P.180アヴァンティとは、イタリアのピアジオ・エアロ(ピアッジョ・エアロ)が開発した旅客機である。
アヴァンティ(Avanti)とは、イタリア語で「次」「前へ」といった意味。アンチョビの号令でだいたいの意味を知ってた人も多いかと思われる。
背景
ゼネラルアビエーション業界、すなわち自家用機や社用機、エアタクシーなどの定期航空路線ではない航空産業界において、1980年頃の第二次オイルショックの折に高性能なターボプロップ式のビジネス機が求められたことが開発の背景である。
ターボプロップ機はターボファン機に比べて最高速度や高高度性能で劣るが、燃費に優れ滑走距離が短いという利点を持つ。そのため、ゼネラルアビエーション業界とは当時相性が良い形式だった。なお現在はターボファンエンジンも燃費が向上しているため、時代はリージョナルジェットへ推移している。
P.180はそんな時代に開発された機種のひとつだった。
特徴
ターボプロップ機でより高性能を発揮するために、P.180では主翼を後方へ配置し、前方にも小さな翼(カナード翼)を設ける形式を採用した。これは抵抗を低減して高速化を図ることができ、客室面積も大きくできるメリットがある。併せて、プロペラは後ろ向きに設置するプッシャ式(推進式)が採られた。
これによりP.180の主翼はとても小さく作ることができ、ターボプロップのビジネス機としては世界最速の存在となった。
なお、同様の形式は何もP.180だけに限った特徴ではなく、むしろ同期の同クラス機体には多い。開発背景や条件が同じなので当然と言えば当然である。
一見すると見慣れない形ではあるが、理論的には決して革新的なものではない。かのライト兄弟が作ったライトフライヤー号もカナード翼を持っている。他に、九州飛行機・震電やカーチス・XP-55アセンダーなど戦闘機での採用も見られる(ただしこの2機種は失敗作とみなされているが)。
また、P.180は胴体が層流を意識して設計されており、翼だけでなく胴体そのものでも揚力を発生するように作られていた。これはピアジオが特許を取得している。
こうしてデザイン面では先進性も取り入れたP.180だが、素材や構造そのものは保守的であった。他社の同クラス機種が逆に新技術を多く取り入れたのとは対照的だった。
しかしこれはP.180の開発自体がスムーズに進行するだけでなく、飛行に当たっての認証にも手間が掛からず、また堅実な作りはセールス面でも良い効果を発揮することとなる。
実績
1983年に開発がスタートしたP.180は、86年に初飛行に成功。90年に形式認定を受けて同年から引き渡しが開始した。
しかし売れ数は伸び悩み、94年に開発会社が操業を中止してしまった。
ところが、98年にエンツォ・フェラーリの息子ピエーロ・フェラーリ率いる投資グループから援助を受けてプロジェクトを再開。以後、受注生産であることもあって生産数こそ多くないもののプロジェクトを維持し続けている。
対抗機種と目されたビーチクラフト・スターシップやリアファン・2100などは失敗に終わって姿を消したが、P.180は一定の成功を収め、現在も飛び続けている。
2005年からはP.180アヴァンティⅡという改良型が生産されている。見た目はさほど変わっていないが、エンジンをより高性能なものに換装したり、完全なグラスコックピット化が行なわれるなど、扱いやすく近代化された形となっている。
さらに2016年からは、アヴァンティⅡをベースにしたP.1HHハンマーヘッドがイタリア空軍に納入されている。操縦室や客室が撤去され、無人化が施された軍用無人偵察機である。なぜか妙にネーミングセンスが良い。
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