GraalVMとは、さまざまな言語がシームレスに動作する仮想マシンである。
概要
GraalVMとは複数の言語をシームレスに動かす仮想マシンである。サポートする言語同士でお互いを呼び出すことができ、その際にパフォーマンスの低下がないことを特長とする。
2018年4月17日にOracleによってversion 1.0 RC1が発表されたが、その後1年ほどRCの状態が続いていた。2019年5月10日、RCがとれてversion 1.0になるかと思いきや、version 1.0 RC16からいきなりversion 19.0.0となった。2019年にリリースされたから19.0.0という方式である。
公式サイト
プラットフォーム
LinuxとMacOSのサポートから始まったが、WindowsやDockerもサポートしている。
対応言語
- JavaをはじめとするJVM言語(バイトコードを受け付ける)。
- Node.jsを含むJavaScript(TypeScriptも入るのだろうか)。
- LLVMによるC言語、C++、Rust(LLVMの中間コード(: bitcode)を受け入れる)。
- Ruby, R, Pythonも実験的レベルでサポートするとのこと。
参考
GraalVMでなく、Graalというものがあり、GraalVMに含まれるJITコンパイラを指す。
Graal: 聖杯を意味する単語(英語ではGrailに相当)
動作原理
内部に複数の処理系を抱えているようだ。バージョン1.0時点では各処理系は現時点の最新版に対応しているようだが、独自実装であり各言語のデファクトスタンダードやリファレンス実装の変化についていけないリスクも。
Java仮想マシン(JVM言語)
内部にOpenJDK 8を持っているようである。JVM言語はバイトコードに変換されるので、OpenJDKのJava仮想マシンで実行される。
Node.js(JavaScript)
ブラウザから独立して動作するメジャーなJavaScriptインタプリタNode.jsも含まれているようだが、後述のようにJavaScriptの処理系はGraalVM自身も別に持っている。
Truffle
Javaで書かれたTruffle(トリュフの英語綴り、フランス語はtruffe)という構文解析器があり、JVM言語以外の言語はこちらが処理する。
LLVM(C, C++, Rust等)
コンパイルにLLVMを用いる言語は一旦bitcodeという中間コードに変換されるが、この中間コードのインタプリタがあり、それを実行するということのようである。対応する言語の例としてC言語、C++、Rustがあがっっている。LLVMを使用する言語であればSwiftやObjective-Cなどもいけそうな気がするが、名前があがっていないのはAppleと仲でも悪いのだろうか。
JavaScript, Ruby, R, Python, WebAssembly
JavaScriptを実行する機能は(JavaにもJavaScriptエンジンNashornが搭載されているが)上記Truffleを用いて独自に実装されているよう。他の試験的なサポート言語であるRuby, R, Python, WebAssmblyもTruffleを用いて独自に実装したもので、標準的インタプリタが内部に組み込まれているわけではない。
JavaをわざわざTruffleで実行するJava on Truffleというものも追加されている。Javaで実装されたJava仮想マシンを用いるらしい。プロジェクト名はEspresso。
Native Image
ネイティブコード(機械語)への変換もサポートしている。バイトコードの実行時コンパイルを介さないので理論的にはJavaの実行が高速になるはずだが、バージョン1.0の段階では仮想マシンの起動時間はなくなるもののJava仮想マシンよりも速度が落ちる(改善予定)とのことで、多言語と連携する時に使用するということのようである。速度が改善されたとしても、Oracleのことだから有償版専用の機能とかになりそう。
仮想マシンにあるライブラリは使えないので、リフレクションなどで実行時にクラスを選んでロードするプログラムは(ロードするクラスがネイティブコードに含まれていないので)動かないようだ。
関連項目
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