M3ハーフトラックとは、アメリカ合衆国で開発された半装軌式装甲車である。
概要
第2次世界大戦開始直前にアメリカ陸軍に採用され主力装甲兵員輸送車(APC)として運用されただけでなく連合国陣営国(イギリス、ソビエト連邦etc)にレンドリースされる形で運用された結果、基本となるAPC型だけで4万両弱、各種派生型も1万4千両を越えた大量生産となった。
開発経緯
アメリカ軍がハーフトラックの開発に着手したのは戦間期の1920年代の事で先駆していたフランスから輸入した『ケグレス』シリーズを試験し装輪式と比較して路外走行性能が上回っていることが確認された事を受け国内メーカーへ開発を要求した。
そして1933年、民生用トラックをベースにした『M1ハーフトラック』を制式化したが能力不足と判断されより軍用に適したハーフトラックの試作が実施された結果、まず『M2』が制式化され続いて『M3』の順となった。
構造
本車と大部分の派生型は『全体的に直線で構成されたボンネットトラックの後輪部分が履帯になっている』外観をしている。実はこの車体の設計は装輪式の『M3スカウトカー(偵察装甲車)』のものを流用したもので正面から見ると見分けがつかない程だが全長はハーフトラックが6m程度に対しスカウトカーは5mと1mの差がある。但し最高速度はハーフトラックが70㎞/h程度に対しスカウトカーが96㎞/hと大きく水を開けられている。
尤もハーフトラックは戦車を中核とする機甲部隊を構成するため路外機動性を重視されるため問題にはされず最高速度は道路上でしか発揮できず路外では戦車と大差なかった。
履帯のサスペンションは『ケグレス』シリーズと同様『起動輪と誘導輪の間に2個1組の転輪をスプリング付アームで連結した』物でドイツ製より緩衝性能は劣るが整備製で上回っていた。
また、『スカウトカー』と同様にバンパーにローラーが備えられ塹壕やクレーターを突破する補助に用いられたが後に多用途に使えるウインチに切り替えられている。
武装は当初、7.62㎜機関銃のみだったが程なく後述のM2ハーフトラック同様に12.7㎜重機関銃が助手席上に追加されている。装甲は最大12.7㎜と薄めだが最前線の手前まで兵士を運ぶのが主目的のAPCの運用上これで充分とされた。
しかし兵員室はオープントップ=屋根が無い為真上からの攻撃を防ぐ術はなかった。
乗員はキャブに3名、兵員室に武装兵10名の搭乗となっている。
形式
- M2
原型となった砲兵トラクター仕様。兵員室部分が短く、7名しか載せられない。
当初から12.7㎜重機関銃を装備していたが兵員室の壁にレールに乗せた状態で装備していた為取り回しが悪く助手席上部に移設する改良が実施されM3にフィードバックされた。 - M5/M9
レンドリース版で前者がM3、後者がM2がベース。
使用鋼材変更などの生産簡略化を行った結果、全備重量が10t近くになり最高速力が67㎞/hに落ち、装甲厚は最大16㎜弱まで増えたが防御力は低下したと云われる。 - ザハラムMk.A/MK.B
イスラエル仕様。前者はリングマウント無、後者はリングマウント有。 - ザハルド
前述のザハラムのエンジンをディーゼルに換装、変速機の改良を行った型。
派生型
- M3GMC(自走式対戦車砲)
旧式化していたフランス式75㎜砲を兵員室と運転席の境界にオープントップ式で装着した。欧州戦線では厳しかったが太平洋戦線では活躍できた。 - T48(su-57)
イギリス製57㎜砲(6ポンド砲)を装備した自走式対戦車砲。大部分がソビエト連邦で運用された。 - T19/T30HMC(自走榴弾砲)
前者は105㎜、後者は75㎜を使用。主に北アフリカ戦線終盤~イタリア戦線前半まで運用された後にアメリカ軍での運用を終えたがT30はフランスに供与されたものがインドシナ戦争で使用された。 - M4/M21MMC(自走迫撃砲)
双方とも81㎜迫撃砲を装備しているが前者はM2ベース+迫撃砲が後ろ向き設置、後者はM3ベース+前向きに迫撃砲を設置している相違がある。なお、生産数は前者が上回っている。 - M13/M16MGMC(自走式対空連装機関銃)
兵員室部分にM2重機関銃の連装銃座を装備した自走式対空砲。前者が2連装、後者は4連装。 - M15CGMC(複合型自走式対空砲)
兵員室を撤去した跡に37㎜機関砲とM2重機関銃2丁を備えたオープントップ式旋回砲塔を備えていた。 - ザハラムベース各種派生型
キャブ上の銃座を銃塔化したものや90㎜戦車砲を装備した自走対戦車砲、対戦車ミサイル発射機積載車、装甲回収車型等が存在した。
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関連項目
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