピエロ・ジョプリン (Piero Joplin)
稀代の発明家にして、ソコロフと並ぶ天才。コルヴォの協力者の一人。
様々なガジェットを発明してはコルヴォに販売・アップグレードの手伝いをしてくれる。
密かに惚れた女性の入浴を覗き見るスケベオヤジ。
夢の中で垣間見た「死」の姿を象り、コルヴォの為のマスクを製作した。
サミュエル・ビーチワース (Samuel Beechworth)
船乗りの老人で、コルヴォの協力者の一人。元は海軍に所属していた。
コルヴォを目的地まで送り届け、本拠地に連れ帰る役目を担う。
ゲーム中で最も素朴な人物であり、コルヴォのカオス値によって態度が大きく変わる。
カオス値が低ければ尊敬を示し、友好的になるが、高い場合はその所業を非難し、任務の妨害さえ行う。
グラニー・ラグス (Granny Rags)
スラムで一人暮らしをする盲目の老婦人。
かつては貴婦人だったがある事件によって発狂してしまい、いつも意味深な独り言を呟いている。
彼女と敵対するスラックジョー曰く、自分が子供の時分からババアだったらしい。
アウトサイダーから能力を授かっており、人食いネズミを自在に操る。またある理由から事実上の不死となっている。
スラックジョー (Slackjaw)
スラムを支配するギャングのリーダー。部下の不始末に関連し、コルヴォに仕事を依頼する。
強盗、誘拐、疫病予防薬の水増し販売など、様々な悪事に手を染めている。
グラニー・ラグスとは長年敵対しており、物語終盤では彼らの抗争に巻き込まれる事となる。
『心臓』によると王族の末裔らしいが、本人は知らないらしい。
アウトサイダー(The Outsider)
謎の存在。若い青年。
神と悪魔、どちらでもありどちらでもない超常的な存在。通常は「虚無の世界(The Void)」に住んでおり、夢を通じて人々の前に姿を見せる。コルヴォに異能を与え、女王の魂を「心臓」に封じた張本人。
コルヴォ以外にも様々な人間に能力を授けているが、その能力をどのように扱うかまでは関与せず、大半はその末路にさえ興味を示さない。その一方で興味を持った人間の前にたびたび現れ、助言さえ行う。
道徳観念とはおおよそ無縁の、気まぐれで動くトリックスター。
ダウド (Daud)
DLC「The Knife of Dunwall」「The Brigmore Witches」の主人公。
女王を殺害した実行犯で、ハイラムに依頼されて殺人を引き受けた暗殺者。「捕鯨員」(The Whaler)と呼ばれる配下を率いており、彼らからは忠誠を誓われている。
女王暗殺によってダンウォールが荒廃した事を密かに悔やんでおり、自らの境遇もあって厭世的な一面を持つ。またコルヴォに対しては自分と同じ出自や悲惨な境遇から、同情を感じている。
アウトサイダーから異能を授かっており、コルヴォとは似て非なる能力を複数所持する。そのアウトサイダーからは気にかけられている様子。
DLCでは帝国の支配を目論む「魔女」と対立し、魂を狙われたエミリーを魔の手から救い出している。
ゲームプレイ
システム
FPS視点のアクションアドベンチャーゲーム。
ステルスゲームをベースとしているが、様々な能力を駆使することで、他のステルスゲームとは一味違う超人的なプレイを楽しむこともできる。
オープンワールドではないが、広大な各ステージはほとんどの場所に行くことができ、物理エンジンや様々な反応をするNPCなど、攻略の自由度は高い。
また凝った内容のサブクエストも数多く用意されており、様々な形で物語を楽しむことができる。
一見ハードコアなゲームだが、難易度が選べる上、使いようによってはチートに近い強力なスキルもあるので、苦手な人もサクサク楽しめる。Allノーキルノーアラートの達成は難しいが、挑戦する価値はあり。
戦闘では血飛沫などゴア表現もあるが、ターゲットを殺害せずとも生かしたまま「排除」する事でクリアできるようにデザインされている。
雑魚やターゲットの殺害を繰り返すと「カオス値」が蓄積し、エンディングが分岐する。
能力
物語の序盤から順を追って手に入る異能力。
各地で発見できる「ルーン」によって強化が可能。
アクティブパワー
使用の際にマナを必要とする。
マナは時間経過の他、特定のアイテムを服用する事で回復できる。
- ブリンク (Blink)
最初に習得する能力。狙った場所への瞬間移動が可能。
移動中は不可視であり、厳重な警戒を潜り抜ける、一瞬で敵の背後に回り込む、離れた場所に飛び移るなど、使い道は様々。 - ダークビジョン (Dark Vision)
壁の向こうにいる敵の姿、および視界範囲が見えるようになる。強化すると配置された物品やトラップなども可視化できる。 - ポゼッション (Possession)
動物の中に入り込み、一定時間支配する。初期ではネズミなどの小動物に限られるが、強化すると人間にも憑依できるようになる。
時間制限があり、能力が切れるとその時点で憑依された動物は死亡し、人間はその場で嘔吐して悶絶する。高所から飛び降りつつ憑依する事で墜落死を回避する、ターゲットを人目のつかない所に連れて行ってから排除する、ネズミしか通れない細い通路を使って侵入するなど、使い道は万能。 - ベンドタイム (Bend Time)
限られた時間の流れを遅くする。強化すると完全に停止できる。
時間停止中はトラップを無効化できる他、飛んできた銃弾を止める、複数の敵に向かって銃を撃ち、能力終了後に「そして時は動き出す」ばりの回避不可能な攻撃を行うなど、チートに近い威力を発揮する。その為強化にかかるコストは最も高い。 - ラットスワーム (Devouring Swarm)
凶暴な人食いネズミの群れを召喚し、敵を襲わせる。召喚されたネズミは数秒で対象を食い殺し、死体を残さず食い尽くしてしまう。
敵の足止めや死体の始末に使える他、ポゼッションと組み合わせて逃走にも活用が可能。 - ウィンドブラスト (Windblast)
前方の広範囲に向けて突風を起こす。
敵をまとめて吹き飛ばしたり、扉を破壊するなどが可能。また敵の矢やグレネードも投げ返す事が可能で、特にトールボーイと呼ばれる強敵相手には絶大な効果を発揮する。
能力を強化すると吹き飛ばす距離が伸び、壁に叩きつけられた敵は死ぬ。
パッシブパワー
- シャドウキル (Shadow Kill)
敵をステルス状態で殺害すると死体が灰になり、死体の隠蔽に頭を悩ます必要がなくなる。 - ブラッドサースティ (Blood Thirsty)
攻撃やガードでアドレナリンを溜め、専用の一撃必殺技を繰り出せるようになる。 - アジリティ (Agility)
ジャンプ距離が伸び、より高く遠い場所への移動が出来るようになる。ブリンクと組み合わせて機動力をアップできる。 - バイタリティ (Vitality)
体力の最大値が上昇する。強化すると、回復アイテム使用時の回復量が増加する。
武器
銃、ピストル、クロスボウ、グレネードを使用可能。
特にクロスボウは麻酔ボルトを放てる為、遠距離から敵を無力化するのに最適。上記の能力と組み合わせ、あらゆる戦闘に運用が可能。
ガジェット
様々なお役立ちアイテム。
ピエロが開発・販売する他、各地に落ちているものを拾う事で能力が強化できる。
- スプリングレーザー (Spring Razor)
バネの力でカミソリの刃を撒き散らし、対象をバラバラに切り刻む凶悪な近接地雷。作中屈指のえげつなさを誇る。
NPCの行動パターンを読んで通路に仕掛ける、ベンドタイム(強化済)で時間を停止して敵に直接くっつけるなどの応用が可能。グレネードと異なり、自分にダメージは入らない。 - リワイヤツール (Rewire Tool)
敵が設置した「光のバリア」や「電磁塔」といった保安装置を無効化、或いは効果対象を反転できるハッキング装置。
効果対象を反転すると、それまで何の影響も受けていなかった敵がバリアを通ろうとして灰になるなど、愉快なトラップ返しが出来る。 - ソコロフのライフエリクサー (Sokolov's Elixir)
ソコロフが開発した赤いエリクサー。
本来は「疫病」の予防薬だが、体力を回復できるポーションになる。 - ピエロのスピリチュアル治療薬 (Piero's Spiritual Remedy)
ピエロがソコロフの発明に対抗して開発した青いエリクサー。マナエネルギーの回復が可能。 - ルーン (Rune)
クジラの骨に魔術的な図形が描かれたお守りで、能力強化に必要。近づくと独特な音が聞こえる。
各地に隠されており、「心臓」を用いる事で大体の場所を特定できる。 - ボーンチャーム (Whalebone Charm)
ルーンよりも小さなクジラの骨のお守り。効果は様々で、装備する事で様々な特典や能力強化を得られる他、ゲームシステムの一部を改変することもできる。
全部で36種類(DLC除く)存在するが、何が入手できるのかは完全にランダム。 - 心臓 (The Heart)
機械仕掛けの「心臓」の形をした奇怪な装置。
ルーンやボーンチャームに近づくと脈動が強くなり、場所を特定する事が出来る。またNPCや特定の場所に向けて使用すると、コルヴォだけに聞こえる声で様々な情報をもたらす。
皮肉っぽく攻撃的な言葉を多く口にするが、そこに封じられているのは暗殺された女王の魂である。
グラフィック
全て手描きでデザインされたグラフィックは独特の色調で、やや誇張された形状と相まって絵画か風刺画のような質感。
空気感のある光の表現が秀逸で、特に陽の光に照らし出される建築物や水辺の景観は非常に見応えがある。
キャラクターの造詣はケレン味が強く、美男美女はいないものの、ハイクオリティで個性的。ヨーロッパを意識したというだけあり、北米向けとはまた面持ちが違う。
音楽
音楽はダニエル・リヒトが担当。
トレイラーで流れる主題歌「The Drunken Whaler」は、イギリスで古くから歌われるシーシャンティ(船乗りの労働歌)「The Drunken Sailor」の替え歌である。
あどけない少女の声で歌われるが、歌詞は極めて血生臭い感じに仕上がっており、陰鬱な曲調と相まってファンが多い。
PC版要求スペック
- OS: Windows Vista以降
- CPU: 3GHz以上のデュアルコアCPU
- メモリ: 4GB以上
- ビデオカード: GTX460 512MB以上またはRadeon HD 5850 512MB以上
Arkane Studios
Arkane Studiosはフランスのゲームデベロッパー。
1999年に設立され、現在はZeniMax Mediaの傘下。代表作は「Dark Messiah of Might and Magic」。
他にも「Call of Duty: World at War」「Bioshock2」などの開発に参加している。
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