STOLとは、"Short Take Off and Landing"(短距離離着陸)の略。航空機の関連用語である。
概要
固定翼機は離陸時と着陸時に滑走路上で滑走を行うが、この距離が長くなると、滑走路が短い小規模の空港で使えない、という事態が生じてしまう。この滑走距離を抑える為に、古来より様々な技術開発が行われている。もっとも、STOL性を追求すると、大抵の場合輸送機関としてのコストパフォーマンスは悪化してしまうので、開発には困難が伴う。
軍用機の場合でも滑走路が攻撃を受け、短い滑走路しか使えない事態の発生を考慮して、STOL性の追求は行われる。
STOL化の為に使われる技術
固定翼機は着陸時に滑走することによって、滑走路進入時の速度エネルギーを殺している。したがって失速速度を下げることが出来れば滑走路進入時の速度も下げることが出来、結果として着陸時の滑走距離を短くすることができる。失速速度が下がれば離陸時の滑走距離も短くなる。失速速度の低下は、速度が低くても翼が十分な揚力を発揮できるようにすることで実現する。
前縁スラット・後縁フラップ
スラットは主翼の前縁に設置された小さな翼で、主翼とスラットの隙間から流れだした空気が翼上面の流れを活性化して失速の発生を遅らせる。フラップは主翼の後縁を折り曲げ、翼のまわりを流れる空気の流れを下に曲げ、揚力を大きくする(最初からカーブした翼を持つという手もあるが、この場合高速巡航時に効率が悪くなる)。
BLC(境界層吹き出し)
フラップと舵面に高圧空気を吹き出し、高揚力と操縦性向上を実現する方式。US-1/US-2では、胴体内に高圧空気発生用のエンジンが内蔵されており、この高圧空気によるBLCとフラップを併用することで失速速度75km/h(US-1)を実現している。
パワード・リフト
プロペラエンジンの後流やジェットエンジンの排気をスラットとフラップを備えた主翼によって強引に偏向し揚力を増す方式。エンジン後流を翼の上面に流し、コアンダ効果で排気を曲げるUSB(Upper Surface Blowing)方式、エンジン後流をフラップ下面に吹き付けて偏向させるEBF(External Blown Flap)方式がある。USB方式はアメリカがボーイングYC-14、日本でも飛鳥で実験を行ったが、実用には至らなかった。アメリカではダグラスYC-15によってEBF方式も試験されたが、こちらは後のC-17で採用されている。
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関連項目
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