概要
S -最後の警官-とは2009年から2016年にかけて漫画雑誌「ビッグコミック」にて連載されていた漫画。
警察内に新設されたという架空の特殊部隊をメインに据えた活劇である。
その特殊部隊とは
その名はNPS。どんな犯人をも生きて確保することを目的とした特殊部隊である。
しかしその設立にはきな臭い政治的思惑があるため隊員はいつかその尊厳を踏みにじられる可能性を持つ。
登場人物について
メンバーは癖が強いがいずれかの分野に秀でた者で構成されそのほとんどの者がNPSの掲げる題目に殉ずる意思を持っている。
神御蔵一號
主人公。巡査。
あらゆる他人のためにどんな所にでも突撃していく熱く優しい男。普段は明るく気さくな筋肉バカ。
元ボクサー。試合を見に来た香椎に見出されてボクサーを辞めNPSの突1となる。ボクサーとしての戦績はさっぱりだったもののその能力は高く、警官になった後は広い分野の技術を習得しながら己を鍛え続けている。
どんな犯人にも生きて罪を償って欲しいと願っており仲間はもとより凶悪犯の命を救うために自分を危険にさらすことにもためらわない。
かつて通り魔に両親を殺された過去を持つ。その犯人も警官により射殺されてしまい幼少期の彼はやり場のない無念を抱え込んで自失してしまった。その時の経験から被害者のためにも犯人は生きたまま確保され贖罪をしなければならないと考えるようになった。
通称は"ゴリラ"、"ボクサー警官"。
香椎秀樹
NPSの隊長。警視。41歳。
平素はどこか飄々とした態度を醸し出しているがいざ事件となると鋭く的確な判断を下す頼りになる男。
かつてはSATに所属していたが上官である中丸の姿勢についていけず抜けることを決意。警察を辞めようとしたところにNPSを率いることを持ちかけられ自らが理想とする部隊を作り上げようとしている。
世渡りが微妙にへたな模様。金欠気味。
速田仁
NPSの副官。警部。35歳。
全てが非常識なまでに超ハイスペックな男。新たに配属されたSIT(第一課特殊班捜査第1係)において将来を担っていくだろうとまで期待されていたが、最重要参考人である女性に入れ込んでしまいその将来を閉ざしてしまった。後にNPSの活躍によりその女性が無罪であることが証明された。
デブセン。無愛想。乗り物に乗ると性格が変わる。
古橋誠二朗
NPS小隊長。警部補。34歳。
ネゴシエイトの技術をもつ陽気な男。家族想いではあるものの夫として父親としては失格で、妻とは離婚、息子とも離れて暮らしている。
筋トレバカ?。関西弁。再婚の見込みなし。
梶尾竜一
NPS隊員。巡査部長。30歳。
警察犬を使った捜査手法に優れており、犬の扱いは元より爆発物などの知識も有している。
警察犬であるポインター3号を溺愛しており、度々彼を気遣う場面が見られ、合コンの最中にも彼へ思いをはせる程。休日には実家にも彼を連れて帰っている。また実家には他にも色々な動物が飼育されている。
犬好き。猫派敵視。
NPSという部隊の方向性と特殊部隊の現状
NPSという部隊・・・犯人もみんな助けるのか、犯人を射殺して事件を解決するのか
現実の情報を巧みに織り込んだ上で練りこまれた作品ではあり、また、娯楽作品としても非常に引き込まれるものは確かにある。ただし、しっかりとした知識を持たなければそもそもこのSという部隊の性格を理解するのは難しい。
特殊部隊はあくまでも、軍系に属するか、あるいは警察系に属するかで大別することができる。現実的には特定の任務遂行のために少数精鋭で任務に当たるのは共通ではあるが、特に作中のような典型的なテロリストへの対応に於いては・・・
犯人の射殺の場合なら、
犯人を射殺して“人質の安全を確保”するのが警察系、犯人を確実に排除して“作戦を成功させる”のが軍系の任務である。
犯人の確保の場合なら
“発砲によって”可能な限り犯人を捕縛し、“人質の安全を確保する”警察系、“発砲によって犯人を無力化もしくは排除し”“作戦を成功させる”軍系の任務となる。
と、これだけでも複雑極まりない対応の分岐が存在している。日本国内ならば、SATが上記の状況に応じて突入を行うが、人質の救出を力点に於いて“射殺を選択肢に含んだ対応を行う”部隊であって何が何でも射殺にベクトルを振っているわけではない。むしろ、“犯人も人質も確保するのがSATを含めた警察系特殊部隊”にとっては最良の結果である。それならば治安上の問題で片が付き、政治的決断よりは警察を介して実施される行政的決断として実施される作戦に過ぎず、ハードルを上げずに済む。(政府がダイレクトに決断する必要が絶対にあるわけではない)。犯罪者が相手ならば対応する官庁は警察なのは自然である。
翻って日本においては突入作戦を任務の一つに行う自衛隊の特殊部隊、つまり特殊作戦群においては、諸外国に倣えば“常識的に考えれば射殺は常時存在しうる選択肢ということになる”。なぜなら、軍隊の任務がすべからずして“敵勢勢力の排除がその根元に存在するから”であり国家がテロリストの要求に屈することは容認されないからである。自然とハードルが上がってしまう(この場合は絶対に政府が決断しなくてはならない)。
国家に何らかの要求を突き付けるテロリストは国家=政府が回答を行うのであり、対応する官庁は日本であれば日本国自衛隊がこれに当たらなくてはならない。
ドラマの主人公たちである彼らNPSに光が当たりやすい、あるいは制作サイドの思惑により流れが彼らを持ち上げる方向に収束していく傾向にあり、そして彼らの行動原理や想いには度々制作サイドの思想が重ねられているのも、仕方のない事である。犯人を含め誰も殺さないという理念は、警察系特殊部隊にとってはある意味で究極の答えだからである。
しかし、特殊部隊の本来の性格が“あらゆる事態に対応する”ということである以上ある一つの想定を完全に捨て去ってしまう特殊部隊がその存在において矛盾をはらんでいることは作中のとおりである。そして何よりも、警察庁に強襲部隊であるSAT、各地方警察にはSITを含めた人質救出部隊が並立して存在していることも忘れてはならない。そして何よりも、この二つの組織が存在していること自体が、作中で提唱されている“理念の実現”が限りなく不可能に近い事への証左であるともいえるだろう。
それゆえ人によっては作品を楽しむためにスルースキルが必須である。もっとも制作側の思想思惑が如実に反映されるのはビッグコミックやその兄弟雑誌の作品には多いためこの作品に限ったものというわけではない。
この辺はデリケートな問題なので少なくとも匿名での中傷や雑言は禁物である。
また、ミリタリーに詳しい者から見ると間違っていたり、間違っているように見えるうんちくがあるらしいのでこの作品で披露された知識を鵜呑みにするのは避けた方がよく、この作品を介して得た知識を飲みこもうと思うならば、しっかりと様々な資料や、書籍を読み込んだりして“答え合わせをするのが”的確ではないだろうか。
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